ああ、鴻上社長に「その欲望、素晴らしい!!」と言われてしまう。
俺と高志、そしてレイジングスピリッツは、学園のアイドルの高町なのはから逃げるため、ワールドツアーをした。文字通り、様々な世界に飛んでは着地を数回繰り返した。見たことのない生き物や植物が、数秒ずつしか見れなかったがそこそこ面白かった。そして現在、俺たちは俺の家のリビングにいる。なぜそうなる。
「なぁ、目的地が俺の家なのに、どうして色んな世界を飛びまわったんだ?」
『管理局の追跡を逃れるためです。手間がかかりますけど、これが一番確実なので』
レイジングスピリッツが答えてくれる。それじゃあこれも聞こう。
「どうして高志を眠らせたんだ?」
「うんうん」
『私が次元跳躍・・・世界を渡るために使用した道具は特殊でして。耐性がない人が使うと酔うんです。下手をしたら数日寝込む程に。ですので安全面を考慮し、仮死状態にしました』
「ふむふむ、なるほど。え?俺さらっと殺されてね?」
衝撃の事実を知り、驚く高志。でもすまん高志、そこで色々言うと話が進まないから飛ばさせてもらう。
「とりあえずそれは置いといて」
「置いとくの?!」
「あの怪物とかお前とか、管理局って何なんだ?今日一日で起きたことが多すぎる」
『わかりました。まずは私がそれぞれ説明します。まずは聞くことに専念してもらっても構いませんか?』
「わかった」
レイジングスピリッツの提案を受ける。
「俺も聞いていいの?」
『はい。マスターがそれを望むのなら』
俺は頷いた。正直1人で抱えきれないからなこれ。高志も巻き込まれてるっぽいし。
『では、最初は私について。私はレイジングシリーズNo3、レイジングスピリッツです。私はデバイスという機械で、簡単に言うなら機械で作られた魔法の杖です。』
・・・まじか。魔法の杖ときたか。確かに魔法みたいなことをしてるなー、なんて思ってたけど、マジだったのか。
「レイジングスピリッツが何か凄いことしてるのはわかってたけど、魔法の杖だったのか。そんなにペラペラ喋る機械ってことはあれだろ、高性能AIって奴だろ?」
思わずそんなことを言ったら、空中に浮遊していたレイジングスピリッツが一瞬ピタっと止まった。そして饒舌に喋りだす。
『そうなんです!私こそがかの天才アイオーンの最高傑作にしてインテリジェントデバイスの決・定・版!使用者が予め魔力を込めていれば私単体でもある程度の魔法を使用することが可能!私が完成したことによりユニゾンデバイスの制作の足掛かりになったと言っても過言ではありません!まあ結局量産されることはありませんでした、しょうがありませんねいくら何でも使用者を選びすぎですしあれ。さらに私は・・・』
「すとーぷっ!!途中どころか最初からわけわかんないから!!」
こいつやべぇ。何言ってるかわかんなかったけど、いきなり自慢大会始めたのだけは分かった。専門用語が多すぎだお前!
「・・・失礼しました。取り敢えず私のことは、昔異世界で作られた、現代基準でもオーバースペックな魔法の杖と覚えていただければ」
「お、おう」
そういえば高志が静かだなと思って隣を見たら、宇宙を眺めていた。当分こっちに戻ってこないなこれ。
「それで、なんでそんなものが俺の中に?」
『聖家は代々魔導士の家系で、長男には非常事態に備えて、私を体に収めていたのです』
「ここにきて一番の爆弾発言来たなおい」
全然知らなかった。そんな話聞いたことないんだけど。驚きすぎて一周回って落ち着いちゃったんだけどどうしてくれんの?(混乱中)
『マスターの両親はあなたを普通の人として育てるつもりだったのです。魔法は便利ですが、あんな出来事にはあまり関わりたくはないでしょう?』
「それは・・・そうだけど」
いやそれでも教えてほしかったというか、なんというか。というか魔法使ってるとあんな怪物に襲われるものなのか・・・
『そして今回、あの怪物がマスターに触れたことで、私が異常なエネルギーを感知。それにより私が起動したというわけです』
「触れないと起動しなかったのはなんでだ?」
『それを説明するために、次はあの怪物について話しましょう』
俺は聞く姿勢を整えた。高志は宇宙観測に勤しんでいた。
「あれは、彗星かな?でも彗星はもっとぱあーっと光るもんな」
こいつ本当は意識戻ってきてるだろこれ。
『あの怪物はヤミー。グリードという怪物が、人間の欲望から作り出したセルメダルの集合体です。ヤミーは基本的に、元となった人間の欲望を満たそうと行動します。なぜなら、それによって自分の体の中のセルメダルが増えるからです』
『あ、セルメダルというのは、人間の欲望を変化させたものです。まあ小型エネルギータンクといえば分かりやすいでしょうか。それを増やしてグリードの下に戻り、その全てをグリードに捧げます』
『次はグリードについて。グリードはコアメダルという特別なメダルを核としてもった上位存在です。マスターが使っていたあの3枚がコアメダルです』
「ちょっと待てぇいー!!」
じゃああれ滅茶苦茶あぶねえじゃねえか!玩具とか言ってすみませんでした。
『心配はいりませんよ。コアメダルは1色につき9枚ありまして、そのうちの1枚にだけグリードの意識が入っています。それ以外の8枚は特別なメダルという認識で大丈夫です』
「え、そうなの?」
