Roses fall fleetingly, violets bloom vividly 作:MIA
『DA仙台支部特殊作戦群から出向』、その意味を考えていたたきなは首を捻っていた。
DAは訓練生→サード→セカンド→ファーストとなっていると思っていた。それは階級であり、ざっくりと身分を表すものである。特殊参戦群なんて聞いたことがなかった。
「あの、特殊作戦群って……?」
「あ~、ちょっと普通のリコリスには荷が重いような任務とか、潜入とか、そういうのを専門的にやってるってところだよ? エクストラって呼ばれてる。たきな、京都じゃ見たことない?」
「いえ……寡聞にして聞いたことがないですね」
「まぁ、あんまり見たことないリコリス制服だったら、エクストラですね。ほら、校章みたいなのも違うでしょ?」
言われてみれば、それは、彼岸花をモチーフにしたたきな達の着ているそれと異なっていた。
三日月に藤をあしらった意匠だろうか。
「まぁ、こんな感じで各支部で色とか校章みたないのは違ってますよ」
ノバラ曰く、エクストラは同じリコリス制服だが、各支部ごとで色が違うから、違う支部に来た時にすぐに分かるようになっているそうだ。それが仙台支部は、翡翠色、ということらしい。そして、本部は人員が厚いので、特に用意していないようだ。
「まー、秘密部隊ってわけじゃないけど、目には付かないかもね。本部にはないし。あ、いや? そういう意味では私達がエクストラか?」
さすがに千束は知っているらしく、この口ぶりはこの子以外にも知ってそうだ。
「非殺傷系任務特化ですか? 相手の脅威度関係ないって意味ではそうでもおかしくないですね」
リコリスは凶悪犯を掃除して回っている、という印象が強いが、必要に応じて非殺傷任務も実施している。それが上手いか下手かは置いておいて(その理屈だとたきなは下手だったことになる訳だが)。
「じゃあ、ノバラさんは何が……?」
「ノバラは、諜報、隠密、……後は暗殺?」
本人が答える前に、千束が答えた。
つまり、この二人、それなりの付き合いなのだろう。自分と千束の付き合いの長さを考えると、どうしてだろう、少しもやもやする。
「まーそうなりますねー」
「変わんねえなぁ」
千束はあまり気にしていない様子であるが、この話っぷりは嘘ではないけど、本当でもない?何か色々隠していそうではある。
「すみれさんも何か得意なんですか?」
そうなると、何故かすでにばてていて、畳で寝転がっているあの少女にも何等かの特技があることになるのだろうが。
正直な話、あまりに普通すぎて、そんな特殊能力があるようにも見えない。
「あー、すみれは、何と言うか……」
何故か自分のことよりも歯切れの悪そうなノバラの言葉に、たきなは不安を覚える。
「な、何かあるんですか?」
「千束、気を悪くしないでね?」
「お、私?」
これは、つまり、千束の主義には反するということだろう。
まぁ、千束は自分が不殺だからと言って、他の人の活動まで否定しているわけではないのだが。
「すみれは殲滅特化です。何と言うか、ジェノサイドエクスプレスって感じです」
「うは! やるぅ!」
「えぇー……」
『ジェノサイドエクスプレス』ってなんだ。字面がヤバイことは分かるが、全く想像がつかない。虐殺新幹線って、相手を皆轢殺するってことか。
「……何をやったらそんなことに」
「パワーがやばいんです」
「……パワー」
「はい。力こそパワー、な感じです」
「……意味は分かりませんけど、一緒に仕事しない方がいいことはよく分かりました」
『力こそパワー』という頭の悪い言葉を聞いて、たきなは何となく察した。聞かない方が良いと言うことを。
「え~、たきなさ~ん、あなたがそんなこと言っていいんですか~。『あの状況で最も合理的な行動だと思いました』って機銃掃射する、たきなさ~ん?」
たきなはきっちりと物真似を入れて煽ってくる千束に若干イラッ☆としたので。
「……ノバラさん、ここに千束の写真があります」
救急車の中でぐしゃぐしゃに泣いている千束の写真だ。レアである。
「ぷふっ。千束、酷い顔ですね」
「そうでしょう?」
「現物は卑怯だるぉ!?」
あ、この子、千束のこと大好きだ。写真を見ている顔がすごく優しい。千束を『姉』って言ってたけど、こっちの方が『姉』っぽい。
「……写真は私もあります。どうぞ」
「うわぁ……酷い寝顔……」
ノバラが自分の携帯電話を表示すると、ベッドの上で眠っている千束の写真が表示される。
赤いパジャマの上は半分ほどめくり上がり、へそが丸出しで、下もずり下がっていて、飾り気のないパンツが丸見えである。写真を撮ったタイミングのせいか、お腹の上に置かれた右手、お腹をポリポリ搔いているようにも見える。そして、無防備に大きな口を開けて、だらしなくよだれが垂れている。
たきなとノバラは二人で顔を寄せ合ってにやにやした。
「ちょ、ちょおまっ! ノバラ、何でそんな写真があるの!?」
乙女らしからぬ写真を撮られていたことで、千束の顔は真っ赤である。
「前に来た時に、千束が私より先に寝落ちしたからですけど?」
「だからって撮るなよぉ!?」
「いやあ、あまりに、ぶさ……可愛くてつい」
「今、不細工って言おうとしただろ?」
「エーヤダナー、チサトハセカイイチカワイイヨ」
写真を消そうと近寄ってくる千束を、ノバラは器用にたきなを盾にして避ける。
きゃいきゃいという声が奥にも聞こえたのだろう。
「なぁによー、うっさいわねぇ」
面倒臭そうにミズキが。
「千束、たきな、片づけは終わったのか」
進捗を確認するためにミカが。
「おーい、千束ー、次のゲーム大会は何にするか決めたのかー?」
仕事のことはあんまり考えないクルミが。
それぞれ顔を出した。