Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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過去回想回 2

もうちょい続きます。


46 Snatch f*cking your heart

 テンションの下がったノバラの動きは精彩を欠いていた。

 云わば敵地というべき場所でありながら、だらだらと探索している。

 

 気を引き締めなければという思いもあるが、如何せんやる気が出ない。

 

 完全にババ引いた、とノバラは辟易していた。

 

 毎度のこととは言え、子どもを酷使しすぎではないだろうか。厄介な現場であれば、とりあえずノバラを送っておこうというDA札幌支部のいい加減な考えがありありだ。

 別にノバラは、団体の作戦に出ても構わないのだが、何故かそういった作戦に参加することが極端に少ない。単身での任務が多いのは、ノバラの特性から集団戦に向かないという判断なのか、それとも、『英雄(千束)』の後継と目されたノバラの実力を図るためなのか。

 どちらにせよ、ノバラが出張る案件はことごとくが『ハズレ』と言って差し支えないものであった。

 

(リコリスの失踪事件に、密航船の拿捕。ススキノのお薬関係に、軍需物資の闇取引。あと何だっけ・・・?ああ、何かリリベルとかち合ったこともあったっけ)

 

 酷い現場だったなぁ、とノバラは遠い目をしながら思い出す。ますますテンションが下がった。

 

(あ~・・・何で私はリコリス続けてんのかな~・・・まぁ、他に生きる方法もないんだけどさ~・・・)

 

 はぁ、とため息をつく。

 

(千束は、基本喫茶店。あとは、雑用みたいな仕事で楽しそうだな~。フキは相変わらず真面目というか、融通が利かないというか、仕事一辺倒で面白くなさそう・・・)

 

 姉たちを思い浮かべると、ノバラの理想は千束のような働き方だった。

 適度に緩く、場合によってはスリルもある。少なくとも、今の自分のような状況より万倍マシだろう。

 フキにしたって、ちゃんとチームで仕事をしているし、リコリスとしては真っ当な仕事だろう。ちょっと代わってほしい。

 

(この仕事終わったら、また東京に遊びに行く!止めたって知らん!たまには休ませろ!リコリスだってワークライフバランスは重要なんだ!)

 

 リコリスに年次休暇なんていうものはないが、ノバラは心の中で勝手に決意する。これまでも、仕事で東京に行かされることも多かったが、こちらの事情を承知しているからか、時折、東京への帰郷?を許されていたので、何もなければ、承認されるだろう。何もなければ。

 

(・・・しかし、本当に気配がないな?犬っころにやられたか?でも、そんな感じじゃないんだよな~)

 

 ノバラの勘は『絶対にもっとヤバいのがいる』と言っている。

 

 そして、こういう時のソレは外れたことがない。

 

(ここが最後なんだけど・・・)

 

 これまでの部屋の様子も相変わらずだったが、入り口の辺りよりは、生活感があった。レトルト食品を食い散らかしていた跡があったから、少なくとも食事はちゃんと摂っているらしい。一方でベッドルームが、入院患者が入る前の病室のように綺麗に整理整頓されているから、余計に薄気味悪く感じたのだが。

 

(扉越しで分かりづらいけど・・・話し声はない。・・・若干の血の匂い?)

 

 荒事があったのは間違いなさそうなのだが、やはり生き物の気配は感じない。

 

(・・・ソンビ映画みたいになってたり・・・)

 

 ノバラとて、それはフィクションだと認識しているが、この気配の無さと背筋にゾクゾクと来る寒気はまさにゾンビ映画を連想させた。

 

 扉を開けたら、ゾンビが襲ってくる、という想像をしてしまい、ノバラは軽く頭を振った。

 

(・・・さすがに、それはない・・・ないよね?)

 

 そして、嫌な予感をひしひしと感じながらも、ノバラは最後の扉をゆっくりと開けた。

 

 それと同時に聞こえたのはキュルルという何かの作動音。

 

 ノバラが扉を開けたその先に2メートルほどの影が二つ立っているのが見えた。

 

 人間の形をしたその影は大きなリュックを背負ってガスマスクを着けているように見えた。

 

 キュゥゥゥンという駆動音と共にその影は腕を動かし、ノバラはその手に握らているものを認めるとすぐに、扉から体を退けた。

 

 ダダダダッという連続した銃声。見たことのない種類の短機関銃だと思われたが、ノバラはそれ以上に混乱していた。

 

(ロボット!?ゾンビ映画じゃなかったけど、なんか近未来SFチックな映画みたいなヤツだった件!)

