寝て起きたら暗黒期!?ベルくんに会うまで死にたくねー! 作:お米大好き
んー、シオンを女キャラにしていればヒロインにできたのにと思う今日この頃。
リメイクとかしたら有りかなぁ?。
俺娘系、白髪ヒロイン
振り返るとそこにはシオンがいた。
「……どうしてここにいるんだよ」
呆れ気味にタクトが聞くと、 シオンは胸を張って答えた。
まるで、自分の事を褒めて欲しい子供のように。
「いつもの如くダンジョンでタクトを待ってたら凄い勢いで進んでくからさぁ、追いかけて来た!」
そう言って親指を立てる。
「……お前って奴は」
思わずため息が出る。
しかし、不思議と心が軽くなった。そんな気がした。
タクトは小さく笑うと、 シオンに状況を伝えた。
「なるほど!つまり、タクトは17階層でライラって人を助けようとしてるわけか!!」
タクトの話を聞き終えて、シオンは納得したようにそう言った。
「だからシオン…頼む。俺と「一緒に助けようぜ!タクト!」
タクトが最後まで言う前に、シオンは笑顔を浮かべてタクトの肩に手を置いた。
(……こいつは本当に……)
タクトが思わず苦笑いをすると、 シオンが言葉を続ける。
「俺ランクアップしたんだぜタクト!それに新しい魔法も覚えてさぁ!俺とタクトなら絶対助けられる!」
自信満々な様子でそう告げてくるその姿は、どこか眩しく見えた。
(……ははっ)
その姿を見て、思わず笑いが出てしまう。
(……ありがとうな、シオン)
タクトはそう思うと拳を握りしめ、 決意を固めた顔つきになる。
そして、力強く言い放った。
「行くぞぉ!シオン!」
「おう!タクト!」
タクトとシオンは17階層へと続く道へと歩み出した。
(広い…)
ここは17階層、他の迷路のような階層とは違う広いフロア。
(ここが嘆きの大壁、18階層への入口まで200…いや、250mはあるか…?)
「おい、タクト」
「ああ…」
「あの人か?」
「……間違いない」
シオンが指差したフロアの中央、そこに手足を拘束され囚われているライラを視認した。
直後タクトとライラの視線が重なった。
「……ッ!」
ライラは信じられないものを見たかのような顔をして、こちらを見ている。
「ライ──」
駆け出したい衝動を抑え、タクトは動きを止めた。
(落ち着け、…罠だ。人質を放置して誰も居ないなんてありえない)
「タクト?」
小声で話しかけてくるシオンに、タクトは視線を向ける事なく答える。
「罠だと…思う…」
ライラは先程より焦った表情になり、必死に何かを訴えかけようとしているが口元を布で覆われているため何を言っているのかわからない。
「───!!」
それでもライラは諦めず、何度も口をもごもごと動かしている。
(何かを伝えようとしてる…?)
いったい何を?
視線は感じない…モンスターの気配もない。なのに人質を放置……。
(ライラは何かを伝えようとして…ッ!)
「おい、タク──!?」
「上だッ!!」
タクトは咄嵯にシオンを突き飛ばし駆け出す。
その直後、天井から降ってきた影が2人のいた場所へと着地した。
「おいおいおい、避けてんじゃねぇぞ!!」
(あっぶねぇ…もう少し遅かったら確実に斬られてた)
タクトはその人物を見て舌打ちをしたくなる気持ちを押さえながら、腰から剣を抜き構えた。
同時にシオンも立ち上がり武器を構える。
「なんで気づきやがったクソガキィィ、俺の奇襲は完璧だった筈だ」
男は苛立った表情でタクト達に向かって怒鳴り散らす。
その男(前にタクトに片腕を切り落とされた)の姿は一言で言えば黒。
黒いフード付きのローブを纏い、手には赤黒い剣が握られている。
身長、声、雰囲気からして20代前半と言ったところだろうか。
「は…天井からの奇襲なんて物語じゃよくある話だ…」
冷や汗を流しながらも、タクトは強気にそう答えた。
「え…俺見た事ない」
「…黙ってくれシオン」
タクトはシオンにそう釘を指すと、改めて目の前の男へと意識を集中させる。
「チッ、まあいい。俺は今機嫌がいいんだ」
そう言ってニヤリと笑う。その顔は酷く歪んでおり、見るもの全てに嫌悪感を与えるだろう。
シオンはタクトの前に立つと、いつでも動けるように体勢を整えた。
「タクト、ライラって人のところに行ってくれ。時間は稼ぐ」
「……頼んだ」
シオンをその場に残しライラの元へと駆けるタクト、それを見た男がつまらなさそうにため息をつく。
