*2023/5/8 一部修正
メダルと服と青い球
ある日、時空が歪んだ。歪みが発生した海鳴市の上空から現れたのは,9つの蒼い宝石。その一つ一つが世界を滅ぼす力を持つ。それらは、真っすぐとある施設の地下に引き寄せられていく。たどり着いた先は石でできた棺桶。蒼い宝石『ジュエルシード』によって、石櫃の封印は解かれる。
「悠、やっぱり五大天使最強はなのはさんだよ!」
土曜の昼時、ファミレスで自身の推しについてそう力説する、この緑がかった黒髪の青年は俺の友達の武村高志。小学校からの付き合いだ。
そして俺の名前は悠、人助けが趣味のごく普通な中学2年生だ。
今日も俺たちが通っている学園の5人の美少女の話をしている。確かに全員可愛いけど、何度もその話題について話し続ける高志には流石に呆れた。ちなみに俺の推しは母性があると話題の八神はやて、だった。とはいえ、このままだと昼食中の会話がまた五大天使になってしまう。話題を変えないと。
「またその話かよ、もう全員可愛いでいいじゃん。それよりお前課題終わらせた?」
「いやーやってないね!」
「・・・今日勉強みようか?」
「助かる!」
助け船が出たことに喜ぶ高志。すぐ助ける俺も悪いけどこいつも悪いなこれ。話題を変えてこれである。こいつの将来が心配になった。俺は思わず頭を抱えた。
「それはそうと圭のやつ、昨日も早退したよな。それにはやてさんも」
唐突に話題が変わるなあと思いながらその言葉に頷く。圭というのは俺の親友、銀髪で右目は赤く、左目は青のオッドアイズ・イケメン男子だ。頭もよく、学年テストも1、2を争うほどだ。
「あいつ曰く家庭の事情らしいけど、確かにそうゆうの増えたよな、しかも5人」
「おかしいだろ!なんで圭だけじゃなく、なのはさんやフェイトさん、はやてさんについでに翔なんだよ!」
「その言い方聞いたら翔のやつ泣くぞ」
翔も小学生からの友達で、茶髪のイケメンで優しくて王子様みたいなやつだ。あいつ大人っぽいからそれも相まってモテるんだよな。ちなみに名前が挙がった他の3人は五大天使の美少女達だ。
「なんだよ、お前はあいつらのことを疑ってるのか?」
「違う違う。あいつらのことだから、なのはさん達と人に言えないようなことをしてるわけじゃないのはわかってるけど、それでも心配になるじゃん。まあ全員成績優秀だけど」
気持ちはわかる。早退どころか休んでる日もあるから少し心配にもなる。でもあの二人は将来に繋がることをしているらしいし、あんまり口出ししない方がいいと思う。そんな会話をしながら食事を続けた。
石櫃があった施設が爆破される。
「ハッピバースデイテューユー」
施設から復活した五体の怪物が現れる。
「ハッピバースデイテューユー」
怪物達を倒すために結成された部隊、ライドベンダー隊が全滅する。
「ハッピバースデイディア・・・」
とある会社の最上階でケーキを作る男は怪物たちの目覚めを祝う。
「グリード。ハッピバースデイテューユーー!!」
「良いのが買えてよかったなー」
ファミレスを後にし、デパートで俺は高志が選んでくれた今季の服を購入した。今年のトレンドらしい。高志はこうゆうのに詳しいから助かる。
「いつも誘ってくれてありがと」
「お前こうやって誘わないと新しい服全然買わないからな。せっかく元がいいのに」
「でも誕プレでもらった服あるし、あんまり家でないし」
「だからと言ってタンスの中の密度の低さは異常だろ。ここぞって時後悔するぞ」
でも着ないからなー。自分で買いに行くのはその時期の服が着れなくなってからだけど、上と下2つずつ買うだけで済むし。家出るときは基本的にトレーニングのためのジャージを着ているし。高志、圭、翔と出かける以外だとほとんど着ない。
「お前一人で買う服、安くて地味な服ばっかりだし」
「シンプルイズベストだ」
そんな会話を続けながらデパートから出る。目的は達成したので、折角だから帰宅する前に近くの大きな広場にある、おいしいクレープを販売している屋台に行こうという話になった。俺は友達と過ごす、こんな幸せな日々がずっと続くことを信じて疑わなかった。
「きゃー―――!!」
「ば、化け物だ!!」
クレープの屋台の近くまで来て、悲鳴が聞こえた。多くの人がこちらに走ってくる。みんなパニック状態だ。
「え、なにこれ?なんかのショー、じゃないよな」
「・・・高志、俺たちもここから離れよう」
自分たちを通り過ぎていく人たちを見て、高志は困惑していた。なんだか嫌な予感がする。俺は逃げるよう高志を促した。
「見つけた、ウヴァ様のメダル」
全身の毛が逆立った。唐突にカマキリのような怪物が現れた。さっきまで前方にこんな怪物はいなかった。それが今こちらを、いや高志を睨んでいる。
「・・・悠、なにあれ」
「バカ!逃げるぞ!」
高志の腕を掴み後ろに逃げる。あれはヤバい!自分の中で危険信号が鳴り響いている。だが怪物は電撃を俺たちの逃げた先に放出し、俺たちの足が止まる。無茶苦茶だろあいつ!!
