寝て起きたら暗黒期!?ベルくんに会うまで死にたくねー!   作:お米大好き

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つけた筈の自動保存チェックが外れていた…なんでぇ?




第十四話、合技×絶望

 

 

 

 

 

 薄く霧が立ち込めるエリア、そこで今2人の冒険者と1匹の怪物が向かい合っていた。

 

 

 怪物は生まれ落ちたと同時に()()()()()()()。そして理解する。自分は強者だ、これから始まるのは命を懸けた殺し合いではない。一方的な狩りだと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭の中で『冒険者を、神を殺せ』そう()()()がする。しかしそんな事()()()()()()。今は目の前にいる奴らで遊びたい。

 ()()()()自分のやりたい事を優先する。

 

 

 

 

 

 怪物の黒い瞳孔は目前にあるおもちゃ(冒険者)を見据え、捉えた。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうする?タクト…」

 逃げるのは無理そうだぞ、戦うか?。シオンはそう言葉を続ける。

 

 

 

 

「・・・」

 

 しかしタクトからは返事が返ってこない。この現状(イレギュラー)をどう打開するかを考えるのに必死でシオンの声を聞く余裕などなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 どうする、どうすればいい。あいつ(怪物)の放った矢…威力だけならLV.4はある。逃げるのは無理だ、背を見せたら確実に射ち抜かれる。

 例え逃げれたとしても俺かシオン、どちらかは確実に殺される。

 

 

 

なら戦っ——「タクトォォ!!」バッ

 

 

 

 

 タクトが思考の渦に呑まれていた時、いきなりシオンに突き飛ばされる。その直後地面が爆ぜ、土が宙を舞い砂煙が立ち込める。砂煙は霧と混ざり2人の覆う。

 

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

 

 タクトが先程まで立っていた場所を見やるとそこには半径3メートル程のクレーターが出来ており、その中心には怪物が射ったであろう矢が刺さっていた。

 

 

 

 

「っく…俺はこの状況で何を…」

 

 

 

 

 タクトは敵の目の前で逃げるか戦うかを考え込んでいた先程までの自分を悔いる。それと同時に立ち上がりシオンへと声をかけた。

 

 

 

 

「シオン無事か!?」

 

 

 

 立ち込める砂煙の中、シオンの名前を呼んだ。すると

 

 

 

「おう!傷一つないぜ!」

 

 

 

と言って、煙の中から無傷のシオンが出て来た。

 

 

 

 

「無事でよかった……シオン悪いが一緒に戦ってくれ」

 

 

 

 シオンの無事を確認した直後、タクトは鞘から刀を抜きそう言い放つ。

 

 

 

 俺らのどちらかが囮になれば片方ら逃げられるだろう、でも俺はシオンを囮に逃げるなんて出来そうにない。多分シオンもそうだ。

 

 なら全力で戦って足掻くしかない。

 

 

 

 

「おう!2人ならきっと勝てるさ!それになんか俺今すげぇ調子がいいんだ!」

 

 

 

 シオンは間を置かず返事を返す。その声はこの状況でタクトを勇気づけるには十分だった。

 

 

 

 

 

「それは頼もしいな」

 

 その言葉を最後に2人は大きく息を吸い込み、全力で叫んだ。

 

 

 

 

 

「「絶対に勝つぞ!!」」

 

 

 

「「俺より先に死んでくれるなよ相棒!!」」

 

 

 

 

 

 直後、視界が晴れモンスターの前に2人は姿を現す。

 

 

 

 

 

「ヴモオオォォォ!!」ギギギィ

 

 

 2人が生きている事を視認した怪物は目の前の人間を始末する為再び弓を構え弦を引く。

 

 

 

「シオン!俺は右だ!」

 

「タクト!俺は左だ!」

 

 

 それを見た2人は左右に分かれ怪物へと走り出した。

 

 

 

「ゥゥ——ヴモオォォ!!」ビュン

 

 

 怪物はどちらを撃つか迷うが、本能でこいつ(シオン)は危険だと感じ、結果シオンへと矢を射る。

 

 

 

 

「シオン!!」

 

 

 怪物がシオンへ照準を合わせたと同時、タクトはシオンへと声を飛ばす。が…

 

 

 

 

「大丈夫だ!!———【空圧拳】ッ!!」バッ

 

 

 シオンは【空圧拳】を飛んでくる矢に打ちつけ軌道を逸らした。

 

 

 

 

「なっ!?マジかお前!?」

 

 

 

「言っただろ!調子が良いって!流石に破壊は無理だったが逸らすぐらいなら出来た!」

 

 

 

 調子が良いって…それだけであの怪物の攻撃を逸らせるわけねぇ、そもそも何でシオンには飛んでくる矢が見えてんだ。俺には見えねぇのに。

 

 

 

「まあ今は考えるだけ無駄だな——【千鳥】、シオン合わせろ!!」チチチチ

 

 

 

