Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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たきなちゃんとノバラちゃんのお風呂回


57 To my dears

 たきなは妙にどきどきしていた。

 

 お風呂に入ろうと思ったら、ノバラが付いてきた。

 

 まぁ、それはいい。甘えたがりのノバラのことである。十中八九、まぁ、そうなるな、と予想はしていた。

 

 故に彼女は今、たきなの横で服を脱いでいる。

 

 リコリスとして育ったのだから、たきなとて同性同士でお風呂に入ることなど慣れっこだ。通常であれば、隣で誰かが裸でも、ましてや着替えていたとしても、動揺することなどあり得ない。

 

 現に、この間、千束の家に泊まって一緒にお風呂に入ったときには、特段何も思わなかった・・・いや、これは嘘になる。意外に攻められると弱い千束がちょっと面白かったので、大変悪戯心をくすぐられた。

 

 だが、それは性的に、というよりも親愛の意味が強く、少なくとも今ノバラに感じているのはまったく異なっていた。

 

(私って『そう』なの!?いやいや、そんなことはないはず!)

 

 ぶんぶんと軽く頭を振ると、ノバラがきょとんとした顔で半脱ぎのままたきなの顔を覗いていた。

 

「どしたの、たきな?」

「な、何でもない!何でもないですから!」

 

 わたわたとたきなが顔を赤くして手を振ると、ノバラは不思議そうな顔をしながらも服を脱いでいく。可愛らしい薄緑色のスポーツブラを外せば、ノバラの未熟な胸が露となる。

 

 たきなは思わずごくりと唾を飲んだ。

 

 他意はない・・・はずである。

 

 バラの体は服の上から見るよりも小柄に見えるが、何よりも鍛えられている感が伝わってくるのだ。

 

 腹筋が割れているのでもなければ、筋肉が大きく付いているわけでもない。一見すれば、やせっぽちの少女にさえも見える。

 

 だが傷一つない真っ白なその肌の下には、しなやかな筋肉が隠れ潜んでいる。

 

 音に聞くバカげた練習量からすれば、薄いとの印象すら抱くかもしれないが、それはおそらく違うだろう。必要十分の筋力量が、長年の鍛錬で年輪のように束ねられているのであろうことを思わせた。

 

 機能美というやつだ。

 

 同業ということもあるが、たきなはノバラの裸体を見て、彼女が『人殺し』のために最適化されていることを分からされた。

 

 ・・・そして、何よりイケナイものを見ているような背徳感がたきなの脳を焼いていた。

 

「・・・ノ、ノバラ・・・」

「な~に~?」

「・・・先に浴室に行ってください・・・」

「・・・?・・・うん」

 

 最後の一枚をするりと脱いだノバラは、それを洗濯ネットに入れて、洗濯籠に入れると、タオルを持って、とてとてと浴室に入った。

 

 それを見届けると同時、たきなはがくりと膝を折り、右手で口元を押さえ、もう片方の手を床に着いた。

 

(・・・新手の精神攻撃でしょうか・・・?)

 

 自分の感情を持て余したたきなは思わずそんな風に考えてしまった。

 

 確かに、出会って数日だけにも関わらず、たきなはノバラに好意を持っている。だが、それは千束に向けているものにも似ていて、でも少し違う。

 ほっとするような懐かしさがある一方で、触れる度に胸がどきどきして慌ててしまう。可愛らしさにくらくらしてまうのに、何故だか一緒にいたいと思ってしまう。

 矛盾するような想いがぐるぐるとたきなの中で巡っていた。

 

(まったく・・・人の心をこんなに搔き乱して・・・まるで嵐みたいな子ですね)

 

 しかし、乱れた心の内が心地よくもあるのだ。

 

 たきなはふぅと息を吐くと、衣服を脱ぎ去り、意を決したように浴室に入る。

 

 ノバラはまだ髪を洗い始めたばかりのようであった。

 

「洗ってあげますよ、ノバラ」

「いいの~?えへへ、たきなお姉ちゃん、お願いしま~す!」

 

 クリっと振り向いて照れたように微笑むノバラの可愛らしさにドギマギしながらも、たきなはゆっくりとノバラの髪を洗い始める。

 ブラッシングが終わっているようなので、温めのお湯でゆっくりと洗い流していく。シャンプーを手に取り泡立てて毛先の方から洗い始めると、その感触が自分と似ていると感じた。泡立てながら、髪を洗っていき、頭皮をマッサージするように指の腹の辺りで揉みこんでいく。

 

「かゆいところはありませんかー?」

「ありませーん!」

 

