寝て起きたら暗黒期!?ベルくんに会うまで死にたくねー!   作:お米大好き

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前半と後半で温度差が…。

どうしてこうなった?。

輝夜さん好きからしたら嫌な回かもしれません。


第四話、この名前何処かで×説教?

 

 

 

 

 

 

俺はただ牢屋の中で呆然としていた。

 

 

 

「……とりあえず、ここを出たらアリーゼに謝らなねえとなぁ、後ネーゼさん。リューさんは…その場次第かな…」

 

 

 

 ただ心配なのが、輝夜さんだ。もし今回のことを知ったら……間違いなく斬られる。

 

 

 

 俺は頭を抱えて悩むが、答えは出ない。

 

 

 

「……寝るか」

 

 

 

 俺は考えるのをやめて、眠りにつくことにした。

 

 

翌日

 

 

 

 俺は目を覚ました後、することが無い為デイリーを確認する。

 

 

 

・[脱獄しよう!]報酬、器用+20、力+10

 

 

・[看守と揉めよう] 報酬、器用+10、以外のステータス+5

 

 

・[面会をしよう]報酬、耐久+20、魔力+10

 

 

 

 

「…うん、無理」

 

 

 俺はそう呟くと、再び目を閉じる。そしてしばらくした後

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、起きろ」

 

 

 誰かの声が聞こえてきた。

 

 

「んあ?誰ですかぁ?。俺今眠いんですよぉ。もう少ししたら起きるんで、先に帰ってくださいよぉ」

 

 

 俺はそう言って寝返りを打つ。

 

 

「おいこら、起きやがれ」

 

 

 しかし、声の主は諦めることなく声をかけてくる。

 

 

「後1時間…30分でもいいからぁ」

 

 

 俺はそう言って、薄いシーツを被る

 

 

「牢屋の中なのに図太ぇなおい!」

 

 

 声の主はそう言って、ため息をつく。

 

 

 

「はぁ。ほれ、飯持ってきたぞ。食うだろ?」

 

 

 

 どうやら男は食事を持ってきてくれたようだ。

 

 

「ありがとうございますぅ」

 

 

「お…おう、感謝しろ、って起きるのかよ…」

 

 

 

 俺が身体を起こすと、男は複雑な表情を浮かべる。

 

 

「お前、名前は何ていうんだ?」

 

 

 男が俺の名前を聞いてきた。

 

 

「人に名前を聞く時はまず自分から名乗れって教わらなかったか?、タクトって言います。」

 

 

 俺がそういうと、男の額に青筋が浮かぶ。

 

 

 

「てめぇ……ふざけてんのか?」

 

 

 

「いえ、至って真面目です。それとも何ですか?もしかして、名前を聞かれたら素直に答えるって、そんな決まりでもあるんですかね?。まぁ、俺には関係ない話なので別にいいんですけどね」

 

 

 俺は挑発するように男を見る。

 

 

 

「ちっ、俺の名は!ガネーシャファミリア所属冒険者、ハシャーナだ!」

 

 

 ん?…ハシャーナ?どっかで聞いた事がある気が…誰だっけ?原作に出てきたやつにそんな名前がいた気がする…。

 

 

「それで、そのガネーシャファミリアの人が俺に何か御用でもありますかねぇ」

 

 

「はっきり言うぜ。お前の身柄を預かったのは俺達ガネーシャファミリアだ」

 

 

「へぇ~、凄いんですね、で?それがどうかしたんですか?」

 

 

「馬鹿にしてるのか!?」

 

 

「まさか!そんな事ありませんよ。ただ、俺みたいな犯罪者を捕まえるのが仕事って大変そうだなって思っただけですよ。何せ、相手はモンスターじゃなくて人間なんだから。それに、捕まえた相手が抵抗して怪我をさせてしまうかもしれないし、最悪殺しちゃうかも知れませんから。本当に大変な仕事だと思いますよ。心から尊敬します。頑張ってください。応援していますから!。では、失礼させていただきます。ご飯ご馳走様でした。」

 

 

 

 俺は笑顔でそう告げると、再びシーツを被り二度寝を始める。

 

 

「て、てめえ……もう我慢ならねえ!!」

 

 

「あれ?。どうかしました?。顔色が悪いみたいだけど?。体調悪いんですか?。医者呼びましょうか?。」

 

