寝て起きたら暗黒期!?ベルくんに会うまで死にたくねー! 作:お米大好き
次回で章ボス突入かなぁ。
これはもう終わってしまった物語。
それは誰の記憶にも残らない小さく短い物語。
だから、これはただの独り言。
誰かに聞いて欲しい訳じゃない。
ただ、私の心の中にだけある気持ちを吐き出したいだけ。
らしくない?
私自身そう思うさ。だけどねぇ、仕方ないだろう。
それでも誰かに知っていて欲しいのさ。
私の大切だった
少女は微笑んだ
幸せに生きて欲しいと願いを込めて。
少年は嘆いた
1人は嫌だと涙を流し。
女神は見守った
私には何もできないと。
蜘蛛は嘲笑った
その結末を。
魔獣は嗤う
その未来を。
そして男神は少年へと笑った
この先に待つ運命を見据え───
僕が物心ついた頃、孤児院に預けられ両親はもう居なかった。
お父さんの顔を覚えていない。
お母さんの声を覚えていない。
覚えているのは冒険者だったと言うこと。
多分死んだんだと思う。
僕の記憶に薄らとある両親の姿は、いつもボロボロだったから。
でも、僕は寂しくはなかった。周りには似た境遇の子供達がいたから。
そして、何よりも大切な姉さんが側にいたから。
「もう!しっかりとお姉ちゃんの話聞いてる!?」
「う、うん!」
僕の目の前にいる姉さんが頬を大きく膨らませながら怒っている。
「聞いてるならよし!次からはちゃんとお話聞くんだよ!」
「うん!」
そう言って姉さんは笑う。
そんな笑顔が大好きだった。
そんな優しい声が大好きだった。
「ほーんと、───は可愛いわね〜♪」
そう言いながら、抱きついてくる姉さんの温もりが心地よかった。
「何をやってんだい…あんた達…」
そんな声と共に、女神?が呆れた顔をしながらこちらを見ていた。
「あ、婆神様こんにちは!」
「こ、こんにちは」
「……ふん、老神扱いするんじゃないよ」
「あはは、ごめんなさい」
「……まぁいい、それより、いいのかい?そろそろ時間──」
「あ、ヤッベェ!!───無乳神のとこ行ってくる!!」
「え、あ、ちょっと姉さん!?」
「じゃぁな弟よぉぉ!姉の帰りを待っててくれぇい!!」
そう言うと、姉さんは走り去って行った。
「……相変わらず騒がしい子だねぇ」
「えっと、あの……すみません」
「なんでお前が謝ってるんだい?」
「だって、その……僕のせいで……」
「気にすることはないさ。あの子はああいう性格なだけだしね」
そう言うと、女神様は優しく頭を撫でてくれた。
「……ありがとうございます」
「礼を言うくらいなら早く大人になって金を渡しな」
「…はい」
「それと、何度も言っているけど、私のことは──と呼びな」
「……わかりました」
「本当にわかってるのかねぇ……全く」
そう呟くと、女神様はため息をついた。
その表情はいつも金にうるさい女神様とは思えないほど優しいものだった。
「無乳神様ァァァ!!会いに来てあげましたー!」
バタンと勢いよく扉を開けて、神室へと飛び込む奇行種。
その光景は見るもの全員の頭を抱えさせた。
「誰が無乳じゃボケェェェ!!」
そして、当然のごとく怒り狂った女神に怒鳴られた。
だがしかし、それに動じないのも、また彼女である。それが、彼女の長所であり短所でもあるのだが……。
「おっと失礼!。貧相なお胸をお持ちの神って言った方が良かったですかあぁぁぁ!?」
彼女は、相手が誰であろうと、例え神であっても、自分の意見を貫くのだ。
その言葉を聞いた瞬間、女神は、額に青筋を浮かべた。
「言い方の問題ちゃうわボケ!」
女神のツッコミが飛ぶ。
「……ふぅ…で、今日は何の用やねん?」
先程までの怒りはどこへいったのだろうか、落ち着いた様子で女神は彼女に問う。
その問いに対して、彼女は満面の笑みで答えた。
「私の弟をファミリアに入れやがってください!」
「時は遡ること、1年前。私が夕飯を食べてた時だった。
弟がいきなり冒険者になりたいと言い出したんだ…
