欲望のロストロギア   作:創作好き

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お久しぶりです。お待たせしてすみませんでした。
今回は投票で2位だったフェイトとの日常回を書かせていただきました。
投票ありがとうございました。

日常回2つはどちらも前回より少し後の話です。


ドキドキ! ハラオウン家

今日はハラオウンとの料理教室の日。翔との激闘で昨日は学校を休んでしまったが、今日は復活した。『突撃、子狸!』があって大変だったが、なんとか乗り切った。外聞では男が1人暮らしの家に気軽に来ないでほしいんだけど・・・。

それに、レイジングスピリッツが「闇の書、じゃない。夜天の書の主!?ばれた!?どしましょどしましょ、えっと、とりあえず始末しますか!?」と大混乱だったのでヤバかった。とりあえずレイジングスピリッツは引っ込ませて、八神は適当に帰らせた。

・・・別に手料理が食べれなくて残念とかは思っていない。

 

さて、そんなこんなハラオウン家に到着。インターホンを鳴らす。今日もハラオウンのご家族はいないらしい。不用心過ぎるとは思うが、個人的には知らない人と会話せず済むならありがたい。

 

「はーい」

 

家の中から声がした。したんだけど、あれ、おかしいな。知らない人の声だぞ?

 

「ま、待って母さん私が出・・・」

 

「あら、どちら様?」

 

緑の長髪美人が出迎えてくれた。さて・・・

 

「すみませんどうやら家を間違えたようですさようなら」

 

回れ右をして歩き出そうとする。

 

「ちょっと待ってね」

 

残念ながら肩を掴まれてしまった。

 

「あなたのその制服、フェイトの学校のよね?」

 

「そう、ですね」

 

「実はね、今日は仕事で私達、家にいないはずだったんだけど、休みになって帰ってきてたの」

 

ほう、つまりこの人はハラオウンのお姉さんかな?

 

「そしてそんな日にフェイトと同じ学校の、それも男の子がうちにやってきた」

 

あ、やばい。呑気にこの人が誰だとか考えてる場合じゃなかった。これ質問が途中から尋問に変わってるやつだ。

 

「いやほんとに間違えただけで、ハラオウンとはあまり話したこともないんですよ・・・」

 

「へえ、呼び捨てなのに?」

 

やべ、ヘマした。

 

「用事があるので失礼します!」

 

全力で逃げだ・・・せない!?力つよっ!?ていうか魔力こもってますよ!?

 

「あらあら、遠慮しないで上がってね。学校でのフェイトのお話、聞かせてね?」

 

「あはは・・・」

 

近くにハラオウンがいるため念話でレイジングスピリッツに相談することもできない。

帰りたい・・・

 

 

 

 

流されるようにリビングに連れられ、ソファに座らされる。右には先程の美人、向かい側には黒上の男性、その隣には茶髪ショートの女性がいた。ハラオウン座らずあわあわしてる。子犬はそれを離れた位置で見守っていた。

 

「・・・母さん、彼は?」

 

男性、以前俺をバインドで捕まえたクロノという人が女性に尋ねる。何でこの人ハラオウンの家に居るんだ?それに、母さん?

 

「母さん・・・母さん!?」

 

こんな大きな人の母!?若すぎる・・・

 

「あら、どうしたの?」

 

「えと、お若いなと思って・・・」

 

「あらあら、ありがとう」

 

すっごいニコニコしている。よし、このまま褒めたたえて話題をずらして・・・

 

「それで彼は?」

 

「フェイトと逢引きしようとしていた子よ」

 

「母さん!?」

 

「おー、フェイトちゃんやるー」

 

「違いますから!」

 

茶髪の女性が捲し立てるので慌てて訂正する。とんでもないこと言い出したよこの人達!

 

「娘さんには料理を教えてるだけです。それでここキッチンをお借りしてて・・・あれ?聞いてないんですか?」

 

「初耳よ?」

 

え?何でこの人たちそのこと知らないんだ?ハラオウンの方を見る。

 

「このこと、説明してなかったの?」

 

「その、料理が上手くなったのを驚かせたくて・・・」

 

サプライズ狙ってたのか。

 

「成程、事情は大体わかった。それでも、こういうのは伝えておくべきだ。アルフもだ」

 

「ごめんなさい・・・」

 

(ごめんねクロノ、この子別に悪い子じゃなかったから大丈夫かなって)

 

