Roses fall fleetingly, violets bloom vividly 作:MIA
「あれ・・・?確か札幌の?」
次の五人が姿を現したとき、ノバラにはものすごく見覚えのある者が一人いた。
ツインテールにした髪と吊り上がった瞳が猫を思わせる小柄な少女だ。
「あー・・・どうもでーす、先輩。って言うか、先輩、仙台じゃなかったんですか。こっちだと分かってたら、異動の話、受けなかったのに・・・」
死んだ目でこちらを見てくる少女。本来は闊達としてるのだが、ノバラの姿を見て、改めてテンションが下がっているのだろう。ぶちぶちと文句を言っている。
ノバラがDA札幌支部に所属しているときに、訓練を付けていた中の一人だ。
少なくともノバラがいたときにはサードに上がれるほどの力量ではなかったが、地方から本部のサードを勝ち取ったのだ。それなりには仕上げてきているのだろう。
「本務は仙台よ。こっちのはそうね、アルバイトみたいなもんね」
「えー・・・だったら、ウチがいるときに来ないで貰えます?」
「それは、私の一存では何ともね・・・まぁ、久しぶりに揉んであげるわよ、『すずな』?」
「うぇー・・・」
すずなにとってバラという先輩は、尊敬に値する人ではあるが、積極的に会いたい人ではなかった。何といっても訓練量がハンパない。札幌の訓練生でノバラと同等かそれ以上の訓練ができたのは、唯一、すずなだけだった。
『では、始めるぞ』
楠木の言葉を聞きながら、ブザーのなるまでの間に、ノバラは少し考える。
サクラが今回の模擬戦に参加しているサード達の実力やスキルをあらかじめ把握しているとは思えない。
だとすれば、サクラは今現在彼女達を見定めている段階だろう。
それは、単に優秀か否かではなく、サードとして適格と成り得るか否かと思われた。
ただただ優秀で、サード、セカンドととんとん拍子に上る者も確かにいるが、本来であれば、訓練生上がりのサードは先輩リコリスのノウハウの教示を受けるあるいは盗む段階だ。
強いにこしたことはないが、一番は忍耐力だろう。ちょっと転んだくらいで諦めるような者ではダメだ。みっともなく泣き喚こうが、最後までやり切れる方が資質としては高いだろう。
その点、作戦中はペケをつけたが、せりの見せた恐怖に震えながらも前に進もうとする姿は手放しで称賛できた。
二組目にはノバラとサクラの両方を満足させることができる者がいるだろうか。
ビーッとブザーの音がする。
その音とともに、五人中四人が前に出てきたことに、正直、ノバラは面食らった。
ノバラが近距離戦を得意としていることを承知してなお、接近戦をしようとする。何か考えがあってのことならば、そういうバカは嫌いじゃない。
(すずなは・・・?・・・ちっ、面倒な・・・)
すずなは開始と同時に猛然とダッシュしてノバラの間合いから逃げ出した。
すずな自身のことも、ノバラのことも分かっての判断だろう。
おそらく、今回参加しているサードの中で、最も体力があるのは、すずなだろう。何せ、DA札幌支部において、ノバラの練習とシゴキに唯一付いてきた少女だ。無尽蔵とも言えるスタミナはそれだけで脅威だ。逃げに徹されたのなら、ただ追いかけただけであれば、ノバラにも捉えられない。
これを事前に打ち合わせていたとは思えないが、すずなと四人の思惑が上手くマッチしたと言えよう。
(・・・多少時間はかかるけど仕方ない。すずなはゆっくり狩りましょう)
ふふっ、とノバラが後のことを考えて微笑んでいると、前に歩み出た四人はノバラを囲むようにして立ち・・・そして、襲いかかってくる。
それぞれが微妙に襲いかかるタイミングをずらしており、互いが互いを邪魔しないようにしている点で、付け焼刃の連携ではないことを思わせる。訓練生時代からのルームメイトか、チームメイトだろうか。呼吸の合わせ方が絶妙ではある。
(・・・連携は大事だけど、それに頼っているようでは、サードはまだしも、それより上には行けないよ?)
