Roses fall fleetingly, violets bloom vividly 作:MIA
ご想像にお任せします。
「何かもう、一日分のカロリー消費した気がするわー・・・もう、今日休みでよくない?」
朝食を終え、ノバラが淹れたコーヒーを飲んでいる千束はたきなに寄りかかりながそんなことを宣った。
「ちゃんとしなかった千束が悪いんでしょ?」
「私が悪いのかよ・・・」
「そらそうでしょ。千束が日和んないで最後まで自分からしてれば、たきなが暴走しなくてすんだと思うし?何なら私たちに見られたり、撮られたりしなくてすんだし?」
「最後までって・・・え、何処まで?」
千束はやはりその辺の知識が乏しいのか、先のショックも大きすぎてそれ以上のことを考えることができていないようだった。
「イケるとこまでよ」
ノバラは実に分かりやすく答えたつもりだが、千束ははてな顔だった。
だが、一方のたきなはそういった知識もあるようで。
「最後のイケるところまで・・・」
ポツリと呟いたその内容を想像し、ポッとたきなが顔を赤くする。その様子を見て、やれやれ、とノバラが首を振る。
「・・・小一時間くらい、出てこようか?」
ノバラとしては気を利かせたつもりだが、千束はげんなりとした様子だった。
「生々しい数字を出すなよ。さすがに今日はあと何もしないわ・・・」
「・・・しないんですか?」
しかし、たきなはそんな千束の言葉に目を潤ませて、そう言った。
途端に、千束は動揺する。
「え、や、あぁ、その!?」
わたわたと千束が顔色を変える様子を見て、満足したのか、たきなは満足そうに笑みを浮かべた。
「冗談です。私はこうしてるだけでも十分ですよ」
ぴたりと千束にたきなも寄りかかって、空いている手を重ねている。
「たきな・・・」
そんないじらしいたきなの様子に千束も顔を赤らめて、とろんとした表情をする。
「二人してさっきの続きしないでね?」
何かここから先、さっきと同じ展開が待っていそうだったので、ノバラがそう声掛けると、二人は真っ赤になって否定する。
「してねーし!?」「してません!?」
「はいはい、ごちそうさまー。朝食の方はおそまつさまー」
姉二人らぶらぶな様子に、きしし、と笑いながら、ノバラは朝食の後片付けを進める。
普段ならすみれに手伝わせそうなものだが、すみれはすみれで二人のらぶらぶさ加減に当てられて、ソファで撃沈していた。
朝食中こそ、いちゃいちゃと食べる二人に顔を赤くしながら、耐えていたものの、食後のまったり状態でのらぶらぶ具合には耐えられなかったらしい。
「・・・やっぱり、すみれにナマモノは早かったかしら?」
小首を傾げるノバラの言葉に、千束とたきなは顔を赤くして恐縮する。
「・・・お願いだから、ナマモノとか言わないで」
両手で顔を覆って、顔を赤くしている千束は普段見ないくらいに可愛らしい。
ノバラは悪戯っぽく笑みを浮かべるが、傍らのたきなは目が猛禽類のそれだった。隙があれば、千束が襲われそうである。
「・・・たきなもがっついてると嫌がられるよー」
自覚が無かったのか、たきなは言われてハッとする。
「がっつく・・・少なくとも、ノバラにはそう見えているということですか?」
「んー?それ以外、どう表現したらいいのさ?」
「なるほど、気を付けます」
ノバラはたきなを見ながら、これきっと分かってないだろうな、と苦笑いをした。
千束は初心だが、たきなはそれなり以上に知識があることが分かった。
千束とてジャンルを問わず映画を見ているだろうから色んな濡れ場は見ているのであろうが、それが自分を対象として考えたことがあまりないのであろう。
それにちょっとしたスキンシップに一喜一憂する辺り、互いにべたべたくっつくことは想定していても、重度の粘膜接触は想定していないようであった。純粋培養の文学少女みたいである。
一方のたきなはというと、完全に箍が外れているのか、端的に言うと、男子中学生くらいの拙速さが目立つ。これは最終目標地点をそこに見定めたからだろう。見た目清純なたきなの想定がそういうエロエロな辺り。逆に生々しくて、ノバラにとっては大好物ではある。
パッと二人を見れば、やりそうなことが全く逆なのもまた面白い。
