クロノはあまり戦闘描写がないので作者なりに想像を入れて書いています。
解釈違いだったらすみません。
「あ”あ”あ”あ”あ”!!」
悲痛な叫びが土手に響く。トラクローによって引き裂かれた箇所から、セルメダルが血しぶきのように飛び出す。その中には、3枚の青いメダルが混ざっていた。
「あ”あ・・・」
メズールは数歩後ずさると膝をついた。そして足のタコの吸盤のような模様がセルメダルと共にはじけ飛んだ。
「よくも・・・!」
オーズを睨みつけるが、仕返しをする余裕もない。ジュエルシードを酷使し、セルメダルを大量に失っただけでなく、コアメダルも失った。彼女に立ち上がるだけの力も残っていない。
「はあ、はあ」
オーズの息は荒い。彼は既に限界を何度も超えていた。だがまだ、弱っているグリードに止めを刺すだけの力が残っていた。
剣を振り上げた、その時だった。
『魔力反応!何か来ます!』
「メズールー!!」
即座に後方に跳ぶと、メズールを横からかっさらう影があった。
オーズから離れた場所には、メズールを抱きかかえる銀色の何かがいた。
「メズール!メズール!」
その何かは、必死にメズールの名を呼ぶ。
「ガメル・・・私を連れて逃げて・・・」
「わかった!!」
その影は腕を川に向けて振り下げた。すると川の水は吹き飛び、川の底には大きな穴ができた。そしてガメルと呼ばれたそれは、メズールと共にその中へと飛び込んだ。
「ま・・・て・・・」
追いかけようとするも、膝をつく。オーズにはもう、立ち上がる力も残っていない。
『マスター!!今治療を・・・て、怪我はしてないんだった!!ど、どうすれば・・・』
そうしている間に穴は塞がり、川の水は正常に流れ出した。
「クソ、取り逃がした・・・!」
川に拳を打ち付ける。あの一瞬で動けなかった自分を恨む。倒すチャンスはここしかなかったというのに、何をしているのだと。
「・・・せめて、残りのヤミーを・・・」
『言いたいことは山ほどありますけど、とにかくもう体が限界です!!マスターはもう頑張りましたよ!ヤミー一体に小型ヤミーの大群、更にはグリードですよ、これで倒れても誰も口を出しませんよ!!』
オーズを、悠を説得しようとレイジングスピリッツが叫ぶ。実際、悠の体はもう限界だった。魔力を使い切り、体力が尽きかけていた時にコンボを使って更に体に負担をかけた。いかに先祖の戦闘技術で体への負担を減らそうとも、最早立ち上がることすらできない。
「・・・なあ、リツ。さっき、試したいものがあるって、言ってたよな・・・?」
『・・・!ダメです!もう本当に駄目です!!マスターが死んじゃいます!!』
「他の場所・・・」
『え・・・?』
「他の場所ではまだ、戦闘は続いているか・・・?」
『それは・・・』
「答えろ」
その圧力に、その力に、レイジングスピリッツは逆らえない。
『グ、グリードと戦闘している箇所が三ヵ所・・・他にも、小型ヤミーと戦闘中の魔導士もいます・・・』
「行くぞ、試したいものってやつを使って・・・」
彼に、魔王に逆らえるものは、存在しない。
「はい・・・」
レイジングスピリッツは自身から銀に黄色があしらわれた缶型の何かを出した。
「ぐわっ!」
「大丈夫か!?」
「気張れよ!隊長がグリードを抑えている間に、俺達が何とかしないと・・・」
海鳴市とある一角。そこは地獄のような光景だった。小型ヤミーが密集し、人型のトラヤミー、更にはグリードの一体、カザリがいた。
「くっ・・・」
「君本当に強いね。氷の魔法が効かなくて、空も飛べないっていうのに、ここまで食い下がれるとは思わなかったよ」
そんな中、SBCを持たず、1人でカザリを抑えるクロノの姿があった。
「お前たちは一体、何が目的なんだ!」
「答える義理は無いよ。強いて言うなら、君たち魔導士を殺すことかな?」
そう言って、カザリは高速で接近・・・しようとするも、クロノにかぎ爪が届く距離になって急に方向転換する。するとバインドが発生した。
「ほんとこういうのばっかりだよね!」
今度は後ろにまわり、蹴りを放つ。クロノはそれをデバイスでいなし、手をかざす。
『ブレイクインパルス』
手から発生する振動エネルギーがカザリの胸に直撃し、片足で立っていたカザリはその衝撃を踏ん張れずに後方に飛んでいった。
「この・・・」
『ブレイズキャノン』
威力を下げる代わりに早さを優先したショートバスタ―。それが倒れたカザリに向けて放たれた。煙により姿が見えなくなる。
「はあ、はあ」
手ごたえはあった。そう確信するが、クロノにはあまり効いていないという予感があった。
煙が晴れた先には、平然と立っているカザリと、その周りに僅かに散らばっているセルメダルがあった。それを見てクロノは内心舌打ちする。