ファーストとなる条件はリコリス本人達には知らされていないが、少なくとも単体での戦闘能力は一定以上必要だ。その上で、何か突き抜けたものが一つはいるだろう。
千束であれば、ずば抜けた身体能力と観察力を背景とした圧倒的戦闘能力。
フキであれば、卓越した戦術眼と指揮能力を駆使した集団戦闘力。
そして、ノバラであれば、その隠密性による潜入能力と暗殺技術。
・・・サクラが買われているとしたら、肉体的精神的タフネスと色々な意味で煽動能力か?部下を鼓舞して、実力以上を発揮させるタイプだろうか。指揮官としてはノバラと正反対の立ち位置になりそうだ。
いずれにしろ、
ノバラは身を捻るようにしながら、体を浮かせ、彼女達四人の突きと蹴りを躱すと、地面に落ちるよりも前に両手を地面に着けて、腕の力だけで跳びあがった。
ノバラの左後方に位置していた少女は、そのアクロバティックな動きに呆気にとられていたが、ノバラが自分の方に向かって、跳んでいることに気づく。
だが、それに気づいたときには、ノバラの足が自らの首に絡みついていた。
マズイ、と思った瞬間、少女の視界は、ぐるりと回った。
相手の首を刈り込むように巻き付けた足で、全身のバネを用いて体を捻りながら、前方に投げ飛ばす変則フランケンシュタイナーである。
少女はノバラの狙い通りに、ノバラの右前方に位置していた少女に衝突して押し潰した。
そして、ノバラは事態を把握し切れていない右後方に位置していた少女の手首を取ると、内転させながら、上に持ち上げ、然る後に肘の内側を外に押し出しつつ、体勢が崩れ体重が片足に乗った瞬間を見極め、蹴りで刈り払い、更にすでに倒れている二人の上に投げ乗せる。
「このっ!」
残った一人はノバラの奥襟を掴み、自分の方へ引っ張ろうとして愕然とする。
自分よりも圧倒的に小柄な少女であるノバラがどれだけ力を入れてもビクともしないことに。
(何で!?こんなに小さいのに、全然動かせる気がしない!?)
薄ら笑いを浮かべたノバラが、奥襟を掴んでいるその腕の肘の辺りを無造作に掴むと、みしっという音と激痛が走る。
「ぎっ!?」
思わず手を離した少女をノバラはせせら笑うように、その腕を引くと体を入れ替える。
どこかで、パシュという小さな音がすると同時、少女は頭部に激痛を生じてその意識を手放した。
「あぁーーーーっ!?先輩、それは酷いですよ!?」
少女が倒れてくるのを優しく抱き留めながら、地面に寝かせると、ノバラは声のした方を向きながらため息をついた。
・・・少女に止めを刺したのは結果として、すずなだった。
接近戦を挑んだ四人を目くらましにしながら、自分は安全圏に離れて、ノバラが動きを止めるのを待っていた。すずなとしては、絶対に
せっかくサプレッサーを付けて音を消したのだから、静かに移動するなりして、第二射を狙えばいいところを、思わずとは言え、すずなが叫んでしまっては、先にやられた四人が浮かばれない。
「す~ず~なぁ~、あなたね、それじゃあ意味がないでしょ!?」
思わず、ノバラがそう叫ぶと、その視線の先にいた、すずなは頬に汗が一滴流れる。
「あ、やっべ!?」
すずなは完全にノバラに捕捉されたことに気づき、慌てて遁走を開始する。
安易に銃撃をするより、逃げた方が勝ち目はあると思ったからだ。
正にそれを体現している。
確かにまともに追いかけるならば、ノバラにも捉えられないのだが、模擬戦という仕切りではいつか、反撃に転じなければならない。そのためにはどこかで動きを止めて、ノバラを狙うことが必要だ。
それが分かっているノバラは、気配を消すとすずなの後を追跡する。
「っし。じゃあ、先輩はどこかな~っと。先輩は小っこいから探すの大変なんだよね~」
すずなが、動きを止めて、ノバラを探し始めるが見つけられない。
・・・当然だ。ノバラはすでに後ろにいる。
ノバラはすずなの言葉にこめかみに青筋を立てて、満面の笑みを浮かべると、すずなの肩をとんとんと叩く。
「・・・なぁに、今、ウチ、忙しいんだけど・・・って、あっ!?」
すずなはナチュラルに会話していたが、今この場に残っているのは、当然、すずなとノバラしかいない。それに思い当たる。
ギギギッ、と軋む音で首を回すと、予想通り、そこにはノバラが立っていた。
(やべぇ!聞かれてた!?)
すずなは額に冷や汗を掻きながら愛想笑いを浮かべる。
「あははー、やだなー、先輩。気配したまま、後ろに立つとかやめてくださいよー」
どこか棒読みなのは、すずながこの後に予想が付いているからだろう。
「ハイクを詠め、カイシャクしてやる」
「えー・・・この場合、「アイェェェェ!」とか言えばいいです?」
「・・・それが辞世の句でいいのね?」
「
「待たん!」
「いやぁん!せめて、優しく・・・っていったぁ・・・!!」
すずなの返答が来る前にノバラはすずなの頭を思いっきり引っぱたいた。
新キャラ 紹介②
すずな (苗字はまだない)
小柄、ツインテール、ノバラの2個下くらい。でも身長はノバラより高い。
スタミナはある様子。