寝て起きたら暗黒期!?ベルくんに会うまで死にたくねー!   作:お米大好き

43 / 67



前回の話の輝夜さん視点です。

リューさんとアリーゼ出した後に輝夜さんのガチャ出すのずるくない?。(ダンメモ)

一度こんな他人視点で実は!。みたいなのやってみたかったが難しい。

多分もうやらない。




第五話、体に紋様ってかっこいいよね

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ?小僧をガネーシャファミリアに置いてきたぁ?何がどうなったらそうなる?しっかりと説明をしろ団長」

 

 

 

 夕刻、ファミリア内にて団員達を集め、タクトは置いてきた!と言うアリーゼに輝夜は問い詰めていた。

 

 

「し、仕方ないじゃない!連れて帰って来たら絶対に無事じゃ済まないもの!それにアーディに渡した方がタクトの性格上絶対に反省するわ!」

 

 

 輝夜は額に手を当て、天を見上げる。

 

 

 こいつは何を言っているんだ?と言わんばかりの顔だ。

 

 

 アリーゼの言葉に他の団員達は少し戸惑いを見せている。

 

 

 

 輝夜は小さくため息をつくと、口を開いた。

 

 

 

「そうじゃない、理由を聞いている。小僧を引き渡すに足る理由はなんだ?」

 

 

 

「そ、それは…タクトも男の子だったってことよ!つまり、そういう事だから察してあげて欲しいの」

 

 

 

 輝夜はアリーゼの言葉を聞き、さらに深いため息をついた。

 

 

 駄目だコイツ、まるで話が通じないと言わんばかりである。

 

 

 そんな輝夜に助け舟を出したのはネーゼだった。

 

 

 

「…団長、諦めたほうがいい。隠し通すのは無理だ」

 

 

 

「うっ……」

 

 

 アリーゼが言葉に詰まる。

 

 

 

「……団長、正直に話せ。私だって鬼ではない。正当な理由があるなら許す」

 

 

「うっ……わかったわ」

 

 

 

 アリーゼは観念したように肩を落とすとゆっくりと語り出した。

 

 

「実はね────」

 

 

 

 アリーゼは先程の出来事を皆に話した。

 

 

 そして、その話を聞いた全員が頭を抱える。

 

 

 まさか、そこまでタクトが馬鹿だとは思わなかったと。

 

 

 

 話を聞いて最初に口を開いたのは呆れたような表情を浮かべているライラだった。

 

 

 

「まぁ…なんというか、本当にバカだな」

 

 

 その言葉に輝夜が続く

 

 

「全くだ。だが、小僧がああいった行動を取る気持ちも理解できないわけではない」

 

 

 

「えぇ!?」

 

 

 

「普通に考えてみろ。女だけのファミリアに男が一人。そういう考えに走っても不思議じゃないだろう」

 

 

 

「え…なら私が置いてきた意味って…。てっきり輝夜辺りにボコボコにされるとばかり!?」

 

 

「アホか」

 

 

 輝夜は一蹴すると、続けて言う。

 

 

「団長は私を何だと思っている…団長の想像している様な事は起きていない。ただ、小僧には少し反省してもらう必要があるから、暫くの間、訓練と称してボコボコにするだけだ」

 

 

「なるほど!って、それ結局同じよね!?」

 

 

「安心しろ、殺しはしない。半殺しぐらいで勘弁してやる」

 

 

「全然、安心出来ないんわ!」

 

 

「仕方なかろう、小僧はそれだけの事をした。それより団長、今から小僧を迎えに行ってくぞ」

 

 

 

「え、今から!?ちょ、待ちなさい輝夜ぁ!」

 

 

 

 輝夜が立ち上がり部屋をでる、それにつられる様にしてアリーゼも立ち上がった。

 

 

 

 残された者達は二人の後ろ姿を見送った後、お互いの顔を見て、苦笑いをする。

 

 

 そして、同時に思った。

 

 

 

((自業自得だけど、ご愁傷様タクト))

 

と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

 

 私は思わずため息を吐いた。

 

 

「どうしたのよ、輝夜?」

 

 

 

隣にいるアリーゼは首を傾げる。

 

 

「いや、なんでもない」

 

 

「そう……ならいいけど。それで、これからどうするつもり?」

 

 

「そうだな……」

 

 

 さてどうしたものか。

 

 

 小僧はしばらく反省させるとして、問題はこの後の事だ。

 

 

 

 今回の事で少なからず他の団員と小僧の間に溝が出来てしまうだろう。それは今後のファミリアの運営にも影響する。

 