ハラオウンとアルフが俯く。にしても犬も叱るって変わってるなこの人。

 

「事情もわかったことだし、お互い自己紹介しないかしら」

 

美人さんが提案してくれた。

 

「あ、はい。聖祥中等部二年、聖悠です。えっと、ハラオウンのお母さん、でしょうか?」

 

「ええ。フェイトとクロノの母のリンディ・ハラオウンです。娘がいつもお世話になっています」

 

「い、いえ、そんなことは・・・」

 

なんだか優しそうな人だな。でもなんか、怒ったら怖そうな雰囲気もする。

 

「次はクロノよ」

 

「フェイトの兄のクロノ・ハラオウンだ。今後とも妹と仲良くしてやってくれ」

 

「はい、それはもちろんです」

 

この人、ハラオウンのお兄さんだったんだな。正直、初めて会った時レイジングスピリッツが殺しかけたからすごい申し訳ないと思ってる。

 

「最後は私だね。私はエイミィ・リミエッタ。クロノ君の彼女でーす」

 

「エイミィ、やめないか」

 

リミエッタさんがハラオウンのお兄さんの腕に抱き着く。なんか目の前いちゃづき始めたぞこの人たち。

ハラオウンのお兄さんは流石にはずかしいのかリミエッタさんを引きはがす。

 

「すまない、見苦しいものを見せた」

 

「い、いえ別に」

 

いや確かにやるなら他所でやれとは少し思ったけど。

 

「それにしても、フェイトに新しく友達ができてうれしいよ。相手が男だったのは意外だったが」

 

「妹さんとは友達じゃありませんよ?」

 

的外れなことを言ったので訂正したら空気が少し凍った気がする。

 

「それは、どういうことだい?」

 

「妹さんとはあくまで同学年っていうだけですし、関わるようになったのも本当につい最近ですから」

 

ハラオウンのお兄さんの顔が少し険しくなっているが、俺は淡々と事実を述べていく。

 

「聖君、少しいいかしら」

 

ハラオウンのお母さんが訪ねてきた。

 

「なんでしょう?」

 

「友達になるのに時間は関係ないと思うの。私としてはフェイトと仲良くしてくれると嬉しいわ。でも、あなたはフェイトとは友達にはなりたくないのかしら」

 

「違います」

 

それは根本的に間違っている。

 

「その、ですね。俺にとって友達っていうのは、すごい大事なもので、うまく言えないんですけど、命を預けてもいい人、ですかね」

 

この時初めて、自分にとって友達とはなにかを言語化していく。

 

「何も知らない相手に俺は命を預けられません。そして、俺は彼女のことをよく知りません。だから、俺は彼女とまだ友達にはなれません」

 

言いたいことは全て言った。ハラオウンのお母さんは俺が話している間、俺の目をしっかり見ながら聞いてくれていた。

 

「・・・なぜそこまで友達という存在を特別視しているのかはわかりませんが、あなたがフェイトのことを友達と思えない理由はわかりました」

 

すると、両手を合わせて微笑む。

 

「まだ、ということはあなたの基準で信用できるようになったら、寧ろあなたの方から友達に誘ってくれるのよね?」

 

「え、それは・・・」

 

「誘ってくれるのよね?」

 

「あ、はい」

 

有無を言わせず頷かされる。こ、怖え・・・

 

「ちょっと待ってくれ母さん、どう考えても彼はまずいだろ。どんな友情だそれは。重いとかそんな次元じゃないぞ」

 

こうやって自分の考えを言葉にしたことがなかったからわからなかったけど、客観的にみて俺のこの思想は自分でもヤバいと思う。いや、俺友達のことそういう風に見てたんだな。全然知らなかった。

俺に兄弟はいないからわからないけど、俺も自分の弟か妹がこんな奴と友達になろうとしてたら全力で止めると思う。

 

「私も聞いた時は少し驚いたけど、言い方を変えれば友達を絶対に大事にするってことよ。それに、フェイトが友達になりたいと頑張ってる。少なからず、悪い子ではないわ」

 

なんと、俺の思想をプラスに捉えただけでなく、娘への全幅の信頼で俺のことも信じてくれるらしい。や、優しすぎる・・・

 

「ただ、聖君。もしフェイトを泣かせるようなことがあったら、容赦しませんから」

 

笑顔で忠告され、すぐに何度も頷く。やっぱりこの人怖い!

