土曜の休日、とある喫茶店で2人の美少女が向かい合っていた。一方は茶髪のサイドテールが特徴的な少女、高町なのは。もう一方は長髪の金髪、そして両サイドの髪留めが特徴的な少女、アリサバニングスがいた。
「それで?わざわざ翠屋じゃなくて別の喫茶店で呼び出したのか、話してくれない?」
アリサが切り出す。なのはの実家は翠屋という喫茶店を営んでいる。そこのデザートが絶品なのだが、今回はその話を割愛する。
「うん。これはあまり他の人には聞かれたくなかったんだ。家の店はいつも人が多いから安心して話せなくて・・・」
「だから人がいない寂しい雰囲気のこの店を選んだと」
「人聞きが悪いよ!ここは夜のバーとして賑わってて、昼は知る人ぞ知る名店なんだよ!」
「わかった、わかったから。確かにこのケーキも桃子さんのケーキとも見劣りしないレベルで私も驚いてるわよ」
そう言ってまた一口ケーキを口に運ぶ。
「話を折って悪かったわね。それで話って?」
「えと、その・・・」
なのはが俯きながら指をいじりだす。
「ああもう!ここまできてなに言い淀んでんのよ!」
アリサがここで痺れを切らした。
「フェイトちゃんに・・・」
なのはが口を開く。
「フェイトに?」
「・・・フェイトちゃんに、彼氏ができたかもしれないの・・・」
「・・・え? え―――!!!」
驚きのあまり大声を出して立ち上がってしまい、店のマスターが何事かとこちらを見やる。それに気づいたアリサは「すみません、なんでもありません」と伝えて座り直す。
「フェイトに?彼氏が?」
その言葉になのははこくんと頷く。
「その根拠は?」
「異変に気付いたのは今週の水曜日。その日は大きなヤミーを倒したんだ。」
「ああ、ニュースになってたビルに張り付いてたのに急に姿が消えたっていうあれね」
アリサの問いにぽつぽつと答えていく。
「報告書を書き終えた時に買い物袋を持ってることに気付いたの。おつかいの帰りに戦ったのって聞いたら、なぜか歯切れが悪かったんだ」
「・・・どんな感じに?」
「こう、『そ、そうなんだ、おつかいなんだこれ』ていう感じ」
「確かに怪しいわね・・・」
「そして昨日、新しく作った海鳴市の管理局支部で会った時、フェイトちゃんは指を怪我していたの」
「・・・ねえそれってただ隠れて料理の練習してるだけj「それだけじゃないの!!」」
ダンッと机を叩く。その音を聞きつけてマスターがまた様子を見に来るが、「ご、ごめんさなさい」となのはが謝り、カウンターに戻っていく。
「その怪我はどうしたのって慌てて聞いたんだ」
この時、なのはは戦闘による怪我なのかを心配していた。それもそのはず。左手の指をあちこち絆創膏で巻いていたのだ。
「確かに昨日フェイトは休んでたわね。見回りしてたのね」
金曜はフェイトが見回りの当番だったため、学校に来ていなかった。海鳴市から離れた町でも見回りを行っているため、どうしても人手が足りないのだ。
「うん。それで、帰ってきた言葉が『えっと、内緒』だったの!」
「さっきからモノマネうまいわね」
「アリサちゃん、ちゃんと聞いてる?」
アリサは若干集中力が切れていた。今の段階で既になのはの勘違いと考えている。
「あーはいはい、聞いてるわよ。それで、内緒にされたからってどうして彼氏がいるって話になるのよ」
面倒なことになりそうなので適当に話の続きを促す。再びなのはは語りだした。
「その時の顔がね、なんだかうれしそうだったんだ。だから何となく、昨日何かいいことでもあったの?って聞いたの」
「なんか浮気を疑う彼女みたいね」
アリサの突っ込みを気にせず早口で続ける。
「そしたら『うん。あ、えっと、昨日は料理を作ってね、おいしいって言ってもらえたんだ』って言ったから、誰に作ったのって聞いたの。そしたらちょっと挙動がおかしくなって『えっと、母さんとクロノだよ?』って目を合わせずに言ったの!絶対あれは第三者の存在があるよ!」
「私は何を聞かされてるのかしら・・・」
ここにはやてがここにいたら「たぶんこれは彼氏の行動に不満を持つ彼女の愚痴やと思うよ」と言っていただろう。
「取り敢えず、これでフェイトちゃんに彼氏ができたかもしれないというのは伝わった?」
「まあ、確かにフェイトの言動的に明らかに何かを隠してるわね。でも、どうしてこのことを私だけに話したの?」
この場にいない親友のすずかとはやてを呼ばない理由がわからなかった。正直目の前の親友の暴走を自分一人で抑えるのには骨が折れる。
「すずかちゃんは何か用事があるらしくて、電話越しに断られちゃった。はやてちゃんは今日はお仕事」
この時アリサは、この場にいない2人を少しだけ恨んだ。
「成程。取り敢えずは様子見でいいんじゃない?」
