アドニスイナズマ転生物語   作:かんりにん

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23話 木戸川清修戦 3兄弟の力!

 

 

 

準決勝の前日の事。

次の対戦校の事を春奈から聞かされたアドニスは、足の怪我が完全に治った訳ではなかったがサッカー部へと向かっていた。

部活動の時間としてはまだ少し早いが、誰かがいるかもしれない。

 

グラウンドからボールの音が響いてくる。その方向に目を向けると豪炎寺が1人でボールを蹴り、練習をしていた。

アドニスはそのまま足に無理がない程度に軽く走り、彼へと近付く。

 

「……豪炎寺さんは怖くないんですか?」

 

そう恐る恐る豪炎寺へと尋ねる。あまり彼とは会話をした事が無かったが、どうしても聞かずにはいられない事があった。

 

「前の学校の人達と対面して…試合するなんて……」

 

その質問を聞き終えた豪炎寺は静かにアドニスの方を向くと、ゆっくりと口を開く。

 

「怖がってどうする。…俺は今は雷門の一員なんだ。なら雷門の生徒として正々堂々とサッカーをする。それだけだ。」

 

豪炎寺はいつものように淡々と語るが、それはどこか熱意や強さが込められている……そんな口調だった。

もうサッカーに嘘はつけない。真っ直ぐな彼の瞳にはサッカーに対する強い意志が写っていた。

 

「俺はこの試合は絶対に勝つ。そして決勝進出は必ず果たす。」

 

「!」

 

「……だからお前も決勝戦は絶対に逃げるな。」

 

そう熱く、だが静かに最後にそれだけを言うとその場を去って行った。

 

決勝戦…………それも春奈から聞かされていた。

 

彼らと対立する日。その時はいずれやって来る。

言われずとも、逃げるつもりなど一切ないアドニスであったが、彼の言葉はどこか胸に突き刺さるものだった。

 

 

 

 

そして翌日。

フットボールフロンティア試合会場。いよいよ木戸川清修との準決勝の時。

足は治ってきていたものの、アドニスは念の為見学という事にしていた。またここで足を悪化させてしまうと決勝戦の世宇子と戦えなくなってしまう。

それだけは避けたかった。

 

全員でスタジアムに向かう途中。廊下で木戸川清修のメンバー達とすれ違う。

あの人達が、豪炎寺さんの前の学校の……

アドニスも、これから似たような事に直面する時が来るのだ。つい身構えてしまう。

 

中でも特に特徴が強い3つ子ストライカー、武方兄弟は目の敵である豪炎寺へ口々に不満を吐露する。

 

「今回は逃げなかったようですね。臆病者さん。」

 

「ま、せいぜい楽しませてくれよ。…みたいな?」

 

「この1年でお前の力が鈍ってなければいいけどな。」

 

それだけ言うと、一足早くスタジアムへと向かって行く彼ら。

 

「待てよ!豪炎寺はそんな奴じゃないっ!!」

 

去って行く彼らに向かって力強く叫ぶ円堂。

その肩に豪炎寺が手を乗せる。

 

「俺は正々堂々と戦う。…それだけだ。」

 

いつもと相変わらず淡々と円堂を宥める豪炎寺。

 

逃げた?臆病者?……豪炎寺さんが?どういう事だろう。

3兄弟から飛び出してきた気になるその単語。アドニスは豪炎寺の事情は全く知らない。

その言葉が気になったアドニスは春奈へと尋ねた。

 

「ねえ、あの人達が言ってた…逃げた、とか臆病者ってどういう事か分かる?」

 

「ああ、あれは……これは私も夏未さんから聞いた事なんだけど……」

 

聞かれた春奈は去年、豪炎寺に起こった出来事を話す。

それは彼がフットボールフロンティアに出場する直前で起こった事。その試合を見に行く為に、試合会場へ向かっていた小さな女の子が大型トラックに轢かれてしまい意識不明の重傷を負ってしまった。その女の子というのが……

 

「豪炎寺さんの…妹?!」

 

その出来事を聞き驚愕するアドニス。まさかそんな事があったなんて……

 

「うん。その事故の事を聞いた豪炎寺さんは、試合どころではなくなって速攻で病院へ向かったの。そして病院の近くに引っ越して雷門中に転校して来たんだ。」

 

それで、木戸川清修の人達はあんなに敵対した目で彼に文句を言っていたのだろうか。

 

「で、でもそんな事があったのなら、豪炎寺さんは皆にその事を話さなかったのかな?」

 

「うーん、豪炎寺さんもあの性格だから…」

 

事情があったとは言え仲間達を置いてけぼりにし、試合を放棄してしまった。

寡黙で真面目な性格を持つ彼は、どのような理由があろうとも言い訳にしかならないと考えたのだろう。

そしてけじめを付けるため、何も言わずに転校した。

しかしそれでは、木戸川清修のチームメイト達からは逃げたんだ、と捉えられても無理はないだろう。

 

そう色々と思っていると実況が始まり、観客達に試合開始を知らせる。

 

