アドニスイナズマ転生物語   作:かんりにん

17 / 34
16話 野生中戦 獣達の力! 

 

 

 

『フットボールフロンティア全国大会第一回戦!!雷門中対野生中はっ、どんな戦いを見せてくれるのでしょうかぁーーっ!?』

 

歓声が響き渡り、大いに盛り上がる全国大会会場。

 

いよいよ、ここまで来た。来てしまった。

もう、やり切るしかない。

 

円堂を始め、雷門メンバーは緊張しながらも意気込んでいた。

そして、試合前の整列につく。

 

相手は強豪、野生中。

初めて見る彼らの姿は、名前の通り…全員が野生の獣の力に満ちていた。

ある者はチーター。ある者は大鷲。ライオン、ヘビそしてゴールキーパーはイノシシであった。

 

アドニスは緊張と共に、ワクワクとした感情が芽生える。

 

 

キャプテン同士の握手が始まる。

野生中のキャプテンは鶏井亮太(とりいりょうた)。背は小さくまるでニワトリのような見た目だが、その圧倒的なジャンプ力で、数々の学校を倒して来たのだった。

 

「雷門…あの帝国を倒したと聞いてるコケ。でも野生中の力には適わないコケ!!」

 

見た目通りの独特な口調で円堂へ語る鶏井。

だが円堂達、雷門中も、ここで負ける訳には行かない。

 

「そんなのやってみなくちゃ分からないだろ!見てろよ!」

 

 

両チームの選手がポジションへとつき、いよいよ………

 

は、始まる…!!

 

フォワードのポジションについたアドニスはドキドキと鼓動が鳴り響くのを感じた。

もう、誰にも止められない。

 

『試合…開始です!!』

 

スタートのホイッスルと実況が会場に響く。

 

 

 

「この世は弱肉強食だコケ!」

 

『野生中キャプテン鶏井!先制を仕掛けます!』

 

鶏井が迫ってきた。

アドニスは左手に力を入れ握り、気を込めながら技発動の準備をする。

 

___大丈夫。あれだけ練習したんだから。

 

そして左腕を横に払い、右腕を縦に、合わせて十字になるように振った。

 

「あれは__!」

 

春奈を始め、雷門メンバーはその様子を見守った。

アドニスの前に、狩りで使用する獣を捕らえるような網が出現する。

 

「コケッ!!?」

 

その網は鶏井を捕らえ、彼は動きを封じられてしまった。その隙にアドニスはボールを奪い走り出した。

やった。必殺技が決まった!

彼女の中に、ふつふつと喜びの感情が込み上げてくる。

 

 

「アドニスちゃん!やったね!」

 

ベンチから見ていた春奈も、練習の成果に大喜び。

 

「あれは…ハンターズネットですね。まさに獣の動きを封じるのにふさわしい技です。」

 

その隣に座っている目金がすかさず技名を付けた。

 

しかし喜んでいるのも束の間、敵は鶏井だけではない。

ボールを持ったアドニスに、野生中ディフェンスである大柄でライオンのような、獅子王(ししおう)が襲い掛かろうとする。

 

「スーパーアルマジロ!!」

 

大柄な身体を丸め回転していき、相手選手を弾き飛ばす技。

それはコロコロと可愛らしいアルマジロではなく、勢いよく転がって来る巨大な獣。

ハンターズネットではとても止められない。

 

だがこんなところで、やられる訳にはいかない。

どうしてもゴールへと行きたいという一心で、間一髪ギリギリでかわし走り続ける。

アドニスが用があるのは、ライオンやアルマジロではなく、前世での因縁でもある……イノシシだ。

そのまま、イノシシのような風貌を持つゴールキーパー猪口兵吾(いのぐち ひょうご)が構えている野生中のゴール前へとたどり着き目の色を変える。

 

ここが。

ここが今までの練習の成果の見せどころだ。

今こそイノシシを狩ってみせる!

