欲望のロストロギア   作:創作好き

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UA6000、ありがとうございます!

それから、11話の悠を取り囲んだ管理局員の数を30から10に修正しました。本局から増援が来ないこと、S級魔導士が多くいることを考えると、30は多すぎました。

今回はいつもより長めです。


新しい日常と友達とハラオウン

『マスター、朝ですよー』

 

「・・・ん、おはよ」

 

魔導士兼オーズになってから、俺の一日はレイジングスピリッツに起こされて始まるようになった。今の時間は5時だ。ジャージに着替えてからリビングの扉を開くと、チーズが乗ったトースト、バターの香りが漂うトースト、そしてスープが1人分用意されていた。

 

レイジングスピリッツは毎朝朝食を作ってくれる。誰かが作ってくれたご飯は、自分で作ったものより美味しい。去年までは忘れていた。それにしても、念力でここまでちゃんとしたものを作れるのはすげぇな。試しに教わってみたが、ブレイクランスよりも難しかったぞ。

 

「んぐんぐ、ふぅ。ごちそうさま。レイジングスピリッツ、今日のメニューは?」

 

『今日は魔力弾でひたすら空き缶に連続で当て続ける特訓です。空き缶が地面に落下しないようにするために集中力が求められるので、頑張ってください』

 

俺が毎日早起きしている理由は、朝から山で魔法の特訓をするためだ。制服とカバン、そして今日は菓子折りも持って行って、特訓が終わったら制服に着替えるようにしている。だから以前より学校に着くのが遅くなってる。

 

同じクラスの圭とか八神とか、月村さんに、

 

「お前、どうしたんだよ。最近遅いけど、もしかして遂にグレたのか?」

 

「体調が悪いんか?看病しよか?」

 

「何かあったのなら相談してね?」

 

と心配されてしまった。朝に筋トレを始めたとは言っといたが、それよりも八神の発言に俺はハラハラした。クラスの男子全員が一瞬振り返ったんだからな。まじで怖かった。自分の発言には気をつけろ。死ぬぞ、俺が。

 

その光景を高志は机に顔を伏せて笑っていた。まあ、後でアイアンクローしてやったんだが。

 

そうそう、昨日倒したヤミーのセルメダルだけど、次会ったときにまとめて渡してくれるらしい。昨日の夜にレイジングスピリッツが戦闘データを送るついでに連絡を取ったらしい。それから念のため、海外のサーバー?を経由したりとかなんかして、家の場所が特定されないようにもしていたそうだ。頼りになります。

 

 

 

 

特訓を終え、制服に着替えてジャージをカバンにしまった俺は、学校に向かって走り出した。特訓の結果は、五回が限界だった。学校に到着し教室前にたどり着いた俺は教室の扉を開けた。

 

「あ、悠おはよう。今日も遅いなぁ」

 

「聖君おはよう。少し疲れてるの?」

 

「おはよう2人とも。学校に着くまで走ってたからね」

 

八神と月村さんが挨拶してきた。圭と高志とバニングスさんの姿が見えなかったが、席にカバンはあったので、まだ隣の教室にいるのだろう。高志の奴、圭に便乗して高町さんに会いに行っているのだ。あいつの最推し、高町さんだからな。となるとこの2人だけは先に教室に戻ってきたんだな。

 

「毎日頑張っててえらいなぁ。頭撫でてあげよか?」

 

「やめろやめてくださいお願いします」

 

そんなことしたら黒歴史の記憶が蘇るだろうが!そして他の男子の視線、怖い!

 

「もうはやてちゃん、あんまり聖君をからかっちゃだめだよ?」

 

月村さんが助けてくれた。ありがとう月村さん、なぜかいつも助けてくれて。君は真の天使だ。そこの天使の皮をかぶった悪魔から俺を守ってくれ!

 

「でもすずかちゃん、あたふたした悠って可愛いやろ?」

 

「それは・・・そうだね」

 

「月村さん・・・?」

 

月村さんがおもちゃを見るような目で俺を見る。ちくしょう、お前を信じた俺がバカだったよ!絶体絶命だ。すると、教室の扉が開いた。

 

「嫁達よ、さっきぶりだ!あ、悠来てたのか。おはよう」

 

圭がいつもの挨拶をして入ってきた。ナイスタイミングだ。

 

「圭・・・今日ほどお前が親友でよかったと思ったことはないよ」

 

「なにをどうしたらそんな返事が出てくるんだ・・・」

 

「圭・・・本当に間が悪いわアンタ」

 

「圭君はいつもそうだよね」

 

「そっちは何で辛辣!?」

 

いつもの圭イジリが始まった。あんなこと言ってるけど、嫌われてるわけじゃないうえにただ流されるんじゃなくむしろいじられるのはすごいと思う。いじめじゃないからね。本人も楽しいって言ってたし。ドMかな?

