今までの戦闘回で一番自身があるので楽しんで頂けたら幸いです!
オーズがメズールと戦闘を開始する少し前、鴻上コーポレーションの実験施設では一人の魔導士が待機していた。
「真木さん、まだか」
「もう少し待って下さい。本来明日完成させるものを今日に前倒しているんですから」
圭は急かすがドクター真木は冷静に返す。
現在彼のデバイスであるヤマトはとある機械を取り込んでいた。それは本来明日完成させ、動作確認をした上で実践投入するはずだったのだが、突如としてグリード達が管理局員、正確に言えばエース級の魔導士を狙うように現れたのだ。
最初、圭は新装備を断念してデバイスを取り出して出撃しようとしたのだが、鴻上がそれを電話越しに止め、ドクター真木に急遽完成させるよう指示した。
「・・・完成です。これで君のデバイスは完全にあれを制御できるようになるはずです。確約はできませんが」
「ぶっつけ本番なのはわかってるよ。間に合わせてくれてありがとう。いけるか、ヤマト?」
『俺を誰だと思ってんだ?』
ドクター真木からスサノオを受け取り、ヤマトから心強い返答を受けると、外へと駆けだそうとし・・・
「待って下さい」
「え、急いでんだけど・・・」
今にも走り出そうと足踏みしながら首だけドクター真木の方に向ける。
「昼間から空を飛んで出撃するつもりですか?目立ちますよ」
「姿を隠す魔法くらいヤマトに入れてるよ」
『すまん圭、アップグレードの際に魔法術式のデータが邪魔だったから今別のメモリーに移してる』
「マジ?」
想定外の事態に圭は止まる。
デバイス。それは魔導士が魔法を使うのに必須となる道具、ではない。デバイス無しでも魔法は行使できる。ではなぜ多くの魔導士がデバイスを使うのか。それは詠唱短縮とストレージ機能があるからだ。
魔法とは科学の延長線上にあるもので、魔力を使いその現象を引き起こしている。デバイスはそれを行うための演算機だ。魔導士が一々計算する代わりに魔法という解答をだすことが役目だ。
更にデバイスには魔法術式を記憶する機能がある。簡単に言えば問題を解くための公式をデータとして残している。
この2つの機能を使うことで、戦闘時に即座に魔法を使用することが可能なのだ。
圭はこの機能を利用し難易度が高い補助魔法はヤマトに記録させて、自分は戦闘系の魔法ばかり覚えている。つまり、ただ戦うだけならデバイス無しでもいけるが、それ以外はあまり期待できないと言える。
「今からデータを、って時間かかるな。ど、どうしたら・・・」
「ということなので、彼に来ていただきました」
「失礼します」
研究室に1人の男が入室してくる。
「ファッ!?」
圭は驚いた。無理もない。入ってきたのはオーズ原作に登場する後藤だったのだ。今のところオーズ原作キャラで仮面ライダー関連の人物が登場していなかったのできょどってしまった。
「・・・なんだ?」
「あ、いえ、何でも・・・」
あなたが好きです!とは正直に言えない。後藤からすれば初対面相手にファンアピールされても困惑するだけだろう。
「それでその、真木さん?どうしてこの人を・・・」
「彼にはあなたのサポート役として動いてもらいます。その一つ目の仕事がバイクでの運搬です」
「ファッ!?!?」
素っ頓狂な声が再び研究室に響いた。
土手の中で水飛沫が上がっていた。
メズールが放った水の弾丸が対象の体を貫かんと飛んだ。それを最小の動きで致命傷になるものだけを躱し、剣かかぎ爪で弾き、いくつか体にかすらせ、当たった場所に火花が飛んでも体がブレない人物が1人。オーズだ。
水の弾丸を捌き切った直後、休む暇を与えぬと言わんばかりに鎖が付いた鉄球がオーズを襲う。しかしオーズはそれをしゃがんで躱し、水中でしゃがむことで足に力を溜める。バッタの力ですぐさま鉄球が飛んできた方向へ、水から飛び出して水面ギリギリを真っすぐに跳躍した。鎖が伸びた先にはリクガメヤミーの右腕があった。
隙ができていたリクガメヤミーを切り結ぼうとするも、前に小魚ヤミーの大群が壁となって立ちはだかる。
『プロテクション』
だが跳躍した勢いを無理に殺さず、足元にプロテクションを展開して跳躍。目の前の数体を切り上げ、更に他の小魚ヤミーを踏み台にして大群の壁を越えた。その間に傷をつけられようとも止まらない。超えた先にはあと少しで鉄球を腕に戻せる・・・否、まだ鉄球を戻せていないリクガメヤミーの姿があった。
隙を晒していたリクガメヤミー目掛けて手にしていた剣を重力に従って上から降り下げようとした時、それを阻止すべく水の弾丸がオーズを襲った。