アドニスは一呼吸置き、目を見開くとボールを蹴り上げた。

そして足の甲を使い連続蹴りを叩き込む。

 

「ディバインアロー!」

 

その何をも貫いてしまうような神聖なオーラをまとった矢は、一直線にゴールへ線を描いていく。

 

「ワイルドクロー!」

 

キーパー猪口もシュートを止めるため、右手に鋭い獣の爪を具現化させ、その爪でボールをがっしりと掴む。

 

「ぐあぁっ!!」

 

しかしボールの勢いは止まることなく野生中のゴールへと突き刺さった。

得点のホイッスルが鳴り響く。

 

『雷門中、先制点だあーっ!アドニスの矢がイノシシに突き刺さったぁー!!』

 

「やったあ!」

 

「すっごいじゃないか!アドニス!!」

 

春奈と円堂が嬉しさに歓声を上げる。

アドニス本人は点を入れたという実感がわかず、呆然とその場に立ち尽くし、ゴールを見つめていた。

慣れない事の為どうすればいいのか分からず突っ立ているしかなかったが、熱い感情が沸き立ってくるのを感じる。

 

「何してんだよっ、お前、点を入れたんだぞ?喜べよ!!」

 

染岡が呆然としているアドニスに声を掛ける。

 

「そう、そうですよね…やった!!」

 

その声に我に返ったアドニスは、遅れて歓喜の声を上げる。

 

 

「すごいッス!これで俺はもう……イナズマ落としをしなくても大丈夫ッスね。良かった……」

 

壁山は密かにホッとした表情を見せる。

 

 

「油断したコケ。」

 

「1点入れたくらいで勝った気にならないで欲しいな。」

 

「…本番はここからだぜ!」

 

点を取られてしまった強豪、野生中。

彼らの目が獲物に狙いを定めたかの如くギラギラと光り出した。

 

 

試合再開。

鶏井がミッドフィルダーの大鷲にボールをパスする。

すると、名前の通り大鷲の様に空に羽ばたいたのだ。

 

「なっ?!飛んだ!」

 

雷門中ディフェンス陣を軽く抜き去ってゆき、ボールより高く宙へ舞い、そこに突っ込んでいくようにヘディングを決めた。

影野が止めようとしたが、圧倒的に高さが足りない。

 

「コンドルダイブ!!」

 

高い位置から来る猛禽類(もうきんるい)の如き素早いシュートが円堂とゴールへ迫る。

 

「ゴッドハンド!」

 

円堂は何とかギリギリで技を発動させた。が。

 

「うわあぁっ!」

 

硬い物が砕かれる音が響く。

野生の猛禽類の鋭く大きな翼や嘴は、ゴッドハンドを打ち砕いてしまった。

 

 

『さすが強豪校野生中!!大鷲のコンドルダイブが決まったぁあっ!これで同点だあ!!』

 

「くそっ…さすが強豪だな。すごいシュートだった。」

 

円堂が悔しそうに呟く。

 

彼ら野生中は先制点を取られてしまった事により、本気を出してきたのだ。

本気の野生動物達の力は凄まじい。

 

「ファイアトル……」

 

「コケーーッ」

 

ファイアトルネードを撃とうと高い位置へ飛び立った豪炎寺に鶏井が飛びつく。

あっという間にボールが取られてしまった。

 

その素早さと跳躍力にアドニスは驚く。

あれでは、せっかく使えるようになった技ハンターズネットでも、もう捕らえる事は出来ない。

せっかくディバインアローも決める事が出来たのに…。

 

そう思っている間にも野生中の猛攻。

 

「モンキーターン!」

 

次々に必殺技を使い、またも雷門ゴールへと迫る。

 

「うおぉっ!ターザンキック!!」

 

野生中フォワード、五利が空から伸びて来るツタにその巨体をぶら下げ、振り子の原理で力を蓄えシュートを決める。

 

ここで追加点を取られるわけにはいかない。

円堂はボールに連続パンチを叩き込み、シュートの力を抑えていく。

 

