アドニスイナズマ転生物語   作:かんりにん

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10話 帝国学園へ出発

 

 

アドニスが雷門中へと転入した即日。

雷門中サッカー部のフットボールフロンティア地区予選、帝国学園との決勝戦が開催される日でもあった。

今はサッカー部の全員で電車に乗り込み、帝国学園へ向かっているところである。

 

「何だか…アドニスが転入して来たんだって実感が全然湧かねえな…。」

 

アドニスを見ながら、どこか不思議そうに染岡が呟く。

 

「そうだよね~。いつも一緒にサッカーをしていたから、改めて雷門中の生徒になったとは思えないよね。ずっとウチの生徒みたいだった感じだもん。」

 

染岡に続き松野が言う。

本来であれば、強敵である帝国との戦いの前に緊張している筈なのだが、彼らの関心は今はアドニスへと向けられていた。

 

 

今朝のサッカー部、部室。

 

「今日から正式に雷門中サッカー部員となったアドニスさんです。」

 

部室へと入って来た夏未が部員達の前で、アドニスの紹介をする。

その隣で、アドニスはよろしくお願いします、と改まった挨拶をする。

それに対し、豪炎寺だけは冷静な様子で軽く会釈を返す。

 

「ええ~!?」

 

「でもアドニスさん、いつもウチに来てたッスから、実感が湧かないッス!」

 

「……そうだよな…俺よりも目立っていたし………」

 

豪炎寺以外の部員は、口々に驚きの言葉を発する。でも、ようやく皆と本当の仲間になる事が出来た。

少し複雑な気持ちではあったが、アドニスは嬉しかった。

 

「とりあえず!今日からアドニスも試合に出る事が出来るんだ!!早速今日は帝国戦だ!奴らはすごい強敵なんだ。お前の力が必要な時がくるかもしれない。よろしくな!アドニス。」

 

円堂が試合への意気込みを込めながら言葉を掛けた。

 

「今日はベンチから、奴らの試合をよく見ておくんだ。」

 

続けて響木監督から言われる。

 

「はい!」

 

気合を入れて、アドニスもそれに答える。

少し残念だが見る事も試合だ。色々と学ぶ事もあるだろう。

 

 

「でも、アドニスちゃんが本当に雷門中に来てくれて、嬉しいな。」

 

電車の席でアドニスの隣に座っていた春奈が彼女へ言った。

仲良くなった子が自分の学校へ転校してきてくれた、という事がよほど嬉しいようだ。

 

「わざわざ転校してきちゃうなんて、あの河川敷で会った時にも思ったけど、アドニスちゃんは本当にサッカーが好きなのね。」

 

春奈に続き、木野がしみじみとした感じで笑う。

 

「はい。雷門中の皆さんと一緒にサッカーをしていくうちに本当の仲間になりたいと思うようになったんです。それで夏未さんに相談したら転校手続きをしてくれて……あれ…夏未さんは?」

 

恩人である夏未の姿が見当たらない事に気付き、アドニスはきょろきょろと周りを見渡す。

 

「電車は嫌いなんですって。」

 

木野は苦笑いを浮かべながら答えた。

その頃、夏未はリムジンに乗り帝国学園へと向かっていた。

 

 

そして。

 

 

「あ、帝国学園だ…。」

 

円堂がそう言って窓の外を見ると、他の部員達もそれに集まってきた。

 

電車の窓からは、おどろおどろしい……まるで軍事施設の様な、学校とは思えない巨大な帝国学園の校舎が見えてきた。その圧倒的な威圧感に呑まれてしまう者もいた。

 

「響木監督!」

 

円堂は監督に、全員に活を入れるよう頼んだ。

響木は立ち上がると、雷門イレブンに目を向ける。

 

「俺からはたった一つ。全てを出し切るんだ。後悔しない為に!」

 

「はいっ!」

 

響木監督の言葉に、一同は元気よく返事をする。

 

 

 

電車から降り、帝国学園の門へとたどり着く。

実際にその校舎を目の前にすると、より一層、緊張が走る。

アドニスも、初めて見るその雰囲気に吞まれそうになる。

 

「すっげえ!ここで決勝戦が出来るなんて!」

 

さすが熱血キャプテン。円堂は、張り切っていた。

 

重々しい雰囲気のする内部へと入り進んでいくと雷門中様控室と書かれた扉を見つける。

 

「ここが俺達の控室か。」

 

扉に近づくと突然、勝手に開き、中から少年が出てきた。

その少年は何故か、深緑の帝国のユニフォームの上に赤いマントをまとい、ドレッドヘアを後ろにまとめゴーグルを装着しており、何とも奇妙な格好に見える。

 

「春奈ちゃん、この人は………」

 