『大好きなお姉ちゃん僕冒険者になりたい」って。
それで私は「…ッ……わかったぞい!」って答えた…終わり」
「お前はどないなテンションで話しとんねん!もっとこう……あるやろうが!感動的な話が!なんかあるやろうが!?」
「そんなもんわねぇ!大丈夫!この一年知識と剣術だけは教えたから!」
そうドヤ顔で言う元眷属の自信に溢れた顔をみて、女神はため息をつく。
そして、諦めたように口を開いた。
「はぁ……、まぁええわ。とりあえず、その弟連れてきぃ」
「さっすがロキ!話がわかる!」
女神の言葉を聞いて、彼女は嬉々として部屋を出て行った。
「ほんまにアイツは……」
その後ろ姿を見ながら、女神はボソリと呟いた。どうしようもない馬鹿な娘を想うような目をしながら。
少しの間を空けると、再び大きなため息をついた。
「入ってきぃ、リヴェリアママぁ〜」
静かに部屋の外に声をかける。すると、ゆっくりとドアが開き、そこから一人の女性が入ってきた。
「誰がママだ……それよりよかったのかロキ…」
「んー?なにがや〜?」
部屋に入ってくるなり、開口一番で問いかけてくるリヴェリア。
その質問の意図がわかっているはずなのに、あえて惚けるロキ。
そんな態度を見て、リヴェリアは小さく舌打ちをし、再度同じことを尋ねた。今度は真剣な眼差しで。
そんな彼女の瞳を真っ直ぐに見つめ返しながら、ロキは答える。
嘘偽りのない、本心を。
その答えを聞き、リヴェリアは安心したように微笑んだ。
そして、その笑顔のまま、女神は女神らしからぬ言葉を吐く。
「あの子が自分で決めた道なんや……今更戻ってこいなんて言えるわけないやん」
そう言って、窓の外を見る。
そこには、夕焼けに染まる空があった。
それを眺めながら、女神は思う。
───あの子には幸せになって欲しいと。
そう願わずにはいられなかった。
そして、その願いはきっと叶わない。
なぜなら、もう既に、あの子の運命は決まっているのだから。
だからこそ、せめてあの子の意思を尊重したいと思った。
それが、親としての責務だと。
たとえ、それが間違いだとしても───。
「あぁ……ホンマに綺麗な夕焼けやなぁ……」
「ただいまー!」
外から元気な声が聞こえてきた。
その声に反応して、僕は玄関へと向かう。
扉を開けると、姉さんがこちらを向いてニコッと笑う。
僕もそれにつられて笑い返す。
こんな何気ないことが、僕にとってはすごく幸せなことだった。
姉さんがいて、皆がいる。
そんな日常がずっと続くと思っていた。
「────────」
でも、それは違った。
この時初めていつも笑っている姉さんの顔から笑顔が消えた。
「奥に行ってなさい」
姉さんが、僕の手を引き、院の奥へとへ手を引く。
その表情は今まで見たことがないくらい真剣なもので、その目は僕ではなく、扉の向こうを見据えていた。
「姉さ──」
僕が言葉を言い終わる前に孤児院が
爆ぜた。
爆発音が鳴り響き、建物が崩壊する。
瓦礫が飛び散り、炎が上がる。
一瞬にして日常が、地獄絵図へと変わった。
そんな中、姉さんの温もりだけが、はっきりと伝わてくる。
気がつけば外へと出ていた。
そして、目の前に広がる光景に絶句する。
そこに広がっていたのは、まるで世界の終わりのような光景だった。
燃え盛る建物。
泣き叫ぶ孤児。
瓦礫で潰された大人達
そのどれもが絶望の色に染められていた。
その光景に唖然としていると、突然背後から抱き締められた。
「大丈夫…絶対に守るから……私が守ってみせるから……!」
震えた声で、しかし力強く、姉さんは言った。
「ハッハハハハハハハァ!いいねぇ!姉弟の絆!…ぶっ壊したいぜぇ!!」
そんな高笑いと共に、僕らの前に桃色髪の女性が現る。
「【
その女性を見て、姉さんが呟く。
「久しぶりだなぁ、【
そう言いながら、彼女は姉さんに近づく。
すると、姉さんは、キッと彼女を睨みつけた。
そんな視線など気にせずに、彼女は言葉を続ける。