それじゃあ、ほっといたら別人格的なものが生まれて、新たな怪物とかが生まれたりしないのか。よかった。
『まあグリードにとってコアメダルは体の一部そのものなので、このまま持っていたら間違いなく襲ってきますね』
「だめじゃねえか!」
そんなもん俺は使ってたのか。?ちょっと待て。
「レイジングスピリッツ、2つ聞きたいことがある」
『何でしょうか?』
「1つは何で高志が襲われたのか、もう1つはその・・・1色につきって所なんだけど」
『1つ目の質問はわかりませんが、2つ目なら』
すっごい嫌な予感しかしないけど、聞くしかなかった。
『コアメダルは5色あり、グリードもまた、5体います』
うわあ、予想的中~。ヤミーを作り出せて、ヤミーより強い奴が5体かー。やばいなこれ。
「怪物のことはわかった。でも高志が襲われた理由はわからずじまいか・・・」
「・・・もしかしたらこれのせいかも」
そう言って高志が俺の手に乗せたのは、カマキリが描かれた緑色のメダルだった。
『間違いなくこれが原因ですね』
「なんで持ってんだよ!?」
「小さいころ、森で拾ったんだよ。それ以来何故か手放せなくて、ずっと持ち歩いてた。今思うと呪いのアイテムみたいだなそれ」
取り敢えず高志の件もわかった。それじゃあ次だ。
「あの変身ベルトは何?」
『聖家に代々受け継がれた魔道具です』
「怪物の核を使ってるのにか?」
「800年前のグリード制作には聖家も関わっているので」
なんか、これ以上聞くの怖くなってきたんだけど・・・俺の先祖なにやってんの?
『この辺の話をすると長くなるのでまた今度にしませんか?』
「・・・そうする」
そうだ、物事には順序ってものがある。だからこれは逃げではない、断じて。
『それでは最後に管理局について。悪の掃き溜め組織、以上です』
「いやちゃんと説明しろ!」
「レイジングスピリッツちゃん、めっちゃ嫌ってるじゃん」
そこちゃんと説明してもらわないと、これからどう動けばわからないんだからちゃんとしろ!
『・・・様々な世界を管理・統括する巨大組織です。警察と裁判所としての役割を持っています。また、ロストロギアを回収・管理する役目を持ったクソ組織です』
「・・・ロストロギアって?」
もう話を進めることを優先させることにした。
『滅んだ異世界の遺産です。主に兵器や技術ですね。特に危険なものは、世界を滅ぼしますね』
「今のところ管理局の悪いところがわからないんだけど、なんでそんなに恨んでるの?」
『その話を始めると日にちが変わりますが構いませんか?』
「やっぱやめとく」
聞きたいことも聞けたし、これ以上はやめとこう。ちょっと疲れた。
『それでは最後に、マスターに質問したいことがあります』
「なんだ、改まって」
『マスターはこれから、グリード達と戦いますか?』
「戦う」
悩む必要はなかった。当然だ、こっちには戦う手段があるんだから。
『管理局が対処します。先ほど会った魔導士はとても強いですし、他にも仲間もいるでしょう。マスターが捕まった場合、彼女はともかく、上層部があなたは何をされるかわかりません。それ程聖家は特別なんです。それでもですか?』
なるほど、だからあんなに管理局から遠ざけたかったのか。それでも・・・
「やるよ。目の前に傷ついている人がいるのに手を伸ばさなかったら、死ぬほど後悔するだろうから」
まあ、今まで俺が助けられなかったことなんてないんだけど。
『・・・わかりました。なら、私が全力でサポートしますね!』
「俺にも手伝えることがあったら言ってくれよ!協力するからさ!」
「2人とも・・・ありがとう」
2人には感謝しかない。よし、方針が決まったところで、これからどう動こうか?
『まずはとある人物に会いに行きましょう。うまくいけば、協力してもらえるかもしれません』
その言葉に従い、次の日にそのある人物に会ったり、魔法の練習をしたため、俺の2日間の休日はあっという間に終わった。そうして月曜日を迎えた。
どうかマスターが 真実に気づきませんように
「聖君、顔色悪いけど大丈夫?」
そう尋ねてくるのは、五大天使の一人、紫髪のウェーブがかかったお嬢様、月村すずか。小学校の頃から何故か話かけてくる。なぜなんだ。
「高志と服買ってきたんじゃねーのかよ?」
俺の親友、圭だ。レイジングスピリッツ曰く、魔力を大量に持っているらしく、間違いなく管理局員らしい。嘘だ!
「体調悪いんか?あんまり無理しないようにな?」
元推しの八神はやて。彼女には弱みを握られている、悲しいね。彼女を見た途端、内なるレイジングスピリッツが『闇の書!?なんで!?ナンデ・ヤミノショガ=ココニ!?』と言っていた。デジャブである。
「そうよ、もしもの時は保健室に行きなさいよ?」
同じく心配してくれているのはアリサ・バニングス。彼女も五大天使の一人だ。
あの、俺の身近の人、魔法関連の人多すぎません?
そして遂に、彼女が現れた。
「すずかちゃん、アリサちゃん、圭君おはよう!」
茶髪のサイドテール、五大天使の一人、そして管理局員の高町なのはだ。
「おはよう、悠君」
「・・・おはよう、高町さん」
俺の明日はどっちだ!?
優しい嘘によって、彼は居場所を手に入れた。
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