 

 俺は煽るように言うと、更に顔を赤くして怒っている。

 

 

「調子に乗ってんじゃねえ!!。罪人がぁ!!」

 

 

 

ピコン

 

[看守と揉めよう] 報酬、器用+10、以外のステータス+5

 

 

クリア

 

 

 

 クエスト達成を確認する。

 

 

 

「さっきから、俺をおちょくりやがって!」

 

 

 

「申し訳ありませんでした!。反省しております!」

 

 

 俺は土下座をして謝った。

 

 

 

 

「嘘つけぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、本当に反省してます…さっきの挑発はスキルのせいだと思ってください」

 

 

 

「だから嘘を…って、スキル?」

 

 

 

 その後俺は牢屋の中で、看守のハシャーナさんに説教をされていた。

 

 

「大体なぁ、君は……」

 

 

 かれこれ、一時間は経つだろうか。

 

 

 俺は正座の体勢のまま、ずっと話を聞いていた。

 

 

「聞いてんのか!?」

 

 

「はい、聞いております」

 

 

「はぁ……とりあえず、これに懲りたら看守をおちょくるのはやめてお

け。俺以外だったら……いや、まあいい」

 

 

 俺は無言でコクりと首を縦に振る。

 

 

 しかし、この人の名前どっかで見た事もしくは聞いた事あるんだよなぁ。

 

 

 俺は必死に思い出そうとするが、全く思い出せない。

 

 うーむ、モヤッとする。

 

 

 俺が頭を悩ませていると、牢屋とは違う奥にある外へ出るた為の扉が突然開いた。反射的にそちらの方を見るとそこには……

 

 

 刀を握った輝夜さんがいた。それも、今まで感じたことのない雰囲気を纏って。

 

 

 

 

 

 

…終わった。

 

 

 

「ッ……ハシャーナさん助けてください!!殺されます!!」

 

 

 牢屋の外にいるハシャーナにそう叫びタクトは檻から離れ牢の隅へと行く。

 

 

 

 俺の行動に、ハシャーナさんは目を丸くして固まっている。

 

 

 しかし、輝夜さんの方はというと……

 

 

 ハイライトを消したまま、ゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。

 

 

 雰囲気でわかる。輝夜はガチやる(殺す)つもりだ。

 

 

 

 

 くっそ…体が恐怖で震えてきやがった…。

 

 

 すると、ハシャーナが慌てて止めに入った。

 

 

「ま、待ってくれ!。ここで争いごとは困る!どうかその殺気を抑えてくれないか!」

 

 

「・・・」

 

 

 しかし、輝夜の歩みは止まらない。

 

 

 

「くそっ、仕方ない。おい坊主!アーディから事情は聞いてる!牢から出してやるから逃げろ!。お前のせいで面倒な事になっただろうが!。後で覚えてろよ!」

 

 

 

「・・・」

 

 

 俺は何も言わず、ただ黙って牢を出て行こうと動き出す。のだが。

 

 

 

「……牢から出れば本当に斬るぞ?。私は本気だ…小僧」

 

 

 

 俺が一歩踏み出した瞬間に、輝夜さんがそう言った。

 

 

「ッ……!!」

 

 

 

 その言葉を聞いて俺の体は動きを止め硬直してしまう。いや、俺だけでは無い。ハシャーナさんも同じだ。少女から出ているとは到底思えない程の濃密な死の気配に、身も心も凍りついてしまっている。、

 

 

(…あぁ、これは無理だわ)

 

 

 即座に理解させられた。

 

 

 逆らえば本当に斬られると。

 

 

 助けを求めハシャーナさんに視線を向けが、ハシャーナさんも諦めたのか、小さく首を振る。

 

 

 

 そして、輝夜さんは俺の前へとやってきた。

 

 

 

「……小僧、団長から話は聞いた…貴様のやったことは裏切行為に等しい」

 

 

「…はい」

 

 

 

 

 俺は素直に返事をする。今更言い逃れはできないし、するつもりもない。

 

 

 俺のした事はファミリアからしたら、いや、女性からしたら完全な裏切りだ。

 

 

 

 俺が言える立場ではないが。それでも、俺はこう言いたい。

 

  

 ごめんなさい、と。

 

