寝て起きたら暗黒期!?ベルくんに会うまで死にたくねー! 作:お米大好き
「対象シオン・ライラック!!」
タクトがそう叫んだ直後、俺の視界に映る景色が変わった。
「ここは……俺のホーム?」
なんでだ?さっきまで俺はダンジョンに…タクトの魔法?。
『アリーゼ達に助けを求めろ!!頼んだぞ!!』
あ!?そうだ考えてる場合じゃない!!早く助けを呼ばないと!。
「待ってろよタクト、すぐに助けを呼んで───」
と、そこでふと疑問に思った。
「タクトってどこのファミリア所属だ…?。どこに行けばアリーゼって人に会えんだ?」
やばいわかんねえ……どうしよう……?。
タクトに聞いときゃよかった……でも今更戻るわけにもいかねぇし……あぁああ!!もう!!こうなったら片っ端から探すしか─────
ガチャ
と、そう音を立てて突然背後で扉が開いた。
「おや?どうしてまだここに居るんだい?───シオン」
普段なら安心する声が、今は恐怖の対象にしかならなかった。
恐る恐る振り返るとそこに居たのは紛れもなく、俺の知っている神物だった。
「……タナトス様」
俺は今どんな顔をしているのだろうか。きっと、いつもの様な笑顔は作れていない。
「どうしたんだい?そんな不安そうな顔をして、まるで知ってはいけない秘密を知ってしまった子供みたいな表情をしているよ」
タナトス様はニコニコと微笑んでそう言った。
そんな笑みが、今の俺には悪魔の嘲笑に見えてしまった。
「…タナトス様……聞きたいことがあるんです」
聞きたい、問いたい、確かめたい。
あの男が言っていたことが本当なのか嘘なのか。なにより貴方を信用してもいいのか。
「…なんだい?言ってごらん」
タナトス様は優しい口調でそう言う。
その言葉に、その仕草に、その優しさに、今まで何度も救われた。
だから、だからこそ、信じたくない。だからこそ知りたい。
「……タクトの所属ファミリアを教えてください」
でも今はダメだ。例え嘘であって欲しいと思っても、仮に真実であったとしても、今は聞くべきじゃない
今俺がしなくちゃならないことは、タクトを助けることなんだ。
「へぇ…面白いね。いいよ、教えてあげる。彼の所属はアストレアファミリア、正義を掲げるファミリアさ」
タナトス様は楽しそうに俺の質問に答えた。その様子は本当に俺の求めていた回答そのもの。でも、その事実は俺の心を更に締め付けた。
タナトス様がタクトの事を知っている。俺は一度もタクトについて話していないのに。
もしかしたらどこかで見られていたのかもしれない。
もしかしたらどこかで聞いたのかもしれない。
そんなあまい考えが俺の頭を過った。そして、その可能性は限り無く低いという事も理解していた。
「……ありがとうございます」
「いいよ、気にしなくて。他にも聞きたいことはあるかい?」
そう言われて、俺は咄嵯に首を横に振ってしまった。
これ以上聞いてしまえば、何かが崩れてしまう気がしたから。
だが、そんな俺を見てタナトス様は少し困った様な顔を浮かべた後、少し考える素振りを見せた後、口を開いた。
「じゃあさシオン、ボクからも一つだけ君に質問をしても良いかな?」
「……ごめんなさいタナトス様。今は時間がないので……」
俺はそう言い残し、その場から逃げようと走り出した。
早くしないとタクトを助けられない。
早くしないと信じたくもない現実を突きつけられる。
「まぁ待ちなって、別に時間を取らせるつもりはないよ」
が、タナトス様に腕を掴まれ俺の足は止まってしまった。
「…時間が…ないんです」
振り向けない。タナトス様は今いったいどんな表情をしているのだろう。
「うん、それは分かってるよ。ただ教えてあげたいことがあってね」
「……なんですか」
「アストレアファミリアを探しているなら今、──地区にいると思うよ。ほら、あそこには大きな魔石工場がある。そこに行ってみると良い」
そう言ってタナトス様は俺の腕を離した。
