何とか小説を書く習慣を取り戻せたので、これからはもっと早く投稿できるよう頑張ります。
「君の予想通り、俺はなのはの兄だ」
「え」
まずい。もしこの人に俺がオーズとばれたら、その情報がそのまま高町さん伝わりかねない。どうすればいい!?お、落ち着け、素数を数えて落ち着くんだ。素数は孤独の数字・・・黙れ先祖!!今度の元ネタはなんだ!?取り敢えず、会話だ。
「た、高町さんってご兄弟がいらっしゃったんですね。知りませんでした」
「俺だけじゃなく、長女に美由紀って妹もいるんだ。家は三兄妹なんだ」
「そうなんですね」
他愛ない会話をして心を落ち着かせる。
「お話の途中に悪いんだけど、そろそろいい?」
月村さんのお姉さんが声をかける。
ここからが本番だ。きっと俺の正体の話をするのだろう。月村さんは俺が何かしらの異能を持っていると話したらしい。なら、何も話すことはできません、と押しきれないかなー。一族の掟みたいな感じで。・・・無理だろうな。
「まずは御礼を。妹のすずかを助けてくれてありがとうございます。あなたのお陰ですずかは怪我もせずにすみました」
そう言って月村さんのお姉さんと高町さんのお兄さんが頭を下げる。
「頭を上げてください。俺はあたり前のことをしただけです」
御礼を言われるようなことはしていない。月村さんは何も悪くない。あのハンター?はヤミーを追っていたし、確かバルバトスと言う人も魔導師だったからな。あれ?月村さん完全に俺達魔導師に巻き込まれた被害者じゃね?
「中々そんなことを言える人はいないわ。それを実行できる人もね」
いい話風にまとめようとしてくれてるけど違うんです。巻き込んでごめんなさい理由も話せなくてごめんなさいほんとごめんなさい。
「そしてもう一つ大事な話があるの」
動揺を顔に出さないようにしていると、真剣な表情になった。遂に俺の正体について切り出すのか・・・
「私達吸血鬼、夜の一族について、あなたに話すわ」
そっちかーい。
「・・・つまり、月村さん達の家系は代々すごい吸血鬼で、正体がばれたら記憶を消さなきゃならない、と」
「そうそう」
さっき聞いた内容を自分なりにかみ砕いて問う。その質問に気軽に答えてくれた。
「じゃあ今から俺、廃人になるんですか・・・?」
「まさか全ての記憶を消すと思ってるの・・・?」
恐る恐る聞いてみたが、一番恐れている事態にはならないらしい。よかったよかった。
「さて、それでは聖君に質問です」
「はい?」
改まってなんだろう。
「あなたには二つの選択肢があります。一つは私達夜の一族についての記憶を消して穏やかな生活に戻るか、そしてもう一つは・・・」
「お姉ちゃん!」
さっきまで喋らなかった月村さんが声を荒げる。だが月村さんのお姉さんは月村さんの顔の前に手を出し静止させる。
「彼は恩人。だから、彼にちゃんと聞かないと」
月村さんは顔を俯かせ、座り直す。高町さんのお兄さんは静かにその様子を見守っていた。
月村さんのお姉さんがこちらに向き直る。
「・・・もう一つは記憶を消さず、生涯秘密を守り、すずかの友達、もしくは家族になること。あなたはどうしたい?」
「月村さんと、友達・・・」
「家族ってところはスルーなのね・・・」
月村さんとは小学校の頃からの付き合いだ。気に入った本の話をしたり、勉強を教わったこともあった。何かと助けられることもある。でも八神と絡むと小悪魔化するんだよな。おしとやかに見えてS毛がある。それが、俺が知っている月村すずかだ。
いいのだろうか。あの日、彼女を助けられなかった俺が友達になっても。
月村さんの顔を見ようとするが、俯いていてよく見えない。だが、体がわずかに震えていた。あれはきっと怯えているのだ。何に?