 

「……団長さんは何か考えているのか?」

 

 

「んー、一応、みんなで話し合いの場を設けようと思ってるけど」

 

 

「ふむ……それで、その後は?」

 

 

「……まだ何も考えてないわ!」

 

 

「……そうか」

 

 

 

 やはり団長は団長だ。

 

 

 まあ、それはともかく、私としてはこのままでは困るのだ。

 

 

 アリーゼは団長だ。一個人に肩入れさせる訳にはいかない。このままいけば団長は必ず小僧に手を貸す。

 

 

 副団長としてそれは見過ごせない。団長は皆に平等で有らなくてはならない。

 

 

「団長、提案がある。聞き入れろ」

 

 

「なにかしら?言ってみて」

 

 

「小僧の処遇についてだが──」

 

 

 

 

 

 私の提案にアリーゼは目を見開く。当然の反応と言えるだろう。

 

 

 何せ、私の提案したのは牢屋内で小僧を叩き直すと言う内容だからだ。

 

 

 しかし、これは決して悪い案ではない。

 

 

 私が強めに制裁を加えれば、他の団員達からは罵声ではなく慰めの声が上がる可能性が高い。それに、小僧への戒めにもなる。

 

 

 

「確かに、輝夜の言いたいことはわかるわ。でも、流石にやり過ぎじゃないかしら?いくら何でも斬るのは…」

 

 

「心配するな。加減はする」

 

 

「……本当?」

 

 

「ああ、約束しよう」

 

 

 アリーゼは少し考えたあと、小さくため息をつく。

 

「はぁ……わかったわ。ただし、一方的なのは駄目!少しは抵抗を許してあげて!それと手加減はして上げること!この二つが守れないなら絶対にダメよ!」

 

 

 

「…貴方は私を何だと思っている」

 

 

「だって輝夜ってば容赦無いんだもの!いつもの輝夜を知ってるからこそ心配になるのよ!」

 

 

「……はぁ」

 

 

 私はもう一度深いため息をつく。

 

 

 全く、団長は私を何だと思っているんだ。

 

 

 そんなに私が無慈悲に見えているのだろうか。

 

 

……まあいい。今はそれよりも先に片付けるべき問題がある。

 

 

 

「団長、前から聞こうと思っていたんだが」

 

 

 

「ん?何かしら」

 私は団長にずっと気になっていたことを質問することにした。

 

 

 

「小僧は何者だ?」

 

 

 アリーゼは少し驚いた表情を浮かべると、すぐに笑顔を見せた。

 

 

 まるで、その答えを待っていましたと言わんばかりの表情だ。

 

 

 

 そして、アリーゼはゆっくりと口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

────────

 

 

 

 

 

 

 しばらくして、ガネーシャファミリアについた私達は警備の者に軽く事情を伝え、中へと入る。

 

 

 そのまま地下へと向かうと、そこには一枚の分厚い扉がある。扉に付いている小窓を確認すると奥に檻が見え、その中には小僧の姿があった。

 

 

 

「団長、先程話したように中には私だけで行く。構わないか?」

 

 

 

「…ええ、やりすぎたらダメよ!それに本気で反省してるようなら──」

 

 

 

「わかっている。心配しすぎだ」

 

 私は団長の言葉を遮るように言う。

 

 

 別に私は本気で斬るつもりはない。ただ、少々お灸を据えるだけだ。

 

 

 そう思いながら、私はドアノブに手をかけた時。

 

 

 

「聞いてんのか!?」

 

 

 中から怒鳴り声が聞こえる。どうやら、誰かと言い争っているようだ。

私はそっと耳を傾けた。

 

 

 すると、聞えてきた言葉は意外なものだった。

 

 

 

 

「はい、聞いております」

 

 

「はぁ……とりあえず、これに懲りたら看守をおちょくるのはやめておけ。俺以外だったら……いや、まあいい」

 

 

 

 おちょくった?一体どういう事だ。

 

 

 

 看守を挑発したと?。何故そのような……。

 

 

 

 

(スキルか……!)

 

 

「か、輝夜?中に入らないの?」

 団長が不思議そうな顔でこちらを見る。

 

 

 

「あの馬鹿者…反省をしていないな…」

 私は怒りを堪える様に拳を握りしめ勢いよく扉を開けた。

 

 

 

 そして、目の前にいる小僧を睨みつける。

 

 

 小僧は突然の来訪に驚いている様だが私は構わずに小僧のへと歩いていく。

 

 

 すると、小僧は慌てて立ち上がり身構え、叫んだ。

 

 

 

「ッ……ハシャーナさん助けてください!!殺されます!!」

 

 

 

 助けを求めるような必死の形相で。

 

 

 

(あ"あ?)