まるで、姉さんの反応を楽しむ様に。
「お前が生きてるって知った時、歓喜に打ち震えたぜえ?やっとお前をぶち殺すことができるってなぁ!」
そう言うと彼女は心底楽しげに笑う。
そして、一頻り笑い終えると、その顔に残虐性を滲ませて、こう告げた。
『お前はここで死ぬんだよ』と。
その言葉を聞いた瞬間、姉さんは動き出した。
剣を抜き、斬りかかる。
だが、彼女はそれを軽々と避け、反撃をする。
姉さんはそれをギリギリのところで防ぎ、なんとか距離を取る。
そんな攻防を数度繰り返した後、再び彼女が口を開いた。
先程までのふざけた口調から一転、冷徹な声音で言う。
「おいおいおい、私1人に気を取られていいのかよ?」
慌てて周囲を確認すると、そこには、数人の黒ずくめの集団がいた。そいつらは、それぞれナイフを構え、弟へと向かっていく。
「弟に手をだすなああぁぁぁ!!!」
必死の形相で叫びながら、姉は弟の元へと駆け寄り、弟を抱き抱える。
そして、その勢いのまま地面を転がり、攻撃を避けていく。
しかし、それでも全ての攻撃を捌ききることは出来ず、所々に傷ができていった。
「姉さん……」
「大丈夫……絶対……!」
弟を守るために、自分の身を顧みず、ただひたすらに守り続ける。
その姿は、まさに聖女のようであった。
「はっ!健気じゃねえか!だけどよォ!そのままじゃ弟も守れねぇゾォ!?」
そんな姉弟を嘲笑うかのように、次々と襲い来る刺客達。
その全てを、斬り伏せ、突き飛ばし、蹴り飛ばす。
その度に血飛沫が上がり、地面に伏していく。
その返り血を浴びながら、姉は弟を守り続け、逃げ続ける。
(あぁ、本当に最悪だ……こんな事になるなら最初からロキの所に連れて行けばよかった…)
今更ながらに後悔する。
サプライズでビックリさせる為なんて考えず連れて行っていれば……と。
「…………ごめんね……」
ポツリと謝罪の言葉を口にする。
その声は誰に向けたものなのか……。
弟なのか元主神なのか、それとも戦友だろうか。
わからない。
ただ、この胸にある気持ちだけは確かなものだった。
「私はまた間違っているんだろうな……」
そう口にした彼女の頬には、涙が伝っていた。
「姉さん……?」
僕は姉さんが泣いていることに気づいて、思わず声をかける。
しかし、姉さんは僕の声に反応しなかった。
「もう……2人一緒に生き残るってのは無理そうかぁ…」
静かに、そして悲痛な面持ちで姉さんが言った。
「…ごめんねシオン」
そう言って、姉さんは僕のことを優しく抱きしめて、頭を撫でた。
「なんで謝るの……?」
僕は姉さんの服を掴みながら、尋ねる。
「……きっとシオンはこれから辛い思いを沢山することになると思う」
「…姉さん…?」
「…だから沢山じゃなくてもいい。1人でもいいから頼れる友達を、背中を預けられる仲間を作ってね」
「……何を言っているの?」
姉さんの言わんとしていることが理解できない。
姉さんはゆっくりと立ち上がり僕に向かって微笑み
魔法を唱え始めた。
「【──其は、天におわします我らが父なる神が光】」
その言葉と同時に、彼女の足下に複雑な魔法陣が現れる。
「【──闇夜を照らす希望の灯火】」
詠唱が進むにつれて、姉さんの周囲から眩い光が溢れ出す。
「【我が祈りを聞き届け、祝福を与え給え】」
その輝きはどんどん強くなっていく。
「ッチ、やっと見つけたと思えば、テメェ何してやがる…させるわけね──」
その光景を見て、舌打ちをした【
「【我が望は神の威光、我は神の代行者である!】」
「させるかぁぁぁあ!!」
【
しかしもう遅かった。
「【
次の瞬間、姉さんを中心に、まばゆいばかりの聖なる光が放たれた。
そのあまりの強さに、思わず目を瞑ってしまう。
そして、次に目を開いた時、先程まで姉さんに纏われていた光は
全て僕に収束していた。
そして、僕の身体は、まるで姉さんに包み込まれているかのように感じる。