知っている。あの姿を俺は何度も見た。理由は今も思い出せない。でもあの頃の少年(聖悠)は、また拒絶されることに怯えていた。
ここで大事なのは、俺の気持ちだ。俺が月村さんと友達になりたいか、そうじゃないか。深呼吸をする。
「月村すずかさん」
月村さんの体がビクッと跳ねた。恐る恐る顔を上げた。
「なん、でしょうか」
「俺と、お友達になってください」
目を見て、はっきり言う。俺の言葉を聞いて、月村さんの表情は不安そうなものからわずかに笑っていた。
「はい。今後とも、よろしくお願いします」
月村さんの瞳から、一滴の涙が流れた。
「よかったねすずか、友達になれて。まあこの雰囲気は友達というより恋人になる感じだけどね」
「お、お姉ちゃん!そんなんじゃないから!」
月村さんのお姉さんがからかう。そこはからかっちゃダメでしょ。折角新たな友情が育まれたというのに。
「そうですよ。恋人じゃなくて友達です」
しっかり友達という部分を強調する。すると一瞬で部屋が静まり返った。
「え、何ですか」
高町さんのお兄さんと月村さんのお姉さんが『まじかこいつ』と言いたげな目で見てくるし、月村さんも「あはは、そうだよね。それが聖君だもんね・・・」と言って目が死んでいる。なぜだ?
「聖、流石にそれは色々と駄目だと思うぞ、男として」
「え」
この時、『王は人の心がわからない!』というセリフが頭を過った。
悠とバルバトスが戦った少し後、人気のない場所でバルバトスは仲間と連絡をとっていた。
「あー、聞こえるかー」
「何よもう、仕事は終わったの?」
「わりい、しくじった。体中傷だらけでやばいから回収しに来てくれ」
「・・・ごめんなさい。もう一度言ってもらえる?」
「邪魔が入って任務失敗。自力で帰還できない程の大けがをしたから回収してくれ」
バルバトスは痛みに顔を歪めながら木に寄りかかる。
「管理局に見つかったの?じゃあ見捨てるしかないけど。それに怪我って、あなた時間と魔力があれば腕も生えるじゃない」
「管理局には気取られてない。オーズに変身した魔王が吸血鬼の嬢ちゃんを助けに来てボコボコにされただけだ。変な魔法食らってから体の魔力の流れもおかしいし」
「ごめんちょっと何言ってるかわからない。もっとわかりやすく説明してくれない?」
「魔王のってところか?」
「いやオーズってところもなんだけど。というか大丈夫?地球無くならない?」
女性はひどく心配していた。地球で調べたいことはまだ多くあり、魔王の存在でこれまでの計画が全て台無しになりかけていたからだ。
「無くならないと思うから安心しろ。詳しい話は帰ってからするからよ」
そういうと、バルバトスは木にもたれかかりながら座り込んだ。
「あなたね、簡単そうに言うけど、リーブのレプリカがあると言っても、本物より魔力消費が多いんだからね!それに管理局の目をかい潜らないといけな・・・」
「取り敢えず俺は寝る。後は頼んだ」
「ちょっと!」
通話を切り、目を閉じる。思い浮かべるのは先ほどまでの戦いの光景。謎の魔法を受けてから本調子ではなかったうえに、愛機もなかったとはいえ負けは負け。そもそも油断していなければあの謎の魔法も受けずに済んだだろう。
「次に戦うのが楽しみだ」
そう呟いた彼は、深い眠りについた。
気まずい雰囲気を乗り切り少し遅めの昼食を取った俺は、制服に着替えた。何でも、事件当日から丸一日眠っていたらしく、今は日曜の3時。急いで帰らないといけない。レイジングスピリッツが心配しているだろう。
「もう行くの?」
着替え終わった後、月村さんが入室して様子を見に来た。少し寂しそうだ。
「ああ。傷の治療は家で待ってる家族に頼めばすぐ直るし、何より事情を説明しないと。もちろん月村さん達のことは内緒にして」
そう。急いで帰らないとレイジングスピリッツがなにするかわからない。下手したら管理局の地球支部とやらに殴りこんで、マスターはどこだ!とかやりそうだし。何かと理由つけて管理局を叩き潰そうとしそうで怖いんだよあいつ。
でもその前に、やるべきことがある。
「月村さん、帰る前に少しいいか」
「改まってどうしたの?」
月村さんがキョトンとする。