アドニスは初対面な為、春奈に誰なのかを聞こうとしたが彼女の様子がおかしい。少年を見つめたまま、いつもの明るい表情とは違う渋面を見せていた。

彼女がこんな顔をするなんて。どうしたのだろうか。

 

「彼は帝国学園サッカー部のキャプテン。鬼道有人さんよ。」

 

春奈の代わりに木野がアドニスに囁いた。

 

この人が帝国のキャプテンなのか。40年間無敗を誇るサッカー部の代表…。

格好こそ普通ではないが、それだけではない。どこか…タダ者ではないオーラが漂っている。

 

「おい!何してたんだ、お前!」

 

染岡が、何故か自分達の控室から出て来た鬼道を怪しみ、威嚇する。

 

「無事に到着したみたいだな。」

 

それに動じる事なく、鬼道は静かに口を開いた。

 

「まるで何かあれば良い、みたいな言い方じゃねえか!何か仕掛けたんだろう!」

 

その態度にイラっとしたのか、更に突っかかっていく染岡。鬼道の胸倉を掴もうとした。

 

「やめろ。染岡!鬼道はそんな事をする奴じゃない!」

 

それを円堂が止める。

 

「安心しろ。何も仕掛けていないさ。」

 

それだけ言うと、鬼道は廊下の奥へと去って行った。

彼は一体何をしていたのか。

そう思ったのは染岡だけでは無かった。

 

もしかして何か罠を仕掛けたのかもしれない。

そう怪しんだ部員達は控室の中をくまなく調べ始める。

その光景に、円堂、木野、夏未、アドニスは呆然と立っているしかなかった。豪炎寺と、元帝国出身の土門も同じだった。

 

「おいおい…罠なんか仕掛けられてないって。」

 

呆れる円堂。

それを見た木野は、罠探しをしている全員に聞こえるようにパンパンと手を鳴らす。

 

「はいはい!この話はおしまい!決勝戦なのよ?試合に集中しましょう!」

 

それを聞いた染岡達は、急に罠探しが馬鹿馬鹿しくなった。確かに今はこんな事をしている場合ではない。

 

「そうだな。連中が何をしてこようと試合で勝ちゃいいんだ。」

 

「そうッスよ!絶対勝ちましょう!」

 

「そうだ!今は決勝戦なんだ!」

 

染岡に続き、壁山、半田……そして全員が意気込みを入れる。今は勝つ事を考えなければ。

 

 

そして試合の準備へと取り掛かり、終わった者から順に準備運動をしにグラウンドへ向かう。

 

円堂がグラウンドに行こうと廊下を歩いているその途中。

 

「君は雷門中キャプテンの円堂守君だね。」

 

ある男から呼び止められる。背が高く、黒ずくめの格好。サングラスを掛けたその男は___

 

 

 

帝国のグラウンドは屋内型である。

見上げれば高く重たい天井が見えるのみで、空を見る事が出来ないのは少し残念であるが、その分、広大な広さを誇るグラウンドだった。

他の部員達は初めて使用するグラウンドに慣れる為、アップを始めていた。

一方アドニスは、なぜか先程から姿が見えない春奈を心配し、彼女を探し回っているところだった。

 

「春奈ちゃん、どうしたんだろう…。」

 

先程の彼女の顔。いつもとは違う表情。

そう思いながら広い廊下を歩いていると。

 

「待ちなさいよ!アップもせずこんな所で何をしていたのか聞いてるのよ!」

 

いきなり響き渡る少女の怒声。それは春奈の声だった。

声がする方向へ向かうと、先程出会った帝国キャプテンの鬼道と春奈が、それぞれ対峙していた。

 

「お前には関係ない。」

 

鬼道はそれを冷たくあしらい、その場を去ろうとした。

 

どういう事なんだろう?と思っていると、アドニスの後ろから円堂と木野もやって来た。

そのまま3人は、こっそりと2人の会話内容を聞く。

 

「あなたは…鬼道家に行ってから変わってしまった。私達が別々の家に引き取られてから…一切私と連絡を取ろうともしなかった…!」

 

鬼道は足を止める。

 

「どうして?…私が邪魔だから?…そうなんでしょう?お兄ちゃん!」

 

「え!!」

 

瞳に涙を溜めながら震える声で鬼道へと向けられた春奈の発言に聞いていた3人も驚く。

春奈が鬼道の妹?

 

「私が邪魔になったから連絡もくれなくて……もうあなたは優しかった頃のお兄ちゃんじゃない……他人よ!!」

 

それだけ言い切った春奈は、涙を流しながら廊下の奥へと走り去ってしまった。

それを追い掛けようかと躊躇いながらも、握りしめた拳を震わせながらその場に留まる鬼道。ゴーグルの奥に隠された瞳は、憂き目を見ていた。

 

 

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