アドニスイナズマ転生物語   作:かんりにん

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29話 世宇子戦 戦いの果てに

 

 

 

「ボクは……ボクは確かに神の力を手に入れたはずなんだあぁ!!」

 

アドニスによる魅了状態からようやく目を覚まし、2点も追い上げられていたアフロディは顔色が青ざめていた。もう完璧な勝利を影山総帥に捧げる事は出来ない。

それでも神が負けるはずが無いと、素早いドリブルで雷門ゴールへ……円堂へと迫る。

 

円堂の前に辿り着くと6枚の翼を背に具現化させ、空へと飛び立ち技の体勢に入る。

白い稲妻がボールを包み始めた。

 

彼は、雷門は既に限界のはず。今度こそ終わりだ!神の前に倒れ伏せばいい!!

 

「ゴッドノウズゥッ!!!」

 

余裕を失い、明らかに動揺の隠しきれていない声で必殺技を叫びボールを蹴り出す。

しかし。

 

「マジン・ザ・ハンド!」

 

またも円堂の魔神によって止められてしまう。

 

「そんな……!」

 

アフロディが驚愕し立ち止まっている間にボールは円堂から鬼道へ渡される。そのまま渾身の力で上がっていく。

しかし、ディフェンスのディオが立ち塞がった。

 

「メガクエイク!」

 

地面が抉れ盛り上がり、鬼道はバランスを崩してしまう。ボールは鬼道から離れていく。

 

「くっ!」

 

ここまで来て、奴らにボールを渡す訳にはいかない!!

鬼道は力を振り絞りヘディングで豪炎寺へボールを託した。そこに風丸が走り込む。

2人で同時にボールをそれぞれ逆方向から蹴り上げ、スピンを掛けると空中へとボールが舞い上がる。それを上と下から蹴り出すと、けたたましい咆吼(ほうこう)を上げた巨鳥が現れた。

 

「炎の風見鶏!!」

 

その炎をまとった巨鳥は風見鶏というより、神と同等の存在である不死鳥。その威力に押され、ポセイドンは技を発動させる事が出来なかった。

 

「ぐわああーー!」

 

豪炎寺と風丸の連携技が決まり、ようやく同点へと追いついた。

 

『雷門、同点に追いついたぁーー!このまま逆転なるか!?だが残り時間もあとわずか!このまま延長戦突入かぁーーっ!!?』

 

延長戦に入ってしまうと自分達雷門は、今度こそ体力が持たないかもしれない。

円堂は残っている力を振り絞り、全速力でゴールから離れ前線へと走り出す。

せっかく…アドニスが全力を尽くして流れを変えてくれたんだ!それを無駄にしない!!

ここまで一緒に戦い抜いてくれたみんなの為にも!!じいちゃんの為にも!!

 

___絶対に、負けやしない!!!

 

「オレ達は…」

 

「最後の1秒まで…」

 

「諦めないッ!!」

 

円堂、鬼道、豪炎寺の3人による最強の連携技。

天から落ちる紫と黄色の激しいイナズマがボールにまとう。それはまるで、神話の主神ゼウスが怒りのままに振り下ろす、この世の全てを焼き尽くしてしまうかのような強大なイナズマ。

その凄まじい迫力に、観客達は最後まで見届けようと目を見張った。

 

「イナズマブレイク!!!」

 

__もう敵わない。彼らに神の力は通用しなくなってしまった。アフロディは絶望に目を見開く。

神としてのプライドは打ちのめされ目の前が真っ暗になる。

いや、最初から自分達は………

そして遂に戦意喪失をしてしまい、その美しい金髪が地面に付く事も構わず、その場に項垂れてしまった。

 

人間に負ける。神が、負ける___

それは世宇子の敗北を表していた。

 

「う……うわあああぁ!!」

 

収まる事のない雷門の威力にポセイドンは恐れをなし、遂にゴールを捨て逃げ出してしまった。ゴールキーパーとしてあってはならない姿だが、強大なイナズマを目の前にしては海神ですら敵わないのは誰が見ても一目瞭然だった。

 

『雷門、遂に逆転だああああぁーーっ!!神の力を打ち破りましたあーーっ!!』

 

雷門4ー3世宇子

 

電光掲示板に表示された雷門の点数が世宇子を上回る。

何重にも鳴り響く得点のホイッスル。__それと同時に試合終了。

 

『フットボールフロンティア決勝戦はっ!激しい激闘の末、雷門中の逆転勝利だアァーーーッ!!!』

 

実況の声が、観客席からの歓声が、スタジアム全体に盛大に響き渡る。

遂に、遂に勝ち取った。

勝利の女神は雷門中へと微笑んだのだ。

 

「すごい…!雷門中……!!」

 

「あの状況から勝利するなんて!」

 

「ま、まあ俺は最初から雷門が勝つって信じてたけどな!」

 

その予想もしていなかった結果に、観客達は感嘆の声を漏らす。

そして勝利を祝福する紙吹雪が舞い、会場全体に雷門!雷門!とコールが響き渡る。

 