 

 

 

 どうやら、小僧は私の怒気を殺気と勘違いしているのか?。

 

 

 

どいつも(タクト)こいつも(アリーゼ)失礼な…本気で斬ってやろうか…。

 

 

 そう思いながらも少しずつ檻に近づく。

 

 

 小僧は私の剣幕に押されてか、後ずさり壁際ま追い詰められていた。

 

 

 

(まあ、しかし。ここまで私にビビっている姿も面白い…少しだけ遊んでやるか……)

 

 

 そう考え、もう逃げ場は無いぞ。

 

 

 そう思わせる為に、わざとゆっくり近づく。

 

 

 

 小僧は顔を青ざめさせ、怯える様な目で私を見た。

 

 

 ふむ……良いな。実にいい。

 

 

 日頃振り回されてばかりだからな。たまにはこういうのも良い…。

 

 

 

 輝夜がタクトの入っている檻へと近づいたその時──

 

 

「ま、待ってくれ!。ここで争いごとは困る!どうかその殺気を抑えてくれないか!」

 

 

 一人の男が輝夜達の間に割って入ってきた。

 

 

 男は焦燥感を漂わせており、額には汗を流している。

 

 

(……ハシャーナ(剛拳闘士)だったか?。ガネーシャファミリアのLV.3

の冒険者だと聞いた事があるな)

 

 

 

 私は男を観察する。

 

 

 男の装備は軽装ではあるが、その佇まいは隙が少ない。

 

 

 恐らく、それなりの修羅場を経験しているのだろう。

 

 

しかし、そんな事は関係ない。

 

 

 

(これはファミリア間の問題だ。部外者は黙っていて貰おう…)

 

 

 

「こ──」

 

 

 

私が口を開こうとした瞬間、【剛拳闘士】が慌てる様に口を開いた。

 

 

 

「くそっ、仕方ない。おい坊主!アーディから事情は聞いてる!牢から出してやるから逃げろ!。お前のせいで面倒な事になっただろうが!。後で覚えてろよ!」

 

 

 そう言い放つと、男は私を無視し、牢屋の鍵を開け始めた。

 

 

 

 チッ、面倒な…。

 

 

 そう思いながら、私は腰の刀に手をかける。

 

 

 

「……牢から出れば本当に(手心なし)斬るぞ?。私は本気だ…小僧」

 

 

 そう警告をする。

 

 

 小僧は一瞬肩を震わせ走り出そうとしていた足を止めた。

 

 

 

「輝夜……!」

 

 

 

 外から声が聞こえた気がするが気のせいだろう。今はこの小僧に用があるのだ。

 

 

 牢屋の前まで来た私は牢の中に入り、鍵を閉める。

 

 

 そして、小僧に告げる。

 

 

 

「……小僧、団長から話は聞いた…貴様のやったことは裏切行為に等しい」

 

 

 

「…はい」

 

 

 小僧は俯き、小さな声で返事をした。

 

 

 どうやら、多少なりとも罪悪感はあるようだ。

 

 

 それならそれで構わない。後は、これからどうするかだが……。

 

 

 

 よく考えて見ればただ単純に叩き直すだけでは意味がない。

 

 

 それではただの八つ当たりになってしまう…。

 

 

 ……ならば、少し趣向を変えてみるか……。

 

 

 私は小さくため息をつくと、ゆっくりと口を開く。

 

 

「正直に言わせてもらう。今回の件を抜きにしても私はお前を…ユウギタクトをまだ信用していない」

 

 

 小僧は何も言わずに私を見つめる。

 

 

 まるで私の言葉の真意を探るように……。

 

 

 そして、私は続ける。

 

 

 今から言う言葉が小僧にとってどういった意味を持つのかを考えながら……。

 

 

 私は小僧に告げる。

 

 

「お前には(まだ)正義を名乗る資格は無い」

 

 

 小僧の表情が曇った。どうやら自覚しているようだな……。

 

 

 私は小僧の瞳を真っ直ぐに見据えると言葉を続ける。

 

 

 心に楔を打ち込むように……深く……重く……。

 

 

 小僧の心を折るように……。

 

 

 

(かつて神々が言っていた…下げて上げる。子供がやらかした時に好感度を下げずに反省させる方法……)

 

 

 

 私は小僧を睨みつけ、威圧する。

 

 