 

 俺が頭を下げようとするが、それよりも先に輝夜さんが口を開いた。

 

 

「正直に言わせてもらう。今回の件を抜きにしても私はお前を…ユウギタクトをまだ信用していない」

 

 

 

 輝夜さんが何を言っているのか理解できなかった。いや、したくなかっ

た。

 

 

 この人は一体何を言い出しているんだ?。どうして、そんな事を平然と言えるのか。

 

 

 この人が分からない。

 

 

 この人が怖い。

 

 

 この人は何故…。

 

 

 

 俺のそんな感情を知ってか知らずか、彼女は言葉を続ける。

 

 

「お前に正義を名乗る資格は無い」

 

 

 

 耳を塞ぎたかった。でも、身体が動かない。まるで金縛りにあったかのように。

 

 

 いや、実際にそうなのかもしれない。

 

 

 彼女の放つ威圧感に、俺は完全に呑まれていた。

 

 

 それ程までに、輝夜さんの言葉は俺の心に突き刺さった。俺の心を嫌な方向に的確に射抜いてきた。

 

 

「団長はお前に好意的だ、リオンとライラそして他の団員も団長程では無いにしろ、少なからずお前には期待している…」

 

 

「だが団長達は甘すぎる、それがどれだけ危険なことなのか分かっていない」

 

 

 輝夜さんは淡々と言葉を紡ぐ。

 

 

 

 俺はそれに対して何も言えない。

 

 

 

 黙って聞くしかなかった。

 

 

 

「だが、私だけは違う」

 

 そう言って輝夜さんは俺を睨みつけた。

 

 

 ビクっと肩を震わせ俺は恐る恐る顔を上げると、輝夜さんは剣を抜いていた。

 

 

 そしてその刃を俺の首筋に当ててくる。冷たい鉄の感覚が伝わってきた。

 

 

 

 動かない。動かない。

 

 

 

 心臓の鼓動が速くなり、呼吸が荒くなる。嫌な汗が全身から吹き出る。

 

 

 俺は何とか声を絞り出し、彼女に問いかける。

 

 

「な…にを…」

 

 

 

 問いに対して、輝夜さんは答えてくれた。

 

 

 

 俺の予想通りの…予想してしまった答えを。

 

 

「…お前を斬る」

 

 

 

「なっ!?」

 それを聞いて声を出したのはハシャーナさんだった。

 

 

 しかし、輝夜さんはそれを無視して話を進める。

 

 

「私はお前が気に入らない。お前は常に私達を見ていない。私達を見て常に別のナニカを観ている。それがいつも気持ち悪くて仕方がない。吐き気がする」

 

 

 

 …そんなつもりはない、最初はそうだったかもしれないけど、今は…。

 

 

 

「お前が今までどんな人生を歩んできたかは知らん。知りたくもない。興味すら無い。ただ一つだけ分かる事がある。お前は何もかも中途半端だ。ユウギタクト、お前はただ運が良いだけの凡人だ。そんな奴が冒険者に、正義の眷属になろうとするなんておこがましいにもほどがある」

 

 

 

 輝夜さんの容赦の無い罵倒が俺の胸に容赦なく突き刺さる。

 

 

 痛い、苦しい、辛い、悲しい、そんな負の感情が次々と湧いて出てくる。

 

 

 ついさっきまでの時間が嘘のようだ。

 

 

 

 

「──ろ、──ね。ユウギタクト」

 

 

 

 

 そして、輝夜さんの一言で俺の心は限界を迎えた。

 

 

 

「───ッ!!」

 

 

 

 輝夜さんに向かって叫んだ。

 

 

 

 その叫びは掠れていて、とてもじゃないが聞こえたものではないだろう。

 

 

 それでも、言わずにはいられなかった。

 

 

 俺の心の全てを吐き出すように、叫んだ。

 

 

 叫び終わった後、輝夜さんは俺に向かって何かを投げ渡してきた。

 

 

 それは、一振りの刀。

 

 

 俺は訳が分からず、それを見つめることしか出来ない。

 

 

 

「……これは?」

 

 

 

「私の予備の武器だ。抜いて構えろ」

 

 

 

「ッ!!」

 

 俺は慌てて後退りをする。

 

 

 すると、ハシャーナが慌てた様子で止めに入った。

 