「了解!!【空圧飛拳】!!」ビュン

 

 

 あいつ(怪物)の武器は弓だ。なら次の矢を放たれる前に近づいて倒す。

 タクトは怪物の左側から攻め、シオンがそれに合わせて右側から攻める。

 

 

 

 

「ハァァァッ!!——なっ!?」チチチチ

 

バシッ

 

 

 

「オラァァ!!——アガッ」

 

ドゴッ

 

 

 

「ヴヴヴッ」ニヒィ

 

 

 怪物は左手で【千鳥】を受け止め、右の裏拳でシオンの腹を殴り飛ばす。

 タクトはそのまま持ち上げられ、シオンは数メートル先で腹を抑える。

 

 

 

「ヴモォォ——「【正義の使徒】発動ぉ!!」

 

 

 怪物の手に力を込め、このままではまずいと思ったタクトは慌スキルを発動した。

 

 

 

「【千鳥流し】ィ!!」チチチチ

 

 

 

 スキルを発動すると同時に魔法を発動し怪物へと電流を流す。

 

 

 

「ヴモォォ——オオ—」バチバチバチ

 

 

「っし——【千鳥】」チチチチ

 

 

 

 電撃を受けた怪物は体が痺れ一瞬力が抜けた。その間にタクトは怪物の手から逃れ、魔法を再度発動し、刀を構える。

 

 

 

 

「・・・」チチチチ

 

 

 

 痺れから解放された怪物はすぐさまタクトへ向けて右拳を振るう。

 

 

 

「ブモモォォォ!!」ブンッ

 

 

 その拳はバシッ——っと音を立ててタクトの顔へと命中する。ところが

タクトはその攻撃で微動だにせず刀を振り抜いた。

 

 

 

「【雷切】ィ!!」チチチチ

 

 

 

「ブモォォォ!!」

 

 

 

 タクトの【雷切】は怪物の右腕を斬り裂くには至らない。

 

 

 

 

 やっぱ俺の力じゃ斬り落とせねぇか、でも骨までは斬った。それに俺は1人じゃない。

 

 

 

「っ——シオン!!」

 

 

 

 

「【空手裏剣】!」シュシュ

 

 

 

 

 腹の痛みから復帰し近づいて来ていたシオンによって怪物の右腕は斬り落とされた。直後モンスターは左手で腕を押さえ悲鳴にも近い声を上げる。

 

 

 

「ブモォ————ッッ!!」

 

 

 

 タクト達はその隙を見逃さなかった。

 

 

 

「シオン!合わせるぞ!!」

 

 

「おう!!」

 

 

 

 2人は手の平を重ね合わせ怪物へと向ける。昨日完成したばかりの新技。人に向けて使うには危険すぎる合技。その名も

 

 

 

 

 

 

「「【爆雷拳(ばくらいけん)!】」」チチチチ

 

 

「ブモォォ!?」

 

 

 

 

 千鳥を纏った2人の手が怪物の腹に突き刺さり、直後に空圧拳を発動。腹の中で千鳥と空圧拳が混ざり合い怪物が腹の中から爆ぜる。

 

 

 

「ブモ————」

 

 

 

 2人の攻撃を受けた怪物は上半身が弾け飛び魔石が砕ける。その場には怪物の下半身のみが残された。

 

 

 

 

 

 

「やったな!タクト!!腕と体が少し焼けたけど!」

 

 

 

 

「魔石が砕けた……俺達の勝ちだ…でも」

 

 

 

 

 

 何故だ…残された下半身から目が離せない。魔石は砕けた。下半身はぴくりとも動かない、もうこいつ(怪物)は死んでいる。なのに———ッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「待てよ…何故下半身が消えない」

 

 

 

「え?どう言う事だよタクト」

 

 

 

 普通ならとっくに灰になっているはず…なのに灰になって消えないって事は———っ!

 

 

 

「まだ…生きている?」

 

 

 

「な、何言ってんだよタクト!魔石は壊したんだぞ?魔石を壊されたモンスターは——なっ」

 

 

 

 どうやらシオンも気づいたようだ。死体が消えない=まだ死んでない。

 

 

 

「【千鳥】!!」チチチチ

「【空圧拳】!!」ブン

 

 

 

 異常に気づき急いで残された下半身へと攻撃したタクト達だったが少し遅かった。

 

 

 

 

「・・・」ダッ

 

 

 

ドスッ 

 

 

 

「グハッ——」

 

 

 

 

 

 2人が魔法を発動した途端、怪物の下半身が起き上がり後ろ足でシオンを数メートル先まで蹴り飛ばしたのだ。

 

 

 

「・・・」ダッ

 

 

「シオ———ぐぁ"ぁ"」チチチチ バキッ

 

 

 

 名前を呼ぼうとした瞬間、下半身はタクトをシオンとは別の方へと蹴り飛ばす。

 

 

 

 

 

ズザザザ

 

 