 美容室でのやりとりのような言葉を互いに言ってクスクスと笑い合う。

 機嫌良さそうに微笑んでいるノバラは、ふんふん、と鼻歌を歌い始める。たきなはその歌声を聞きながらも、しっかりとノバラの髪を洗っていく。

 トリートメントまで終わると、たきなは、ノバラの体を洗い始める。千束にしたのと同じように。

 

 千束と異なりノバラは特に恥ずかしがる様子もなく、時折くすぐったそうにけらけら笑っていたが、概ね平穏に洗い終えることができた。

 

(・・・何だか、入る前にどきどきしていたのがウソみたいですね)

 

 慣れ、なのだろうか、としばし首を捻るものの答えが出ず、たきなは自分の髪を洗おうとし始める。

 

「たきな、私がやってあげるよー。お返しー」

「ふふっ。それじゃあ、お願いします」

 

 にひひ、と笑ったノバラにブラシを渡すと、優しい手つきでブラッシングを始める。

 

「おぉー!たきなの髪、すべすべー、きれー」

 

 千束と同じ反応にたきなは思わず噴き出した。

 

「ノバラ、千束と同じこと言ってますよ?」

「だって、すごいよ、たきなの髪!ブラッシングいらないくらいさらさらだもん!じゃあ、お湯で洗っていくねー」

 

 あなたの髪も同じくらいさらさらなんですけどね、とたきなは内心で思いながら、ノバラの反応に苦笑する。

 ノバラがたきなの髪に温めのお湯をゆっくりと掛けていく。

 優しく髪をすくい上げる手つきには覚えがあった。

 

「・・・千束と洗い方がそっくりですね?」

「そりゃあ、私が千束の洗い方を真似してるんだから、そうなるよー。そんで、たぶん、フキも一緒だよ?」

「へぇ・・・」

「当時、お風呂に入るのも嫌がってた私を二人がかりで洗ってたこともあったからねー。千束もお姉さんリコリスにわざわざちゃんとした髪の洗い方聞いて練習したみたいだよ?」

「・・・今のズボラな千束からは想像できませんねー」

「んふふ。千束はパッと見女子力高そうに見えるけど、手を抜くところは抜くからねー。面倒見は良いのに・・・でも、そんなちょっとした抜けているところ、すっごく可愛いよね!」

「ノバラは千束が大好きなんですね」

「もちろん!大切なお姉ちゃんだからね」

 

 話している間にたきなの髪を洗い終えたノバラは、不意に後ろからたきなに抱き着いた。

 

「・・・たきなお姉ちゃんのことも大好きだよ」

 

 耳元で囁きながら、ふぅと息を吹き掛けられ、たきなは一瞬で顔を真っ赤にした。

 

「ノ、ノバラ!あまりからかわないでください!」

「え~?からかってないよ、本心だよ?」

 

 甘い言葉が耳朶をくすぐる。密着した素肌からノバラの体温を感じる。控えめな柔らかさが背中に感じる。

 

「だからって、こんな風に抱き着かれたら!?」

 

 たきなの恥ずかしがっている様子に、ノバラが耳元でくすくす笑う。

 

「・・・どきどきしちゃう?」

「・・・そ、そうです」

 

 否定しようにも、正しく心臓がバクバクしている音が自分にさえ聞こえるのだ。密着しているノバラにもそれは分かっていることだろう。たきなは観念したようにそう答えた。

 

「んふふっ、たきなは可愛いなぁ。じゃあ、イタズラはやめて体洗ってあげるから」

 

 たきなから身を離したノバラを振り返ってみると、ノバラは口の端を大きく歪めて、にやぁ、と邪悪な笑みを浮かべている。

 

「へ・・・あ?や、今は・・・!?」

 

 たきなは内心で冷や汗を掻きながら、ノバラの魔の手から逃れようとするが。

 

「だいじょぶだいじょぶ!ノバラに任せて!」

 

 強引なノバラはそのままたきなの体に覆いかぶさるようにして洗い始める。

 

「そんなところはいいです!?」「だいじょぶだいじょぶ」「やっ!?変なところ触らないでっ!?」「変なところじゃないよー」「んぅ!?や、やめ!?」「やめなーい」「も、もう、ダメです・・・っ!」「あとちょっと」

 

 すみずみまで洗われたたきなはぐったりとして、やりきったノバラはてかてかしていた。

 

 たきなは自分も千束が嫌がるにも関わらず、すみずみまで洗い尽くしたことを思い出し、心の中で千束に謝った。

 

 たきなと一緒に湯舟に浸かったノバラは、一心に何かに懺悔するようなたきなを不思議そうに見ていた。

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