アドニスイナズマ転生物語   作:かんりにん

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11話 帝国戦 地区予選決勝戦!

 

 

「実はオレ…さっき帝国学園の監督と会ったんだ。」

 

先程の元気はどこへ消えたのか、円堂がシュンと落ち込んだ様子で語り始めた。それを真剣に聞くアドニスと木野。

 

「その人から、音無と鬼道は兄妹で小さい頃に両親を亡くしちゃってそれぞれバラバラになっちゃって……鬼道は音無を引き取るためにこの試合には勝たなくちゃならないって事を聞いたんだ。」

 

「春奈ちゃん…そんな事があったなんて。」

 

アドニスと木野は、信じられないような悲しい気持ちになった。

 

「雷門が勝てば2人は一緒に暮らせないんだ。」

 

「そうだったんだ…辛いね。鬼道君、音無さんを引き取ろうと頑張っているのに、それが音無さんに伝わっていないなんて……」

 

「でも、雷門は、ここまで来たんですよ?この決勝戦、負けるわけにはいかない…ですよね。」

 

「もちろんだ!鬼道のプレーは凄いんだ。それに応える為にも…オレは正々堂々…本気で戦う!そろそろ時間だ。グラウンドに戻るぞ!」

 

3人がグラウンドに戻ると、既に観客席は埋まっていた。

 

「すごいッス…!こんなに沢山の観客が……緊張してきたッス!」

 

改めて決勝戦なんだと実感する雷門イレブン達。だが、円堂は内心どうしたらいいのか分からなかった。

 

そしていよいよ試合開始の時間が来た。

 

『雷門と帝国、両チームの入場です!』

 

角馬圭太による実況が始まり、観客席からの歓声が響き渡る。

ベンチに座っていたアドニスは初めて見るこの光景にワクワクしたいところだったが、春奈の事を考えると、どうしていいのか分からなかった。

 

整列した両チームの握手の際に、鬼道が円堂に何かを耳打ちする。

 

「…!!」

 

それに一瞬驚きながらも頷く円堂。

 

『フットボールフロンティア地区予選決勝、雷門中対帝国学園の試合開始です!!』

 

試合開始のホイッスルが鳴り響いた__その直後。

 

突如、何重にも重なる大きな鈍い音が響いた。なぜか、雷門イレブン側のグラウンドへと落下していき突き刺さる、重々しい複数の鉄骨。立ち込める砂煙。驚愕を隠せない観客達。帝国イレブン達も、その場にいる者全員が、その光景に驚倒していた。

 

『ああっと!どういう事だ?雷門中の天井から鉄骨が降り注いできた!大事故発生!!』

 

「みんなっ!!」

 

思わず両手を口に当て、雷門の皆を呼ぶ木野。

 

「ここまでするとは…」

 

帝国の勝利の手段を選ばないやり方に、響木監督も青ざめる。

 

アドニスも目の前の事態に目を見開く。何が起こったのか理解したくなかった。他所から来た自分を仲間だと認めてくれた皆。お願い。どうか…。

でも、もうこれでは………

 

 

全員が唖然とするしかない中、やがて砂煙も収まり雷門イレブンの姿が露になる。

鉄骨に当たった者は誰一人、いなかった。

 

『何とっ!雷門イレブン、一人も怪我人が出ていない!これは奇跡だぁー!!』

 

その場にいる者全員が、雷門イレブンが無事である事に安堵の胸を撫でおろす。

 

 

「鬼道が教えてくれたんだ!」

 

円堂のその発言にハッとする春奈。

どうして帝国を裏切ってまで…さっきの怪しい行動も罠を探していたから?……あの頃のままの正義感の強い…お兄ちゃんなの?

 

 

試合が始まる直前、鬼道が円堂に伝えていた。

 

試合が始まっても一歩も動くな、と。

その言葉を信じた円堂。

 

一人も怪我人を出す事なく無事、試合を続行する事が出来た。

 

「これで正々堂々とお前達雷門イレブンと戦える。」

 

憑き物が落ちたかのような笑みを浮かべる鬼道。

 

「ああ!サッカーやろうぜっ!!」

 

円堂も皆も、本当の試合の始まりだと意気込む。

 

 

「影山零治、一緒に来て貰おうか。」

 

駆けつけて来た鬼瓦刑事により、帝国学園監督の影山は連行されて行った。雷門イレブン側の天井の方のみボルトが緩められており、工事関係者が影山に命令されたと白状したのだった。

 

帝国イレブン達は、勝利の為なら卑怯な事も厭わない影山に見切りをつけた。

 

「これを見て、教え子達から捨てられた理由を探るんだな。」

 

パトカーの中のモニターから帝国対雷門の試合を見せられる。

影山は、ふとモニターに映った雷門側のベンチに座っている少女に目が行った。

 

「…!」

 