 そして心が折れるまで言葉を紡ぐ。

 

 

 

「団長はお前に好意的だ、リオンとライラそして他の団員も団長程では無いにしろ、少なからずお前には期待している…」

 

 

 

 小僧は唇を噛み締め、悔しそうな顔をした。

 

 

 

「だが団長達は甘すぎる、それがどれだけ危険なことなのか分かっていない」

 

 

 

 私の一言で小僧の顔色がどんどん悪くなっていく。

 

 

 きっと頭の中では色々と考えているのだろう。

 

 

 それでいい。悩め、考えろ。

 

 

 入口の扉を叩く音が聞こえるが知ったことか。

 

 

 刀を抜き小僧の首元へと突きつける。

 

 

 小僧は目を大きく見開き、恐怖で体が震えていた。

 

 

 どうやら、自分が何をされるのか理解できたらしい。

 

 

 

「な…にを…」

 

 

 絞り出すような声で小僧はそう言った。

 

 

 理解した上で、理解したく無いと言ったところか?。

 

 

 

(はぁ…この状況でまだ抵抗もしない、それどころか現状を受け止めないとは。愚か者め……)

 

 

 小僧は私の目をじっと見つめている。

 

 

 その目には希望めいた光があった。

 

 

 おそらく、小僧は私がまだ冗談を言っていると夢見ている、いや…願っている。

 

 

 

 そんな目で見る度に私の怒り(イラつき)は増していくだけだ。

 

 

(何故そんな目ができる?お前は刃を向けられ何故抵抗もしない?)

 

 

 

(私に殺されるなどと叫んだくせに…私に救いを求めると?…ふざけるにも程がある)

 

 

 

 仕方ない…私が現実を教えてやる。今からは説教擬きではない、心の訓練だ。

 

 

 

 輝夜はタクトは最悪を告げる。

 

 

 

「私はお前が気に入らない。お前は常に私達を見ていない。私達を見て常に別のナニカを観ている。それがいつも気持ち悪くて仕方がない。吐き気がする」

 

 

 

 これは私の本音。少し前まで、という言葉がつくがな。

 

 

 

 

 

 1週間ほど前から少しずつ小僧の私達を見る目が変わった、何があったかなんて知らん。

 

 

 

 私は以前の小僧の視線が嫌いだった。

 

 

 まるで、その先にいる誰かのを見て今を見ていな様な……そんな感じだった。

 

 

 しかし、今は違う。

 

 

 小僧の目は、しっかりと今、この瞬間を捉えている。

 

 

 

 だからこのような事を言うのは、酷い話かもしれんが……

 

 

(……悪いな、私は性格があまりよくない…だがまあ小僧、相手がお前でなければ…私はこんな事をしなかったのかもしれないな)

 

 

 

 そんな風に思いながら、私は小僧に告げる。

 

 

 

「お前が今までどんな人生を歩んできたかは知らん。知りたくもない。興味すら無い。ただ一つだけ分かる事がある。お前は何もかも中途半端だ。ユウギタクト、お前はただ運が良いだけの凡人だ。そんな奴が冒険者に、正義の眷属になろうとするなんておこがましいにもほどがある」

 

 

 

 私はそう言い放つ。

 

 

 小僧は俯いたまま何も言わない。

 

 

 私の言葉が響いているのか、それともこの状況に絶望しているのか……それは分からない。

 

 

 ただ、私は止まらない。

 

 

 

 最後の一撃を言い放つ。

 

 

 

「何も決められず責任も持てないなら冒険者をやめろ。ダンジョンへ潜り死ぬくらいなら今この場で○ね。ユウギタクト」

 

 

 

 言い過ぎだ。誰が聞いてもそう言うだろう。私でさえそう思う。

 

 

 

 だが、私が言わなければならない。

 

 

 私が教えなければならない。一度この小僧の心を折らなければ、この小僧はいつまでも変わらない、半端者のままだ。私は刀を握る手に力を込めたその時だった。

 

 

 

「うるさいッ!!」

 

 

 小僧が怒鳴った。

 

 

 

「さっきから好き放題言いやがって!反省はしてるさ!同じ事があったら2度としないと誓えるッ!」

 

 

 

 本当にしているなら、自身でその言葉を口に出すな。

 

 

 そう思い口を挟もうとした時、小僧の言葉に、纏う雰囲気に、変化が現れ始めた。

 

 

 

 

「悪かったとは思ってる!!それでもしかたねぇだろ!!あの環境でよく我慢した方だ!少しくらい──キャラに興奮したっていいだろ!!」

 

 