「…っ!勝った……勝ったぞオーーーーッ!!」

 

喜びに興奮する円堂。先程までの疲弊はすっかり忘れて満面の笑みを浮かべ、豪炎寺と鬼道と肩を組み合う。

普段はクールな2人も、激闘の末の勝利に顔をほころばせた。

 

「俺達…勝ったんだ………」

 

「そうッスよ…!勝ったんスよ!」

 

雷門イレブンも響き渡るコールに答え、観客席に向かって手を振り始めた。ただ1人を除いては。

 

「やったね!アドニスちゃんっ!!雷門が勝ったんだよっ!」

 

春奈が何故か先程から俯いて動かないアドニスに声を掛ける。円堂も喜びを分かち合おうと、彼女の所へと駆け寄ろうとした。

その瞬間、その場にドサッと乾いた音が響く。

 

既に力を消耗し尽くしていた__アドニスが意識を失い倒れたのだ。

 

「アドニスちゃん?……そんな、アドニスちゃんっ!!!」

 

春奈の叫び声に、全員が一斉に彼女を見る。

円堂以上にアフロディの猛攻を受けていたアドニス。その上、強力な技を多用した為、彼女の身体は既に限界に達しており、皆と勝利の喜びを分かち合う前に耐えられなくなっていたのだった。

 

「…っ!!」

 

驚きと悲しみに我に返り、雷門中のメンバーの誰よりも早く。

 

「アドニスッ…!!」

 

倒れてしまった彼女へと一瞬で駆け寄った者がいた。

 

『キミにはサッカーは危な過ぎるんだ。キミには怪我をして欲しくないんだよ。危ない事をして、もしもの事があったら…』

 

かつて彼女にそう言ったはずの自分を悔いながら。

 

 

 

 

 

ああ…自分はまた……死ぬ事になるのか。

今度はイノシシではなくサッカーボールにやられてしまうとは…。

 

アドニスは無意識の中で、真っ暗な空間を感じていた。

とりあえずはまだ生きているようだ。今のうちに何か……何かを考えなくては。

 

前世の狩りの事も今世のサッカーの事も、好きな事にはつい夢中になり過ぎてしまった。まさかそのせいで2度も命を落としてしまう事になるとは。

自分は熱くなると止まれない性質を持っていたのか。

だから前世でも、イノシシを仕留めようと決めたらどんなに危険な事でも引き下がれなかった。

結局、強い英雄になる事は出来なかったけど。

 

でも、この世界では好きな事を一生懸命にやり、最後は雷門中の皆と勝利を掴む事が出来た。後悔という言葉は全然出て来ない。思い切り活躍する事が出来て、嬉しかった。

すごく楽しかった。この世界に転生する事が出来て本当に良かった。

 

さて。今度ばかりは生まれ変わる…なんて事はないだろう。そのままゆっくりと目を閉じ、自分という存在が薄れていくのを感じ取る。

不思議と怖くはない。

 

 

___嫌よ、アドニス。お願い。私を悲しませないで。

 

「…!!」

 

また、どこからか声が聞こえた気がした。時々聞こえてくる神々しくて美しい___この声は____

 

 

 

「…ん。……んん。」

 

彼女の目は再び開かれた。

白い天井。白いベッドにアドニスは寝かされていた。身体の節々に痛みを感じる。

自分は生きているのか?そう思いながら少しだけ顔を上げると腕には点滴が繋がれている。

その反対の腕には_____

 

長い金髪の人物が、アドニスの腕の辺りに顔を埋め震えながらうずくまっていた。

 

「……泣いているんですか?」

 

小さな声で、アドニスはその人物に声を掛ける。

その声に、人物はハッと顔を上げアドニスの顔を見つめる。その紅い瞳には涙が溜まっていた。

ずっと泣いていたのだろうか。泣き腫らした目は更に真っ赤になってしまっていた。

 

「…アドニス…………アドニスッ………」

 

「…ふっ、ふふ…酷い顔ですね、アフロディーテ……いやアフロディさん。」

 

彼のその泣き顔を見たアドニスは、つい小さく笑い出してしまうが、そんな事はお構いなしに、アフロディは寝たままのアドニスの肩に顔を埋めてきた。

その涙に肩が濡れてゆく。

 

「ごめ…ごめんね……アドニス……」

 

震える声で彼女に謝罪の言葉を綴っていく。

 

「どうして謝るんですか?あなたは悪くないのに。」

 

神のアクアの件なら、どうせ影山が唆したのだろう。

良い年をした大人が子供を騙すなんて。責めるべきはアフロディではない。

彼の背中に片腕を回し、その金髪を撫でる。アドニスの優しい声に更に涙が出てきてしまう。

 

「…うっ……うう………」

 

何を話し掛けても、アフロディは泣きじゃくるか謝るかのどちらかだった。

前世でイノシシに追突され、命を落とした時も女神アフロディーテは、こんな風に泣いてくれていたのだろうか。

 

このままでは何も会話が出来ない。とにかく、彼が落ち着くのを待つ事にした。

 

 

 

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