アドニスイナズマ転生物語   作:かんりにん

18 / 34
17話 王者帝国の敗退

 

 

 

全国大会一回戦。帝国イレブンは今、自分達の目の前にいる聞いた事も無いチームの相手に向かって余裕な顔を向けていた。

雷門中との試合で怪我をした為、大事を取って控えているキャプテンの鬼道もベンチからその様子を見守る。

 

『試合…開始です!!』

 

決勝へと勝ち進み、もう一度雷門と戦う。この王者帝国が無名の相手にそう簡単に負ける筈など無い。

 

そう自分達に誇りを持ちながら。

 

 

___しかし。

 

その後の展開でスタジアムに広がった恐ろしい光景に観客達はざわめく。

地面は抉れ、ピッチに立っていた帝国イレブンは叩きのめされており誰一人立っていない。ゴールも無残に吹き飛ばされキーパーの源田は瀕死状態だ。

唯一無事なのはベンチにいた鬼道だけである。

 

『な…なんと!!誰がこの展開を予想出来たか!!?王者帝国、全く歯が立ちません!!』

 

「…どういう事なん、だ……。」

 

鬼道は目の前が真っ暗になっていき、力が抜けてその場に座り込むしかなかった。

 

『これはまさしく神の力なのかっ?!一回戦突破は王者帝国を圧倒的な力で下した初出場の、推薦招待校の世宇子中だあーーっ!!』

 

勝利した世宇子イレブンは嘲笑いながら帝国イレブンを見下ろしていた。

神のアクアを使用した彼らの、初めての試合。圧倒的で強大な神の力を得た自分達に適う事のなかった40年間無敗の超強豪、帝国学園。

 

__人間が神に適うはずがない。神の力を得たボク達にひれ伏せ。

なんて気持ちが良いのだろう。思う存分に、この力を振るえるなんて。

すっかり神のアクアに魅入ってしまった彼らであった。

 

その様子を見ていた世宇子の監督__影山零治は1人で静かに口元を歪めて笑う。

 

 

全国大会一回戦の野生中に無事勝利した雷門中。

強豪校に勝利したことにより、メンバー全員が更にやる気に満ちていて、雷門の地下室にある練習場、イナビカリ修練場でハードな練習に励んでいた。

 

そこに、神妙な顔つきをした春奈が走ってきた。その彼女の表情にアドニスは嫌な予感を感じる。

 

「フットボールフロンティア一回戦で帝国…が……。」

 

「お?勝ったのか?さすが。」

 

円堂が豪炎寺と顔を見合わせる。春奈は話を続けた。

 

「10対0で……」

 

「すごい点差だなあ!」

 

ハイタッチをする円堂と豪炎寺。

 

「完敗…しました……。」

 

「えええ!?」

 

圧倒的な点差の完敗。帝国には似合わない言葉。

その言葉が春奈から発せられた事により、その場にいた全員は驚愕した。

 

「それはどこのチームなんだ?」

 

「…………世宇子です。」

 

「!!」

 

豪炎寺の質問に春奈がアドニスの方を見て少し躊躇いながら、ぼそりと答えた。

アドニスの嫌な予感は的中してしまった。

 

すると同時に、いきなり円堂は走り出してしまった。

 

「キャプテンっ!どこへ?」

 

「帝国へ!鬼道のところに行ってくる!」

 

それを聞いたアドニスと春奈も円堂の後へと続いた。

 

 

いつ見ても重々しい雰囲気の帝国学園。

その広いグラウンドに鬼道は一人でポツンと立っていた。

 

「お兄ちゃん…」

 

いつもの堂々とした誇らしい姿を失った兄に、春奈は何と声を掛ければ良いのか分からず俯くしかなかった。

 

「鬼道ーーっ!!」

 

その鬼道に円堂はボールを投げる。

が、彼はそれを受け止める事無く、成すがままににボールに当たり後ろ向きに転倒してしまった。

 

「…ははは。円堂。笑いに来たのか…?」

 

力なく自分を卑下するように笑う鬼道。そのゴーグルに隠された目は何の光も宿さず、ただ虚ろなだけである。

 

「そんな訳ないだろ!何バカな事言ってんだよ!!」

 

「…っ、すまない円堂。無様に散ったのは……俺の方だったな。」

 

鬼道は転倒して座り込んだ姿勢のまま、俯く。

その姿は魂が抜け落ちた殻のようで、円堂はこれ以上、何を言ったらいいか分からなくなってしまった。

 

 

「申し訳ありません…!」

 

その光景を後ろからずっと見ていたアドニスは、いたたまれなくなってしまい、つい謝罪の言葉を口にする。

それを聞いた鬼道は彼女へと顔を上げる。

 

「君は春奈の……なぜ君が謝る?」

 

以前に紹介してもらった、妹である春奈の友人。なぜ自分に謝罪して来るのか疑問だった。

 

「それは………」

 

 

アドニスが事情を説明しようとした、その時。

不穏な男の声がその場に響き渡った。

 

「ほう……敗者に挨拶をと思ったのだが雷門中もいるとは……」

 