 

 

「そ、そこまでだ!ここで争うのはまずい!それにユウギは罪を犯したとはいえ、まだ子供だ!これ以上は流石にやり過ぎだ!」

 

 

「・・・」

 

 

 言葉を聞いた輝夜は、無言のままハシャーナの方へと視線を向ける。

 

 

 ハシャーナは輝夜の視線を受けて一瞬怯むものの、すぐに言葉を続けた。

 

 

 

「ユウギは同じファミリアの眷属だろう!!」

 

 

「それがどうした」

 

 

「は……?」

 

 

 輝夜の言葉に、今度はハシャーナが呆然としてしまう。

 

 

 

「確かに小僧はまだまだ未熟なガキだ。だがこれは貴様の言ったようにファミリア間の問題だ他所の者が口を挟むことでは無い」

 

 

 

「そ、それはそうかもしれないけが……」

 

 

 輝夜はそこで言葉を止めると、牢屋の中にいる少年に目を向けた。

 

 

 そして、輝夜はゆっくりと口を開く。

 

 

 まるで死刑宣告のように。

 

 

 輝夜は冷徹に告げる。

 

 

 この場にいる全ての者に聞こえる声で。

 

 

 まるで、宣言するように。

 

 

 己の意思を示すかのように。

 

 

 そして、彼女は言った。

 

 

 残酷な現実を。

 

 

 冷酷な事実を。

 

 

 非情な真実を。

 

 

 

「ユウギタクト、貴様は今…私の敵だ。故に…斬る」

 

 

 

 

 そう言って彼女は剣を振るった。俺の首に刃を当てていた剣を。

 

 

 一歩、後ろに下がった事により刀は首ではなく俺の頬を斬った。

 

 

 頬に痛みが走る。

 

 

 血が流れ落ちる感触。

 

 

 俺の身体は勝手に動き出す。

 

 

 

 輝夜さんと距離を取る為に後ろに跳ぶ。

 

 

 

(くっ!!)

 

 

 輝夜さんは俺の動きに反応し、牢屋の奥へと迫り、再び斬りかかってくる。

 

 

 俺も刀を構え輝夜さんに応戦するが、やはり輝夜さんの方が上手で、猛攻を防ぐだけで精一杯だ。

 

 

 

「ッ…まっ…!」

 

 

 

 輝夜さんは休む暇を声を出す時間を与えてくれない。

 

 

 

 連続で攻撃を仕掛けてくる。何とか反撃を試みるも、全て受けられてしまう。

 

 

 俺は焦っていた。このままでは本当に斬られると分かっていたからだ。

 

 

 そして、輝夜さんの攻撃を防ぐ度に俺の中で恐怖心が増していく。

 

 

 

 この世界に来て俺は3度、死線を潜り抜けてきた筈だ。

 

 

 それなのに、どうしてこんなにも怖い…。 躊躇なく刀を振るう輝夜さんが怖くて仕方がなかった。

 

 

 

俺は必死になって輝夜さんの剣撃を捌き続ける。

 

 

 

 防ぐこと約2分、俺は気付いた。

 

 

()()()()()()()()事に。

 

 

 輝夜さんは全力で攻撃している訳ではないのだと。

 

 

 恐らく、手加減をしている。

 

 

 

 それに気付いた瞬間、怒りを覚えた。

 

 

 俺を舐めているのかと。加減をされて斬られるほど今の俺は弱くない。

 

 

 

 しかし、直ぐに違うと思い直す。

 

 

 

 

 もしも本当に輝夜さんが俺を斬るつもりが有るなら既に俺は斬られているはずだから。

 

 

「くそっ! 何なんだよ!」

 

 

 悪態をつくが状況は変わらない。

 

 

 むしろ、悪い方に傾いていく一方だ。

 

 

 徐々に追い詰められていき、遂に壁際まで追いやられてしまう。

 

 

「しまっ──」

 

 

 やばいと思った時にはもう遅かった。

 

 

 輝夜さんは素早く踏み込み、俺の腹部に膝蹴りを食らわせてきた。

 

 

「ごふっ!?」

 

 

 腹に鈍痛が走り、息が詰まる。それでも、倒れるわけにはいかない。

 

 どうにか踏ん張り、刀を構える。

 

