Roses fall fleetingly, violets bloom vividly   作:MIA

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千束ちゃんとたきなちゃんの成分が欲しかったので


82 She left a rose like scar on me

 千束とノバラはお風呂から上がった後は変な雰囲気だった。

 そんな様子を察したたきなは、ノバラにすみれと寝るように言って、自分は千束を自分の部屋へ引っ張ってきた。

 今は、部屋を暗くし、二人、たきなのベッドの上で仰向けになって寝っ転がっている。

 

「千束、ノバラと何かあったんですか?」

 

 たきなの問いかけに、千束はバツが悪そうにしながら、たきなとは反対の方に体を向けた。

 

「別に・・・あの子が頑固なことを再確認しただけだよ」

「それだけにしては、妙な雰囲気でしたが?」

「・・・そう?」

 

 ゴロリと今度は体をたきなの方に向けたので、たきなも千束の方に体を向けて、ゆっくり頷いた。

 それを見た、千束は寂しそうな顔をして、ぽふっとたきなの胸元に顔をうずめた。

 

「そっかぁ・・・やっぱり、ダメだな、私」

 

 自嘲するような千束の言葉にたきなは不審そうに声を掛けた。

 

「千束・・・?」

 

 たきなの呼び掛けに、千束はたきなに抱きついた。

 たきなは胸の辺りに熱いものを感じて、千束が泣いているのだと悟る。

 

「・・・私じゃ、あの子の姉にはなれなかった・・・っ!!」

 

 嗚咽交じりのその声にたきなはぎょっとする。

 

「千束、何を言って・・・?」

 

 思わずそう声を掛けるが、千束はたきなにしがみつくようにしながら、静かに泣いていた。

 

 たきなは今は何も聞いてはいけないと思い、黙って千束を抱き返す。

 背中の辺りをぽんぽんと叩くように撫でると、一層千束がぎゅっと抱き着く。

 たきなは何も言わず、千束を抱きしめ続けた。

 

 

 しばらくして。

 

「・・・ありがと、たきな」

 

 たきなの胸元から顔を上げた千束は、たきなの顔が思いのほか近いことに顔を紅潮させるが、たきなの優しい顔に照れたように微笑んだ。

 

「いえ。これくらいしかできなくて・・・」

 

 たきながちょっと申し訳なさそうな顔をするのが、おかしくて、千束はクスクスと笑う。

 

「ううん。嬉しかった。・・・たきなは私のことが大事?」

 

 急にそんなことを聞かれたたきなは少しだけ狼狽する。

 

「えぇ!?・・・ま、まぁ、当然千束のことは大事ですし、大好きですよ?」

 

 何だか、聞かれていないことまで答えた気がする、とたきなは思うも、それはたきなの本心だった。

 一方の千束も予想以上の答えが返ってきたので、顔を真っ赤にした。

 

「うん!?あ、ありがとう・・・私もたきなのことが、大事で・・・だ、大好き」

 

「はい」

 

 恥ずかしそうに、そして、少し甘えるような声色で、切なそうな瞳を向けてくる千束にたきなはこくりと頷く。

 

「あれ!?何か、反応薄くない!?」

 

 その答えに肩透かしを食らったような感じの千束は、おかしいな、とばかりにたきなに抱き着きながら、自分の顔をたきなの顔に近づける。 

 

「千束、とっても可愛らしかったですよ?」

 

 必死な様子の千束にたきなは悪戯っぽく微笑むと、千束は納得のいかない様子の顔をする。

 

「何だか、私の思ってる反応と違うんだけど・・・ま、まぁ、いいか。たきな、お願い」

 

 千束はたきなの瞳を正面から見つめる。

 

「ノバラから絶対に目を離さないで」

 

 その真剣な様子にたきなも真正面から向き合った。

 

「分かりました。できる限りを、この身にかけて」

 

 キリッとした顔のたきなに千束はないハズの胸の鼓動が高鳴った気がした。

 千束の心に愛しさが溢れる。

 

「・・・ありがとう、たきな」

 

 そう言うと、千束はたきなの顔に自分の顔を寄せ。

 

 ちゅ、と唇にキスをした。

 

(って、何やってんの、私ぃぃぃぃぃ!?)

 

 恥ずかしさのあまり、たきなの方から体の向きを変えて、蹲るように丸まった。

 

(あれ?私、今、千束にキスされました?)

 

 一方のたきなは今一つ現状を理解できずにぽーっとしていた。

 

 別に嫌なわけではないし、むしろ嬉しいのだが。

 何で今のタイミングだったのだろうか、と変なことを気にしていた。

 

 だが、すぐにそんなことはどうでも良くなって、後ろを向いている千束を抱きしめて、首の辺りに抱き着くと、お返しとばかりに、吸い付く。

 

 ちゅ、ちゅっ。

 

 たきなが水音を出すようにして強く吸えば、千束の首筋に紅くバラの痕を残した。

 

 腕の中に千束の温もりを感じ、心地良さのまま、たきなは夢の世界に旅立つ。

 

(・・・って、たきなさぁぁぁん!?私は生殺しですかぁぁぁ!?)