あっけらかんと答える。
「どうして!?アリサちゃんは気にならないの?」
なのはとしては、アリサがここで興味を無くす理由がわからなかった。
「あのねえ、フェイトだって中学生なのよ?それにフェイトはあんたと1、2を争うほどモテるのよ?彼氏がいてもおかしくないわよ」
「それは、そうだけど・・・」
なのはも自身がモテていることに自覚はある。だが、彼氏どうこうは碌に考えたことがなかった。嫁だなんだと言ってくる変人は身近にいるがあれは例外だ。あれは彼なりの挨拶だと思って流している。
「ま、どうせ彼氏なんていないだろうけど」
「どうしてそう思うの?」
自分でいるかもと言っておいて速攻で手のひら返しをされる。
「今うちの学校で一番会員数が多いグループを知ってる?」
なのはは首を振る。
「2位がなの派とフェイ党が同数。そして1位がなのフェイ守護団よ」
「待って待って待って」
受け入れがたい話を聞いてしまい、そこで話を止める。
「なにがわからなかったのかしら」
「最初から最後までだよ!?」
なのはは自分たちが五大天使と呼ばれていることは知っていたが、そんなヘンテコグループが存在していたこと、そして1位のグループ名が意味不明なことに理解が追いついていなかった。
アリサは少し冷めた紅茶に口をつける。
「なの派とフェイ党はそれぞれ、あんたとフェイトを最推しにしている生徒が集まったグループよ」
「さいおし?」
「簡単に言うと、五大天使がアイドルグループだとして、その中で一番好きなアイドルを指す言葉よ」
「へえー」
なのはにオタク知識が追加された。
「続けるわよ。なのフェイ守護団はあんたとフェイトのカップリングを推す集団よ」
「かっぷりんぐ?」
「まあ、女の子同士が仲よくしてる様子を見るのが好きな連中が、その女の子のお気に入りの組み合わせに対していうものよ。これを百合ともいうわ」
なのはがわかるように丁寧に説明していく。
「そうなんだ。でもどうしてそれがフェイトちゃんに彼氏がいない理由になるの?」
ここまで聞いたが、それらから自分が提唱した『フェイトに彼氏がいる説』が覆るようには感じなかった。
覆らない場合、これをクロノに話すつもりである。その場合、誰の命が危ぶまれるか論じる価値もない。
「なのフェイ守護団体はアンタたちが仲よくしている光景を眺めていたいの。だからそこに男が挟まろうとしたらその男は確実に殺されるわ」
「ころっ・・・!」
サラッと答えるアリサの答えは、なのはが想像していたものの10倍は重かった。
「だから彼氏なんてものがいたら、粛清されてるのよ」
そう言ってアリサはケーキを食べ進める。
「そんな怖い集団がいたんだね。知らなかったよ・・・」
「作ったのは圭よ」
「圭君なにやってるの!?」
創設者が友人で思わずツッコむ。
「アンタ達が仲よくしてる様子に癒される男子生徒がいたらしいの。そいつに百合という概念を教えたらしいの。そいつから周りに百合という概念が広がっていったの。因みに圭はなのフェイ守護体に命を狙われているわ」
「何で!?」
「私達に嫁になれとか言ってるからよ。一から百まで自業自得よ」
そう、圭はまさしく百合の間に挟まろうとする男である。確かに始祖だが極刑対象である。慈悲はない。
「さて、アンタの相談に乗ったんだから、こっちの質問にも答えてもらうわよ」
「質問?」
どんな質問をされるかわからず首をかしげる。
「アンタ、最近気になる男ができたでしょ」
「!?」
げほげほとむせる。
「な、なんでそんな話に・・・」
「お昼食べてるときにたまにぼーっとしてることがあったから。それでどうなのよ」
なのははオーズと初めて会った日以来、オーズのことを考えることがある。アリサ以外もそのことには気づいているが触れないでいた。が、それが一週間も続いているため、アリサは遂に切り出すことにした。
「気になるっていうか、何と言いますか・・・」
「いるのね。その人はどんな人なの?」
あやふやではなく、はっきりと答えさせようとする。アリサは少しノリノリであった。
「オーズさんって言って、顔もまだ見たこともないんだけど、凄く強くて・・・」
「自分より強いことが条件なのね」
「誰かのために一生懸命なれて・・・」
「優しいのが好みなのね」
「ロストロギアを所持してるの」
「アウトよ!!」
思わず大声を出してしまう。マスターが近寄ってきて「一応聞くが大丈夫かい?」と問われるが「「すみません大丈夫です」」と答え、またカウンターに帰っていく。
「ちょっと待って、ロストロギアって確か危険な兵器とかじゃなかった?」
「うん。持ってるだけでも法律で禁止されてるよ」
自分の記憶が正しいことを確認し、大きくため息をつく。そして紅茶に口をつけ心を落ち着かせる。