 

 

「俺に正義がない!?知ったことかよ!!どうせこのままいけば──ん以外──皆──ぬ!!」

 

 

 

 

 何を…言っている?。小僧の言葉が聞き取れない。

 

 

 一体何を……?。

 

 

 

 言葉を聞き取ろうと耳を傾けるが、なぜか言葉の一部だけが聞き取れない。こんな現状があり得るとすればスキルか?それとも何かの魔法?。

 

 

 

「俺はただ──君に会っ──!そう思って冒険者になった!知らない誰かを守る正義なんて俺以外でやればいい!俺は俺が守りたいものだけを守る!!この先の──日間も!数─後の──ノートも!!」

 

 

 

声が大きくなっていく。

 

 

 

 そして、袖に少し隠れてはいるがタクトの腕から手にかけて薄らと黒い紋様が浮かび上がっていた。

 

 

 

「何だ…それは…!」

 

 

 先から小僧の様子がおかしい。

 

 

 明らかに異常だ。

 

 

 小僧は私の言葉を聞かず、小さく…私にだけ聞こえる声で最後に呟く。

 

 

 

 

 

 

「邪魔な奴らは全部─せばいいんだ」

 

 

 

 

 

 

 …………は?。

 

 

 

 この場この状況でいきなり何を言っている…。一瞬私の思考は停止し、頭の中でその言葉を何度も繰り返す。

 

 

 小僧の表情は真剣そのもので、とても冗談を言ってるようには見えない。

 

 

 

 その言葉を最後にタクトの雰囲気が元に戻った。浮かび上がっていた黒い紋様も消え先程までのタクトに戻っている。

 

 

 

 

(しかし、今のは……)

 

 

 

 

 私の手は震えていた。

 

 

 恐怖か、それとも怒りで震えているのか……私にはわからない。

 

 

 ただ一つ、やらなくてはいけないことがわかった。

 

 

(……確かめなければならない)

 

 

 

 そう思い、用意していた刀を小僧へと放り投げる。

 

 

 

 小僧は私に驚きながらも、刀を見事にキャッチする。

 

 

 

「……これは?」

 

 

 

「私の予備の武器だ。抜いて構えろ」

 

 

 そう言い、私は愛用の剣を抜く。

 

 

 

 そこで場の空気に飲まれていた看守が止めに入ってきた。

 

 

「そ、そこまでだ!ここで争うのはまずい!それにユウギは罪を犯したとはいえ、まだ子供だ!これ以上は流石にやり過ぎだ!」

 

 

 知ったことか。今はそれどころではない。私は看守の制止を無視し、小僧の前に立つ。

 

 

「ユウギは同じファミリアの眷属だろう!!」

 

 

 

「それがどうした」

 

 

 

「は……?」

 

 

「確かに小僧はまだまだ未熟なガキだ。だがこれは貴様の言ったようにファミリア間の問題だ他所の者が口を挟むことでは無い」

 

 

 

 

「そ、それはそうかもしれないけが……」

 

 

 私は話を続ける看守を無視して小僧へと告げる。

 

 

 まるで死刑宣告のように。

 

 

 

 冷徹に告げる。

 

 

 

 この場にいる全ての者に聞こえる声で。

 

 

 

 まるで、宣言するように。

 

 

 己の意思を示すかのように。

 

 

 

 お前が誰なのか。

 

 

 

 お前がどんな存在か。

 

 

 

 お前が何を成すか。

 

 

 

 それを確かめるために。

 

 

 

「ユウギタクト、貴様は今…私の敵だ。故に…斬る」

 

 

 

 

 

 冒険者は未知を既知に変えなくてはならない。

 

 

 

 

 

 小僧は頬を掠めながらも回避した。

 

 

 

(避けられた…?寸止めは考えた…しかし……)

 

 

 私はそのまま横薙ぎに振るうが、それもバックステップでかわされる。

 

 さらに踏み込み、袈裟懸けに振り下ろす。

 

 

 タクトは刀の腹を使い、それを受け止めた。輝夜はそのまま押し切ろうとするが、タクトは踏ん張り耐える。

 

 

 

 私は一旦距離を取り、上段からの一撃を放つ。

 

 

 小僧はそれをギリギリのところで避け、私の二撃目を再び刀で受け止めた。

 

 

(小僧はLV.2になったばかりのはず…しかしこの動きは何だ…?)

 

 

 

 輝夜は考えながらも手を止めない。下段、中段、突き、切り上げと次々に攻撃を繰り出すが全ていなされ受け切られてしまう。

 

 

 

(やはりおかしい……ランクアップからステータスの更新はしていないはず…。新たなスキル、それともアビリティか?)