帝国戦の時に逮捕されて行ったはずの影山が、いつの間にかグラウンドへと侵入して来ていた。

そのサングラスに隠された視線は鬼道へと向けられていた。

 

「影山!!なぜここに!」

 

ついこの間までは帝国学園の総帥だった彼。それが今は__

 

「どうだったかね?…私の率いる世宇子の力は。」

 

「!!」

 

世宇子という言葉に、鬼道だけでなくアドニスも驚愕する。

 

この人が___

 

 

「君は確か、世宇子の廊下で一度、すれ違った事があるね。アドニスさんで間違いなかったかな?」

 

影山は、今度はアドニスに向かって低い声で言った。

口元だけは笑っているように見えるが、もちろんそれは好意的な物ではない。

アドニスは何故だか分からない恐怖に包まれ、凍らせられたかのように動く事が出来ない。

だが影山は、彼女へ質問を続ける。

 

「差し支えなければ聞きたいのだが……なぜ世宇子から雷門に?」

 

この人が……この人が世宇子の監督だったんだ。

以前すれ違った時も嫌な予感を感じた。ここは何も言わない方が良い。

アドニスは質問に答えられないまま、時が過ぎるのを待った。

円堂も春奈も、その光景をただ見ているしかなかった。

 

「そんなに難しい質問だったかな?」

 

俯いたまま、何の言葉も発しないアドニスに影山は詰め寄った。

 

 

「きさまっ!いい加減にしろ!!もういいだろう、ここから去れ!」

 

その様子を見ていた鬼道が、影山へ喚いた。

 

「ふん。敗者には、もはや何の価値もない。」

 

影山は冷たく鬼道へ言うと、歩き出し出口へと向かい、その際に円堂とすれ違う。

 

「これからの活躍を期待しているぞ。…円堂守。」

 

そう円堂へと囁き、その場を去って行った。

 

 

「大丈夫だったか?」

 

鬼道がアドニスを気づかい、声を掛けた。そこに円堂と春奈も駆け寄る。

 

「はい、ありがとうございました。…あの………」

 

「今の話で君が世宇子出身だという事は分かった。だからさっきは俺に謝罪をしたんだな。」

 

「…はい。」

 

「でも今は雷門中の仲間だろう。君が気にする事では無い。油断していた俺達も悪いのだから。」

 

力無く発せられる鬼道の声。

 

「お兄ちゃん…」

 

「鬼道…」

 

春奈も円堂も、掛ける言葉が見つからないままであった。

 

「円堂。良かったな。もしお前達が世宇子と当たっても情報が分かるのだから。お前達は絶対に負けるなよ。……じゃあな。」

 

そう言い終えると、鬼道はその場を去ろうとした。

 

 

その時。鬼道目掛けてボールが飛んできた。

炎をまとった強力なシュート。こんなボールを投げる事が出来るのは___

 

 

「豪炎寺!」

 

「ここで諦めるのか!鬼道!!帝国のキャプテンとして、お前にはやらなければならない事があるんじゃないのか!」

 

いつの間にか豪炎寺も来ていた。

彼は普段は寡黙だがいざとなると炎の様に熱く変貌する男である。

 

「無理だ!帝国は敗退した。もう俺に出来る事など、何もありはしない!」

 

震えながら鬼道は叫んだ。

 

「方法が一つだけあるじゃないか!!それすらも今のお前には出来ないと言うのか!」

 

 

豪炎寺が言う方法とは____。

 

 

 

 

その頃。帝国戦を終えた世宇子。

 

 

「アドニス。可哀想に。」

 

1人で雷門中対野生中の試合の録画を見ているアフロディは、アドニスが活躍している箇所ばかりを何度も繰り返し見入っていた。

 

アドニスは…彼女はボクのものなのに。こんなに危険な試合をさせて怪我をさせたらどうするんだ。

この雷門中の奴らが彼女を上手い事たぶらかし、自分から彼女を引き離した。そうに違いない。

 

だが他にも気になるところがあった。

なぜアドニスが必殺技ディバインアローを使えるのか。

彼女にはサッカーの練習をさせた事はないのに。

 

アフロディはヘラに問い詰める。

 

 

「どうしてアドニスがキミの技を使えるんだ?」

 

ヘラの方が年上で先輩であるのだが、アフロディはいつものように偉そうなタメ口で口を聞く。

それに対し、ヘラは淡々とした様子で答える。

 

「…さあな。ここにいた時にずっと見ていたんじゃないのか?」

 

「キミが吹き込んだんじゃないのか?」

 

「そう思うなら勝手にそう思っていればいいだろう。俺は何も知らない。」

 

突っかかってくるアフロディに、ヘラは何ら動じる事なく軽くあしらい、その場を去って行ってしまった。

 

アドニスは自分に隠れてサッカーをしていたのか。どうしてそれにもっと早く気付く事が出来なかったのだろう。

あの勝負に打ち負かせた後以降、自分に対して従順になったと思っていた。

気付いて阻止していれば、彼女が離れていく事は無かったかもしれないのに。

神の力を得ても、彼女がいなければ……

 

アフロディは拳を握りしめ、その場に立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。