「……ありがとうございます」
俺はそう呟き、再び駆け出した。
───────
シオンの去った後、タナトスは一人残された部屋の中で微笑む。
「このぐらいしてあげないとね……フェアじゃない」
これで結末どう動くかが楽しみだと言わんばかりに。
───────
走れ、もっと速く。
急げ、一秒でも早く。
「はっ……!はっ……!」
息が苦しい、心臓が爆発しそうだ。
「はっ……!……くそっ……!!」
眩暈がする、吐きそうだ。
それでも、止まるわけにはいかない。
止まった瞬間、きっともう俺は二度と立てなくなる。
「……はぁ……!はぁ……ッ!?」
走って約3分、ようやく目的地が見えてきた。
あれが……あの建物が……!!。
「……着いた……!。……よし……!!」
俺は意を決して魔石工場の中へと入った。
「……っ!?」
中に入った瞬間、思わず目を見開いてしまった。
「やれぇ!!やっちまえ!!」
「ぶっ殺せ!!ぶち殺しちまえ!!あんなクソガキ共なんか皆殺しにしてやれ!!!」
「臆するな!!1人残らず捕えろぉぉ!!」
「「「うおぉぉおぉぉ!!」」」
黒いローブに身を包んだ50を超える冒険者、そしてそれ対峙する20程の憲兵。その二つの陣営が互いに武器を持ち戦っていたのだ。
それを見てシオンは慌てて近くにあった柱に隠れた。
(何が起こって、なんでこんなところで戦闘が…?)
いや、今はそんな事を考えている場合じゃない…。それよりもアストレアファミリアだ。タナトス様の話によると、確かこの辺のどこかにいr───「油断しすぎだぜ。坊主」
「え…?うぐッ……!!」
突如背後から聞こえた声に反応するも時既に遅く。シオンは腹部に強烈な衝撃を受け、そのまま訳も分からず吹き飛ばされてしまった。
「が……は……!?」
後ろから…。気づけなかっ──「はーい、残念でした。いや、この場合は運が良いのか?なあ、坊主」
ローブに身を包んでいて表情は見えないけど…。声からして男だ…。
「はぁ…はぁ……はぁ……」
苦しい……。蹴られた腹がかなり痛む。けど、これくらいならまだ戦える…。
「……諦めが悪いねぇ。そういう奴は嫌いじゃない…。まぁ、やる気があるんなら時間が来るまで俺と遊んでようぜ?」
「ぶざけるな…。今の俺に遊んでる時間なんt───「おっと坊主の事情なんざ知ったこっちゃねえよ」」
「ぁっ……ッ!!!」
ローブの男はシオンの言葉を遮り、容赦なく斬りつけ黙らせた。直後シオンの腹部からは鮮血が流れ出す。
反応…できなかった。明らかに俺よりLV.が高い…。このままじゃ……まずい……。
シオンはそう思いながら必死に身体を動かそうとするが、上手く力が入らない。
痛みで動きが鈍ったせいか、血を失い過ぎているせいか、シオンは原因が理解出来ずにいた。
だが、ただ一つ。目の前に居る人物が現状の自分では勝てないと嫌でも理解できた。
そして、その理解が更にシオンの焦燥感を募らせる。
「なぁ、ちょっと聞いてくれや。俺はなぁ?、本当は此処に居るはずじゃなかったんだ。本当ならもう幹部候補になっててもおかしくない実力を持ってんだよ」
「………」
どうすればいい…。
「なのに、上の連中は俺の事を認めよあとせずにたった1人のテイマーなんかの為に俺達を捨て駒にしやがった……」
「……」
どうすれば状況を覆せる…。
「しかも、とにかく問題を起こせなんて指示付きでなぁ。仕方なく俺は問題を起こしてやったよ。そしたら、ガネーシャファミリアのクソどもが俺の邪魔しに来やがってよぉ、まぁ、《(アストレアファミリアが此処に居ねえ》》のが唯一の救いだな」
「……」
どうしたr──アストレアファミリアが……居ない…?。
「あそこのエルフは容赦がないって有名だからなぁ。まぁ、何が言いたいかって言うと、どうせ俺達ゃこの後捕まるんだ…なら少しくらい今を楽しんでも良いよなって事だよ」
「……」
居ない?此処には?そんな筈ない。だってタナトス様はこの地区にいると言ってくれたじゃない…か……騙された……?。