「なのはが犯罪者に恋するなんて。人生何が起きるかわからないものね・・・」
アリサは親友の将来が心配になっていた。
「だから違うよ!気になるっていうのは、なんといいますか、会ったことがあるような気がすると言いますか・・・」
何とか誤解を解こうとするが、それによりさらに疑問がわくことになる。
「? 顔も見たこともないのに?」
「ちょっと待ってね、顔を書くから」
予定を記録するメモ帳を取り出し、そこにオーズの頭を書いてアリサに見せる。
「これ、顔?というか人間じゃないわよね」
親友が人外に恋している可能性が浮上し、さらに心配になる。
「えっと、バリアジャケットをかなり改造してるんじゃないかってエイミィさんが」
「成程。そしてこの顔、というより仮面に見覚えがあると」
「うん」
「いやどこで」
「それがわからないんだよね・・・」
「えー・・・」
取り敢えず相手が人間であることはわかったが、親友が変な格好をする人物に夢中になっていることに心配になった。結局心配が尽きなかった。
「まあ、本人がわからないんだったらしょうがないわね。進展があったら教えてちょうだい」
「もー、面白がってるでしょ!それにオーズさんから壁を感じるし・・・」
「聖みたいに?」
「聖君は今関係ないよ・・・」
わかりやすくしゅんと落ち込む。
「ごめんごめん。前に相談されたことを思い出してつい」
小学校の頃から悠はなのはと距離をとっている。とは言っても、無視をしたりしているわけではなく、自分から関わろうとは絶対にしようとしないだけであり、挨拶をされたら返しはする。だが、悠からはしないが。
「なんで避けられてるんだろう。私、何かしたかな・・・」
「ほんと謎なのよね。前に問い詰めたことがあるけど、本人自覚なさそうだったし」
自分の親友が避けられていることを知りアリサも動いたが、悠本人がその自覚がなく、なのはに何か直接嫌がらせをしているわけでもないうえに、悠がそのようなことをする人間ではないことがわかったため、さじを投げた。
だが、これはなのはが隣のクラスにいる親友たち、そして男友達2人と会いに行くために起きた悲劇ともいえる。なのはの友達と悠の友達と話し相手が被った結果、悠が無意識になのはとの間に壁を作っていることが露呈したのである。
「無自覚に避けられる私って・・・」
この後、落ち込んだなのはを慰めるためにアリサが四苦八苦することになる。
「それで?なにかわかったことがあったのかい?」
「うん。ヤミーが現れる場所がどうして海鳴市にだけなのかなんだけど、魔力の膜のようなものがあることがわかったんだ」
エイミィは新たに判明した事実を伝えるためにクロノを海鳴支部に呼び出した。よく見ると、エイミィにはクマが出来ていた。
「魔力の膜のようなもの?」
「存在に気付いたのは三日前。オーズが空間を切り裂いた後に感知できたんだ。それからようやく解析が終わったんだけど、海鳴市全体を覆うように微弱な魔力の膜のようなものがあることがわかったんだ」
「そんなものがあったのか。全く気付かなかった」
「人体には全く影響がないんだけど、少しセルメダルの反応も混ざってるんだ」
「それがあることでグリード達はここから離れることができないのか。でもそんなもの、一体だれが・・・」
「そう、そこなの」
ビシッとクロノを指さす。
「空間に亀裂が入るまで感知すらできなかった魔力の膜、もとい結界。もしかしたら、私たちがまだ気づいてない第三者が作ったものかもしれないの」
久しぶりに魔導士サイドを書いたらすごい指が乗ってしまった・・・。
魔導士サイドの話が前より面白いと感じたら、感想・高評価、よろしくお願いいたします!
日常回、誰と過ごす?
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なのは
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フェイト(andハラオウン家)
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はやて(andヴォルケン)
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すずか
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圭
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翔
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高志