 

 気配を感じないはずだと思ったが、ノバラがもう一度壁越しに様子を伺い、そういうものだと思えば、気配は『ある』。

 

(何だぁ!?気持ち悪っ!これ人間じゃん!)

 

 ノバラが気持ち悪いと思ったのは、人間であるはずなのに、その気配はおおよそ人間のものではなかったからだ。扉を開ける前まで、生命活動、少なくとも呼吸や鼓動といった類のものは感じられなかったのに、今は浅く薄いが呼吸音がある。

 つまりは、ノバラが扉を開けるまでは休眠モードで待機し、外敵を察知して再起動したといったところか。その生態は既に人間ではなく、機械に近い。

 

(・・・こういうのもサイボーグっていうのかねぇ?)

 

 幸いにも追撃してくる様子がないことから、この部屋に入ってくる外敵を排除するという条件付けをされているのだろうか。少なくとも、追撃して撃退する発想がないということが分かる。

 

 だが、この時点でノバラは、相手は確保すべき犯人ではなく、駆除すべき害虫と認識する。もはや、アレは人ではない。人でないなら遠慮しない。

 

 ノバラはナイフを両手に持つと、地を滑るような低い姿勢で部屋に突入する。

 

キュルル、キュゥゥゥゥン、と先ほどと同じ駆動音がする。

 

(ワンパターンで助かるよ、っと!)

 

 最初のときと同じように、全く同じ動きで始動したそれらが撃ってくるまでの数瞬で、ノバラは左側の方の相手に飛び掛かる。首にめがけて左のナイフを投げつつ、右手では相手の銃を持っている腕を切りつけようとする。

 

 しかし、首へのナイフは刺さらずに跳ね返され、右手には岩にぶつけたような重い手応えが返ってくる。

 

(かったぁ!?なるほど、機械化済みってことね!いや~・・・短刀でやらなくて良かったぁ・・・!)

 

 何となくそんな予感がしていたからか、愛用の短刀ではなく、消耗品のナイフを使っていたのだが、それが功を奏した形だ。

 

 ノバラはそのまま相手に取りつくと、背中側に回りつつ、もう一方の盾にしようとする。可能であれば、同士討ちをしてくれればと思ってのことだったが、やはり、銃声はせずに、こちらに銃口を向けるに留まっている。

 

(背中のリュックみたいのは、バッテリーと駆動系。この感じ、頭と胴体以外は機械だろうねぇ・・・中身も置き換えられそうなのは置き換えて・・・?・・・ふ~ん・・・『コレ』、ここまで実用化できてるんだぁ!)

 

 奇妙な程の気配の無さと生物に対する違和感。その正体の一つに気づいたノバラは、ギラギラとした笑みを浮かべた。

 

 千束に移植された人工心臓と同種の『無拍動機械式人工心臓』。

 

 開けてみなければ分からないが、『使える』可能性はある。

 

 それが二つも!

 

 クソったれな任務の最中にボーナスを貰ったような気分だった。

 

 使えれば最高、使えなくてもバラして中身が確認できれば良し。

 

 後はどうやって壊さずに持ち帰るかだが。

 

(機械化されているとは言え、ベースは人間!やりようはあるっ!)

 

 バッテリーを外すなり壊すなりすれば、コレは動かなくなるだろうが、見た感じさすがにソコは頑丈にできていそうだった。

 だが、他にも弱点はある。

 人間の脳で人間的な動きを行っていることを考えれば、関節の役割をしているつなぎ目がある。そこをちょっと壊してやれば、自重で潰れると思われた。

 

 動きを止めて、武装を壊せば、ただのデカブツだ。

 

「あはははっ!その心臓、私が引きずり出してやるっ!」

 

 獰猛な笑みを浮かべたノバラのテンションはMAXになっていた。

 

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