空中のため、オーズには躱す手段がない。メズールは直撃を確信する。
『プロテクション』
まるで撃たれるタイミングがわかっていたかのように藍色のシールドが展開され、水の弾丸は弾かれ、リクガメヤミーは切り付けられた。
メズールは苛立っていた。彼女の役目は他の人間と分断されたオーズを倒し、所有している全てのメダルとオーズドライバーを奪うことだ。
ウヴァのヤミーの情報では、オーズに変身しているのは成り行きで変身したただの子供で、少し戦闘センスがいいのと高性能なデバイスを所有しているとのことだった。
戦闘センスがいい?力を手に入れたばかりの子供に自分が負ける通りは無い。高性能のデバイス?自分たちには魔法は碌に効かない。そんなこと、800年前から知っている。
だから、自分一人だけで戦っても拮抗、ましてや負けることもないだろうと考えていた。これは驕りでも慢心でもなく、客観的に実力差を考えてのことだ。でも念のためとガメルからヤミーを借り、自身のヤミーを待機させていた。
だから彼女は焦り、苛ついた。
「いい加減にしなさい!」
川から水でできた三本のタコ足が現れる。これはジュエルシードによって新たに手にいれた力。水で形成されたタコ足を出現させる能力だ。水できているからといって柔らかいわけではない。しなやかに動き、分厚いそれはコンクリートを易々と砕く威力があった。それらは一斉にオーズを潰さんと殺到する。
「カートリッジ」
小さく、しかしはっきりそういうと、剣からカートリッジが飛び出しオーズの魔力が高まる。そして剣を振りかぶることでその魔力は斬撃に変換され、メズールとリクガメヤミーを巻き込むようにタコ足へと飛ばされる。メズールは跳躍し、リクガメヤミーはシールドを展開して斬撃を凌いだ。
メズールは苛立っていた。自身がただの子供に手こずっていることに。彼女には切り札もある。それを使えば押し切れるだろうがそれには多くの魔力とセルメダルを使う。出来ればここぞという時に残しておきたい。そしてその切り札は開発したばかりであまり安定するものではなかった。万が一それで仕留めきれないようなことがあれば一巻の終わりだ。だがなによりも、ただの子供に切り札を使いたくないというプライドがあった。
だが、彼女はダメージを与えられても未だに攻撃をまともに直撃させることも出来ておらず、それどころかオーズの動きは戦うほどに良くなり、リクガメヤミーにダメージを与え、小魚ヤミーの数を1つずつ削っていた。
悠は焦っていた。
彼が今すべきことは即座に目の前のグリードとヤミー達を倒し、外で戦っている魔導士たちの手助けをすることだ。だが相手は手ごわく、そう簡単に倒されてはくれない。それどころか、1つでも判断を誤れば命を落としかねない状況だった。
カートリッジを使うことでタコ足を切り払い、リクガメヤミーに突撃する。2つあったマガジンは既に1つ使い切り、残るカートリッジは後5本。カートリッジの扱いは難しく、レイジングスピリッツは実戦で1,2本使わせるくらいの心持だったのでマガジンをあまり用意していなかった。寧ろ1本使いきることはないだろうと思っていたし、作れたのもマガジン2つまでだったので、それしか用意していなかった。
悠はコンボを使わない代わりに大量の魔力を消費して身体能力を強化する魔法をしていた。「アクセルウィング」。レイジングスピリッツが新たに開発したカリバーフォーム用の魔法で、特徴は両手首と両足首から小さな翼を生やすことだ。身体能力が大幅に上がり、細かい所作でも高速と言える速度で行える。欠点は魔力のコスパはあまりよくないことだ。原作で似ている姿といえばフェイトのソニックフォームだろう。
カリバーフォームは魔法が有効打にならないグリードに対し、致命傷を与えられるメダジャリバーをレイジングスピリッツが取り込んで作られたものだ。カリバーフォームの特徴は遠距離・中距離の攻撃魔法を完全に捨てた近距離特化であることだ。刀身魔力で強化し、レイジングスピリッツが補助をしつつ「」で身体能力を強化して格闘技で押し切る。これがカリバーフォームの戦い方だ。
そしてこの姿はグリードやヤミーに対抗できる代わりに一対一の戦いに特化させている姿でもある。つまり、本来は複数の相手にこの姿を使うべきではないのだ。
だが今回の相手は高い強度を誇るリクガメヤミー、そして実力が未知数のメズールである。カリバーフォームでなければダメージは期待できない。
更に追い打ちをかけるように小魚ヤミーの大群。戦況は苦しくなるばかりだ。