「ほんといやになるよ。魔法が大して効かない僕が、僅かでもセルメダルが欠けるんだもん。どうやってるのそれ?」
カザリのダメージは僅か。対してクロノは少しずつだが長時間の戦闘でダメージが蓄積していた。
クロノは魔法少女リリカルなのはという世界で、間違いなくトップクラスの実力者だ。それも、主人公であるなのはやフェイトに勝るほどの。
だがやはり、そんな彼でも魔法が通じず、魔力に限りが見えない相手との戦闘は厳しいものだった。氷結魔法で拘束しようにもすぐさま熱線で溶かされ、バインドも段々と慣れてきている。
だが、彼は諦めない。彼には切り札があった。それも、とっておきのが。
『クロノ君、あともう少しで圭君が来るから、もう少しだけ持ちこたえて!』
エイミィの念話が届いた。
「お前たちの体の元になっているセルメダルは、確かに魔法を通しにくくしている。でもお前たちはセルメダルの集合体だ!セルメダルを壊そうとするんじゃなく、セルメダルをばらけるようにすれば体は崩れる!」
カザリの質問に敢えて答える。いつしかばれることでもあり、もうじきそんな小細工もいらなくなる。だから可能な限り時間を稼ぐことを優先した。
「なるほど。至近距離であの鋭い魔法で僕の体に窪みを作って、確か砲撃魔法だっけ?それを窪み目掛けて撃てば表面のセルメダルは削れるね」
納得したのか、カザリの姿はどこか満足気だった。
「魔導士の強さもわかったし、結構楽しめた。それじゃあそろそろ・・・」
獲物を狙う肉食獣のごとき鋭い視線を、クロノに向けた。
「殺しに行くね」
カザリは走り出した。目にも止まらぬその速さはまさしく電光石火。今までの比ではない。
『ディレイドバインド』
だがクロノは冷静に設置型バインドを仕掛ける。
「それはもう飽きた!」
クロノの周りを一瞬でぐるっと一周し、通った後には風の弾丸が設置されていた。
「シュート」
『プロテクション』
全方位からの攻撃。カザリの声と共に放たれたそれを、跳躍し下に向けてシールドを展開することで爆風から身を守りつつ、空高く舞い上がった。
『スティンガーレイ』
「貫け!」
高所からカザリに向けて槍の雨が降り注ぐ。当たっても大してダメージは負わないが、それでも一枚のセルメダルだって惜しい。避けようと走り出す。
「なっ!」
「かかった!」
予め設置しておいたバインドが作動する。
「この程度!」
すぐさまバインドを破りその場から離れる。
「また!?」
戦闘中、クロノはあちこちにバインドを設置していた。この場所はもう、クロノ以外は自由に動けない。
『チェーンバインド』
今度は鎖型のバインドがカザリに巻き付く。
「君はさっき、僕は君と相性が悪いと言っていたね」
さらにチェーンバインドを重ね掛けていく。
「悪いけど、僕が一番得意な魔法は氷結魔法じゃなくて拘束魔法なんだ。他の魔導士がくるまで拘束させてもらう」
カザリは全身をぐるぐる巻きにされて、もはや身動きが全く取れなかった。クロノは内心切り札が到着する前に決着がついたのは良いことか少し悩んだ。正直期待していたのに自分一人で解決してしまったので何とも言えない気持ちだ。
まあ、ぶっつけ本番で戦わせて何かあったら大変だしいいか。
そう考え、圭にはまた今度活躍してもらおうと考えた。そして氷を溶かすカザリを拘束したので、まだ暴れているヤミーを制圧しようと歩き出した。
「やっぱり、これなしだと厳しいか」
直後、後ろに暴風が発生した。振り向くと、バインドを全て破壊し、全身にエネルギーを漲らせたカザリの姿があった。
「まだ本気じゃなかったのか・・・」
「全力じゃなかったけど、魔力なしでの本気だったよ。君たち魔導士に魔法を使わずに僕がどれほど戦えるか試す実験だったんだけど、まさか完全に拘束されるとは思わなかったよ。正直、これがなかったら危なかったかも」
そういうと、胸から1つ、蒼く輝く宝石を取り出した。
「ジュエルシード・・・!」
「これ、ジュエルシードって言うんだ。これのお陰で高熱エネルギーの放射や風で弾丸を作ったり色々できるようになったんだよ。便利だよねこれ」
「ジュエルシードはそんな都合のいいものじゃない、とても危険なものなんだ!それを渡せ!」
「嫌だね。これを使って僕は、完全体を超えた更なる進化をするんだ」
ジュエルシードを胸にしまい再び構える。
「それじゃ今度こそ、命と記憶をもらうね」
『プロテクション』
咄嗟にシールドを展開するも、シールドは破られ、かぎ爪をデバイスのデュランダルで受け止めるが嫌な音をたてながらクロノは吹き飛ばされた。
速い!それに力もさっきと比べて段違いだ!