っと音を立てタクトは地面を転がた。そして元いた場所から十数メートル離れた場所で停止する。

 

 

 

 

「うぐっ…腕が…」

(落ち着け。多分ヒビが入っただけだ…まだ折れてない。ならポーションで治せる)

 

 

 

 

 タクトは蹴り飛ばされる直前両腕で蹴りをガードしていた。骨にヒビが入るだけで済んだのは魔法(千鳥)スキル(正義の使徒)のおかげであろう。

 

 

 

 

「ゴクッ——んはぁ、よし。アリーゼ達に感謝しねぇとな」

 

 

 

 

 

 二つのポーションを飲み、タクトは魔力と怪我を回復した。

 

 

(あとポーチの中には、ポーションが4つに、マジックポーションが3つ。シオンにも渡さねぇと)

 

 

 

 

あいつ(怪物)はどうな——どうしろってんだよ…」

 

 

 怪物がいた場所を見やると、弾け飛んだ筈の上半身がボコボコと音を立てて膨らみ再生しつつあった。その光景を見たタクトは黒いゴライアスを連想する。

 

 

 

 

「どうしてだ、魔石は壊れた筈だ…」

 

 神に呼ばれた筈のゴライアスだって魔石が壊れれば灰になった、なのにどうして。

 

 

 

「どうする、タクト。あいつ(怪物)魔石が壊れたのに再生しようとしてるぞ」

 

 

 

 

「お前いつの間に…いや、今はいい受け取れ」

 

 

 

 いつの間にか近くに来ていたシオンにポーション類を手渡す。

 

 

 

 

「ありがとう。ゴクッ——で、なんか作戦とかあるか?タクト」

 

 

 

「…逃げるぞ」ダッ

 

 そう言ってタクトはその場から走り出し、その後ろを困惑したシオンが追いかける。

 

 

 

「え、ちょ、待てよタクト!!なんか勝つ作戦とかねぇのか!?さっきあんなに『俺より先に死んでくれるなよ相棒』とか言ってカッコつけてたのに!!」

 

 

 

 

 あるわけねぇ、魔石が壊れても死なないバケモンをどうしろと?。そもそも魔石を壊せた事自体奇跡なんだ。あの怪物を倒したいならオッタルさんでも呼んでこい。

 

 

 

「ない、それに復活しようとしてるなら今のうちに逃げる。もう同じ手は使えねぇしな」

 

 

 あの怪物の前に戦ったクソ猿と同じ匂いがする。

 

 

 

「そ、それはそうだけどよぉ」

 

 

 

「冒険をしたいのはわかるが今回は諦めろ」

 

 

 

「…おう。今回は相手が悪いもんな」

 

 

 

 そう言ってシオンはタクトを追い越し少しずつ距離が出来ていく。

 

 

 

 

「理解ある相棒でよかっ——って足早ぇ!?」

 

 

 

「ん?ああ、さっきから体の調子が良いんだ。あいつ(怪物)の攻撃受けても無事だったし」

 

 

「調子が良いって…」

 

 

 さっきは考える余裕がなかったから無視していたが。シオンの身体能力が明らかにおかしい。矢も見えてたみたいだし、何故だ?。

 

 

 

 

「魔法は空圧拳以外持ってねぇだろうし……スキル——ああ!」

 

 

 【戦闘の天才】か!!自分より強い奴との戦闘時、階位昇華の筈。あれ?……戦…闘時?。

 

 

 

 

「シオン…今も体の調子はいいんだよな?」

 

 

 気づいてしまった。気づかない方が幸せだった事に。いや、気づいていなくとも結果は同じ。

 

 

 

「おう!すげぇ調子がいい!!」

 

 

 

 シオンのステータスが上がっている…つまり、まだ

 

 

 

()()()()()()

 

 

 

「【千鳥】!シオン!!全力で——」

 

 走れ。そう言おうとしたその時だった。

 

 

ビュン

 

 

っと、風を切り黒いものが2人の間を通り抜け———

 

 

 

(ふ、ふざけんな。元いた場所からかなり離れた筈だ…追いつくのが早すぎる)

 

 

 簡単には終わらない。逃げられない。

 

 

 

「…タクト…どうする」

 

 

 相手はただのモンスターではない。ダンジョンが召喚した厄災の化身。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドコエ…イク。ワタシノオモチャ。マダアソビ、オワッテナイ」

 

 

 

 

 完全に復活した怪物が、もう逃すまいと2人の前へと立ち塞がる。

 

 

 






[戦闘の天才]
 
自分より強い者との戦闘時全ステータス階位昇華
モンスターから得る経験値を200%アップ
信頼のできる者との共闘時、自身とパートナーの全ステータスを20%アップ


これに+で【正直者】
 
嘘がつけなくなる。
戦闘時、器用以外のステータスを50%アップ


全ステータス合計70%上昇


今のステータスから考えるにレベル3までなら喰えるかも。

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