それでも、ここで逃げるわけにはいかないと悠は自信を奮い立たせる。こいつらがフリーになれば全体的な戦況はより悪くなる。自分一人でこいつらを引き付けていることで他が思い切り動けているはずだ、とプラスに考える。
事実、ここで悠が撤退すればメズールは悠からメダルを奪うことを諦め、他の魔導士の下へと向かう。その場合、戦線は維持できなくなるだろう。だから彼に逃げるという選択肢は最初から無かった。彼にできることはただ一つ。
『ウイニングロード』
一秒でも早く、目の前の敵を全て倒すことだけだった。
「芸がないわね」
悠、いやオーズはウイングロードを複数展開し、空中に足場を作って走り出す。行先は全てリクガメヤミーだ。だが既に何度も使っているため、メズールにとっては既知の魔法。オーズを魔法の道から落とそうと水の弾丸と魔力球を飛ばす。
「お前がな」
『アクセルフィン』
攻撃が当たると思った直後、突如として空へと消え、メズールの攻撃は通り過ぎていった。
「飛んだ!?」
『バインド』
「これは!?」
「かかった!」
メズールが驚愕した瞬間、メズールの両手首と両足首が藍色リングに縛られる。オーズは少し前からバインドを仕掛けるためにスフィアを飛ばしていて、その機会を伺っていたのだ。
「決めるぞ、カートリッジ!!」
飛んでいるのではなく、正確にはただ浮いているだけのオーズは、トラクローを仕舞いカートリッジが三本飛び出したレイジングスピリッツを構える。
「私を守りなさい!」
メズールの声に反応し、リクガメヤミーは頭と両手両足を甲羅に収納、高速回転してオーズへと飛んでいく。小魚ヤミーの大群もオーズの攻撃を阻止すべく、リクガメヤミーより少し遅れながらもオーズの真下から襲い掛かった。
「ウイニングロード!!」
だが、オーズはそれも読んでいた。飛んできたリクガメヤミーは回転の軸である甲羅の中心へとウイニングロードを直撃され、吹き飛んだ。その方向は小魚ヤミーの大群。振ってきたリクガメヤミーを避けるように隊列に穴をあける。
「落とせ!」
『了解』
その隊列の穴に入るように、オーズは落下した。そして落下しながらレイジングスピリッツを振り回す。
「うおりゃあああああああああ!!!」
小魚ヤミーの大群の中でレイジングスピリッツを振り回し、大量の小魚ヤミーは切り裂かれ、セルメダルへと変わり、辺りに散らばっていく。その様相はまるで、セルメダルのハリケーンのようだった。
「っし、ラスト!!」
川の底に足を付け、レイジングスピリッツを構える。目の前にはひっくり返ったリクガメヤミー。その先には体の自由を奪われたメズールがいた。
「このっ!」
バインドを破壊しようとするも上手くいかない。このバインドがただの魔導士が作ったものだったら、彼女は体をメダルの集合体に変えて脱出することは容易だっただろう。だが、オーズのバインドはメダルの力が込められている特別性。バインドに掛かっているグリードはセルメダルの集合体に成れなくなっていた。因みにオーズ本人はこのことを知らない。
《スキャニングチャージ!》
「はあ“あ”あ“・・・」
バックルにオースキャナーを通し、全身に力を籠めてレイジングスピリッツを構える。バックルとオースキャナーを使うことでコアメダルの力を更に高めてより強力な一撃へと昇華させる。リクガメヤミーが攻撃を防ごうとやっとの思いで立ち上がった次の瞬間・・・
「セイヤ――!!」
リクガメヤミーレイジングスピリッツに斜めに切り付けられ、その斬撃は空間をも断ち切った。
やがて断ち切られた空間は元に戻り、リクガメヤミーの体は爆散して一枚のセルメダルだけが残った。
「ぜぇ、ぜぇ・・・」
オーズはリクガメヤミーとメズールがいないことを確認すると、遂に膝をついた。
『今回復します! 静かなる癒し』
レイジングスピリッツの詠唱と共にオーズの傷が癒えていく。
「ありがとう、リツ。おかげで痛みはだいぶ引いた。それじゃあ、残りのヤミーを倒そうか」
オーズはメズールがいなくなったことで、空中でウロウロして動揺している小魚ヤミーを見上げる。
『駄目ですよ!もう魔力もほとんど残ってないのにどうやって戦うつもりですか!』
「何のためにコンボを残してたと思ってんだよ」
『なっ、ほんとに使うつもりだったんですか!?』
オーズは疲労こそ残っているものの、既に肉体的ダメージは無くなっている。後は枯渇した魔力を補えば戦闘の継続は可能だった。
「ここまで来たんだ。やるからには最後までやりきる。それに、今もまだ戦ってる人がいるんだ。俺は、その人たちを助けに行きたい」