サングラスに隠れている目を思わず見開く。

その少女は昨日、世宇子中の廊下ですれ違ったばかりの少女だからだ。つい先ほどまで気が付かなかったが間違いない。

 

___なぜ雷門中にいる?まさか。あの事を…

 

まあ、このような小娘など何も恐れるに足らない。

いざとなれば、脅せばいいだけだ。豪炎寺の妹の時のように__

 

モニター越しにアドニスを見つめながら、そう考えを巡らせる。

 

 

 

 

新しく整備された帝国スタジアムが姿を現し、雷門イレブンと帝国イレブンがそれぞれのポジションへと就いた。

それをベンチから眺めているアドニス達にも緊張が走った。

今度こそ本当に始まる。

 

『大事故が起きた後ですが、雷門イレブンは全員無事だった為、仕切り直して…正真正銘フットボールフロンティア地区大会決勝の開始です!!』

 

そして、試合開始のホイッスルが鳴り響く。

 

『まず初めに攻め込むのは雷門だあー!!』

 

豪炎寺が素早く帝国陣地に攻め込む。

彼は、ある想いを胸にこの試合は必ず勝利すると誓った。

 

___夕香。見ていてくれ。お兄ちゃんは必ず勝つ!

 

先手必勝に、彼の必殺技ファイアトルネードを撃つ。

その炎をまとったボールに、今度は染岡がドラゴンクラッシュを叩き込んだ。

 

ドラゴントルネード。迫力を増した炎の龍が、帝国ゴールへと向かっていく。

 

「パワーシールド!」

 

帝国キーパー源田は拳で地面を叩きつけ、その衝撃波でシールドを張った。

ドラゴントルネードは、呆気なく弾き返されてしまった。

 

『帝国学園、源田!迫力のあるシュートを見事弾いたぁ!!さすが全国ナンバー1の実力だぁ!』

 

「パワーシールドの前にはどんな技も通用しない!」

 

源田は誇らしげな様子で、だがシュートを止めるのは当然の事というような顔で言った。

 

「ちきしょう!」

 

染岡は悔しい感情をあらわにした。

 

ボールは鬼道へと渡る。

鬼道は軽やかに雷門ディフェンス陣を突破していき、フォワードの寺門へとパスを出す。

 

「百烈ショット!」

 

ボールを受け取った寺門は、それに連続蹴りを叩き込み、雷門ゴールへと打ち込んだ。

構える円堂。

 

「熱血パンチ……あ…」

 

___雷門が勝てば、鬼道と音無は破滅する。

先程影山から言われた言葉が脳裏によぎり、ボールを弾き損なってしまうものの、ゴールポストに当たり得点は免れた。

続いて佐久間からのヘディングシュート。これもキャッチする事が出来ずに慌てて弾く。

 

「あ、あれ?」

 

「落ち着いていこう、円堂!」

 

風丸が円堂にフォローを入れる。

 

「……。」

 

それを無言のまま軽く睨む豪炎寺。

 

 

「円堂さん…。やっぱりあの事を気にして……」

 

「きっとそうだわ。」

 

ベンチから見ているアドニスと木野。

この試合はどうなってしまうのか。

 

「円堂ーー!うおおお!!」

 

鬼道が、雷門ゴールを狙う。

ボールを強く蹴り、それは円堂に襲い掛かる…が。

 

「くっ…!」

 

『前線から戻って来た豪炎寺がシュートブロック!おおっと、鬼道、足を痛めたか?!』

 

その力に押され鬼道はその場に崩れ落ちる。

それを見た洞面はボールをグラウンドの外へと出し試合を一時中断させる。

 

鬼道は痛みに耐え何とかグラウンドから抜けると、靴下を脱ぎ自分の足を見る。その足は、腫れ上がっていた。

 

「さすが豪炎寺だ…。…くっ」

 

その時、足の腫れた部分にアイシング用の袋が当てられた。

それを持って当てていたのは春奈だった。

 

「春奈、どうして…」

 

「私にもわからない…。気付いたら体が勝手に動いていたの。」

 

そして、妹である春奈に応急処置を施され、試合続行の為自分のポジションへと戻ろうとする鬼道。

__たった二人だけの兄弟なのに……やっぱり私が邪魔なんだ。

素っ気ない兄の態度に、悲しくなり俯いてしまう春奈。

 

 

「一度もなかったさ…。あるものか。お前を忘れた事なんて。一度も!」

 

鬼道は後ろを向いたまま、春奈に優しくそう囁き戻って行った。

 

「お兄ちゃん…!」

 

何も変わっていない。お兄ちゃんはあの頃の優しいまま…何も変わってなんていなかった!

春奈は笑みを浮かべ、鬼道の後姿を見送る。

 

 

その様子を見て、アドニスと木野は顔を見合わせて微笑んだ。

良かったね、春奈ちゃん!

 

だが、まだ試合は始まったばかり。

円堂の調子は相変わらずのままだった。こんな調子で帝国戦を戦い抜けるのか?

 

 

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