 

「それじゃあ、これからも娘と仲良くしてね?」

 

それに関しては勿論。

 

「はい!」

 

俺の返事を聞いて嬉しそうにハラオウンのお母さんは頷いた。

 

「安心したわ。さて、それじゃあせっかくだし、2人に料理を作ってもらいましょうか」

 

「「え」」

 

ハラオウンと声が重なる。

 

「あの、この状況でですか?」

 

「ええ。2人の料理、楽しみにしているわ」

 

 

 

 

「ハラオウン、ジャガイモの皮を剝くときは包丁じゃなくてジャガイモを動かすんだ」

 

「うん・・・はう!」

 

「ば、絆創膏!」

 

ハラオウンは何度も指を切り、包丁を赤く染め・・・

 

「それでは切った食材を鍋で炒めます」

 

「私の血で少し赤くなっちゃね・・・」

 

「・・・洗ったからセーフ!さあ、火を点けて。始めるよ」

 

コンロに火を点けてハラオウンに炒めるように指示する。

 

「うん。食材を動かして・・・はう!」

 

「わあー-!水、水で冷やして!!」

 

人参が宙を舞い、ハラオウンの腕に突撃したり・・・

 

「それでは牛乳をいれます」

 

「はい!」

 

「えー、それでは私が持ってきたこの測定カップを使い・・・ハラオウンストップストップ!」

 

「え?」

 

牛乳を入れすぎたりしながらも、料理は完成した。

 

 

 

 

「なぜだ、前回より悪化している・・・」

 

「ごめんなさい・・・」

 

ハラオウンが俯いてしまう。

 

「ああいや、前回と状況も違うからしょうがないって!ちょっと緊張しただけだろ?」

 

「そうそう、味は美味しいよ。ちょっと甘いけど」

 

「エイミィ・・・」

 

「あ、甘いのもいいなあと私は思うよ?」

 

畜生、余計なこと言わないでくれ。その後のフォローもへたくそか。

 

「フェイト。料理で大切なのは、作る相手への想いだと思うの」

 

「母さん・・・」

 

ハラオウンのお母さんの言葉にハラオウンが耳を傾ける。

 

「確かに今回は失敗が多かったかもしれない。でも、とっても美味しいわ。それはフェイトが私たちのために一生懸命に作ってくれたからよ」

 

ハラオウンのお母さんがハラオウンの手を取る。

 

「こんなに手に怪我ができても料理の勉強をしているのは、私たちに手料理を振舞いたかったからなんでしょう?」

 

「うん・・・」

 

「ありがとう。本当にうれしいわ」

 

「!!私、もっと頑張ります」

 

ハラオウンが息を吹き返した。よかった、料理が嫌にならなくて。

 

「そういうことで、これからもフェイトのことをよろしくね、聖君」

 

「あ、はい」

 

今の一瞬忘れていたが、彼女の料理の腕を上げる役目は俺だった。ちょっと自信なくなってきたな・・・

 

「それじゃあ、冷めないうちに食べましょうか」

 

 

 

 

そんなハラオウン自信喪失事変を乗り越え、楽しい夕食を終えて俺のハラオウン呼びの話になった。

 

「ねえ聖君、フェイトのことをハラオウンって呼ぶけれど、私達もいるときは不便じゃないかしら?」

 

きっかけはこの一言。確かにそうだけど、それでも譲りたくないものはある。

 

「すみません、友達以外は名前で呼びたくないんです」

 

「すまないが君、何かの宗教にでも入っているのかい?」

 

「いえ、これに関してはもの心ついていたときからです」

 

「つまり、教祖ってこと・・・?」

 

「冷やかさないでください・・・」

 

これに関してはどうしようもないのだ。高志と知り合った頃、頑張って名前で呼ぼうとしたら拒絶反応がでて気分が悪くなったほどである。重症だな。

 

「とりあえず、みなさんのことはハラオウンのお母さん、ハラオウンのお兄さん、リミエッタさんでいいですか?」

 

「いや、それだと長いだろ」

 

「そもそもその呼び方だと私の疎外感が凄いんだよね」

 

むむ、これだと不評らしい。どうしたものか・・・

 

「ハラオウン呼びだとややこしくなる・・・」

 

「でもさっきのだと長くなっちゃう・・・」

 

ハラオウンも一緒に悩んでくれてる。うーん・・・

 

「「はっ!」」

 

「2人とも何か思いついたの?」

 

リミエッタさんが訪ねてくる。ハラオウンの顔を見ると、彼女も同じ考えに到達したらしい。

 

「なんだろう、嫌な予感がする」

 

「ふふ、なにかしら?」

 

2人は勘づいているらしいが、折角なのでハラオウンとせーので言おう。

 

「ハラオウン、俺達が思いついたのをせーので言おう。多分同じものを思いついたと思う」

 

「うん」

 

ハラオウンと呼吸を合わせる。

 

「「せーの、お母さんとお兄さん!」」

 

「ダメに決まってるだろ!?」

 

速攻でダメ出しをくらってしまった。何で?

