アドニスイナズマ転生物語   作:かんりにん

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エピローグ 

 

 

 

古代ギリシャを思わせる、世宇子中の白いユニフォーム。

以前、この学校にいた時は貰う事が出来なかった。

 

今、アドニスはそのユニフォームに袖を通す。

サイズもぴったりと合い、まるで以前から着ているかのように彼女に馴染んだ。

鏡で確認し、着替えを終え更衣室を出ると、入り口にはアフロディが待っていた。

 

「…!」

 

彼はユニフォーム姿のアドニスを見るなり、その場に固まってしまった。

自分と同じユニフォームへと身を包んだ彼女。

それは似合っているという言葉だけでは足りず、何と表現していいのか分からない。顔が熱くなり体温が上昇していき、鼓動が速くなる。

 

「変、ですか?」

 

自分を見て動かなくなってしまった彼に、アドニスは恐る恐る尋ねる。

アフロディはその声に我を取り戻す。

 

「ううん、そんな事ない。とても…すごくよく似合っているよ。アドニス。」

 

以前より彼女が自分の傍にいてくれるのだという事を強く実感する。

でも、これでいいのだろうか。

 

「アドニス。今更だけど…本当にいいのかい?世宇子に戻って来て。知っての通り、ボク達は大きな過ちをしてしまった。ここに来たら、キミも……」

 

「それ以上言ったら…また雷門へ戻りますよ?」

 

アドニスはニコリと笑いながら彼の言葉を遮った。

 

「鬼道さんからも言われたんです。世宇子が同じ事をしでかさないように見張ってやれって。」

 

「鬼道君が?」

 

「はい。それに。キャプテン達もサッカー大好きですよね?私は今度こそ、皆とサッカーをしたいんです!」

 

「アドニス…!」

 

抱き付こうとしてきたアフロディを、今度こそ上手くかわす。

またベアハッグをされたら、たまったものではない。

 

 

「よく似合ってるじゃないか。」

 

「おお!ピッタリだね!」

 

ヘラとデメテルを始め、他の部員もアドニスの前へ集まってくる。

改めて、これから仲間となる彼らに1人ずつ握手をしていく。

 

「はは。戻って来てくれたんだ。よろしくね。」

へパイス。

 

「おかえり。ようやく本当の仲間になれるんだな。」

アテナ。

 

「戻って来たんだねぇ。アドニスちゃん。」

ディオ。

 

「これから頑張ろうぜ!」

アポロン。

 

「お前がいないとキャプテン怖えんだよ。」

ヘルメス。

 

「あの時の弓…凄かったですよ!」

アルテミス。

 

「……よろしく。」

アレス。

 

「お前の弓矢、怖かったぞ!……次は手加減してくれ。」

ポセイドン。

 

 

全員との挨拶を済ませ、その日は過ぎていった。

 

 

 

そして翌日の世宇子中。

巨大な女神の石像が視線を向けるその先には、広大な芝生のグラウンドがあった。

天井の開いた部分からは青い空が見え太陽の光が差しており、芝生は暖められていた。

 

周りを見渡し、今1人だと確認したアドニスはグラウンドの真ん中に寝転がる。

広く暖かい芝生のベッドはとても気持ちが良い。

この景色は、前世の世界を思い出すなぁ…

 

そう思っていると、その心地良さに、うとうとしてきた。

寝たら駄目だ、と思いつつも彼女の意識は薄れていく。

 

 

しばらく時が経ったのか、誰かに膝枕をされながら頭を撫でられていている心地の良い感覚に目が覚めると、彼女は少年になっていた。というよりは戻っていたの方が正しいのかもしれない。

アドニスが上を向くと、そこには。

 

「…!」

 

「アドニス。よく頑張ったわね。」

 

女神アフロディーテが美しく微笑んでいた。

女神はアドニスの黒髪を撫でながら、優しく囁く。

度々聞こえていたこの美しい声は、やはり女神アフロディーテの声であった。

 

「私は、死んでしまったあなたを、どうしても冥界のペルセポネなんかに取られたくなかった。だから、あなたを別の世界へと転生させたの。」

 

そういう事だったのか。

この世界に転生したのは、アフロディーテ様の仕業だったのか。

 

「女の子にすれば無理をする事はなくなる…と思っていたのだけど、そうはならなかったわね。全く…無茶ばかりするんだから。」

 

そう言い終えると女神は、少し悲しそうな表情に変わる。

 

「アドニス。私はもう次元の関係でここにはいられないの。」

 

今までアドニスを密かに見守ってきた。

しかし住む世界の次元が違い過ぎる為、そう長くこの世界に干渉は出来ないのだ。

 

驚くアドニス。

 

「でも。これからは………彼がいるから大丈夫よ。」

 

__さよなら。アドニス。

 

その女神の言葉を最後にそこで意識が途切れた。

 

 

 

「…起きたかい?アドニス。」

 

再び目を覚ますと、アドニスは少女に戻っていた。

アフロディは彼女に膝枕をしながら、その黒髪を撫でている。

顔は、とても優しく美しい微笑みを浮かべていた。それは女神にも引けを取らない。

そして髪を撫でる手を止める事なく、そっと囁くように言った。

 

「最初は倒れていると思って驚いたよ。キミが気持ちよさそうに眠っていたから、つい。ふふ、暖かいね。」

 

まだ、このままでいたい。

心地よさにアドニスはもう一度目を閉じ、まだこうしていていいかを尋ねる。

 

「ああ。もちろん。今日くらいは、ゆっくりしよう。」

 

アフロディは優しく承諾する。

あの時の病室でゆっくりと見る事の出来なかったアドニスの寝顔が、今はこの青空の下で見る事が出来て、どうしようもない多大な幸福感に包まれる。

今日は練習はやめて、このままこうしている事にした。たまになら罰は当たらないだろう。

 

「…ねえ、アドニス。ボクは………」

 

愛しさ。

溢れ出て今にも零れそうな彼女への想い。

ゆっくりと彼女へと言葉を発する。今なら、この想いを伝えられる。

 

しかし既にアドニスは、静かに寝息を立て夢の中だ。

 

「おやすみ。アドニス…」

 

この想いを伝える事が出来ず残念だが、これはまたいつかでいいだろう。

今は彼女の寝顔をじっくりと見ていよう。

 

 

その後、他の部員達が来たが誰も2人を止める事なく、彼らも芝生の上に寝転がり始めた。

 

 

影山のいなくなった世宇子中学。

神のアクアによって出来てしまった過ちを、自分達で正していかなくてはならない。彼らはこれからどんな活躍をしていき、どんな功績を残していくのか。

 

 

それは、神のみぞ知る。

 

         

 




これにて完結となります。ありがとうございました!

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