「ああん?…んだよ、偶然にも最善手を打ちやがったか…」
そう呟くと、再びニタリと笑い、それもまたよしと、動きを止めた。
「ライラ!無事か!」
「んんー!!」
タクトはライラの元に到着すると、すぐさま口に巻かれた布を取り払った。
「ッ─ケッホ、ゲホッ!」
突然入ってきた空気に咳き込むライラだったが、すぐに呼吸を整えタクトの方へ視線を向けた。
「すまねぇタクト…しくじった」
悔しそうな、それでいて申し訳無さそうな表情をするライラ。
「謝るのは後だ。今はここから助かる方法を考えてくれ、俺には無理だ」
タクトはそう言うと、シオンがいる方角を見る。
(動かない?……好都合か?今の間にライラの拘束を解ければ……)
タクトがそんな事を考えていた時、不意にライラが口を開いた。
「タクト……私を置いてお前だけでも逃げろ」
「は?……ッ!?」
折角助けに来たのに何言ってんだコイツは、と、思わず怒りが込み上げそうになったその時、 ライラの拘束されている両足が少し変色している事に気づいた。
「折れてんのか?ライラ」
タクトが問いかけると、ライラは苦虫を噛み潰したような顔になった。
どうやら当たりらしい。
ライラは先程からずっと足を動かそうとしていた。しかし、痛みのせいで思うように動かなかったのだ。
タクトは一瞬悩むが、すぐに行動を開始した。
「【千鳥】!!」
手に纏った雷でライラの拘束を破壊した。
「タクト!」
「ここで待っててくれ…必ず戻る」
タクトはそう言い残すと、シオンの元へと駆け出した。
──────
「おせぇなぁ、いつまで待たせるつもりだ?」
不機嫌な様子で剣を肩に乗せながらシオンを見下ろす男。
その眼光は鋭く、明らかに殺気が込められていた。
シオンはその威圧感に気圧されそうになるが、グッと堪えて武器を構え直す。
(こっちにはタクトが戻ってくるまで時間を稼げばいいだけなんだ……なんとかなる!!)
シオンは自分にそう言い聞かせ、目の前の男を睨みつけた。
すると、男はそんなシオンの顔を見ニヤリと笑った。
「その顔がどう歪むのか…楽しみだぜぇ?シオン」
男はそう告げると、勢いよく地面を蹴りシオンとの距離を一気に詰めた。
そしてそのまま剣を振り下ろす。
シオンはそれを間一髪のところで避けるが、風を切る音に肝を冷やす。
(速いッ!……でも、ギリギリ見える!!)
シオンは反撃しようと武器を振るうが、男はシオンの攻撃を見切っており難なく回避する。
(ダメだ!攻撃が当たらない!)
シオンは一旦距離を取るために後ろに下がるが、それを見越したように男がシオンに急接近してきた。
それに気づき、慌てて横に跳ぶが、剣がシオンの腕を掠めた、そしてそれを認識すると同時に、腕から血が流れ出す。
(斬られた!けど、まだ動──まずい!?)
シオンはすぐに武器を構えるが、男はシオンの隙を見逃さず、もう一度剣を振るってきた。
(斬られ──)
シオンが死を覚悟した瞬間、男の背後から現れた影が男を剣を防いだ。
「ギリギリ間に合った…」
「タクト!!」
安堵の表情を浮かべるシオン。
しかし、タクトは厳しい表情のまま男を見ていた。
剣を防がれてしまった事で舌打ちをする男だったが、その表情は何処か嬉しそうだ。
まるで、待っていたかのように。
そんな男を見て、タクトも理解してしまった。
(クソッ…コイツランクアップしてやがる)
タクトは奥歯を噛み締め、目の前の男を睨んだ。
目の前の男からは、以前戦った時の比ではない程の力を感じたからだ。
「おい、クソガキ。随分と遅かったじゃねぇか、パルゥムの女はどうした?足が折れて動けなかったか?」
ニヤニヤとしながそう話す男に対し、タクトは無言を貫く。
タクトがチラッとシオンを見ると、心配そうな顔をしていた。
大丈夫だと目配せをして答えるが、シオンは納得していないようで不安そうな表情をしていた。
しかし、今はそんな事を気にしている場合じゃない。
「シオン!合わせろ!!」
タクトは声を上げ、同時に駆け出した。
シオンもそれに合わせるように駆け出し、2人は左右に分かれて挟み撃ちの形をとる。
「ハハッ!良い判断じゃねぇか!だが遅い!!」
2人の攻撃を男は軽々と避けると、タクトに向かって斬りかかる。
しかし、タクトはそれを避けず、逆に自分から飛び込んだ。
(肉を切らせて骨を断つ!俺はスキルで助かるがなぁ!!)