「がっ!」
「悠!うぐっ」
怪物はあっという間にこちらに近づき俺は弾き飛ばされ、高志の首が掴まれる。全身が痛いが、そんなことに構っている場合じゃない。高志が危ない!
「高志から離れろ!!」
俺はすぐさま立ち上がり、近くにあった外で食事をするために設置されていたカフェの椅子をもって怪物に突っ込む。
「邪魔だ!」
「ぐわっ」
今度は地面ではなく壁に叩きつけられる。再び全身に激痛が走るがそれどころじゃない。まずい、本当にまずい。高志が危ない。なのにまるで歯が立たない。また助けられない。目の前で助けを求める誰かがいるのにまた手が届かない。また俺は何もできずに、誰かが傷つけられる姿を見るだけなのか?
「・・・今度こそ助けるって決めたんだ」
もう一度、立ち上がる。あんな思い、もう二度としたくない。
絶対に助ける、命に代えても!
【異常事態発生 レイジングスピリット緊急起動】
助ける決意を固めた時、自分の体の内側から機械音が聞こえた。そして自分の胸元が光り、青い球と青い線の模様があしらわれた謎の小物が飛び出した。
『こんにちは、マスター!』
「えっ」
ピカピカ光りながら球が話しかけてくる・・・え?なあにこれえ?
・・・じゃなくて!意味が分からなすぎて今一瞬完全に馬鹿になってた。
「そ、それは!」
「が、げほっげほっ」
怪物の注意が謎の小物に移り、高志を落とす。もう訳が分からない。
『とりあえずこのドライバーを付けてっと』
「えちょなになに⁉」
先ほどまで浮遊していた小物が腰に当てられ、ベルトが出現。腰に巻きつく。なんかしっくりくるなこれ。じゃなくて!
『マスター、コアメダルをセットして変身してください!』
「え、なにこれ見た目玩具だけど。というかマスター?」
謎の青い球から赤、黄色、緑のコインが飛び出す。困惑しながらその3枚のメダルを受け取ると、なぜか体が勝手に動いた。三枚のメダルを謎の小物、いや、バックルにセットする。懐かしい。
「ま、まて!そんなものに手を出すな!後悔するぞ!」
怪物が叫ぶ。黙れ、これはもともと俺のものだ。怪物の言葉に苛立ちながらその警告を無視してバックルを傾ける。ベルトの横に付いていたオースキャナーを手に持ち俺は叫んだ。
「変身!!」
オースキャナーをバックルに通しメダルを認識させる。オースキャナーからコイン同士がぶつかったような甲高い音が三度、広場に鳴り響た。
《タカ!トラ!バッタ! タ・ト・バ、タトバ、タ・ト・バ!》
自分の感覚が研ぎ澄まされていく。自分の体が一瞬で変化していくのがわかる。
今ここに、新たな王が誕生した。
ユカウントメダル1,2and3 ライフゴーズオンエニシングゴーズ カミングアップオーズ!