 

 首筋にキスマークを付けられ、その先があるのか、ドキドキしながら待っていた千束は、いつまで経っても次が来ないな、と思っていたら、たきなの寝息が聞こえてきた。

 拍子抜けするような感じではあるが、まぁ、いいか、と抱きしめてくれているたきなの手に自分の手を重ねる。

 せめてたきなの方を向いて眠りたいな、と身を捩るも、たきなの抱きしめ方が強すぎて身動きが取れない。

 千束は、もんもんとしたものを抱えたまま、少しだけ涙目になって、そのままの状態で一夜を過ごすこととなった。

 

 

 

 

「ノバラちゃん、どうかしたの?」

 

 布団に入ったすみれは、体をノバラの方に向けながらそう問いかけた。

 

 すみれには千束とノバラに何かあったと察することは難しかったが、ノバラの様子が変だということには気づいていた。

 久しぶりに一緒に寝ることができると喜ぶより先に、それを心配したのは、千束との生活で精神的成長があったからだろうか。

 ノバラは妹分の心配そうな様子にクスリと笑った。

 

「何でもないわ。千束と今後のことを話していただけよ。それより、すみれ。川辺先生から投薬治療のため、一度、仙台に帰ってくるように連絡があったでしょう?」

 

 ノバラの指摘に、すみれは、顔を硬直させる。

 

「うっ!知ってたんだ、ノバラちゃん・・・」

「そりゃ、あなたより先に私の方に連絡が来るに決まってるでしょ?」

「うぅ・・・お注射はいや~!」

 

 どんよりと顔を曇らせるすみれにノバラはくすくすと微笑む。

 

「新幹線の席は手配しておいて上げるから、明日の夕方発ので行ってらっしゃい」

「・・・は~い。ノバラちゃんは行かないの?」

「悪いけど、私はお仕事。・・・でも、せっかくだから、二人ほど連れて行ってもらおうかしら?あれ?でも、まだ動けないかも?」

 

 せっかく、こちら側に組み込む段取りができたのだ。いっそ既成事実も作ってしまおう、とノバラは画策した。しかし、せりが未だベッドの中かもしれないとも考える。

 だが、正直、ノバラとしては、せりがそんなに大人しいタマとも思えなかった。燻っていた頃ならまだしも、今の彼女の心には完全に炎が宿っている。きっと、じっとなんてしていられないハズだ、と考えた。

 

「・・・・・・まぁ、大丈夫でしょ」

 

 ノバラはちょっとだけ考える仕草をするもそう言って、気にすることを止めた。いざとなったらすずなが背負ってくるだろう、と思ったからである。

 

 その様子を見ながら、すみれは、内心、うわぁ、と思っていた。

 DA仙台支部でもたまに実施される訓練生に対するノバラの教練は、容赦がないということで有名だ(なお、本人にとってはごく普通の模様)。

 すみれは体質のせいで基礎訓練には参加しないが、戦闘訓練ではノバラの鬼教官振りを嫌というほど知っている。

 そして、ノバラが、まぁ、大丈夫だろう、とやらせる訓練のことごとくが全く大丈夫ではないことを、すみれも体験している。

 

(ノバラちゃんの大丈夫は多分大丈夫じゃないと思うんだけど・・・)

 

 きっと、ノバラの言葉に上っている二人も全く大丈夫じゃない状態になっているんだろうな、と心の中で同情する。下手に同情心を見せると、たまに飛び火してくるのが分かっているので、絶対に口にしないが。

 

「・・・大きな花火が上がる日も近い。ちゃんと準備しておかないとね」

 

 何かを確かめるようにそんな言葉を口にしたノバラに、すみれは少し不穏なものを感じる。

 

「・・・ノバラちゃん?」

 

 おずおずとすみれが問い掛けると、ノバラは、何も心配いらない、とばかりに笑って見せる。

 

「・・・何でもないわよ、すみれ」

「う、うん?」

「だから、もう、眠りなさい」

 

 優しくすみれの髪を撫でているノバラがあまりにも久し振りに感じて、すみれはすぐにうとうとし始める。

 

 夢と現の狭間で、すみれは聞いた気がした。

 

「・・・きっと、全て上手く行く。行かせてみせる」

 

 覚悟と決意を決めたような声と。

 

「だから、ゴメン、千束・・・っ!」

 

 後悔と懺悔を含んだ慟哭を。

 

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