「こんなところで点はやらない!熱血パンチッ!!」

 

そして最後のパンチでボールを完全に弾いた。

 

『円堂、目にも止まらぬ連続パンチで野生中のシュートを防いだああ!』

 

何とか追加点は免れた。だが試合はまだまだこれからだ。

ファイアトルネードでさえ圧倒的な跳躍力で防がれてしまった。

このままでは点は取れない。

 

 

「壁山をフォワードに上げよう。」

 

豪炎寺が、静かに言った。それに驚く雷門メンバー。

 

「こうなったらあの技を試してみるしかない。」

 

 

 

そして後半戦。

壁山をフォワードに上げ代わりにアドニスが、彼がいたディフェンスのポジションへと変わる。

 

「ううう…無理ッスよ…俺がフォワードだなんて……」

 

壁山は緊張と不安に自身の大きな体を震わせ、その丸い目には少し涙が浮かんでいた。

元々臆病な彼ではあるが、その上、今は全国大会なのだ。

もしも失敗して自分のせいで負けてしまったら……どう責任を負えばいいのか。

そればかりを考えてしまう。

 

「壁山ぁーー!余計な事は考えないで、もうやれるだけやってみろぉー!!」

 

ゴール前から円堂が叫ぶ。

 

「頼りにしているぞ。壁山。アドニスだって点を取れたんだ。お前にだって出来るさ。」

 

豪炎寺がいつものように静かではあるが、熱い感情を込めて壁山に言う。

 

そうだ。俺は怖い事があったらいつも逃げ出して……

みんなに心配ばかり掛けて……

 

「俺…とにかくやってみるッス!」

 

壁山は決意を固める。

 

『後半、スタートです!』

 

「来い!壁山!!」

 

キックオフを終え、豪炎寺がボールをドリブルし走りながら壁山に声を掛ける。

 

「は、はいッス!」

 

「いくぞ!イナズマ落とし……」

 

豪炎寺が高い位置へ飛び出す。だがそれだけでは高さが足りない。

そこで壁山がジャンプをし彼の足場になる。

筈だったのだが、つい下を見てしまった。

 

「うわああぁ」

 

「くっ」

 

怖くなった壁山は体勢を崩してしまい、豪炎寺は高い位置に飛ぶ事が出来ず、2人はその場で倒れてしまった。

 

『どうした雷門中、豪炎寺と壁山!?技を決めようとしたのか大きく転倒してしまったあ!!その隙に野生中、魚住(うおずみ)、ボールを奪い去りましたあ!!』

 

ボールはディフェンスの魚住(うおずみ)から蛙田へ、そしてフォワード蛇丸へと渡った。

その蛇の様な迫力にアドニスは驚く。

蛇丸はショート体勢に入った。

 

「スネークショッ………」

 

「ハンターズネット!」

 

蛇なら何とか捕まえられる。

獣を捕らえる網を出現させ、シュートは抑える事が出来た。

 

「サンキュ!アドニス。」

 

円堂は彼女に礼を言った。

 

だが、壁山の高所恐怖症を何とかしなければゴールは狙えない。

どうすればいいのだろうか。

 

「気にすんなよ!壁山!まだ時間はある!!まだまだこれからだっ!」

 

円堂は壁山を責める事無く、朗らかに彼へ叫ぶ。

だが壁山は浮かない顔だ。

 

「やっぱり無理ッスよ…俺なんて何やっても……」

 

「俺はやり続けるぞ。」

 

「え?」

 

壁山の自分を卑下する物言いを遮り、豪炎寺は言った。それに壁山は驚く。

 

「どうしてッス?どうしてそんなに……」

 

「…円堂はお前を、俺達を信じているんだぞ。」

 

「!!」

 

「それに応えられなくて、どうする。」

 

 

試合再開。

壁山は考えた。どうすれば技を発動できるのか。

自分に出来る事は___

 

そう考えている間にも豪炎寺がボールを運び、飛び立った。

でも。

 