 

 輝夜さんは追撃を仕掛けることなく、俺を見下ろしながら問いかけてきた。

 

 

 

「ユウギタクト、貴様は何の為に戦う? 何を思って生きる?」

 

 

「な、に……?」

 

 

 突然の質問に戸惑ってしまう。

 

 

 そんな俺を無視して輝夜さんは話を続ける。

 

 

 

「出自も不明、年齢も不明、ファミリアに入るまでの過去は謎に包まれており、突然ホーム内に現れた」

 

 

 

「ッ!!」

 

 

「貴様は一体、何処から来た?」

 

 

 

 輝夜さんは俺に問いを投げかけてきた。

 

 

 その目は真剣そのもので、嘘偽りを許さないような鋭い眼光を放っている。

 

 

 

 俺はその瞳に気圧され、思わず目を逸らす。

 

 

 

「答えろ」

 

 

 

 なんて答えればいい?俺が転生者だと答えても輝夜さんは絶対に納得はしない、逆に警戒を強めるだけだ。それに出自なんて俺が知りたいくらいだ。

 

 

 かと言って嘘をつこうものならば間違いなく斬られる。

 

 

 どうしろってんだよ…。

 

 

 

「ユウギ、お前はいったい……」

 ハシャーナの呟きが聞こえた。それは俺が聞きたいくらいだ。

 

 

 

はぁ……チャンスをやる」

 

 

「・・・」

 

 

「……?」

 

 

 

「私に一太刀でも当たる事が出来たら、今回の件は不問にしてやる。だが、もしそれが出来なかった時は覚悟しておけ」

 

 

 そう言うと輝夜さんは剣を構えた。

 

 

 先程よりも強い殺気が放たれている。

 

 

 今度こそ本気で来るようだ。

 

 

 俺は刀を構え、輝夜さんの動きに注視する。

 

 

 輝夜さんは一切の隙を見せない。

 

 

 

 まるで、俺の一挙一動を観察しているかのようにジッとこちらを見ている。

 

 

「待ってくれ…話し合い──」

 

 

 駄目元で話しかけてみるも、やはり無駄だった。俺の言葉を聞くことなく、輝夜さんは動き出した。

 

 

「ッ!!」

 

 

 速い。 目で追う事すら困難だ。

 

 

 一瞬で間合いを詰められ、斬撃が飛んでくる。

 

 

「くそぉ!」

 

 

 俺は刀で受け止める。

 

 

 重い一撃だ。

 

 

 なんとか防いだものの、衝撃で腕の骨が軋む音がした。

 

 

「ぐぅ!」

 

 

 

 俺は歯を食い縛り、痛みに耐えながらも反撃に転じる。刀を振るうが当たらない。

 

 

 輝夜さんは最小限の動作だけで回避していく。

 

 

 そして、俺の刀が届かない位置まで下がると、再び斬りかかってきた。

 

 

 それに対して刀を振り上げ、迎え撃つ。

 

 

 金属同士がぶつかり合う甲高い音が鳴る。

 

 

 俺は鍔迫り合いに持ち込むと、輝夜さんに問いかける。

 

 

 

「昨日の件は本当に悪かったと思ってます! だから、少しだけ話をさせて下さい!」

 

 

「・・・」

 

 

 輝夜さんは無言のまま剣を押し込んでくる。

 

 

 

 俺は押し返そうと力を込めるも、ビクともしなかった。

 

 

(この人、どんだけの力を込めてんだ!)

 

 

 俺は慌てて後ろに跳び、距離を取る。すると、輝夜さんは剣を構え直し、無表情で口を開いた。

 

 

「私は言った筈だ、それ以前の問題だと。貴様を信用していないと」

 

 

 

 再び剣を構え、輝夜さんが向かってくる。

 

 

「くっ!?」

 

 

 俺も刀を握り締め、応戦する。

 

 

 しかし、輝夜さんの剣速についていけず、防戦一方だ。

 

 

(このままじゃ不味い!!)