『ストラグルバインド』
起き上がりながら強化魔法を強制解除させるバインドで試しに拘束を試みるが、気にする様子もなく歩く動作だけで破壊する。
「SBC無しでの拘束は無理か・・・!」
逃げて時間を稼ごうと走り出そうとする。
「逃がさないよ」
カザリの手から暴風が発生し、クロノは吹き飛び、倒れ伏す。
「ぐ・・・」
「それじゃ、バイバイ」
残酷にも、その鋭いかぎ爪がクロノに向けて振り下ろされた。
「ファイヤー!!」
「!?」
突如、振り下ろされるはずの腕は撃たれ、弾かれた。そして当たった箇所にはセルメダルがこぼれた。
「一体誰が・・・」
撃たれた方向には、1人の男がいた。銀の髪、服装はどこかの会社のものだろうか?薄茶色のスーツを着ていて、グレネードランチャーのような何かを抱えた中学生程の背丈の少年が、仰向けに倒れていた。
というか伸びていた。
「え、いや、え・・・?」
想定外過ぎる状況に頭がついていけていないカザリとは対照的に、クロノは冷静に状況を分析した。
あれは確かバースバスター。セルメダルを使ったエネルギー弾を放てる代わりに反動が大きかったはず。そして近くに緑色の軍用の車が一台。あいつの性格も考慮して考えると、走っていたあの車から高く飛び出しながらバースバスターを使用、想定以上の反動に対応できず、空中の為足の踏ん張りも効かずに後方に吹き飛んだ、と。
馬鹿かあいつは?馬鹿だった・・・
さっきまであんなのを切り札扱いしていた自分が情けないと、本気で後悔していた。
「いてて・・・反動でかいの忘れてた」
「本当に何をやっているんだお前は・・・」
起き上がった圭に車から降りてきた男が呆れながら手を貸した。
「すみません、うちの上司が危ないところだったので咄嗟に・・・」
「気持ちはわかるが・・・」
「理由の半分はそうだろうが、もう半分はかっこつけたかっただけだと思うぞ」
クロノの告げ口を聞いて男、後藤は振り向く。圭は顔を背けていた。
「いや、違うんですよ。車に乗りながらだと反動で車が危ないだろうし、かと言って降りてから撃ってたら間に合わなかったんですよ。別に跳躍して射撃しながらの登場がかっこいいだろうなとか、これっぽっちも考えてないですよ?」
「それを俺の目を見てからもう一度言ってみろ」
圭が後藤に顔を合わせることは無かった。
「ねえ、そろそろ僕も話に入っていいかな」
「あ、ごめん。律儀に待っててくれてありがとなカザリ」
タイミングを見計らって声をかけてきたカザリに、圭は待っていたことについて礼を言う。それを聞いてカザリはやりずらそうだった。
そして圭はカザリへと歩き出す。
「クロノ、まだ戦えそうか?」
「・・・ああ」
「それじゃ、カザリの相手は俺がやるから、クロノは後藤さんと一緒にヤミーの方を頼む」
「1人で大丈夫か?」
「ああ。俺、エースオブエースだから!」
クロノにサムズアップすると、その言葉を信じて立ち上がったクロノはヤミーの下へと向かった。
「無理するなよ」
「必要がなかったらしません」
その言葉に一言言いたかったのをぐっと抑え、リモコンを操作した。すると車から大量のタカの缶ドロイドが飛び立ち、走り去る後藤の後を追った。
その間、カザリは何もしなかった。否、圭から目を離さなかったのだ。勘とでもいうべきものがこの男を警戒しろと告げていた。
2人が立ち去るのを確認すると、圭はセルメダルを一枚コイントスの要領で飛ばし、落ちてきたセルメダルを掴む。よく見ると、圭の腰には何かベルトのようなものが巻き付いていた。
「変身」
セルメダルを謎のベルトにセットし、機械の右についていたハンドルを回した。
《カポーン》
カプセルが開いたような軽快な音と共に緑のカプセルのようなものがいくつも展開。そして光と共に現れたのは、先程の少年ではなく、スーツに身を包んだ戦士だった。
「君、何者?」
「そうだな、強いて言うなら・・・」
敢えて悩む仕草をしてから、こう答えた。
「仮面ライダーバースだ!」
ここに新たなる仮面ライダーが誕生した。その名を仮面ライダーバース。
「さぁて、稼ぎますか!お仕事お仕事」
バースは新たなる一歩を踏み出した。
『圭、お前がそれを言うと何故か腹が立つからもう言わないでもらえるか?』
「あ、はい。すみませんでした・・・」
バース装着車の声は後藤のインカムに繋がっていた。そして後藤から抗議の電話がかかり、即座に謝る。
何とも閉まらない一歩目だった。
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