「だんまりか…。まあいい」
「さて、次は何処を斬って欲しい?腕か、脚か、それともまた腹か?安心しろ簡単に殺しゃしねぇさ」
「……」
ダメだ!!今はこの状況を打開する方法を考えろ…どうすればこの状況を打開出来る。考えろ……どうすればタクト達を助けられる。考えろ……! 。
シオンはそう自分にそう言い聞かせるが、答えは出ない。いや、正確には出たがそれは余りにも無謀なものだった。
仮に成功したとしても、それはシオンの望む結果にはならない可能性が高く、それどころか最悪の結末を迎えてしまうかもしれない。それでも、シオンはそれに賭ける事しか出来なかった。だからこそ、シオンは覚悟を決めた。
その結果、自分の命を失う事になってもいい。それで、友達が助かるのならばと。
「先ずは脚からだn──「誰でもいい!!聞いてくれぇぇ!!」
ローブ男の声は突然の大声で掻き消された。
「17階層でタクトが!!俺の友達が襲われてる!!」
此処は戦場。誰も聞く耳を持たない。誰もが目の前の戦闘に集中している。そんな中で、一人の少年が必死に声を振り絞り、叫ぶ。このまま斬られてもいい、このまま殺されてもいい。だけど、これだけは伝えなくては……。シオンはそれだけを考え、叫んだ。
「誰でもいい!!タクト達を助けてください!!」
「て、テメェなんのm──「お願いします!!どうか助け──」
「それ以上喋んじゃねぇぇ!!」
「【
シオンを覆った空気の壁は一瞬男の剣を止めはしたが、直ぐに切り裂かれ、そのままシオンの首元へと振り下ろされる。
終わった。絶対に避けきれない。これで、全てが終わる。
ごめん、タクト。先に行ってる。
ごめんね、姉さん。もうすぐそっちに行くよ。
シオンは静かに目を閉じ、死を受け入れた。
しかし、いつまで経っても首筋に痛みはなく、そればかりか金属同士がぶつかり合う音が聞こえてきた。
シオンは恐る恐る目を開く。するとそこには───「君!!今の話詳しく教えてくれるかな!?」
ローブの男と対峙している青い女性の姿があった。
────────────
タクトside
「キャハッ!モウチカズカナイ!」
両手を広げ、タクト達を目に
先程タクトが与えた偶然の一撃。それが致命傷となり得るものだと理解したからだ。
(…これくるか?。この感じ、絶対に使うよな?。なら今のうちにポーション飲んでおくか……)
タクトは腰にあるポーチを開き、中にある全てのポーションを手に取り、一つを腹部の傷口に、残り三つを口の中へと放り込んだ。
(うぇ……まっず……)
通常のポーションとマジックポーション、その二つの混ざり合った味を我慢しながら飲み込み、腹部の傷を治していく。
(腹の傷も少し塞がった…。走ってる最中に臓物がポロリなんて洒落にならないもんな……)
「ライラまた背中に乗っt──「もう乗ってるぜ」
タクトが背中に乗るよう促す前に、既にライナはタクトの背中に乗っており、肩に手を置いていた。
早えよ。俺一応怪我人よ?。もう少し労わってくれても良くない?。
「まあいい、こっからだ。あるもん全部使って時間を稼ぐ」
「何か作戦があるみてぇだな、タクト」
「一応な…まあ一手、間違えばそこで終わりだがn───「キャッハァ!!」
「ライラ、しっかり掴まっとけよ…!!」
「……ッ!!」
タクトはライラに忠告した後、地面を強く蹴り後方へと跳躍し、距離を取る。その直後────
「【地ヨ、唸レ-来タレ来タレ来タレ、大地ノ殻、黒鉄ノ宝閃ヨ星ノ撤退ヨ開闢ノ契約ヲモッテ反転───
その光景を見て、ライラは思わず息を飲む。
(おいおいふざけんなよ……!?。マジでモンスターが魔法を!?)
通常、モンスターは魔法を使わない。
しかし目の前で詠唱するモンスター、それに加え異常なサイズの魔法陣。その二つはライラの中の常識を簡単に覆した。
(…本当に策があるんだろうな、タクト……!!)
