Roses fall fleetingly, violets bloom vividly 作:MIA
ノバラちゃんたちがきた理由
副題を直訳すると、言いたいけど言えないSOS ですが、
内容的には 不器用なSOS といった感じかな。
相変わらずの嘘っこ英語ですが。
ノバラの語ったすみれとの出会いの概要を聞いて、千束は思わず頭を抱えた。
(案の定、厄介事に首突っ込んでやがった!!)
千束も人のことをとやかく言えた義理ではないが、ノバラには本当に疫病神でも憑いているのではないかと疑うレベルである。
東京に里帰りをしては、面白おかしく武勇伝を語っていたので、そこまで問題にしていなかったのだが、今回の話は、今の今まで千束にも秘していたものだ。それだけ、ヤバい案件だと本人も認識していたのであろう。
「アンタって子は・・・もう!もうっ!!」
千束はその心境を上手く表すことができず、馬鹿野郎と頭を引っぱたいたらいいのか、よくやったと抱きしめてやればいいのか、よく分からなくなり、とりあえず声を上げながら、ノバラの頭を強く抱きしめた。
「あははっ!ごめんごめん!さすがにちょっと恥ずかしくて言えなかったんだよ!」
千束の腕の中で「千束のおっぱい、温か~い!」などと笑いながら、精一杯誤魔化しているが、さすがの千束もその程度のセクハラではもう騙されない。
・・・これは不器用な妹からのSOSなのだ。
本当に秘すべきものであったら、ノバラは絶対に語らず、千束にもフキにも伝えないまま、本当に墓まで持って行ったのであろうが、このタイミングでそれを話すということは何かを助けてほしいということに他ならない。
少なくとも、千束はそう思った。
「・・・で?私は何をしたらいいの?」
ノバラの両肩を掴み、千束は真剣な眼差しで問う。
敵わないなぁ、とノバラは苦笑する。
「・・・千束は千束のままでいてくれたらいいよ。それが私たちがここに来た理由なんだから」
「あのなぁ・・・もっと具体的に・・・!?」
千束が少し声高になり問い詰めようとした瞬間、ノバラは千束の唇に右の人差し指をぷにっと当てた。
ノバラが、もうっちょっと静かにね、と無言のままちらりと寝ているすみれを見る様子に千束はため息をついた。
「・・・私たち二人、喫茶リコリコに出向って言ったでしょ?」
「確かに初日にそう聞きましたね」
ノバラの確認するような問いにたきなが頷き、それを見て、千束も頷いた。
・・・さては、忘れてたな、とジト目でノバラは千束を見ながら、話を進める。
「その主な目的は、すみれの延命です」
「おい・・・延命ってことは・・・」
千束は自らもそうであったように、すみれの先が長くない、という言外の意味を読み取って、顔を青くした。
「戦闘における損耗も踏まえて、だけど。最低三カ月以内と試算されていました」
「・・・っ!?」
千束が息をのみ、何かを言おうとする前にたきなが手で千束を制する。
「『ました』、ということは回避できたということでしょう?」
たきなの言葉にノバラはコクリと頷く。
「そうです。直接的な任務から外すことで、まずは延命を図りました。表向き、すみれは重要参考人を誤って殺してしまったため、ここで非殺傷任務遂行のための研修を受ける、ということになっています」
「それで、『千束は千束のままで』、ということですか。・・・ノバラはどういう扱いなんですか?」
「連帯責任だそうですよ?」
クスッと笑って肩を竦めてみせたノバラに、千束は、もったいぶるな、とばかりにおでこをツンと押した。
「頭に『表向きは』ってつくんだろうが。本当のところは?」
「・・・半年以内に延空木事件と同等規模のテロが予測されています。本部のリコリスだけでの対応は難しいだろう、ってさ」
片目を瞑ってノバラが千束を伺うと、千束はその意味を理解した。
つまりは、今回も自分が出なければいけないこと。そして。
「それで、アンタ・・・いや、すみれもか?」
「想定時の最適解はそうです。戦力分析が進めば、もう少し変わると思いますよ?むしろ、私が最適とされたのはそれが理由でしょうし?」
「戦力分析じゃなくて、威力偵察だろう、それは・・・」
単純な戦力という意味では他のリコリスもいる。
後先も連携も考えないのであれば、各地の最も強いリコリスを当てれば事足りうるのかもしれない。
千束自身も含め、一癖も二癖もある連中を集めるの本部も頭が痛いだろうし、各地の任務もある。簡単に外せない。
一方でノバラはDA仙台支部でのエース(というかジョーカー)扱いではあるものの、通常作戦に組み込まれていない。また、本人の特性から単独での隠密行動、諜報活動、暗殺遂行と裏方に回らせて使い易い。純粋な戦闘能力では、そっち方面に特化したリコリスからは一枚落ちるが、その点をすみれでカバーするということだろう。そして、千束とノバラの連携には当然問題はないし、経験不足のすみれにこちらの呼吸を覚えさせるという意味も含めての『喫茶リコリコへの出向』なのだろう。
すみれの延命と適正戦力の再配置。この一挙両得を狙った一手である。
はぁ、と千束はため息をついた。
便利使いされているような気がしないでもないが、これを断るほど薄情ではない。
・・・明確に口にこそ出さないが、これは要は妹のお願いなのだ。そう思えば千束に否やはない。
「・・・分かった。アンタの期待に添えるかどうかは分からないけど、すみれだって、私の妹のようなもんだ!お姉ちゃんに任せなさいっ!」
ドンと胸を叩く千束をノバラはまぶしいものを見るような目で見て、少しだけ恥ずかし気に顔を俯かせてから頷いた。
「・・・うん」
「ノバラ、私も微力ながら力になります」
「・・・ありがとう、たきな」
ほっとしたようなノバラの笑みにたきなは思わずノバラの頭を撫でる。
ノバラは一見すると何でもないことのように振舞っていたが、すみれの手前強がっていたのだと分かる。そして、千束を頼ってしまう自分の弱さを後ろめたく思っていることも。
だから、千束はおどけて見せて笑い飛ばし、たきなはそれに気づかない振りをする。
それこそいつものことだ、気にしないとでも言うように。
「・・・それにしても、すみれさんを実験していた施設と言い、謎の機械化兵士と言い、一体何なんですか?それに・・・この話をしてくれた、ということは、未来に起こるであろうテロ・・・無関係じゃないんでしょう?」
「あはは・・・たきなはやっぱりそこが気になっちゃたかぁ・・・」
ん~、とノバラは少しだけ考える様子を見せる。
「確固たる情報源がある訳じゃないし、直接的か間接的かも分からないけど・・・たぶん関係はしてくると思うよ?すみれ用の抑制服、コンプレッションスーツを送ってきた機関が裏にいると思う」
何だか身に覚えのあるような話に、千束は思いっきり嫌そうな顔をした。
「まさか、アラン機関じゃないだろうな?」
事の顛末は知っているのか、ノバラも千束の様子に苦笑しながら答える。
「違うよ。すみれは才能はないんだから」
アラン機関であれば、世界に届けるべき才能の元に現れる。だが、すみれは造られた特殊体質以外はないし、アラン機関からすれば、それは才能としてはみないだろう。
「・・・では、その機関とは?」
「アラン機関が才能の発掘と開花を目的としていると考えると、全く逆のアプローチをしているんじゃないかな?あるものを伸ばすんじゃなくて、欠損と欠落を補って強化する」
一呼吸置いたノバラが告げる。
「