アドニスイナズマ転生物語   作:かんりにん

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番外編 入院中の出来事

 

 

 

フットボールフロンティア決勝、世宇子戦にて大怪我を負って入院中のアドニス。

白く無機質な病室のベッドに寝たままの生活を強いられ、退屈な思いをしていた。

 

早く動き回りたい。サッカーがやりたい。

そう思うものの当然、医者からは禁止されている。もどかしい気持ちでいっぱいな入院生活であった。

だが、またサッカーがやりたいのなら辛くても安静にし、治療に専念するしかないのだ。

 

 

それは、ある日の昼下がり。

退屈で仕方なく本を読んでいると、コンコンとドアがノックされる音が響いた。

 

「はい。」

 

そう返事をすると、ドアが開き入って来たのは___

 

「アド()スちゃん、お見舞いに来てあげたわよっ」

 

桃色の髪を左目が隠れるように結った独特な髪形をした少女。全国大会第二回戦の時の相手の、忍術を使うサッカーで有名な戦国伊賀島(せんごくいがじま)中学の小鳥遊(たかなし)(しのぶ)だった。

アドニスに勝負を持ち掛けて怪我をさせ、試合出場を出来なくさせた張本人である。

最後は和解したものの、それ以来会ってはいなかった。

久々の再開である。

 

「しの()ちゃん!」

 

「しの()よ!しの、ぶ!!名前くらいちゃんと覚えなさいっ!っていうか私の方があんたより年上なんだから敬意を持ちなさいっ!ちゃん、じゃなくてさん、でしょ!」

 

「私だってアド()スじゃありません!」

 

ふざけてなのか真面目なのか、互いに名前を間違え笑い合う。

小鳥遊はベッドの側に置いてある来客用の椅子に座り、アドニスと向かい合う。

 

「でもホントにあんた、よく怪我するわね。…最初怪我させたあたしが言う事じゃないかもだけど。」

 

「怪我をするのはサッカーをしている限りは仕方ないと思います。」

 

「それはそうかもだけど……あ!そういえば決勝戦、見てたわよ。すごかったわ。まさかあんたが勝利の突破口を開くなんてね。」

 

しみじみとそう言う小鳥遊。

 

「っていうか!あんた試合中しばらくの間いなかったでしょう!!どこにいたの?何してたのっ!?」

 

激しく質問責めにされ、アドニスは苦笑いを浮かべるしかなかった。

理由も分からないまま影山に囚われ、閉じ込められていたところを鬼瓦刑事に助けて貰っていたのだが、それを小鳥遊に話せば面倒な事になりそうなので、はぐらかす事にする。

 

「ま、まあ…色々とあったんですよ……。」

 

「ふーん。ま、良かったわね。」

 

それからは、他愛もない会話で盛り上がる2人。この年頃の少女達の盛り上がる話題と言えば。

 

「ねえ!そういえば、あの世宇子中のキャプテン…アフロ何とか……だっけ?絶対あんたの事好きでしょ!!」

 

「な、どうしてそうなるんですか!」

 

「だって、あんたが倒れた時に真っ先に抱き付いてさ、自分でやった事なのに何なのあいつ!って思ってたんだけど、他の誰にもあんたを渡したくない!!って感じが伝わって来たわよ。」

 

正直、彼が自分に対してそういう感情を持っている事は知っている。だが、アドニスとしては先輩後輩以上の関係ではないのだ。

 

「……。」

 

「熱いわね~!」

 

「そんなんじゃありません!」

 

「照れない照れない!……ってもうこんな時間。あたし帰るわね!じゃあねっ!ア()ニス!!」

 

「あ、ちょっと!!」

 

そのまま小鳥遊は病室を出て行き、素早く去って行った。

まるで忍者のごとく…いや忍者ではあるのだが突然現れては消えていった。

いつの間にかテーブルには、彼女が置いて行ったのであろう箱に入ったお菓子と、折り紙で作られた色鮮やかな手裏剣が置かれていた。

アドニスは折り紙の手裏剣を手に取ると、微笑みを浮かべながら見つめる。

 

「もう…。」

 

数時間ほど彼女のペースに振り回されたアドニスだったが、わざわざお見舞いに来てくれた事はとても嬉しく感じた。久しぶりに会う事が出来て良かった。

小鳥遊が帰った後、1人で本を読みながらしばらくボーッとしていると、またドアがノックされる音が聞こえる。

 

「はい。」

 

返事をすると、病室に入って来たのは円堂と、夏未であった。

 

「夏未さん!それに…キャプテンまで!」

 

突然の訪問者に、驚くアドニス。

 

「よっ!アドニス、結構元気そうだな!」

 

「お見舞いに来たわ。具合はどう?」

 

夏未は、お見舞いの果物の入ったバスケットをベッド脇のテーブルに置くと、椅子に座った。

 

「まだ痛みはありますけど……だいぶ良くなりました。」

 

「それは良かったわ。」

 

