アドニスイナズマ転生物語   作:かんりにん

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20話 戦国伊賀島戦 忍者サッカー 

 

 

 

「アドニス。今日の試合はベンチに下がっていろ。」

 

鬼道が、淡々とアドニスへ出場禁止令を言い放った。

もちろん黙っているアドニスではない。

 

「そんな!何でですか!?」

 

「少し頭を冷やした方が良い。…足もな。」

 

「さっきの勝負の事ですか?…仕掛けてきたのは向こうなのに…。」

 

腑に落ちないアドニス。

鬼道は彼女の言い分を聞く事なく、さっさと自分のポジションへと行ってしまった。

 

どうして。

…もしかして自分が、帝国の仇である世宇子出身だから…なのだろうか。それが気になり、貶めようとしているのか?

色々と、悪い方向へ考えが行ってしまう。

 

そこに春奈が目の前へとやって来た。手には救急箱を持っている。

木野と夏未も心配そうに近くへと寄って来る。

 

「アドニスちゃん。足を見せてくれる?」

 

先程の競り合いの際に、強く蹴られてしまった足。

靴下を脱ぐと、その部分は腫れていた。

 

「あれ?!そんなに痛くなかったのに……」

 

つい、アフロディとの勝負の時の事を思い出してしまったアドニスは腹が立ってしまい、自分でも気付かないうちにヒートアップしていたのだ。

そのせいで蹴られた痛みも忘れていた。

 

「アドニスさん、勝負に没頭してたから。もう、無理しちゃ駄目だよ!」

 

横から見ていた木野に注意をされてしまい、シュンと黙り込むしかないアドニスであった。

 

「まあまあ、次からきちんと気を付ければ良いのよ。」

 

それをフォローする夏未。

 

そこに突然、少年の声が聞こえてきた。

いつの間にアドニスの目の前には、戦国伊賀島の選手が2人立っていた。物音も立てずにどうやって近付いて来たのだろうか。

 

「先程はうちの者が無礼を働いてしまい、申し訳ない。」

 

まるで雲のような…ふわふわとした薄い桃色の髪の少年__キャプテンである霧隠才次(きりがくれ さいじ)がアドニスに謝罪をする。

 

「小鳥遊もわざとやった訳ではない。どうか許してやっては頂けないだろうか。」

 

もう1人の、切り揃えられた黒髪に白い鉢巻を巻いている少年__風魔小平太(ふうま こへいた)も続いて謝罪をする。というよりは小鳥遊のフォローだ。

こう丁寧に言われてしまうと、アドニスは何とも言えない気持ちになる。

 

「い…いえ、私の方こそ熱くなり過ぎました。」

 

「すまない。許して頂いた事に感謝する。…では、御免!!」

 

謝罪を終えると2人は顔の前で指を2本立てた変なポーズを決め、目の前から姿を消した。

サッカーの時以外でも超次元は起こるようだ。

 

 

春奈から手当てをして貰い、ベンチに座るアドニス。

試合に出れなくなってしまったのは残念だが、試合をする前に熱くなり過ぎた自分も悪いのだから、仕方がない。

だから鬼道さんは自分をベンチへと下げたのか。自分が世宇子出身だから敵対されているという訳でなくて良かった。

 

そうこう思っていると、実況が掛かり、盛り上がり始めるスタジアム。

 

『全国大会二回戦、雷門中対戦国伊賀島だあぁ!!本日はどんな展開になるのかあぁ!?』

 

ホイッスルが鳴り響き、いよいよ試合開始だ。

アドニスはじっと目を凝らし、忍者というものがどのようにサッカーをするのかを見届けようとする。

 

キックオフが終わり、半田にボールが渡る。

豪炎寺へパスをしようとしたが、戦国伊賀島のディフェンスが立ちはだかる。

 

「伊賀島流忍法…くもの糸!」

 

「うわあっ!」

 

半田は、地面に張り巡らされた糸に足を取られ、転倒してしまった。そこで何とかボールを染岡が拾う、が。

 

「影縫いの術!」

 

「おわぁ!!なっ、影が?!」

 

影を取られ転倒してしまい、ボールも奪取されてしまった。

 

『忍術が炸裂!!これには雷門中も手が出せない!!』

 

そしてボールは小鳥遊へ。ゴールまでは距離があるのだが、彼女はそのままシュートを撃つ体勢へ入る。

 

「伊賀島流忍法っ、つちだるま!!」

 

技名を叫びながら蹴り出されたボールは、どんどんと土をまとっていき巨大な塊となってゆく。

 

「何だ?!ボールじゃないぞ!あれは!」

 

たじろぐ円堂。

だがその間にも巨大な塊は迫ってくる。それは岩のように重く固い。

 

「うわああっ」

 

ゴール直前で土は弾けていき、ボールはいつの間にかゴールへと突き刺さっていた。

 

『ゴオーールッ!その迫力には円堂も反応出来ない!戦国伊賀島の小鳥遊の、つちだるまが決まったあぁーー!!』

 