 

 

 輝夜の攻撃は止まらない。止まらないが、それでも攻めきれない事に焦りと苛立ちを覚え始める。

 

 

(これではLV.2上位の動きと変わらん…!)

 

 

 

 そんな時だった。

 

 

 

「くそっ! 何なんだよ!」

 

 

 小僧が突然叫び一瞬ではあるが、再び小僧の雰囲気が変わった。

 

 

 

 先程と同じだ。

 

 

 

 私はこの感覚を知っている。

 

 

 

 この雰囲気は、ダンジョンで何度も遭遇している。

 

 

 

 

 そう、()()()()()()()()()()だ。

 

 

 

 直後、私は手加減せずに、蹴ってしまった。

 

 

 そして小僧は吹き飛び、壁に激突した。

 

 

 しかし小僧は息を切らしながらも倒れず刀構えなおした。

 

 

 

(ッ……何故ここまで戦える? 何故あれだけの攻撃を受けても立っていられる? )

 

 

 

 疑問は尽きないが、今は小僧の変化を確かめなくては。

 

 

 

「ユウギタクト、貴様は何の為に戦う? 何を思って生きる?」

 

 

 

「な、に……?」

 

 

 小僧の表情に動揺が生まれる。

 

 

 その表情からは戸惑いが見て取れる。

 

 

 どうやら答えられないようだ。

 

 

 

「出自も不明、年齢も不明、ファミリアに入るまでの過去は謎に包まれており、突然ホーム内に現れた」

 

 

 小僧は何も言わずに聞いている。

 

 

 

 私は反応を待たずに続けた。

 

 

 

「貴様は一体、何処から来た?」

 

 

 

「答えろ」

 

 

 私は詰め寄ると小僧は私から逃げるように後ずさった。

 

 

「お、俺は……」

 

 

 小僧は何かを言いかけたが、口を閉ざす。

 

 

 

(…何も言えないか、まあいい、出自などどうでもいい)

 

 

 いや、そもそも今の小僧から聞き出せるのか?。今の小僧の言動から見てもさっきの会話は覚えていない可能性が高い。

 

 

 

 このまま話していても平行線だ…

 

 

 ならば───。

 

 

 

 

 

 

「はぁ……チャンスをやる」

 

 

 

 

 小僧をその気にさせる。剣を全力で交えれば何かわかるかもしれん。

 

 

 

「私に一太刀でも当たる事が出来たら、今回の件は不問にしてやる。だが、もしそれが出来なかった時は覚悟しておけ」

 

 

 

「待ってくれ…話し合い──」

 

 

 

 タクトの言葉を最後まで聞かずに輝夜は距離を詰め上から下へと刀を振り下ろした。

 

 

 

「──────」

「くそぉ!」

 

 

 

 タクトは刀を構え、迫りくる刀を受け止める。

 

 

 しかし、力の差がありすぎる為か、そのまま押し負けそうになる。

 

 

「ぐぅ!」

 

 

 タクトは歯を食いしばり、必死に耐える。

 

 

 輝夜は力を緩める事なく、刀を押し込む。

 

 

 

(やはり小僧のステータスは確実に上昇、いや、()()()()()()…!)

 

 

 

 今の一太刀で確信できた。

 

 

 

(だが、原因は何だ…魔法を使用している様子はない。ならスキルか?…しかしこのような状況で発動するものなど……ッ!)

 

 

 

 そこまで考えて、私はある可能性を思いつく。

 

 

(まさか……いや、だがそれしか考えられない)

 

 

 私は鍔迫り合いを止めて、一度距離を取る。

 

 

 小僧は追撃を仕掛けてくる。

 

 

 私はそれを紙一重で避けた。

 

 

 

(やはり……)

 輝夜は攻撃を避けながら思考する。

 

 

 

(昇華しているのは力…敏捷も上昇しているか…?)

 

 

 タクトの攻撃は先程より鋭く重い。

 

 

 一撃一撃が致命傷になりかねない。

 

 

(……しかしスキルの発動条件、それを小僧は満たしていないはず…)

 

 

 それなのに何故……と考えていると、タクトが大振りに攻撃してきた。

 

 

 

 輝夜はそれを受け止めもう一度鍔迫り合いに持ち込む。

 

 

 

(…どうしたものか……。この状況では迂闊に動けんな……)

 

 

 

 輝夜が思案していると、不意にタクトが口を開いた。

 

 

「昨日の件は本当に悪かったと思ってます! だから、少しだけ話をさせて下さい!」

 

 

 小僧は真剣な眼差しで訴えかけて来た。

 

 

 嘘偽りのない真っ直ぐな目だ。

 

 

 本心で言っているのだろう。

 

 

 

 しかし、今そんなことはどうでもよい。

 

 

(今この場で小僧のスキルを解明する…でなければ今後、必ずこのスキルは私達に牙を向く…そう確信できる…ッ!)