「謝りたいことがあるんだ。小学校に入る前。君が攫われそうになった時、助けられなくてごめん」
頭下げる。あの時の記憶を思い出した時、謝らないといけないと思ったんだ。
「ま、待って!あの時聖君は何も悪くない!今も感謝しているし、寧ろ私が謝らないといけないと思ってて・・・あれ?聖君、どうして覚えてるの?」
「さっきの友達になる話の時にすっと思い出した」
「え、そんなことがあるの・・・?」
「いや、わからん」
何なら記憶消されたことも思い出した。なんか俺の中に先祖いたり魔王なんていうよくわからん奴もいるし、俺の体どうなってるの・・・
「と、とにかく頭を上げて!聖君が悪いところは何もない!私はずっと感謝していたの!だからお願い、頭を上げて!」
「・・・わかった」
頭を上げて月村さんを見る。
「謝らないといけないのは私なの。あの時お礼を言えなかったこと、そして記憶を消したこと。本当にごめんさない」
「いや君も頭上げて!?人にやるなと言ったことを言った直後にやらないで!?」
「・・・うん」
何とか頭を上げてくれたが、若干納得してない様子だ。
「記憶を消されたのは別にいいよ。さっきのお姉さんの説明で納得してるし。それに・・・」
「それに?」
「さっき謝った奴が何言ってんだと思うだろうけど、謝れるよりお礼言われる方がうれしい」
なんだろう、さっきからお互いの言葉が見事に返ってきてブーメランが突き刺さってるな。
「・・・うん、わかった。聖君、昔も今も私を助けに来てくれて、守ってくれてありがとう」
「・・・なあ、本当に恨んでないのか?助けたのは結局翔だったし・・・」
「助けてくれたのは翔君だったけど、それまで守ってくれたのは聖君だよ。私はずっと感謝していたの。だから、あまり自分を責めないで」
月村さんは俺の目をしっかり見てそう言う。そうか、月村さんは助けられなかった俺のことを恨んでなかったし、俺が守ったと思ってくれていたのか。そっか、俺はあの日、彼女を守れていたのか。
「・・・何もできない役立たずって思っていたのは、俺だけだったのか」
「聖君?」
「月村さん」
「は、はい!」
急に声をかけたので月村さんが少し驚く。
「ありがとう。それから、どういたしまして」
「! うん!」
これでいい。いや、これがいい。ちょっとだけあの頃の自分を許せる気がしてきた。
「ねえ聖君。私からも一ついい?」
「? 何?」
尋ねると、月村さんは深呼吸をして心を落ち着かせた。こちらも思わずちょっと身構える。
「私、これからは聖君のことを名前で呼びます。だから聖君も、私のことは名前で呼んで。敬語も無しで」
「あ・・・」
そうだ。俺と彼女はもう友達だ。寧ろ名前で呼ばないと失礼じゃないか。
「わかった。これからもよろしくな、すずか」
名前を呼ぶと、すずかは笑顔になった。その笑顔は、まるで彼女の周りに花が咲き乱れたかと思ってしまうほど美しかった。
「末永く、よろしくお願いします。悠君」
あまりの美しさと名前を呼ばれた気恥ずかしさに顔をそらしてしまう。
「・・・?」
「そ、それじゃあ!俺は帰るよ」
ドアノブに手をかけるがそこで止まる。
「・・・また明日、すずか」
「うん!」
別れを告げて俺は部屋を出た。その後、外ではすずかのお父さんとお母さんが待ち構えており、今回の件のお礼と幼少期の件で記憶を消したことの謝罪を車の中でされた。家で行わなかったのは、すずかのお姉さんは次期当主なのでこういった件の対処を学ばせるためらしい。
それからすずかとはどういった関係だとか、どう思っているだとかを主にお母さんに聞かれたから「大事な友達です」と答えたらさっきの気まずい雰囲気になってしまった。お母さんに至っては「すずかの道のりはまだまだながいわね・・・」とか言っていたけど、なんのことだろうか?
それと俺のことを聞かないのかと質問してみたら、「話かったら聞くけど、できれば誰にも話したくないのでしょう?」と言われた。今更だけど、滅茶苦茶気を使ってくれてたんだな。
そんなこんなで、俺は無事ではないが家に帰ることができたのだった。
誤字報告いつも助かっています。ありがとうございます。
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