帝国にボールが渡る。
これは円堂の必殺技ゴッドハンドを打ち破るために開発した必殺技。
勝負だ雷門中!この足に誓って俺は必ず勝利する!帝国の仲間達の為にも!そして春奈を___!
そう強く思いながら鬼道は指笛を吹いた。
するとグラウンドから、彼の熱い気持ちとは裏腹にピョコピョコと可愛らしいペンギンが数体、姿を現した。
「わあ、可愛い…」
アドニスはペンギンを見ながら、ついそう呟く。
無敵の帝国学園が、こんな可愛らしい技を?
「あの技は…可愛いだけじゃありませんよ…。」
隣に座っていた目金が、そう指摘する。
「皇帝ペンギン…2号ーーっ!!」
鬼道がボールを蹴った後、更に佐久間と寺門が2人でボールを蹴り出す。
蹴り出されたボールに、ペンギン達が水中で泳いでいる時のように素早く纏わりつく。すると可愛らしい彼らの目は鋭い目に変わり、迫力のあるシュートへと変貌し雷門ゴールを襲う。
「ゴッドハンド!」
円堂は必殺技ゴッドハンドを発動させる。
ペンギンと神の手の競り合い。
「…くっ」
ペンギン達も目を鋭く光らせ、更に力を上げゴールを奪おうとする。
円堂は気圧されていき、ゴッドハンドはヒビが入ってゆく。
得点のホイッスルが鳴り響く。
勝ったのはペンギン達だった。
『帝国、先制点だぁー!愛らしいが迫力のある皇帝ペンギン2号がゴッドハンドを破りましたあ!!』
「そんな!…でも。」
すごい。あれが帝国学園の技。何て迫力なんだろう。
やっぱり超次元サッカーは熱い!