 

「察するに、またいじられてたのかお前」

 

「・・・ところで、高志とバニングスさんはどうした?」

 

こいつと同種と思われるのは嫌だな。よし、はぐらかそう。

 

「今なのは達と話してる。振られるに決まってるのに健気に頑張ってるよ」

 

「ひどいなぁ、自分の友達を信じてあげへんの?」

 

「何人もの男子生徒を振ってきた女のセリフか?」

 

「そういうお前は見向きもされてないけどな」

 

「そんなこと言うなよ、泣くぞ」

 

五大天使全員嫁発言野郎の言葉は無視しよう。八神に関してはモテるからな。振った男子は多い。そして八神の隣で苦笑いしてる月村さん、あなたもですよ。

 

そんないつも通りの会話を続けていれば、朝のホームルームまでの時間はあっという間になくなった。まあ、俺が来るのが遅いから、前よりさらに時間は短くなってるけど。

 

 

 

 

全ての授業を終え、俺はとある場所に向かって歩きだした。圭に遊びに誘われたが断った。真っすぐ帰るふりをして、遠回りしながら辿りついた場所は綺麗な一軒家だった。

 

「ここだな・・・」

覚悟を決め、チャイムのボタンを押した。

 

「はーい」

 

少し待つと扉が開いて、出迎えてくれた私服姿の美少女が1人。ハラオウンさんだ。今日は約束の料理教室を開くのだ。わざわざ遠回りした理由は、ハラオウンさんと接触するところを誰かに見られないためだ。住所も予め教えてもらっといた。もし誰かにこのことがばれたら、確実につるされるからな。

 

「いらっしゃい。どうぞあがって」

 

「あ、はい」

 

ハラオウンさんに促され、靴を脱いで中に入る。

 

「あの、菓子折りをどうぞ。」

 

「ありがとう。でも私教わる立場だから次は持って来なくて大丈夫だよ。」

 

それにしても、人の気配がしないな・・・

 

「ハラオウンさん、ご家族は?」

 

「えっと、ちょうど家族はみんな家にいないんだ。だから私たちと私が飼ってる犬だけだよ」

 

「ゑ?」

 

衝撃の発言を聞きながらリビングに入ると、茶色の子犬が目に入った。

 

「かわいい・・・」

 

「・・・わん!」

 

こっちをじっと見ると、まるで歓迎するかのように鳴いた。

 

「ありがとうだって。この子、アルフっていうんだ」

 

「アルフって言うんですね。こっちおいで~」

 

そういうと、トテトテとこちらに近づいてきた。不用心な奴め、頭をなでてやろう。手を伸ばすと、そのまま頭を少し下げて撫でやすくしてくれた。賢いなこの子。

 

「ふふ、聖君は犬が好きなんだね」

 

ハッとして振り向くと、ハラオウンさんが微笑んでいた。俺はわざとらしく咳払いして立ち上がる。

 

「さ、さて、料理を始めましょうねー」

 

「はい!」

 

 

 

 

今回作ったのはライスとコンソメスープだ。最初ということで簡単なものを選んだのだが、中々苦戦した。ライスは米を研いで炊飯器を使えば終わるが、コンソメスープの具材を切る作業、つまり包丁使いが問題だった。

 

「ハラオウンさん、猫の手、猫の手ですよ」

 

「ね、猫の手、猫の手・・・はうっ!」

 

「ハラオウンさぁーん!!」

 

いやー凄かったね。猫の手出来てると思ったら指関節切るんだもん。1人で練習してたら指ぶった切ってたよあれ。

 

それから、レイジングスピリッツは料理中に管理局のデータを盗み見できたらしい。何でも、ハラオウンのご家族は結構お偉いさんらしく、データも沢山あったらしい。ざ、罪悪感が・・・。

 

「聖君、どうしたの?」

 

そんなことを食後に考えていたら、ハラオウンさんに心配されてしまった。さらに罪悪感が・・・。因みに料理は美味しくいただきました。

 

「な、何でもないです。ちょっと考え事を・・・」

 

「そっか。ねえ聖君、ちょっといいかな?」

 

「はい、何でしょう?」

 

「その、私達って同級生だし、敬語で話すのやめないかなって。それにさん付けも」

 

気にしてたんだ。気づかなかった。

 

「確かにそうですね。じゃなくて、そうだな、ハラオウン・・・なんだろう、違和感がすごい」

 

基本的に俺、友達以外は敬語だからな。八神は例外な。初対面の相手も当然敬語だし。・・・あれ?レイジングスピリッツの時はどうだったっけ?