「あはははっ、思い知った?これが忍者よっ!」

 

先制点を取った小鳥遊は、得意気に両手を胸の前で組み、人差し指を立てて忍者のポーズを決める。

 

「すごい…!あれが忍術なんだ!」

 

ベンチから見ていたアドニスも、その迫力に驚く。そして小鳥遊がしている忍者のポーズをこっそりと真似する。

 

「アドニスちゃん、ノリノリだね…。」

 

横から見ていた春奈が苦笑いをしながら、ツッコミを入れる。

 

だが、雷門は先制点を取られてしまった。

次はつちだるまを止める事が出来たとしても、くもの糸や影縫いを突破しなくてはゴールへ近付く事が出来ない。これは相当の速さを持っていないと躱す事は難しい。

この状況をどうすれば突破できるのか。

 

 

「…見えたぞ。」

 

ピッチの中から試合を見ていた鬼道は、何かを閃く。

 

 

『先制点を取られた雷門、巻き返しなるかあー!?』

 

「皆、ボールを出来るだけ持たずにまわすんだ!!」

 

試合再開早々に雷門イレブンへ指示を出す鬼道。

なぜそうするのか分からない一同だったが、彼の言う通りに、素早くボールを回す。

 

「上がれ!風丸!!」

 

風丸は頷き、その青い髪を靡かせながら前線へ向かって走り出す。

鬼道が、走り出した風丸へボールをパス。

 

「くもの糸!」

 

「影縫い!!」

 

風丸からボールを奪おうと、戦国伊賀島の選手達は次々と忍術を使う。

しかし。

 

『風丸、何という速さだ!戦国伊賀島の技を軽々と突破していきます!!』

 

前線へ辿り着いた風丸に、豪炎寺が駆けつける。

 

「行くぞっ!豪炎寺!」

 

「ああ!」

 

そのまま必殺技の体勢へ入る2人。

同時にボールをそれぞれ逆方向から蹴り上げスピンを掛け、空中へと舞い上がったボールを今度は上と下から同時に蹴り、ゴールへと叩き込む。

 

「炎の風見鶏!!」

 

炎をまとった巨大な不死鳥が現れ、その迫力は戦国伊賀島のゴールを揺らした。

ゴールキーパー百地(ももち)は無言のまま項垂れる。

 

雷門1ー1戦国伊賀島

 

「そうか。風丸の速さなら影縫い、くもの糸にも捕まらない!」

 

鬼道の指示に感激する円堂。

サッカー部に来る前は陸上部のトップだった風丸は、素早さも並外れている。戦国伊賀島の忍術を軽やかに躱す事が出来るのは彼のみだろう。

それを鬼道は汲み取っていたのだ。

 

「うそぉっ!点…取られちゃったわよっ!」

 

同点へ追いつかれてしまい、慌てる小鳥遊。

 

「案ずるな。まだ忍術はあるだろう?まだまだこれから忍者サッカーを見せてやろうぜ!」

 

キャプテンの霧隠にそう言われ、それもそうだと彼女はニヤリと笑みを浮かべた。

 

そして、戦国伊賀島からのキックオフで試合再開。

すかさず、風丸がボールを奪った。

 

『雷門、ディフェンスの風丸が華麗な速さでオーバーラップ!!また炎の風見鶏を仕掛けるのかあぁー!?』

 

ボールをまたも前線へ運び出そうとする風丸に、霧隠が迫った。

 

「速いのは自分だけだと思うなよ!伊賀島流忍法…残像!」

 

「何っ!?」

 

霧隠の必殺技、残像によって錯乱させられた風丸はボールを見失ってしまう。

 

伊賀島流蹴球戦術(いがじまりゅうしゅうきゅうせんじゅつ)偃月(えんげつ)の陣!!」

 

「承知!!」

 

何やら、技の指示を出し始めた戦国伊賀島ミッドフィルダーの初鳥。

すると、集まった8人がVの字を作る様に走りながら広がっていく。それは土煙を巻き上げていき、もの凄い勢いで雷門陣地へと向かってくる。

それはまるで…巨大なイノシシのようでもあった。

 

 

「何だこれ…うわああっ!」

 

「くっ!こんな技を持っていたとは…!」

 

「うわあ!!」

 

どうする事も出来ずに弾き飛ばされてゆく雷門メンバー。

 

「みんな!……あんなのって、ありなの?」

 

その光景に、目を見開きながら木野が呟く。

 

 

__忍術。戦国伊賀島の必殺タクティクス。8人であんな技をやってのけるなんて。…あれが忍者サッカー!!

何て見応えのある迫力なのか。

アドニスは怪我をしているという事も忘れ、既にその試合に夢中になっていた。

 

そして次の瞬間、土煙の中からボールを持った霧隠が飛び出し、雷門ゴールへ走り出した。

それを阻止しようと風丸が立ちはだかる。が。

 

「残像の術!!」

 

またしても残像により惑わされ、あっさりと抜かれてしまった。

 

「しまった!壁山!止めろーーっ!」

 