「…ッ…これでもう大丈夫……」
そう言った姉さんの胸には剣が刺さっており、その傷口からは大量の血液が流れ出ていた。
「あーくっそ!あの女ァ!マジでやりやがった!クソッタレがッ!ふざけんじゃねぇぞ!あ"あ"!?」
「姉……さん……?」
目の前の状況が理解出来ない。
したくない。
これは悪い夢だと叫びたい。
だけど、これが現実だということを、自分の心が告げている。
だって、血塗れの姉さんから、温もりを感じるから。
「……あはは……どうしようかな……これ……」
姉さんは苦しげな表情で呟いた。
「姉さん……姉さん……?ねえ、嘘でしょ……?」
僕は姉さんに抱きつきながら言う。
「……ごめんね……シオン……もう時間がないみたい……」
「嫌だよ……そんなこと言わないでよ……!」
「ごめんね……ごめんね……」
そう言いながら、姉さんは僕の頭を撫でてくれる。
「……シオン……お願いがあるの」
「……なに?」
「私の分も笑って生きて……シオンならできるよ」
「……うん」
「あとね……たまにお墓参りとかして…欲しいなぁ…」
「……うん」
「……ゴフッ………シオン……大好きだよ……ずっと……愛しているからね……幸せになっ…て……」
そう言い残し、姉さんは倒れその言葉を最期に、姉さんの瞳からは生気が消えた。
「姉さん……ありがとう……頑張るから……姉さんの分まで……生きるから…大好きだよ…」
僕は姉さんの遺体を置き去りに走り出した。
背後でからは罵声が聞こえる。
ナイフや剣が僕めがけて
多分これが姉さんの魔法の効果なんだろう。
そのまま、僕は全速力で駆け抜ける。
後ろを振り向かず、ただひたすら前だけを見据えて。
迷路の様な道を走り続ける。
途中何度も刺客に襲われそうになったが、その度に姉さんが守ってくれた。
そのおかげで、なんとか逃げ切れた。
「ハア……ハアッ……ここどこ……?」
息を切らしながら独り言のように呟く。
しかし、それに答えるものはいない。付近に人の気配はない。
「……姉さん……」
そう言って、僕はその場に座り込む。
涙が止まらない。
今まで我慢してきたものが溢れ出てくる。
「うぅ……姉さん……姉さん……姉さん……!」
僕は泣き続けた。
「姉さん……僕、これからどうすればいいの……?」
「おやぁ?迷子か?どうしたんだい?」
「え……?」
声のした方を見ると、そこには神がいた。
「あ、あなたは……?」
僕は涙声で尋ねる。
「俺かい?俺はね、タナトスっていうんだ」
「た、タナトス様……?」
「それで君はどうして泣いているの?」
「あ、いえ……その……」
「話してみなよ、心が軽くなるかもしれないよ」
「はい……」
それから、僕は事の顛末を全て話した。
「なるほどねぇ……」
「姉さんが死んで……もう何が何だかわかんなくて……」
「ふむ……ところで君の名前はなんていうのかな?」
「…シオンです」
「そう、じゃあシオン、俺の眷属にならない?それともなりたくない?」
「えっと……それはどういう……?」
「僕の眷族になれば強くなれるかもってことさ」
「強く……なる……?」
「そう、強く。もう何も失わないくらいに強くね」
「強く……なる……もう……失いたくない……」
「そう、じゃあ、おいで」
「はい……お願いします……」
僕は手を差し伸べてくれたタナトス様にすがるように、手を伸ばした。
「って、事があったのさ…私はシオンが走り去るまでしか見てないがね。あの後どうなったのか…」
「そんなことが…私がその場に居れば…」
「あんたが居たところで結果は変わらんだろうさデュオニュソス」
「……そうかもしれないが……それでも何か出来たんじゃないかと思ってね……」
「そうかい……だが、もう終わったことだ。今はシオンの無事を祈ろうじゃないか…」
「ああ……そうだな……」
そうして神は1人、シオンの安否を案じるのであった。
完結まで行ければ姉さんのメインストーリー書くかも。