 

 

 俺は輝夜さんの攻撃を防ぎつつ、思考を巡らせる。そして、一つの結論に至った。

 

 

 一太刀浴びせるしかない。

 

 

 このままでは本当に斬られてしまう。

 

 

 輝夜さんの実力は本物で、今の俺では到底敵わない。

 

 

 だけど、このまま何もしなければ斬られるのは時間の問題だ。

 

 

 なら、せめて一太刀だけでも当てる! 俺は輝夜さんの攻撃を防ぐのではなく、受け流す事に意識を向ける。

 

 

 そして、輝夜さんが振るった斬撃に対して、俺は刀を滑らせ、刃の軌道を変える。

 

 

「っ──」

 

 

 

(よし、上手くいった…後は──)

 

 

 

 そこまで考え…俺の手は止まった。

 

 

 

 俺の心臓が激しく脈打つ。

 

 

 冷や汗が流れ、緊張から呼吸が荒くなる。

 

 

 

 嫌な予感がした、いや違う…確かに()()()

 

 

 

 

 斬り込めば取り返しのつかない事になる。直感的にそう思った。

 

 

「どうした? 来ないのか?」

 

 

 輝夜さんは挑発するように言う。

 

 

「……ッ!!」

 

 

 俺は刀を握る手に力を込め、輝夜さんに向かって踏み込む。

 

 

 それと同時に輝夜さんもまた、踏み込んできた。

 

 

「くそぉ!!」

 

 

 俺は刀を振るい、輝夜さんに向けて振り下ろす。

 

 

 対して輝夜さんは、俺の攻撃を弾き返すように刀をぶつけてくる。

 

 

 何度も激しい火花が散り、俺は弾かれそうになるもどうにか踏み止まる。

 

 

 

「ッらァァ!!」

 

 俺は叫びながら刀に力を込める。

 

 

 だが、輝夜さんは俺の力を利用し、そのまま俺ごと後ろに押し返した。

 

 

「ぐっ!」

 

 

 俺はバランスを崩し、倒れそうになったが、どうにか堪える。

 

 

「はぁ……はあ……」

 

 

 息を整えながら輝夜さんを見る。

 

 

 輝夜さんの瞳には失望の色が見える。

 

 

「・・・」

 

 

「・・・」

 

 

 沈黙が続く。

 

 

 お互いに構えたまま動かない。

 

 

 

 これ以上はダメだ…何故だかそう思う、いや…そう感じる。

 

 

 俺は刀を下ろし、輝夜さんに背を向けた。

 

 

 これ以上は無理だと判断したからだ。

 

 

「斬るなら斬ってください…もう抵抗するつもりはないです」

 

 

 そう言って目を瞑る。

 

 

 後ろは見えない、怖い、でも仕方がない。

 

 

 輝夜さんは強い。一太刀入れるなんて不可能レベルにも技術にも差がありすぎる。それに、もし仮に一太刀入れたとしても輝夜さんは絶対に許してくれないと思う。

 

 

 

 だから、俺に出来ることは輝夜さんに斬られて生き残る事を願うだけだ。

 

 

 

 一歩…また、一歩と足音が近づいてくる。

 

 

 怖い、逃げたい、でも、逃げるわけにはいかない。

 

 

 覚悟を決め、歯を食い縛りその時を待つ。

 

 

 しかし、いつまで経っても痛みを感じることはなかった。恐る恐る目を開け振り返ると輝夜さんは剣を振りかぶっていた。

 

 

 その瞬間、俺は理解する。

 

 

 ああ、終わった……。

 

 

 俺は死を覚悟する。

 

 

 しかし、次の瞬間──

 

 

「……!?」

 

 

 輝夜さんの動きがピタリと止まり、驚いたような顔をしていた。

 

 

「・・・」

 

 

「・・・」

 

 

 俺達は見つめ合う。

 

 

 一体何が起きているんだ? 輝夜さんは剣を振り下ろさない。

 

 

 まるで ()()()()()()()()かのようにジッとしている。

 

 

 俺もその様子に疑問を抱きながらも警戒を解くことなく、輝夜さんの出方を伺っていると、突然、輝夜さんは口を開いた。

 

 

「何故、抵抗しない」

 

 

「えっ?」

 

 

 輝夜さんの口から発せられた言葉に俺は戸惑う。

 

 

「途中まで貴様は私に一太刀浴びせるつもりだっただろう。何故やめた?」

 

 

「それは……なんというか……これ以上はダメだ…そう思ったんです」

 

 

 

「駄目とはなんだ」

 

 

 