 

 

 

「私は言った筈だ、それ以前の問題だと。貴様を信用していないと」

 

 

 私はそう言って冷たく突き放した。

 

 

 

 直後だった。

 

 

 

「くっ!?」

 

 

 輝夜はしっかりと視界に捉えた、苦しそうに声を出したタクトの首筋に薄らと黒い紋様を。それはまるで、呪いのように。

 

 

 そして、輝夜の脳裏にある言葉が浮かぶ。

 

 

 

 

 ───()()()()()

 

 

 

 その単語が頭から離れない。

 

 

 それだけタクトから発せられる気配は異質だった。

 

 

 そして、その気配はダンジョンで何度も遭遇したモンスターと同じだった。

 

 

 輝夜の脳内では様々な仮説が立てられる。

 

 

しかし、そのどれもが確証を得るには至らない。

 

 

 しかし、一つだけはわかった。

 

 

 今がチャンスだ。スキルが発動している今が見極められる最後の機会だ。

 

 

 

 私はタクトとの距離詰め、斬りかかった。

 

 

 

 しかし、刀がタクトへと届く寸前、輝夜の振るった一刀はタクトの刀に受け止められ軌道を変えられた。

 

 

 

(ッ…! 刀を逸らされた、まずい…!)

 

 

 斬られる。輝夜がそう覚悟した時、タクトの手は止まった。

 

 

(手を止めた?何故だ、何故……?いや、今はラッキーだったと考えるしかない…。続けなければ)

 

 

 

「どうした? 来ないのか?」

 

 

「……ッ!!」

 

 

 

 輝夜の言葉を聞いたタクトは顔を歪め、刀を握る手に力を入れた。

 

 

 その瞬間、輝夜は確かに感じた。

 

 

 

(小僧から発せられる気配が強まった?。何故このタイミングで……ッ!)

 

 

 私は直感的に悟った。

 

 

 

(言葉がトリガーになったのか?……いや、違う。恐らく小僧の感情に反応しているのか?……つまり小僧の精神的疲労や恐怖?、いやしかし、それとマインドダウンがどう繋がる?)

 

 

 

 私は思考するが答えは出ない。

 

 

(クソッ! わからん、何もかもが……)

 

 

 輝夜は思考を巡らせるが、答えはでない。

 

 

 

(もう少し、あと一歩踏み込めば何かわかるかもしれない……)

 

 

 

 そう考え輝夜は再び動き始めた。

 

 

 

 輝夜は下段に構えると一気に距離を詰め、タクトに迫った。

 

 

 

「くそぉ!!」

 

 

 対するタクトは上段に構え、迎え撃つ。

 

 

 

 そして何度も刀同士がぶつかり合う。

 

 

 輝夜はタクトの刀を弾き、懐に入ろうとするも、タクトも負けじと刀を弾かれながらも強引に刀を振るう。

 

 

 

「ッらァァ!!」

 

 

 タクトは気合の声と共に刀を振り下ろす。

 

 

 しかし、輝夜は難なく受け止め、そのまま刀を押し返す。

 

 

 

 刀を押し返されバランスを崩すタクトに輝夜は追撃を行うことはなかった。

 

 

 

 

(……時間切れか)

 

 

 輝夜はタクトの体から紋様が消えていくのを確認した。それと同時に、今まであった気配が霧散していくのを感じた。

 

 

 私は警戒しながらも小僧の様子を伺っていた。

 

 

 すると、小僧は私に背を向け

 

 

「斬るなら斬ってください…もう抵抗するつもりはないです」

 

 

 諦めたようにそう言った。

 

 

(……やはり、スキルの発動条件は精神状態か……)

 

 

 輝夜はタクトのスキルについて考察していた。

 

 

(発動の条件は恐らく、精神的な負荷、もしくはそれに準ずるもの……そして発動中は本人も発動していると言うことに気がつかない)

 

 

 発動条件が精神的負担であるならば、発動条件を満たしていない状態でも発動する可能性がある。

 

 

(だが、マインドダウンとの関係性が不明なままだ。いや、今はそれよりも……)

 

 

 輝夜はゆっくりと背を向けるタクトへと近づき、全身をくまなく観察する。

 

 

 

(まずいな…やりすぎた。ここまでするつもりは無かった……)

 

 

 

 輝夜は焦燥感に駆られていた。

 

 

 タクトの状態は明らかに異常だった。

 

 

 顔は青ざめ、体には無数の切り傷があり小刻みに震えていた。

 

 

 呼吸も荒くなっている。

 

 

 

(本当にやりすぎてしまった……これは言い訳も…いやしかし元々軽く斬るつもりだったわけだが……。ええい!もうどうにでもなれ!)