駄目だ。やっぱり高い場所は怖い。分かっていても、目はつい下を見てしまう。

やっぱり何度やっても、もう得点は無理なんだ。

 

俺なんか___皆、すみません……

諦めの感情に壁山は目を閉じた。

 

 

 

「ぷぷっ!高い所も駄目な腰弱が何度やっても無駄だコケッ!」

 

「あれじゃあもう点を取られる心配は無用だな。」

 

「ちゃんと練習してんのかよ。雷門中はよお。」

 

「…!!」

 

野生中の者達が、自分を…いや雷門中全員を馬鹿にするように笑っている声が聞こえ、一瞬時が止まった感覚に陥る。

それは悲しいような悔しいような__いや、とてつもなく悔しい!

壁山の中に、熱い感情が滾る。

 

このままでは…絶対に終わらせないッス!!

 

「俺の事は何を言っても良いッス!…でも!」

 

壁山は怒りの感情のままにジャンプをすると同時に、仰向けの体勢になり宙へと浮いた。

この体勢なら下を見ることは無い。今は余計な事を考えず、上だけを見るんだ。

 

 

「皆の事は悪く言わせないッス!!」

 

豪炎寺が壁山の身体を足掛かりにし、更に高い位置へと飛び立った。

その高さは、鶏井にも大鷲にも届く事が出来なかった。

 

「イナズマ落とし!!」

 

強力に蹴り出されたシュートが野生中ゴールへと牙をむく。

 

『これは、豪炎寺と壁山の連携必殺技だぁ!!』

 

ゴールキーパー猪口は、反応する事が出来ずに得点をゆるしてしまった。

点数を示している電光掲示板が、雷門へ1点を追加する。

 

『雷門中ゴオール!!と、ここで試合終了です!』

 

直後にホイッスルが鳴り響き、実況が試合終了を告げた。

 

野生1-2雷門

 

 

「そんな…俺達の負け…」

 

「野生の力が…敵わなかったコケ……」

 

『フットボールフロンティア全国大会一回戦は初出場の雷門中に軍配が上がったあぁーー!』

 

「や、やったあぁ!!やったぞっ壁山あぁ!!」

 

「は、はいッスぅぅ!!」

 

ぎっしりと抱き締め合う円堂と壁山。

その傍らで豪炎寺がしみじみと言う。

 

「まさかあれが思いつくとはな…お前だけのイナズマ落とし…か。」

 

「アドニスもすごかったぞっ!あの技!!」

 

輝くような笑顔で、円堂がアドニスへと駆け寄る。それに続く春奈。

 

「……。」

 

当の本人は先程の先制ゴールを決めた時同様、呆然としていた。

今まで活躍する事が出来なかったアドニスが、初めて掴んだ栄光の勝利。

これが勝利…この感じが……

 

ふつふつと沸き立ってくる熱い感情。でもそれだけではない何か。

この気持ちは、世宇子にいたままだったら絶対に味わう事は出来なかっただろう。

 

「アドニスちゃん、どうしたの?もっと喜べばいいのに。」

 

春奈の声に我に返るアドニス。

そして思いのままを叫ぶ。

 

「やったあぁ!イノシシを狩ったーっ!!」

 

「ええ?!イノシシって野生中ゴールキーパーの?…って喜ぶところ、そこなの!?」

 

アドニスの叫びに春奈がツッコミを入れ、雷門メンバーに笑いが響いた。

こうして第一回戦、野生中との試合は、無事に雷門中の勝利で終わった。

 

 

 

「へえ…アドニス……あの子も女子選手なのねぇ。」

 

雷門メンバーを見ている何者かの影。

左胸の部分に『戦』という文字が書かれている忍者の様なユニフォームを着ており、桃色の独特な髪形をした少女。

 

「あははっ、雷門中……面白いじゃない。」

 

少女は1人で笑い声を上げる。

一体、何の目論見があると言うのだろうか。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。