 

「ハラオウン呼びでもないうえに長くもないんですよ。何が問題だというんですか」

 

隣でハラオウン頷いている。かわいい。

 

「・・・フェイトは兎も角、聖。お前のそれは素か?」

 

「え、酢?」

 

何で急に酢?

 

「似たもの同士は引かれるというが・・・」

 

お兄さんが溜息をつくと、今度はお母さんが懐からメモを取り出して何か書いている。

 

「2人とも、おかあさんとおにいさんに漢字を用いるとき、二種類あるのは知っているかしら?」

 

「ええ」

 

「それがどうしたの?」

 

書き終えたメモを俺達2人に見せてくれた。そこには[お義母さん お義兄さん]と書かれていた。

 

「聖君は私の息子ではありません。つまりおかあさんと呼ぶとき、この字になります」

 

「それがどうし・・・あ」

 

完全に駄目だこれ。

 

「どうしたの?」

 

ここまで聞いてもわからなかったらしく、ハラオウンが訪ねてくる。

 

「やめてくれハラオウン、そんな純粋な目で聞かないでくれ・・・」

 

「?」

 

「フェイト」

 

おか・・・ハラオウンのお母さんが意味を伝えるらしい。娘になんてむごいことを言おうするんだこの母親は・・・

 

「他所の、それも異性の子がお義母さん呼びしたら、まるで嫁ぐように聞こえない?」

 

「え、あ・・・」

 

ここまで聞いてようやく理解できたらしく、ハラオウンは顔を真っ赤にした。

 

「ち、違うの!そういう意味で言ったわけじゃなくて・・・」

 

「落ち着け、わかってる、わかってるから」

 

「うう・・・ごめんね・・・」

 

やめて、俺も同じこと言ってるから謝らないでくれ・・・

 

「それじゃあ、あだ名なんてどうかしら?これなら名前呼びにもならずに済むんじゃないかしら?」

 

俺達の状況を見かねて、ハラオウンのお母さんが案を出してくれた。

あだ名・・・

 

「・・・なるほど、それならできるかもしれません!」

 

どうして今まで思いつかなかったんだろう。これなら、いける!

 

「あだ名で呼ぶほうが友達らしくないか?」

 

「クロノ君、しー」

 

あだ名、あだ名か。どんなのがいいんだろう?リンディだから、リーちゃん?クロノは、クロさん?

 

「聖、今思いついたのを正直に言ってくれないか」

 

「リーちゃんにクロさんですね」

 

「なるほど・・・」

 

「あらあら」

 

「クロちゃんだって。かわいいねえー」

 

女性陣には好評らしい。もしや俺には、名づけの才能があるのかもしれない。

 

「却下だ」

 

「なんでですか!」

 

「百歩譲ってクロさんはいいとして、自分の母親がリーちゃんと呼ばれるという事実に耐え切れない」

 

真顔でそう返されてしまう。・・・うん、確かに自分の母親がそんな風に呼ばれたら恥ずかしいな。

 

「むむ、それじゃあお兄さんをクーさん、お母さんをリンさんでどうですか?」

 

「なんと言うか、背中がムズムズするな」

 

「私としてはどちらでも構わないんだけど」

 

我々はあだ名付けに難航していた。く、一体どうすれば・・・

 

「あ」

 

そうだ、ハラオウンの名前を思い出せ!

 

「どうしたの?」

 

ハラオウンが訪ねてくる

 

「ハラオウン、お前のフルネームってフェイト・T・ハラオウンだよな!」

 

「そうだけど・・・」

 

「じゃあお母さんをハラオウンさんって呼んで、お前をテスタロッサって呼べばいいんじゃないか?」

 

逆転の発想だ。ハラオウンと呼ぶとややこしいのなら、ハラオウンと呼ばなければいいんじゃない。我ながら完璧だ!