まぁ、千束は我が姉ながら、意外にチキンで夢見がちなところがあるから、雰囲気とか、シチュエーションとか余計なこと気にして、流れでがばっと行くことはなかろうとは思っていたが。
残念ながら隣には肉食獣が侍っていた。ノバラ的には何となく、そんな気がしていたが、完全にたきなが捕食する方だ。いつまで千束が自分自身を守りきれるか、見物ではある。
しかし、ノバラはたきなが、先を急ぎすぎている感じがしているのが心配ではあった。
まぁ、それこそ、きっと、自分はノーマルだと思っていたところを、完全に千束が理性を吹き飛ばしてしまったので、それはそうなる、という感じなのだが。この急ぎすぎている感をして、ノバラは「がっつく」と表現したのだが、おそらくたきなの受け止めは「スキンシップのし過ぎ」との受け止めだろう。ノバラとしては、別に単なるスキンシップであれば、千束も望むところなので、それはそれでいいのだが、たきながあまり千束が望んでいることを理解していない辺り、若干心配なのであった。
・・・まぁ、仮にがっと行ったとして、千束がなし崩し的に目を白黒させねがら、たきなにされるがままになるだけなので、大丈夫と言えば大丈夫なのだが。姉の情報処理能力が完全にオーバーフローするので、予習が済むまでは待ってあげてほしいなー、というのがノバラの感想である。
ノバラはそんなことを考えながら、片付けを終えると、リビングの方では、千束とたきなは肩を寄せ合って、手を恋人繋ぎして、点けられているテレビのニュースもそっちのけで、互いの顔しか見えていない。
すみれはすみれで、二人の様子を、小声でうわぁ、うわぁ、と言いながら、ばっちり指の隙間が空いた手で顔を覆って羨ましそうに見ている。
あまりにもな様子にノバラはイラっとしながら、手を叩く。
「はいはい!私はもうこれから仕事入ってるから行くからね!?たきな、仕事は?」
「あっ!差し支えなければ、ノバラに着いて行きたいんですが。・・・構わないですよね、千束?」
「ああ、そっちは任せた」
奇妙な目配せをする二人にノバラは目をぱちくりとするが、たきなが自分の仕事に着いて行きたいというのは前もって言われていた話だし、今回の仕事内容は秘匿するような類のものでもない。
「私の方は構わないけど。たきな、装備の準備大丈夫なの?」
「いつでも大丈夫です」
「さすが、たきな。千束は、悪いんだけど、すみれの荷造り手伝って上げて?今日の夕方には、仙台で検査と治療の予定があるから」
ノバラの言葉に千束はおやという顔をするが、次の瞬間には頷いて、未だ撃沈中のすみれに声を掛ける。
「随分急だな?まぁ、そっちは任された。ほれ、すみれ、一時帰宅の準備だってさ」
「はっ!?それがあったんだった!?」
すみれは先ほどまでの赤い顔を青くして、どんよりと顔を曇らせる。
「注射やだな~」
「あ~、分かるわ~」
注射嫌い二人が親近感を感じて笑いあっていた。
「そこ二人、健康管理上、必要な治療を嫌がってないで、ちゃんと行くのよ?・・・ん?そういや、千束、ちゃんと検査とかいってる?」
そう言えば、その辺の話を聞いたことがないな、とノバラが不審そうにすると、明らかに千束が焦った表情をしている。
「げっ・・・!いや、行ってる、行ってるよ?」
千束はそう言うが、明らかに目が泳いでいるので、怪しさしかない。
「たきな?」
ノバラがたきなに問いかけると、千束はが~んとショックを受けた表情をした。
「特にこちらに連絡は来ていませんが・・・千束の様子は怪しいですね。山岸先生に確認しておきます」
「あぁ!?何か恋人と妹が信用してくれない!?」
千束が大げさにそう言うが、その狙いは明らかなので、ノバラはしらっとしたものだが、たきははちょっとうれしそうに顔を赤らめていた。
「こ・・・恋、人・・・」
改めてそう宣言されるとクルものがあるのだろう。ぽやんと幸せそうな表情をしているが、たきなは騙せてもノバラは騙せない。
「たきな、たきな~!誤魔化されるな!・・・こりゃ、絶対行ってないでしょ?」
「ん、んっ!確かに、これはそんな感じですね。千束も!ちゃんと行ってくださいね!?」
ノバラの言葉にたきなも咳払いをして正気を取り戻す。
「うへ~い・・・」
諦めたのか、千束は気のない返事をした。