「お見舞い、わざわざ来てくれて、ありがとうございます!」

 

「礼なんていいって。仲間として当然の事なんだからさ。それに夏未がどうしてもアドニスのお見舞いに行きたいって言っててさ。」

 

円堂は笑いながらそう言った。

 

「ちょ、ちょっと!……でもそうね、心配だったから。皆も来たがってたけど、あまり大勢で行くのは良くないと思ったの。」

 

照れているのか少し頬を赤らめる夏未にアドニスは胸が温かくなった。

 

「アドニス。決勝戦はお前のお陰で優勝できたんだ。本当にありがとな。」

 

円堂が静かな声で礼を言う。アドニスは照れながらも微笑み返す。

 

 

それから3人でしばらく話した後、円堂と夏未は病室を去って行った。

2人が去った後、アドニスは窓の外を眺める。外は茜に染まっており、すっかり夕方になっていた。

 

今日はお客さんが多かったな。沢山話が出来て楽しくて、時間が経つのも早かった。

そう思ってると、またもドアをノックする音が響くのだった。

誰だろう?まだ夕食の時間じゃないし、看護師さんだろうか。

そう思い返事をするとドアが開く。部屋に入って来たのは。

 

「やあ…アドニス。今日はお客様が多かったみたいだね。」

 

アドニスが入院する原因となった人物。アフロディだった。

彼も神のアクアの検査の為、一時的に別のフロアの病室で入院しているところなのである。

 

「アフロディさん!」

 

2人はしばらく談笑した後、アフロディはアドニスにある事を切り出す。

 

「ねえ、アドニス。…キミはまだ、サッカーがやりたいかい?」

 

「え……?」

 

突然の質問に驚くアドニスに、アフロディは続ける。

あの決勝戦の時……自分は彼女にひどい仕打ちをしてしまった。

何度も何度もボールを彼女に向かって蹴り上げ、大怪我をさせてしまった。

その事についてずっと、後悔しているのだ。

アドニスはそんなアフロディに優しく微笑み、こう答えた。

 

「私は……サッカーがしたいです!またフィールドに立って、ボールを蹴って…そして、勝ちたい!」

 

「そうか。」

 

彼女の答えを聞いて安心したように微笑むアフロディ。その表情は、とても美しかった。

 

「……あの、さ。アドニス。」

 

「はい?」

 

「……その。」

 

出来る事ならまた、もう一度一緒に……

それ以上は、言う事が出来なかった。

 

「いや。何でもないよ。…そろそろ戻るね。またね。アドニス。」

 

どこか切なそうに最後にそれだけ言うと、彼は病室から出て行った。

 

アフロディが出て行った後、アドニスはベッド脇の引き出しにしまってあった1枚の写真を取り出す。

それは、一緒に雷門中のサッカー部として出場した時の写真。春奈がくれた物だった。

 

また雷門中に戻りたいと思う反面、胸に何かがつかえたような感じがするのだ。

……アフロディをはじめ、世宇子中の皆。皆はこれから、どうなってゆくのだろうか。

そんな考えが浮かんで来るが、答えなど出るはずもなかった。

アドニスは考えるのをやめて、写真を再び引き出しに仕舞い込む。

 

 

__それから数日後。

検査入院が終わり、いよいよアフロディが退院する日が来ていた。

そわそわと落ち着かない彼は、アドニスに挨拶をする前に病院内を歩き回る事にしたのだった。

昼間の病棟は賑やかで、仕事中の看護師や他の病室の患者や、そのお見舞いに来た家族連れとすれ違いながら歩き続ける。

そのまましばらく歩いているとふと、ある物が目に入った為、思わず足を止める。それは病院内にある小規模な花屋の店頭に並べられていた。

 

「この花は……」

 

中心部が白く、鮮やかな赤色のグラデーションが美しい花。

その花を見た瞬間……脳裏にアドニスが浮かんだのだ。

アフロディは、その花に吸い寄せられる。そして手に取り、じっと見つめる。

 

「それはアネモネの花ですよ。」

 

近寄って来た花屋の店員が、アフロディに説明する。

 

「アネモネ……アドニス………」

 

アフロディは花の名前をつぶやきながら、アドニスの顔を思い浮かべる。

 

「あら、ご存知でしたか。アネモネの花は神話に出てくる美少年アドニスの化身とも言われていますね。切ないけど可愛い花ですよね。」

 

アネモネ。アドニスの分身。

それを聞いたアフロディは迷う事なくこの花を買う事にした。

そのまま、赤い色と合わせてピンク色のアネモネも数本購入し、店員に可愛らしい花束にして貰ったのだ。

 

赤いアネモネの花言葉は……『君を愛す』

そしてピンク色のアネモネの花言葉。それは______

 

そうこうしている内に、アフロディの退院時間は迫っている。

花束を受け取ると、アフロディは急いでアドニスの病室へと向かうのであった。

溢れ出る彼女への想いを抱きながら。

 

 

 

__『君を待ち望む』

 

 

 

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