「わかりません……ただ、そうした方がいいと思っただけです」

 

 

 俺の言葉を聞くと輝夜さんは少し考える素振りを見せた後、口を開いた。

 

 

はぁ…まあいい」

 

 

 そう呟くと輝夜さんは剣を鞘に納めた。

 

 

「今回は見逃すが次は無いと思え」

 

 

 それだけ言い残すと輝夜さんは立ち去って行った。

 

 

 俺はその後姿を見送ることしか出来なかった。

 

 

 

「ユウギ!」

 

 

 ハシャーナさんの声が聞こえたのでそちらを見ると、こちらに向かって走ってきていた。

 

 

「大丈夫だったか!?怪我はしていないか!?」

 

 

「はい、なんとか……」

 

 

「良かった……本当に無事でよかった」

 

 

 俺が答えるとハシャーナさんは安心したように胸を撫でおろしている。

そんなに心配してくれてたんだ、ちょっと嬉しいじゃねーか。

 

 

 

「良かった…本当に良かった。何かあったらアーディに何を言われるか」

 

 

 

 ん? 今、なんか聞き捨てならない単語が飛び出たぞ? コイツ俺の心配してねぇだろ。

 

 

 

 自分の保身のために言っただけじゃねえかよ。

 

 

「あの、それどういう意味ですかね」

 

 

 俺が聞くと、ハシャーナは気まずそうに目を逸らしやがった。

 

 

 こいつマジか。呆れた目を向けていると、視界が歪み始めた。

 

 

 どうやら心身が限界を迎えたようだ。

 

 

 俺はその場に倒れ込む。

 

 

 

 そして、意識が遠退いていく中、誰かの叫び声を聞いた気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

輝夜side

 

 

 

「ふぅ…これで少しは反省するでしょう」

 

 

 

 私はため息を吐く。

 

 

 

 まったく……手間をかけさせる。

 

 

 

「やりすぎよ!輝夜!」

 

 

 私が振り向くとそこには腕を組み、怒った表情をしている団長様(アリーゼ)がいた。

 

 

 一部始終見ていたらしい。まあ、見せていたのだが。

 

 

 確かに今回の件に関しては少々、手荒な真似をしたかもしれないが、後悔は微塵もない。

 

 

 全部小僧が悪いのだ。

 

 

 

 そもそも、この程度の事で心を乱されるようではこの世の中(暗黒期)では話にならない。

 

 

 

「しかし、あれぐらいしなければわからない男ですからなぁ。多少痛めつける必要があったのは団長さんも十分承知してたはずでわぁ?。それに……」

 

 

 

 私の言葉を遮るように、団長さんは人差し指を左右に振る。

 

 

「わかってるわ!。だけど、限度というものがあるはずよ!?」

 

 

「・・・」

 

 

「それに、あんなにボロ雑巾みたいにしなくてもいいじゃない!!」

 

 

「・・・」

 

 

「聞いてるの?」

 

 

「・・・」

 

 

「無視しないの!黙って見てろって言われたから見てたけどあれは誰から見てもやりすぎよ!」

 

 

 ああ……うるさい。耳元で叫ばないで欲しいものだ。

 

 

 そう思うなら最初から止めればいいものを。

 

 

「はあ……それで、団長さまはこの後、どないしはるつもりですか?」

 

 

「もちろん、お説教タイムよ。輝夜、あなたにもたっぷりと聞かせてあげるわ!」

 

 

「はあ……それは勘弁して欲しいですわ」

 

 

「ダメ、絶対逃さない。ほら、行くわよ」

 

 

「ちょ、引っ張らんといて下さい。自分で歩けま──」

 

 

「問答無用、さあ、早く来なさい」

 

 

「はぁ……仕方がないですなぁ」

 

 

 こうして、私達はその場を後にする。

 

 

 しかし、この時の私はまだ知らなかった。

 

 

 これから起こる出来事に頭を悩ませる事になることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しゃっす!お飲み物お持ちしました輝夜さん!!」

 

 信用を得るための馬鹿が誕生する事を。

 

 

 






対人経験できて良かった良かった。

ここだけの話最初は牢屋内で和解する話でした!。

輝夜さんの好感度が少し上がるイベントの筈が…

次回は輝夜視点回です
どうしてこうなった?。
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