風丸が壁山に向かって叫ぶ。

今ゴール前にいるのは彼1人。

 

「えっ、えええ?!お、俺だけッスか!?そんな…」

 

慌てふためく壁山に、霧隠が迫る。

 

「くらえ、つちだるま!!」

 

先程の小鳥遊が使用した技。それを今度はキャプテンの霧隠が使用する。

ボールは土をまとっていき巨大な塊となってゴールに向かう。

 

「うおおおっ、通さないッス!!」

 

壁山が円堂の前に聳え立ち、巨大な壁となった。

その威力は、つちだるまの力を抑え込み、威力の弱くなったボールは、すっぽりと力無く円堂の手に収まった。

 

『何とっ雷門ディフェンス壁山によるシュートブロック!!まるでそそり立つ壁のようだあーーっ!!』

 

「すごいじゃないか!壁山!!」

 

「ナイス!さすが雷門ディフェンスだな!!」

 

「は…はいッス!!」

 

円堂と風丸から褒められ、照れる壁山。

まさか自分があんな強烈なシュートを抑えられるとは思ってもいなかった。

 

 

「今のは…ザ・ウォールと命名しましょう。」

 

ベンチから見ていた目金が、その眼鏡を光らせながら技名を付けた。

 

 

「何だと!?」

 

自身のシュートを止められてしまい驚く霧隠。

そこに小鳥遊が走り込んできた。

 

「今度はあたしがっ!…分身シュート!!」

 

3人へと分身しボールを蹴り出す小鳥遊。

分身したそれぞれが力を合わせ、その威力は3人で蹴ったものと変わらない。

 

「ゴッドハンド!!」

 

その凄まじい威力のシュートを、円堂は無事に止めてみせた。

 

「…っ、そんなっ」

 

こんなにも簡単に止められてしまうなんて。小鳥遊は意気消沈としてしまった。

 

ボールは円堂から風丸へと渡る。

風丸は迅速に戦国伊賀島ゴールへ走り出した。

 

『円堂止めたぁーっ、さあ、息つく間もなく風丸が上がっていく!残り時間もあとわずか!!』

 

「風丸!跳べ!!」

 

鬼道が叫ぶ。

 

「!!」

 

風丸は言われた通りに高く跳び上がった。

鬼道はボールを、跳び上がった風丸へとパスした。

 

「それをヘディングで打ち返せ!」

 

「おうっ!」

 

初めての技であったが、風丸は瞬時に理解した。この技は帝国戦の時に見た鬼道と佐久間の技だ。そして見事ヘディングを決めボールに力を蓄え、それを鬼道へと返す。

そのボールを鬼道がゴールに向かって更に加速をさせながら蹴り出す。

 

「ツイン、ブースト!!」

 

それは帝国の技。今は雷門の技となって、戦国伊賀島ゴールをおびやかす。

 

「伊賀島流忍術…つむじ!」

 

キーパー百地による、巻き上げられた2対のつむじ風は、ツインブーストをからめとろうとした。が。

風に捕らえられる事なく、シュートはゴールへ突き刺さっていた。

 

『雷門、ゴォール!!帝国だった頃の鬼道の必殺技ツインブーストが決まり、見事ゴールを揺らしたあーっ!!』

 

「すごい……すごいじゃないかっ!鬼道、風丸っ!!」

 

円堂は感激を隠せず、目をキラキラと輝かせた。

それは円堂だけでなく、他の雷門メンバーも同じであった。

 

ハイタッチをする鬼道と風丸。

 

 

雷門2ー1戦国伊賀島

 

『ここで試合終了っ!!全国大会二回戦突破は雷門中だあーーっ!!』

 

「あたし達が……負け、た?」

 

戦国伊賀島の敗北。

その場に座り込む小鳥遊。

そこに、アドニスが近付いて来た。

 

試合前に怪我をさせてしまった事を怒りにでも来たのか。小鳥遊は座ったまま身構える。

 

「何?恨み言でも言いに……」

 

「忍者ってすごいんだね!」

 

「…!」

 

「戦国伊賀島の必殺技、見ているだけでも凄かったよ!」

 

アドニスからの思いもしない発言に小鳥遊は目を見開く。

彼女は立ち上がり、少し目を逸らしながらアドニスの方へと向き直る。

 

「さっきは…ごめん、なさい。あたしのせいで……」

 

ぼそぼそと、ではあるが申し訳なさそう顔を俯かせながら謝罪の言葉をアドニスへ綴る。

 

「ううん。そんな事全然いいの。」

 

彼女達はどちらからともなく手を差し出し握手を交わし、笑顔を浮かべる。

 

「小鳥遊。また修行の日々だ。もっともっと強くなって、その時にまた戦えばいい。俺もあの風丸とかいう奴に負けたままでいたくないからな。」

 

「そうねっ!あたし達だってもっと強くなってやるんだから!」

 

キャプテンの霧隠に言われ、元気を取り戻す小鳥遊。

 

 

こうして第二回戦も無事、雷門中の勝利となった。

 

 

 

 

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