Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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ノバラちゃんの一日午後編

次は戦闘パートかな


59 One day PM

PM0:00

 

 リコリコは一応ランチタイムを営業はしているが、基本的にはコーヒーとスイーツの店なのでランチの客は多くない(むしろ十時から十一時あたりの方が多い)。無論、たまにいる日もあるが、今日『も』この時間帯は誰も客はいなかった。まぁ、メインは昼以降のオヤツタイムのだからこんなものであろうが。

 今日の賄当番はミズキであったが、賄というより酒のあてのようなものが多く、皆が微妙そうな顔をした。焼いたホッケに、せんまい刺、もつ煮とまぁ、飲む気満々だろう、と思わずジト目になるほどである。ノバラは苦笑しながら、アボカドとミニトマトなどで作ったカクテルサラダと、こっそり作っていた味噌汁を出す。

 

「あ~良かった。完全に、ミズキが飲むためのメニューだと思ったぞ」

 

 クルミは文句を言いながらも、ホッケに被りついている。

 

「ミズキの料理もおいしいよ。特にもつ煮」

 

 ノバラはもつ煮を食べながら思った。居酒屋で出したら、絶対に一品は頼むであろう高レベルでまとまっている。作るの結構大変なんだけど、きっと、これ、半分は夕方頃に自分のつまみにするつもりであったのだろうと何となく思った。

 

「嫌味か・・・?アンタの岩海苔の味噌汁も美味しいわね・・・?何かちょっと出汁が、濃厚な感じ?」

「お、ミズキ、気づいたの?カクテルサラダに入っているエビの頭をちょっと焼いてから出汁とったんだよ~」

「なるほどねー、いやー、こりゃ、ノバラは良い嫁になるわー。私より先に結婚するとか、許さんけど」

「ミズキ、何言ってんの?私より弱いヤツにノバラを嫁に出すわけないでしょ?」

「そうですよ。ノバラは簡単にお嫁に出しませんよ」

「え~!ノバラちゃんはすみれのお嫁さんにするんだよー」

 

 皆が好き勝手に言っている様子にノバラは、クスクスと笑みを浮かべいた。

 

 誰かの作ったものを食べたり、自分の作ったものを食べて笑ってくれる瞬間がノバラは大好きだった。

 

PM3:00

 

「ずんだどら焼きバーガーのコーヒーセットお一つと煎茶セットがお一つ、団子三兄弟が一つで、お会計二千四百円です。三千円お預かりしまして、お釣り、六百円です。ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。・・・お待ちのお客様、お二階のテーブルへどうぞ。千束、1番、3番上がり。すみれ、7番片付けて。たきな、5番様オーダー。ミズキはお二階様にお冷とおしぼり。クルミちゃん、お風呂は後でね。カウンター2番様、お会計です」

 

 おやつタイム前後の喫茶リコリコは繁盛していた。まぁ、半分くらいは常連さんだが、それ以外のリピーターもちらほらいるようだ。久しぶりに来た客は目新しいノバラとすみれを繁々と見ていた。

 

 そんな中でノバラは厨房と会計を行ったり来たりしながら、完璧にお客をさばいていた。どこに誰がいて、どんなことをしているか分かっているからこそできる芸当だ。

 何なら、誰が何をオーダーして、会計がいくらかも頭に入ってそうな勢いであった。

 

 オーダーが入れば、ミカの手の空き具合を見ながら、コーヒーに集中しているようであれば、ノバラが作り、逆に手が空いていれば、ミカが作る。何日も経っていないのに、熟練の呼吸の様相を呈していた。

 

(うへ~・・・こき使ってくれるなー、ノバラのヤツ)

 

 基本おまけのクルミは本当に忙しいときにだけ片付けだけやらせているが、この時間帯の千束とたきなは基本的にフル回転だった。

 忙しい時間帯だから仕方ないが、千束が常連さんとお話する隙もない。

 

「ノバラ、5番様、エレガントパフェ、コーヒーセットです」

「はーい!先生、私、パフェやるんで、コーヒーお願いします!・・・たきな、ちょっとだけ会計入って。テーブル4番様、カウンター3番様、お会計」

「分かった」

「分かりました」

 

(お~お~、先生とたきなも完全にノバラに使われてるな)

 