 

 

 

 輝夜は出所後に詫びよう、そう腹を括り、タクトへと語りかける。雰囲気は維持して。

 

 

 

「何故、抵抗しない」

 

(こんな事になるならポーションぐらい用意しておくべきだった)

 

 

 

 手に持ったままだった刀をタクトへと向けそう言う。

 

 

 タクトは驚いたような、戸惑ったような声で一言だけ溢した。

 

 

「えっ?」

 

 

 

 タクトは困惑した様子で輝夜を見つめる。

 

 

 輝夜はそんなタクトに構わず続けた。

 

 

 

「途中まで貴様は私に一太刀浴びせるつもりだっただろう。何故やめた?」

 

 

(小僧が出所した後はどうしたものか…)

 

 

 そんなことを考えながらタクトの返答を待つ。 

 

 

 

「それは……なんというか……これ以上はダメだ…そう思ったんです」

 

 

 タクトは途切れ途切れになりながらも言葉を紡ぐ。

 

 

 

「駄目とはなんだ」

 

 

 輝夜はそんなタクトの言葉に疑問を抱く。

 

 

 そして、その疑問にタクトは答える。

 

 

「わかりません……ただ、そうした方がいいと思っただけです」

 

 

(感が働いたか?いやしかし、そんなものを……)

 

 

 タクトの言葉に輝夜は納得がいかない。

 

 

 「はぁ…まあいい」

 

 

(まあいい、もう考えるのは疲れた……)

 

 

 輝夜はタクトの言葉に溜息をつくと、刀を納めた。

 

 

 そして、最後に一言だけ残して牢を出ていった。

 

 

 

「今回は見逃すが次は無いと思え」

(今回はやりすぎた。次があれば気をつける)

 

 

 

 輝夜はそう言ってタクトの元を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…これで少しは反省するでしょう」

 

 

 まったく……手間をかけさせる、そう思いながら目の前にいる般若に私は中での出来事を誤魔化すようにそう言った。

 

 

 すると、般若は口を開いた。

 

 

 その声音からは怒りが感じられる。

 

 

「やりすぎよ!輝夜!」

 

 

 私はその言葉に耳を塞ぎ、何も聞こえないふりをした。

 

 

 

 確かに今回の件に関しては少々、手荒な真似をしたかもしれないが、後悔は微塵もない

 

 

 

 全部小僧(謎のスキル)が悪いのだ。

 

 

 

「しかし、あれぐらいしなければわからない男ですからなぁ。多少痛めつける必要があったのは団長さんも十分承知してたはずでわぁ?。それに……」

 

 

 

「わかっているわ!。だけど、限度というものがあるはずよ!?」

 

 

 

(なら何故止めに来なかった…)

 

 

 

(これからどうしたものか…まずはアストレア様に相談…それから団長か…)

 

 

 

「無視しないの!黙って見てろって言われたから見てたけどあれは誰から見てもやりすぎよ!」

 

 

 

 

「はあ……それで、団長さまはこの後、どないしはるつもりですか?」

 

 

 

 

「もちろん、お説教タイムよ。輝夜、あなたにもたっぷりと聞かせてあげるわ!」

 

 

 

 

「はあ……それは勘弁して欲しいですわ」

 

 

 

「ダメ、絶対逃さない。ほら、行くわよ」

 

 

 

「ちょ、引っ張らんといて下さい。自分で歩けま──」

 

 

 

「問答無用、さあ、早く来なさい」

 

 

「はぁ……仕方がないですなぁ」

 

 

 

 

 こうして、私達はその場を後にする。

 

 

 

 しかし、この時の私はまだ知らなかった。

 

 

 

 これから起こる出来事に頭を悩ませる事になることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しゃっす!お飲み物お持ちしました輝夜さん!!」

 

 

 

 デイリー馬鹿が誕生する事を。

 

 

 






後付けと言わないで……。


精神疲労=マインドダウン
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。