タクトは心の中でほくそ笑みながら、自分の腹へと迫る赤黒い刃を見る。
───────はずだった。
「おっと、それはさせねぇぞ?」
「なっ!?──ウグァッ」
男は一歩下がり、タクトの間合いから外れると、タクトの腹部に蹴りを入れた。
タクトは吹き飛ばされるが、空中で体勢を整え地面に着地し、再び男を視界に収めた。
シオンの方へ視線を向けると、シオンも同様に蹴られて宙を舞っていた。
シオンは何とか受け身を取り立ち上がるが、ダメージが大きいのか膝をついている。
「ぐっ……!」
シオンの口から苦痛の声が漏れ出る。
タクトはそんなシオンに近づこうとするが、男はそんなタクトの前に立ち塞がり、行く手を阻んだ。
タクトは一度冷静になる為、大きく深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。
(このクソ野郎……絶対俺の狙いに気づいてやがった)
「どうした?来ないのか?ならこっちからいくぜぇ!!」
男はそう言うと、剣を横薙ぎに振るった。
タクトはそれを屈んで避けたが、その風圧でタクトの髪の毛が揺れる。
(ッぶねぇ……!)
タクトは内心冷や汗をかきながらも、すぐさま起き上がり反撃に出た。
雷を纏った剣で攻撃するが、男はそれを紙一重で避けると、反撃としてタクトの首筋を狙い剣を振るう。
その動きを見たタクトは、すぐにその場から離れようとしたが、先程受けた蹴りのせいで体が思うように動かない。
(くそッ……なら!)
「
「【千鳥流し】!!」
半径に2メートル程の範囲に雷を流しタクトを中心にした球体状に広がる
(痺れやがれ──なっ…)
男はタクトが技を発動する前に、既に範囲外へと移動しており、余裕の表情を浮かべていた。
そして、タクトが呆然としている隙をつき、タクトの目の前まで一瞬で移動すると、再び蹴り飛ばした。
「がふッ……!!」
タクトは壁に叩きつけられ、そのまま崩れ落ちる。
そして、タクトが倒れるのを確認すると、ゆっくりと近づき倒れているタクトの顔を靴底で踏みつける。
「残念だったなぁおい。お前の考えなんざお見通しだぜ?」
男は笑いながらそう言い、タクトを踏みつけ続ける。
タクトは抵抗しようとするが、体に力が入らない。
「クソが……」
絞り出すように出た言葉は、目の前の男に対する憎悪の言葉だけだった。
「…グァ」
そんなタクトを嘲笑うように、男は口を開く。
「最高の気分だぜ?なんたって俺の腕を斬り落としたクソガキをこうして踏んづけてんだからよぉ!!あー最高だわマジで、今すぐ殺してぇけど、まだその時じゃねぇからな。もっともっと絶望してくれよぉ?」
男はそう言って更に強くタクトの顔を踏む。
そんな時、男の後ろに影が現れた。
ライラは痛みに耐え、男の背後に忍び寄り、男へとナイフを振り下ろした。
「おうおう、頑張るじゃねぇか」
しかし、その攻撃は男によって読まれており、背後を振り返ることなく簡単に避けられてしまった。
「あぁ、クソたれが……!!」
ライラは悪態を吐きながら、男を睨む。
「まぁ、これで終わりだけどな」
(やられる……ッ)
男が剣を構えるのを見て、ライラは死を悟った。
「──させねえ」
しかし、そんな男を止めたのはシオンであった。
シオンはボロボロになりながら立ち男の一振りを剣を盾に受け止めた。
ギリギリと音がなり、火花が散る。
しかし、力の差は歴然であり、シオンは少しずつ押され始める。
このままでは負けてしまう。
そう思った瞬間、タクトが声を上げた。
「【
タクトの手から雷が槍のように放たれる。
男はそれに気づくと、すぐにシオンを突き飛ばして後方へと下がった。
「ッ……」
タクトはシオンの元へと駆け寄りポーションを手渡しす。
「ほらよ、飲め」
シオンはそのポーションを受け取り一気に飲み干すと、体中に走る激痛が和らぎ、立ち上がる事が出来た。
タクトも立ち上がり、シオンの隣に立つ。
「ありがとなタクト」