 実際、その方が効率が良いからだろうが。

 昔からちまちま手伝ってはいたから、勝手は知っているのだろうが、今回は大手を振っての正社員だ。特に誰も文句言わないから完全に仕切っている。

 

(あの子の、委員長体質みたいなとこ。完全にフキの影響だよな。・・・アイツがこの店で働いたらポンコツと化すだろうけど)

 

 少なくともミカが見えるところでは、真っ赤になって恥ずかしがるだけだから使い物にならない。

 

 妹が活き活きと働いている様子を見て、千束は少しだけ、嬉しくなった。

 

「千束、五番上がり。あと、お二階様オーダー」

 

 厨房からパフェを持ってきたノバラが、見えてもいないだろうに、気配だけで、オーダー取ってこい、と宣う。

 

(あ~・・・お姉ちゃんは、たくましくなった妹が嬉しいよ・・・こき使わなければな!)

 

PM7:00

 

「レジ誤差ゼロ。クルミちゃん、これ仕分けして入力しといてね」

 

 ビャーっと今日の売り上げが出てきたレシートをノバラはクルミに渡す。

 

「・・・経理はたきなじゃないのか?」

「パソコンに入力して簿記で管理するにせよ、系統的に管理するならクルミちゃんがやった方が効率いいでしょ?確定申告も楽だし」

「まぁ、大した手間でもないからいいが・・・」

「それじゃ、よろしくねー。お詫びってわけじゃないけど、明日、何か作ってあげるよ?何がいい?」

「ノバラのデザートが食べたいな・・・う~ん、プリンとか」

「おっけ~、お任せ」

 

 クルミは甘い物好きだなーと苦笑していると、すみれがノバラの背中にのしかかってくる。

 

「ノバラちゃんのプリン!」

「はいはい。皆の分も作るから」

「ぃやったー!」

 

 飛び上がるように喜ぶすみれと一緒にクルミも万歳している。

 

「ノバラ、たきな、閉店後のゲーム大会、今日混ざんの?」

「あ、ごめんなさい、千束。今日はノバラと食材を買い出ししながら帰るので」

「その分、明日の賄は期待していいいよー。また明日ねー」

「・・・ちぇー」

 

 妙に仲が良さ過ぎて、ちょっと付き合いの悪い二人に千束はぶーたれる。

 

PM8:00

 

 ちょっと遅くなったが、たきなとノバラは一緒に料理を始める。

 ノバラは朝の間に水に付けておいたパスタでもちもちスパゲッティナポリタンを作ろうとしていたところ、たきなは主にジャガイモを使ってポタージュスープを作るようであった。

 ノバラのパスタは簡単だ。予め水につけておいた太目のパスタをお湯で2分程度ゆで、予めオリーブオイル炒めていた具材と合わせて、トマトソースと合わせながら炒めていく。

 たきなの工程もさほど難しはなく、じゃがいもと玉ねぎを薄くスライスし、バターと共に炒め、玉ねぎがしんなりしてきたところに、水とコンソメではなく、ノバラが冷蔵庫の中に作ってあった昆布だしを入れた。そのままジャガイモが柔らかくなるまで煮込み、火を止めたら、ハンドブレンダーで滑らかになるまで混ぜる。牛乳を加えて温めながら、塩、コショウで味を調える。

 お互いに器に盛ると、パセリなどをかけて完成だった。

 

「二人で作るのも楽しいねー」

「昨日から今朝までは、ノバラに全部任せっきりでしたからね」

「「いただきまーす」」

「あ、たきなのスープおいしい!」

「ノバラのナポリタンもおいしいですね。あんな作り方でこんなにもちもちに」

 

 お互いに褒めあってにこやかに食事を終えると、不意にノバラのスマホが鳴る。

 

「もしもし、ノバラです・・・ああ、はい。位置は?・・・ふーん。え?車もう回してんの?じゃあ、着替えてすぐ行くよ。ごめーん、たきな、仕事が入ったら、片付け任せていい?」

「仕事って、ノバラ・・・」

「リコリスのお仕事」

 

 あぁ、とたきなは頷き、それなりにやばそうな案件に当てられてそうだなと察した。

 

「・・・遅くなると思うから、たきなは先に寝ててね」

 

 たきなは微笑みを見せていたが、次の瞬間には、ノバラの表情は冷たさを感じる無表情になっていた。

 

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