アドニスはこの試合に、のめり込んで行った。
またも帝国にボールが渡ってしまい、佐久間、寺門、洞面の3人が宙に浮き回転をしながら三角形を描く。
それは禍々しい紫色のオーラをまとい、またしても雷門ゴールへ襲い掛かる。
「デスゾーン!」
その時。誰かが雷門ゴール前まで走ってきた。
「ぐっ…!」
元は帝国学園にいた土門が自らの顔面を使い、死のシュートを弾く。
「土門!無茶しやがって…」
驚いた円堂はゴール前に倒れ込んだ土門を抱き上げる。
「デスゾーンは、こうでもしなくちゃ防げない…!…円堂…俺も皆の…雷門の仲間になれたかな……」
「当たり前だろっ!お前はとっくにオレ達の仲間だっ」
それを聞いた土門は安心したような表情を見せ気を失い、担架に乗せられ運ばれて行った。
土門は元々、帝国出身であったがスパイをする為に雷門へと転入して来ていたのだった。雷門の情報を全て帝国へ流すだけの為に。
だが次第に円堂や雷門メンバーに感化されて行き…今はこうして本当の仲間となったのだった。
少し違うかもしれないが、その境遇はアドニスと似ている。雷門はどこか、人を惹きつけてしまう魅力があるのかもしれない。
「うがぁっ!」
突如、炎をまとったボールが飛んで来て円堂に直撃し、彼は転がってしまった。
その場にいる全員が驚く。こんなボールを蹴る事が出来るのは……
「円堂!そのボールは俺の全てを込めたシュートだ!何があったかは分からないがホイッスルが鳴ったら試合に集中しろ!!」
豪炎寺。普段は寡黙であまり喋る事のない彼が、炎の様に熱い感情を込めて円堂へと叫ぶ。サッカーの事となると、円堂よりも熱くなる男である。
それにハッと目が覚める円堂。
__オレ。大好きなサッカーに嘘をつくところだった。この試合、鬼道に最高のプレーをして貰うんだ!もう迷わない。変な気は使わない!
『試合再開です!雷門中、土門に代わり影野が入った!流れを変えられるかぁ?!』
帝国の辺見によるコーナーキック。
ボールは鬼道に渡り、バク転をしながらそれを高く上に蹴り上げる。
そこに佐久間がボールと同じ位置まで飛び、ヘディングでボールを加速させ力を込め、再び鬼道へと返す。
それを鬼道がゴールへと蹴り出し加速させる。計2回、ボールを加速させたその技は。
「ツインブースト!」
新たな帝国の必殺技。
「もう迷わないっ!はああっ」
強いシュートに構える円堂。彼の目にもう迷いはなかった。
ボールを目にも止まらぬ速さで連続パンチし、見事帝国のシュートを打ち破った。
「あれは…爆裂パンチ!」
それを見ていた目金が技名を付ける。
「それでこそ円堂だ。」
シュートを止められてしまったものの、鬼道は満足げな顔を見せる。
『不調だった円堂、完全復活かぁ?!これは目が離せない展開になって来たぁ!』
「円堂さん、良かった…。」
「ええ。」
アドニスも木野も、円堂の復活に、ひとまず安心する。
だが点を取らなければ勝つ事は出来ない。キーパーの源田を攻略しなければ…。
ボールを受け取った染岡は帝国ゴールへと走る。
「ドラゴンクラッシュ!」
力強い青き龍のシュート。だがやはり源田に弾かれてしまう。
「パワーシールドには通用しない!」
そこに豪炎寺が走って来て、龍の力が残っているボールを更に蹴り込み、衝撃波のシールドに押し当てた。
それを見た源田は切れ長の目を見開き、驚きの声を上げる。
「何ぃっ?」
「パワーシールドは衝撃波で出来た壁だ。弱点はその薄さだ。遠くから来たシュートは弾いても、至近距離からこうして押し込めば…!」
龍の力に炎が宿る。
「ぶち抜けるっ!…ドラゴントルネード!!」
パワーシールドは徐々にヒビが入ってゆく。
炎により赤くなった龍は
『ゴオール!雷門、同点に追いついたぁ!』
「やったぜええっ!」
雷門1ー1帝国
電光掲示板が変わり、円堂をはじめ、得点にはしゃぐ雷門イレブン達。
残り時間も僅かだが、あと1点。1点さえ取る事が出来れば勝利だ。
だがそれは、帝国も同じ事。
必ず次の1点をもぎ取ってみせる。
鬼道は指笛を吹き、ペンギン達を呼び出す。
「あ、あれは…!」
アドニスも、雷門メンバーも、強力な帝国の技に身構える。
「皇帝ペンギン2号!!」
先程、帝国の得点を許してしまったシュート。
だが円堂は諦めない。絶対に…止めて見せる!
「ゴッドハンド!」
だが、やはり強力なシュートだ。
円堂はどんどんとペンギン達に押されていく。
「円堂っ!」
「円堂くん!」
「円堂さん…!」
皆の思いを背負い、気合を増しながら円堂はもう片方の手も前へと突き出した。
「これは絶対に……絶対に止めるんだぁ!!」
両手でのゴッドハンドだ。
『円堂、両手で皇帝ペンギン2号を止めたア!!』
「行っけえええ!!みんなぁーー!」
ぎりぎりで止めたボールを味方に向かって投げる。
そのボールを受け取った風丸。
「円堂が止めたボールは…!」
「絶対に!」
「繋いで見せる!」
強敵である帝国を相手に、見事な雷門ディフェンス陣の連携プレー。
ボールは無事に前線へと運ばれる。
ボールを受け取った豪炎寺は高く飛び上がる。
「ファイア…トルネード!!」
それは雷門中に、帝国が来た時の練習試合の際に初めて1点を取った必殺技。
源田は身構え気を溜めていく。パワーシールドではない…更に強力な必殺技を繰り出そうとしていた。
「フルパワーシールドォ!!」
パワーシールドよりも広範囲を守るオレンジ色の衝撃波。
その威力は凄まじく、帝国の王者のプライドそのものだ。
長く続く、ボールと衝撃波の競り合い。
「いっけええええ!!」
雷門イレブンの声が、気迫がボールへと込められ、全員が行く末を見守る。
「やられる、かあぁぁ!!」
ここで点を入れさせてたまるものか。源田も、更に気迫を込める。
が、遂にフルパワーシールドにもヒビが入ってゆく。それは徐々に広がっていき___
「くっ、何だと…」
常に自身の顔に入れているフェイスペイントを歪め、悔しい表情を見せながら源田は倒れ落ちた。
雷門2ー1帝国
雷門の逆転。
ここで試合終了を知らせるホイッスルが鳴り響いた。
『地区予選決勝、王者帝国を下し、勝利したのは雷門だあぁーー!!』