 

「待って聖君、それは・・・」

 

リミエッタさんが何か言おうとして、クロさん(仮)が止めた。あ、あれ?なんか、お通夜状態になってる?空気がすごく重い・・・

 

すると意を決したようにハラオウンが口を開いた。

 

「いいよ。じゃあこれからはテスタロッサって呼んでね」

 

「う、うん」

 

なぜ、苗字の一部を呼ぶだけでこんな重い空気になるんだろうか・・・

 

「いいのか、フェイト」

 

「うん。私は大丈夫だから」

 

「そうか」

 

だ、ダメだ。まるで状況についていけていない。もしかして、俺は何か地雷を踏んだのか・・・?

 

「それじゃあフェイトのことはテスタロッサ、私のことはハラオウン、エイミィのことはリミエッタ、クロノのことはクロと呼ぶことに決定ね」

 

「これだと結局、僕だけあだ名じゃないか?」

 

「はいはいクロさん、細かいことは気にしないの」

 

「エイミィ!」

 

少し笑いが起こる。黒さん(断定)は少し不満そうだったが、これといった案もなさそうだし問題ないだろう。

でも、やっぱり引っかかる。結局テスタロッサという名前に何の問題があるのだろうか。聞いてもいい内容なのか。いつか、聞かせてもらえるのだろうか。俺はまだ、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンのことを何も知らない。

 

 

 

 

帰宅中、俺は今までの自分について考えていた。俺は信頼できる人しか友達にはなれないと言いながら、自分から誰かに関わろうとしてこなかったと思う。

圭との出会いは偶然、翔は圭に紹介されたし高志はあっちから関わってきた。すずかも毎日声をかけていたのは俺じゃない。俺は誰かと強く繋がっていたいと願っていながら、いつも誰かと関わるのが怖いと思っているんだ。

 

(大丈夫ですかマスター?もしやお腹が・・・)

 

「平気。ちょっと考え事してただけだから。テスタロッサのご飯はおいしかったから安心しろ」

 

どうやら顔に出ていたらしい。早めにテスタロッサのご飯に対する疑いを晴らす。

 

(考え事とは?)

 

「俺って友達少ないなーって」

 

(いつか増えますよ)

 

ちょっと同情も入ってそうな返答はやめろレイジングスピリッツ、それは俺に効く。

 

ここでふと思う。どうしてテスタロッサは俺と友達になろうとしてくれているんだろうか。控えめに言って俺はすごく面倒くさいと思う。友達になるのに条件つけるし、割と我儘だ。翔を味方につけたのだって俺の我儘を翔が受け入れてくれたからだ。あいつよくこんな奴の友達続けてくれてるな、神か?

 

そんな奴と今も友達になろうとするテスタロッサの考えがわからない。というか何でフェイト・T・ハラオウンのTってなんだ?今更だけどハラオウンさん達にはテスタロッサってつけてなかった。

 

「だーめだ、全然わかんねー」

 

(友達が増えない理由なら明確だと思うんですが)

 

「ちょっと黙っててくれない?」

 

隙あらば俺の心をえぐらないでほしい。

 

(マスター、後方から魔力反応です)

 

「ヤミーか?」

 

レイジングスピリッツの真面目な声色ですぐにスイッチが入る。後方からということは、ハラオウン家の方から・・・?

 

(いえ、この反応は・・・)

 

「いた、悠!」

 

「テスタロッサ?」

 

振り向くとテスタロッサが駆け足でこちらに近寄ってきた。右手には見覚えのあるハンカチが握られている。

 

「間に合ってよかった。廊下に落としてたから急いで探したんだ」

 

「わざわざありがとう。でも、明日学校で渡してもよかったんじゃないか?」

 

「あ」

 

俺の為に届けに来てくれたのはうれしいが、そこまで頭が回らなかったらしい。少しあわあわしているのがかわいらしい。

 

「確かに、そうだね・・・」

 

「ああでも、おかげで今日中に洗濯物に出せて助かった、よ?」

 

なぜ疑問形にした俺!テスタロッサをみろ、若干小さくなっていくように見えるだろうが!