『で、でも・・・』
「頼むよ」
手元で反対気味なレイジングスピリッツを説得する。そのオーズの折れないだろう瞳を見て、渋々承諾することにする。
『・・・はあ、わかりました。コンボを使うなら使ってみたいものがあるのでそれとセットで使いましょう』
「了解。それじゃあまずは、こいつらを蹴散らそうか」
レイジングスピリッツを説得したオーズは立ち上がり、そして・・・
大音量で命の危機を知らせる直感に従い、レイジングスピリッツを後ろに振りぬいた。
「あら、気づくのね」
全力で振りぬかれた剣は止まった。剣の先は片手で止められており、動かない。
「なん、で・・・」
「返すわね」
剣を掴んでいたそれは、剣を軽く投げた。剣を強く握っていたオーズは剣と共に大きく吹き飛ばされて川に叩きつけられた。
「認めるわ、オーズの坊や。あなたは強い。私達の想定を遥かに超えるほどに」
怪物が歩いてくる。オーズ、悠が思い浮かべるのは初めてコンボに変身したあの日、あの男に会った時のこと。
「あなたはきっとこれからもっと強くなるんでしょう。だから確実に、ここで殺すわ」
絶対的な絶望が、歩いてくる。
「!! ウイニングロード!!」
『ブレイクランス』
藍色の道と藍色の光の槍が絶望へと飛んでいく。
オーズはできるだけ距離を取るため、レイジングスピリッツは牽制のために攻撃を行う。
この稼いだ時間を使い、ラトラーターコンボに変身するために。
「邪魔よ」
手の一振りで薙ぎ払われた。そうして、もう一度その姿を見た。
青く輝いていたマントは黒く輝き、タコの吸盤をあしらっていた足も青黒くなっていた。そして肉体は以前よりも強靭となっていることが一目でわかった。
「早く・・・」
『プロテクション』
即座に立ち上がろうとしたオーズの前にシールドが展開される。次の瞬間、死が目の前にいた。
「死んでちょうだい」
シールド砕き、そのままオーズへと伸びる。両腕でガードするも、衝突した瞬間、強い衝撃が全身に響き、吹き飛んだ。
自分が吹き飛ばされたのがわかる。スローモーションで景色が動く。これ、コンボに変身しても勝てるかなぁ、なんて、弱気なことを思ってしまった。
バルさんの時はブレイクランスが当たったから弱体化したうえで、コンボに変身して勝てた。翔の時も、レイジングスピリッツと戦って疲れて消耗したうえでコンボに変身して勝てた。こうやって考えると、今まで強い相手に真正面から買った覚えがない。
でも、勝たなきゃいけない。こいつが暴れれば、沢山の人が傷つく。それは嫌だ。
なのに、体は思う通りに動いてくれない。ダメなのに、勝たなきゃいけないのに、俺は弱くて、また何も守れなくて・・・
意識が、飛んで・・・
「・・・まだだあ!!」
空中で身を翻し、頭から落下しそうなのを足で着地する。何故か自然と体が動いた。
/空中で身を翻すことで頭から落下することを防ぐ。やはり体は重い。まあ、あれ程の戦いを繰り広げばそうもなるか。
オーズが唐突に息を吹き返した様子を見て、メズールは距離を取った。
何だろう、この感覚。不思議だ。自分の体が自分の物じゃないような不思議な感覚。
/何だこれ?悠の意識が引っ込まずに、それでいて俺の意識が浮上したせいでおかしなことになってるな。というか、何であいつじゃなくて俺が・・・あ。あいつ前々回で魂にダイレクトアタックされて、前回で酷使無双されたからまだへばってんのか。それで悠が気絶して俺の方が優先順位が上がったと。でもって悠の意識が息を吹き返して同居してると。・・・俺の孫、地味におかしいな。なーんで気絶せず俺と意識を融合させてるんですかねぇ。というか、意識の融合って人格に影響でそうで怖いんだけど。前回もあいつと意識が少し混ざってそうな気がしたからマジで怖いんだけど。
これならきっと、コンボに変身すれば勝てる。そんな気がした。
/でも取り敢えず、この状況をどうにかしないとだよな。よし、状況確認!敵、あいつが作ったらしいなんかやべー奴!魔力、空っぽ!カートリッジ、二本!肉体、限界ギリギリ!どうしろと?
でもまあ、可愛い(?)孫の為だ。じいちゃんが人肌脱ごうじゃないか。
メズールは背筋が凍った。何故なら、目の前の少年の姿を重ねてしまったからだ。かの王の姿に・・・
彼に襲いかかる脅威によって
内に秘めた聖王の魂が蘇る
祖 父 を 名 乗 る 不 審 者 (伏線)
頑張ってかっこいい戦闘シーンを考えて、文字に起こして、色んな表現やセリフを書き加えて、どうしてギャグに到着するんだ・・・?
ということで、次回も戦闘回です。よろしくお願いします!