『昨年優勝を逃した雪辱を果たす為にも負けられない木戸川清修!!そして対する雷門中にも40年ぶりの決勝進出が掛かっているっ!!これは熱い戦いになる事間違いなしだっ!』

 

試合開始のホイッスルが鳴り響いた。

 

『さあ、キックオフだあーっ!』

 

キックオフと同時に武方3兄弟が凄まじいスピードで上がってきた。3人で見事にパスを繰り返しながら、そのまま進んで来る。

 

「てやあっ!」

 

それを止めようと染岡がスライディングを仕掛けるが、あっさりと躱される。

そのまま走り続ける武方に立ち向かう豪炎寺。

 

「…来い!」

 

「見せてやる。お前がいなくても俺達の本当の力は…!みたいなっ!!」

 

その迫力に気圧されてしまう豪炎寺。

 

「俺達はこの1年間、必死に練習して来たんだ!」

 

「豪炎寺修也…あなたを超える為にっ!」

 

3人はそのまま見事な連携プレーにより、1人はボールを蹴り上げ、1人は踏み台になり、1人がシュートを決めた。

シュートを決めた後なのにも関わらず3人合わせて三角形を描いたような形になり、まるで戦隊もののような奇妙な決めポーズを披露する。

 

「トライアングルZ(ゼット)!!!」

 

これにはベンチから見ていたアドニス達は唖然とした。

 

「な…何あの技………」

 

「3人の連携が見事に決まっている。ポーズは面白いかもしれんがあの迫力は相当だぞ。」

 

響木監督が呟いた。

彼の言う通り、ボールは鋭い軌道を描きながら雷門ゴールへと向かっていた。

円堂は必殺技を構える。

 

「はああっ、ゴッドハンド!!」

 

ボールを受け止める。だが、その技は徐々にヒビが入って行き、崩れ去ってしまった。

ボールはゴールに突き刺さる。

 

『ゴオーールッ!木戸川清修ッ、開始早々先取点を取ったぁーーっ!!3人合わせた力は強烈だ!!』

 

「フッ、どうだ、豪炎寺!!…みたいな。」

 

無事に先制点を奪った武方兄弟はニヤリと意地汚く笑って見せた。

だが、豪炎寺も黙ってそれを見ている訳では無い。

 

「そっちが3人で来るというのなら………こっちも3人で行くぞっ!」

 

豪炎寺がそう言い前線へ走り出すと、ボールを持ちながらそれに続く鬼道と染岡。

染岡は前へと走り続け豪炎寺に追いつく。立ち止まった鬼道が指笛を吹いた。すると可愛らしいペンギンが5体、ピョコピョコと地面から顔を覗かせた。

 

「あの技は…!」

 

「皇帝ペンギン!」

 

まさかここでその技が見れるなんて。

帝国最強の技に、アドニスと春奈は思わず感嘆の声が漏れる。

鬼道が蹴り出したボールにペンギン達がまとわり付き、それを更に豪炎寺と染岡が木戸川清修のゴールに向かって蹴り出す。

 

「皇帝ペンギン2号!!!」

 

それは全国最強と謳われた帝国学園の強力な必殺技。

今は雷門の必殺技となり、目つきが鋭く変わったペンギン達が木戸川清修のゴールに向かって進んで行く。

 

ゴールキーパーの軟山(なんざん)は、迫って来る強力なペンギン達に反応する事が出来なかった。

 

『雷門、ゴール!!凄まじい皇帝ペンギン2号の威力!!これで同点に追いついたぁ!!』

 

「やったな!豪炎寺!」

 

「ああ。」

 

ハイタッチを交わす染岡と豪炎寺と鬼道。

それを横目に集まる武方3兄弟。

 

「クソッ…あんなのありかよ!みたいな!!ていうかそこは2号じゃなくて3号にするべきだろ!」

 

「悔しいですが、さすが豪炎寺修也ですね。腕は…いや足は衰えていないようです。」

 

「でもトライアングルZなら、あの熱血キーパークンは止められないみたいだから…」

 

「後半はガンガン攻めていくっ!みたいな?」

 

3人は顔を合わせ、ニヤリと笑いながら頷く。

 

 

そして後半戦。

ボールを持った武方3兄弟が雷門ゴールへ向かい走り出した。

 

『おおーっと!木戸川清修、またも速攻で攻め上げていく!!』

 

相変わらず3人の息の合ったプレーにディフェンス陣はボールを奪う事が難しく、進行を許してしまった。

 

「俺達3兄弟が力を合わせればこんなもんよ!!」

 

ゴール前に辿り着いた武方兄弟は、トライアングルZの体勢に入る。1人がボールを蹴り上げ、1人が踏み台になり、1人がシュートを撃つ。

 

「…!」

 

先程は止める事が出来なかったその技に、円堂は更に気合を入れて構える。

 

「ゴッドハンド!!」

 

技は発動するものの、武方3兄弟の力も相当強い。

1人の力では及ばずとも2人3人になっていけば小さな力は大きな力となるのだ。

 

ここで点を入れさせる訳にはいかない…!