男はそんな2人をニヤリと笑みを浮かべて見ていた。
タクトは男を真っ直ぐ見据えると、口を開いた。
「スキルか魔法かはしらねぇが、事前に攻撃を察知する何かを身に着けてるんだろ?」
タクトは男に問いかけるが、男は答えずただ笑みを深める。
タクトは舌打ちをすると、続けて話す。
「俺達の攻撃が当たる前に回避行動を取っていたのは、そのせいなんだろ?」
タクトの問いに男は笑みを深めながら答える。
それはまるで、正解だと言わんばかりに。そして、男は語り始めた。
自らの魔法の正体を。
「正解だクソガキィ…俺は昔から聴覚と嗅覚が悪くてよぉ、その代わりに視覚だけが優れていた。そしてレベルが上がれば上がるほど俺の目は成長し。LV.4になった時、新たな魔法が発言した。俺の目は未来をも見通す!!」
男のその言葉に、ライラとシオンは目を見開く。
そして、同時に理解した。
勝てないと。
男は高笑いをしながら話を続ける。
自らが手に入れた力を自慢するように。
自分が得た恩恵を誇示するように。
「あっそ…で?何秒だ?」
しかし、タクトは興味無さげにそう言った。
「ああ"?」
男はそれを聞いて、一瞬何を言っているのか分からなかったが、すぐに意味を理解し怒りを露にする。
そして、タクトを睨む。
その視線を真っ向から受けてもなお、タクトは態度を変えない。
「1秒か?2秒か?そんなに先は見れてないんだろ?なら大した事無いな」
「お、おい、タクト挑発すんな…何を考え──」
ライラが止めに入るがタクトはそれを無視して男を鼻で笑った。
男はそれをみて更に苛立ちを募らせる。
「テメェ……!」
「どうした?こいよ」
タクトは剣を構え、男を煽る。
その様子は誰が見ても自殺行為にしか見えなかった。
ライラもシオンもそれを止めるべく動こうとするが、タクトは手で静止させる。
「……ぶっ殺す!!」
男はタクトに向かって走り出す。
そして、タクトの首を落とそうと剣を振おうとしたのだが、男は動きを止めた。
いや、止められたのだ。
「テメェ…
男は信じられないものを見るような目をして、タクトを見つめる。
「あぁ、
「……」
男はタクトの言葉を聞き、黙り込む。
そして、ゆっくりとタクトから離れ、距離を取る。
「な…どうなってんだタクト!?」
シオンは混乱しながらタクトに問う。
しかし、タクトはシオンの方へ振り返る事なく、前だけを見て答えた。
「あいつはもう詰んでんだよ」
タクトの言葉を聞いた男は歯軋りする。
それが事実である事を肯定するかのように。
「……詰んでる?どういうことだよ」
ライラがタクトの言葉に疑問を投げかける。
タクトは男から目を離さず、そのまま口を開く。
「簡単な話だ、アイツは1秒や2秒先を見ているんだろ?なら、その先で起こす行動を決めていればいい」
タクトはそこで一旦区切り、再び口を開く。
ライラとシオンの頭にはハテナマークが浮かぶが、構わず続ける。
「あいつが動き出した1秒後俺は全力で周囲に電撃を放つ。当然お前らにも被害が出るだろうが、死にはしない。強めに痺れるだけだ。そして電撃に耐性のある俺だけがその中を動く事が出来る」
タクトの説明を聞いていたライラとシオンは唖然としていた。
しかし、タクトは気にせず説明を続ける。
「それに未来を見るほどの魔法だぜ?魔力消費が激しい筈だ。このままいけばアイツはマインドダウンか電撃を喰らって倒れる」
(ただ、一つだけ問題があるとすれば──)
「アッハハハハハ!!」
タクトが一つの疑念を抱いていると男が突然笑い声をあげた。
タクトはその声に驚きながらも冷静に状況を把握しようとする。
しかし、男はそんな事は関係なしに高らかに笑いながら話しだす。
自分の勝利を確信していると言わんばかりに。
「あぁ、そうだな。確かにこのままじゃ俺の負けだ。でもよぉ、
それで終わりだと思うか?」
絶望はこれから始まる。
その事をまだ彼らは知らない。
今はまだ。
次回予告!
しゃく
以上!
お楽しみにー。