 

「ねえ、聖君」

 

「あ、なに?」

 

思考の海に入る前に呼び戻される。ハラオウンさん、じゃなくハラオウンが何だかもじもじしていた。

 

「あの、折角の機会なのでその、私と、お友達になりませんか・・・?」

 

「友達、ですか・・・」

 

なぜ、この人は俺にそんなことを言うんだろう?

 

「うん。私達って今まで顔を合わせてただけでしょ?私、君のことは人助けする姿しかあまり知らないんだ。だから、友達になるために、お互い名前を呼ばないかな?」

 

「嫌だ」

 

空気が凍った。ハラオウンさんはその返答を予想していなかったのか、固まっている。

 

「え・・・どうして・・・?」

 

「さっきハラオウンが言っていたのと同じように、俺もハラオウンさんのことを何も知らないからだ」

 

ソファーの上でくつろいでいたアルフが唸っている。

 

「だから、これからお互いを知るために・・・」

 

「悪いけど、これだけは譲れない」

 

そう。これだけは嫌なのだ。ハラオウンさんは友達になる手段として名前を呼ぶらしいが、俺の中で名前を呼ぶことは、友達として認めた相手だけと決めている。

 

「・・・そっか。ごめんね。私のこと、もしかして嫌いだった?」

 

ハラオウンが悲しそうな顔をしている。あ、これアカン奴だ。

 

「あ、いやそういうわけじゃなくて!勘違いさせたならごめん。俺はただ、友達じゃない人を名前で呼ぶのが嫌なだけなんだ。ハラオウンと仲良くしたくないわけじゃなくて、なんというかその、俺の中のルールみたいなもの、なんだ・・・」

 

これは昔からずっと続いているものだ。理由は俺自身にもわからない。でも、物心ついた時には既に身についていたものだった。

 

「ほ、本当?」

 

「ほんとほんと!だからその、当分は名前で呼ぶのは遠慮させてもらえないか・・・?」

 

ハラオウンは少し考える素振りを見せると、何か思いついたのか再びこちらを向いた。

 

「わかった。君から名前を呼んでもらえるくらい仲良くなればいいんだね?」

 

「う、うん。確かにそうではあるけど・・・」

 

「でも私から君の名前を呼ぶのはいいよね?悠」

 

「え」

 

噓でしょ、不穏な雰囲気になったのになんでこんなに距離を詰められるの?これが、コミュ力のお化けというものか・・・。

 

「そっちもダメだった?はやてが名前で呼んでたから大丈夫と思ってたんだけど・・・」

 

「い、いや。そっちは大丈夫。ハラオウンはすごいな。どうしてそんなに人と距離を詰められるんだ?」

 

「うーん。なのはの影響、かな?」

 

「あー・・・」

 

すごい納得した。あの人どう見ても陽の者だもんな。誰とでも仲良くなれるし、モテるし。そういえば、ハラオウンは転校したばかりはここまでフレンドリーじゃなかった気がする。あんな人とずっと近くにいればこうなるのか。

 

「そうだ。悠もなのはとあまり話したことないよね?今度なのはと話してみようよ。2人とも後先考えず人助けをするところが似てるし、気も合うと思うよ」

 

「そうだな・・・機会があったらな」

 

高町さんには、実は距離を置くようにしている。理由は・・・

 

「あ、そろそろ母さん達が帰ってくるかも」

 

「それなら、俺帰るよ」

 

椅子に掛けていた学生服の上着を着る。

 

「うん、わかった」

 

そういって、ハラオウンは玄関まで見送ってくれた。俺は扉を開ける。

 

「それじゃあ、また明日」

 

俺に向かって手を振ってくれた。可愛い。

 

「・・・ああ、また明日」

 

俺は思わずドキドキしながら、ハラオウン家から出発した。

 




今回でオーズ誕生編終了です。次は第二章を始めるべきか、現在公開可能な情報をまとめた設定集を作るべきか、本編開始前の0話を書くべきか悩んでます。なので、初めての投票をしてみようと思います!

次の話は?

  • 0話も設定集もやって!
  • 0話見れればいいかな
  • 設定集が欲しい
  • 過程や設定なぞ、どうでもよいのだ!

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