満身の気合を込めつつも、徐々にボールに押されて行く円堂。

1人では…3人の技を止められないのか。

 

「キャプテン!」

 

「俺達も一緒ッス!」

 

そこに、栗松と壁山が円堂の背を支えながら押し始めた。

 

「お前達…!」

 

円堂1人の力に栗松と壁山の2人分の力が加わり、3人分の力となる。1人だけでは成し遂げられない事だって、こうして仲間の絆…力が加われば……

その力はトライアングルZを完全に押しのけ、ボールは円堂の手に収まった。

 

『雷門、キーパー円堂に、壁山と栗松が加わり3人で無事にトライアングルZを防いだあーーっ!!』

 

「やったぜっ!栗松、壁山!サンキュ!!」

 

「キャプテン!やったでやんす!!」

 

「良かったッス!!」

 

ひしっと抱き合う円堂と栗松と壁山。

 

「…あの3人合わせて力を発揮する技は……トリプルディフェンスと命名させて頂きます!」

 

いつものようにベンチから目金が技名を付けた。

 

技を止めた事は雷門にとっては喜ばしい事でも、木戸川清修にとっては思わしくない状況である。

 

「何だと!?」

 

「俺達の技が…」

 

「止められた?!……みたいな。」

 

絶対にゴールは決まると確信していた武方兄弟は落胆する。が試合時間は残りわずか。

ボールは円堂から豪炎寺へと渡る。

 

「時間がない!一気に行くぞ。」

 

一気に前線へと駆け上がった豪炎寺はボールを蹴り上げシュート体勢に入る。

 

「あ、あれは…!」

 

「豪炎寺の必殺技!」

 

1年ぶりに見るエースストライカーの必殺技。衰えていないその威力に、木戸川イレブン達は思わず食い入るように見つめる。

 

「ファイア、トルネード!」

 

炎の渦巻きにより猛火をまとったボールが蹴り出され、つい見入ってしまっていた軟山は慌ててキーパー技を繰り出そうとするも間に合わなかった。

 

『雷門、ゴォール!!これで逆転だあっ!豪炎寺のファイアトルネードが決まりましたぁー!!』

 

雷門2ー1木戸川清修

 

雷門に得点が追加された直後に、終了のホイッスルが鳴り響いた。

 

『ここで試合終了ですっ!決勝戦進出は……雷門中だあーっ!』

 

 

「そんな…何で僕達が……」

 

「やっぱり天才には…豪炎寺には適わないって言うのかよぉ…!」

 

「くそ、どうしてあんな…去年逃げ出した臆病者なんかに負けるんだ!」

 

口々に悔しさを噛み締め、項垂れながら涙を流す武方3兄弟。

それは他の木戸川清修イレブンも同じであった。

あと一歩のところで準優勝を逃し決勝進出も果たせず、何より見返してやりたかった豪炎寺に勝つ事が出来なかった。

 

そこに見兼ねた夏未が豪炎寺を連れて歩み寄る。

 

「それは違うわ。彼は臆病者なんかではなくてよ。」

 

夏未の言葉に3人は顔を上げる。

 

「ほら、豪炎寺君。今こそ彼らの誤解を解いてあげたらいかがかしら。」

 

「………ああ。」

 

豪炎寺は去年自分がした事の真相を、話しづらそうにしながらも弁明していく。

試合が始まる直前、妹が事故に遭ってしまい重傷を負ったため、試合に出る事は出来なかった事。

妹の為にも木戸川清修の仲間達の為にも、けじめをつける為サッカーは封印するつもりでいた事。

でも円堂の説得によって、それで妹への…仲間達へのけじめがつく訳では無い、と考え直し再びサッカーを始めた事。

 

それを大人しく聞いていた武方兄弟。

 

試合には欠かせない存在である天才ストライカー豪炎寺。

去年は彼がいつになっても試合に来なかったから、来てくれなかったから自分達木戸川清修は優勝を逃し敗北した。

あいつは怖くなって自分達を見捨てて逃げた。臆病者。ずっとそう思っていた。

 

「そんな事があったんですか…」

 

「言い訳したくないなんて確かにお前らしい…みたいな。」

 

「でも一言くらいは言ってくれても良かったのに…」

 

自分達は結局、豪炎寺1人に頼り過ぎていた。彼さえいれば勝利は間違いないと妄信していたのだ。

本当に臆病で弱かったのは自分達だった。

 

3人はそれぞれ顔を見合わせると豪炎寺へと向き合った。

 

「豪炎寺。…俺達の代わりに絶対に優勝してくれよ!!」

 

彼へエールを送ると手を差し出し、それぞれ握手をする。

 

「ああ!!」

 

普段は感情をあまり表に出さない豪炎寺だったが今の彼の表情は朗らかな笑顔を浮かべていた。

その様子を見つめているアドニス。

 

豪炎寺さん、皆と和解出来て良かった。

……いよいよ次は。

 

ここまで来れた事に自分は喜ぶべきなのだろうか。

雷門の決勝戦進出に喜びを感じると共に、どことなく押し寄せてくる不安心。戦い抜く事が出来るだろうか。

次の決勝戦の事を考えてしまうアドニスの顔は、曇りを見せていた。

 

 

 

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