 

「今日の私、ダメダメだね・・・」

 

アカン、本気で落ち込み始めている。わ、話題をずらさなければ・・・

 

「えっと、夜中に1人で戻るのも危ないから、送っていくよ」

 

「そんな、聖君からしたら二度手間でしょ?」

 

「そんなこと言ったらテスタロッサだってわざわざハンカチを届けに来てくれたじゃないか」

 

「それは私が考えずに家を出たからで・・・」

 

「じゃあ俺も考えず送っていく」

 

「でも・・・」

 

「送っていく」

 

「あ、はい」

 

俺の高等交渉術によりテスタロッサを送ることに成功した。女の子1人で帰らせるわけにもいかないからな。ここからゆっくり歩いても家まで10分もしないけど。

それに、聞きたいこともある。

 

「テスタロッサ、一つ聞いてもいいか?」

 

歩きながら尋ねる。

 

「なに?」

 

テスタロッサはきょとんと首をかしげた。

 

「どうしてテスタロッサは、その、俺と友達になろうとしてくれるんだ?」

 

ずっと疑問だった。まともに会話するようになったのは数日前。きっかけは料理教室。でも、わざわざ友達になろうとしなくても料理だけ教わってしまえばいい。だって、テスタロッサには俺と仲良くする必要はないのだから。

 

「・・・きっかけは去年かな」

 

なんかテスタロッサが懐かしむような顔しながら過去回想入ったぞ。

 

「川で溺れかけてた小さな男の子を君が助けた所を見たんだ」

 

「・・・すうー」

 

「どうしたの?」

 

「問題ない、続けて」

 

話の内容的に狸に弱み握られた話に繋がるやつだった。あまり思い出したくないが、止めるわけにもいかず続きを促す。

 

「それでね、躊躇なく川に飛び込んだ君の姿を見て、なのはと少し重なったんだ」

 

「高町さんと?」

 

ここで彼女の親友の名前が出てきた。重なったということは、プールに飛び込むフォームが同じだったっとか?

 

「なのはもね、誰かを助けるとき、自分のことを顧みないところがあるんだ。そういうところがそっくりだから印象に残ったんだ。小学校の頃から聖の噂は聞いてたけど、無茶して誰かを助けるところを見るのはその時が初めてだったんだけど」

 

「噂?」

 

テスタロッサの話の途中だが、気になるワードが出たので思わず訪ねてしまう。

 

「助けを求めるとどこからともなく表れて、強靭的な運動能力を使って一瞬で解決する優しい王子様みたいな、閃光の王子様っていう2つ名を持つ男の子」

 

「まって何かがおかしい」

 

なんだその2つ名は。なんかかぼちゃマスクを被ったテニスプレイヤーが頭を過ったんだが。

 

「何がおかしいの?」

 

「いやなにがおかしいと言われると返答に困るけど、強いて言うなら2つ名をつけられていたことだな」

 

その2つ名初めて聞いたんだけど?なに?じゃあ今まで俺色んな人に「閃光の王子様だー」とか思われてたの?嘘でしょ・・・

 

「圭がつけたらしいんだけど、聞いてなかったの?」

 

「おーけー理解した、明日窓の外に逆さで吊ろう」

 

「危ないからダメだよ!?」

 

奴はこの手で確実に仕留める。血祭りにあげてやる。

 

「まあ、それは明日のことだ。話を脱線させた本人が言うのもなんだけど、さっきの話に戻ってもいいか?」

 

「え、うん・・・」

 

「圭、ごめんね」と小さな声で謝ってるテスタロッサの姿を見て優しいなと思いながら話を聞く。

 

「それでね、その時は急いでいたし、はやてが聖の傍にいたからその場を去ったんだけど、その次の日からはやてから聖のことを聞くようになったの。それでね、話を聞くほど無茶をする人なんだなあと思ってたら、何だかほっとけないなって思ってきて」

 

「え、俺が心配ってだけで関わろうとしてくれてたの?」

 

「そう、かも」

 

優しすぎないこの娘?将来詐欺とかに引っかからないか心配になるんだけど。

 

「そんな優しい理由なのに友達になれないとか言ってごめん・・・」

 

「大丈夫」

 

そういうと、テスタロッサは隣から飛び出して俺の前に立った。

 

「君が私に頼ってくれるよう、頑張るから」

 

俺に優しく微笑んでくれた。

 

「テスタロッサは優しいな」

 

頑張るべきなのはテスタロッサじゃないなんて明らかなのに。

 

「そ、そんなことないよ」

 

照れたのか前を向いて歩きだした。

 

「あ、ついたね」

 

「それじゃあ、また明日」

 

「うん、また明日」

 

テスタロッサは手を振って見送ってくれた。

俺はいつか、彼女に何か返せるのだろうか。色々考えたが、何も思いつかずに家に着いてしまった。

 




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