ライラはタクトの服を掴み、必死にしがみつく。そんなライラを他所に、タクトは冷静だった。
(詠唱速度は本家と比べればかなり遅い…!。避けられるか避けられないか見極めろ、無駄遣いは出来ねえ…)
詠唱式…始まりは、地ヨ、ってことは───「【破壊ノ厄災-代行者ノ名ニオイテ命ジル与エラレシ我ガ名ハ
「メテオ……?」
「【メテオ・スウォーム】!!」
「……ッ!?」
タクトは咄嵯の判断で右方向へと跳び回避行動をとった直後、ドガガガッ と轟音を立てながら地面に着弾し、砂煙が舞い上がり、タクト達を覆った。
(───ッ!。っぶね……!。あと一瞬でも反応が遅れたらやられt──)
次弾が来ない……?。今放たれたのは10発程度……本家と比べれば威力はかなり劣るがそれにしても数が少ない……。
(煙のせいで殆ど見えないがまだ天井には薄らと魔法陣が見える…もしかして……これは──── )
「──時間差ッ!」
事が起きたのはタクトがそう叫ぶと同時だった。
ドガガガガッ と先程とは比べ物にならない程の爆音がダンジョン内に響き渡った。
タクトは先程と同じように、いや先程よりも素早く、左方向へと跳んでいた。
タクトがいた場所には、小さなクレーターが幾つも出来ており、もし先程と同じ行動をしていればタクトはその餌食となっていただろう。
(…もしまた右に跳んでたら──)
そう考えるだけで、背筋に冷たいものが走る。今のは運良く避けれただけだ。次は確実に避けられる保証はない。
(また次弾が来ない…、なら次も時間差で来ると考えても良さそうだな……)
ここからどうする。カードやスキルを今使うのも論外……。使うなら絶対に回避が出来ないような範囲魔法がベスト。千鳥で打ち砕く…のは無理だな、俺の手の方が先に壊れる。なら俺が取るべき最善の行動は────
「キャハハハハッ!!」
階層に響き渡る嘲笑、強まる熱気。それは次の攻撃を知らせる合図。
タクトは目を閉じ、時を待つ。
(音で…匂いで…肌で感じろ……全てを使って感知しろ……)
天井を覆う巨大な魔法陣。そこから放たれた隕石の数は18。
そんななか
(1、2、3……)
徐々に近付く轟音。
(4、5…6、7──、いける。
まずは、1つ目…8m程後ろへ跳べば多分問題無い……。
8m、それは落下した隕石の爆破に巻き込まれないギリギリの距離。
タクトは全力で地を蹴り、後方へと飛ぶ。直後、ドゴォンッ と大きな音をたて、タクトの元いた場所へと隕石が落下した。
着地と同時に2つ目の気配を感じ取り、即座にその場から跳躍する。
(……ッ。危ねぇ……!)
爆風、熱気、破片。その全てを掻い潜り、次へと意識を向ける。
3 つ目は───け─真上。
(ッ!。感知し損なった……!)
タクトは急いで後方へと飛び退く。
ドガァァァァァッッ
「ッ……」
(ライラッ!)
背負うライラを庇うようにタクトは隕石の落下源へと向かい合い、片手を前へと突き出す。その直後、腕に強い衝撃が走った。
(───ッ!。クソが……ッ!!)
真上から降り注いだ2つの隕石、直撃こそしなかったが、その衝撃によって吹き飛ばされた岩の破片はタクトの腕に突き刺さり、肉を切り裂き、骨を軋ませた。
(痛っ……、ギリギリだった……!)
タクトは血が流れる手を強く握り締め、歯を食い縛る。そして、タクトは最後の気配を感知し、走り出す。
(────ここだ)
5つ目の隕石を避け、天井を見上げる。砂煙でよくは見えないが、魔法陣が見当たらない。
(…はぁ…はぁ。耐えきった……)
肩で息をしながら、タクトは安堵の息を漏らした。
耐えきった、避けきった、生き残った。その事実がタクトの心を満たしていた。
だが、それは束の間の休息だった。
砂煙の中、視界の隅に映る、あるものが目に入る。
「……?」
あれは……なんだ?。なんか光って───
「【火ヨ、来タレ、猛ヨ猛ヨ猛ヨ、炎ノ渦ヨ紅蓮ノ壁ヨ業火ノ咆哮ヨ、突風ノ力ヲ借リ世界ヲ閉ザセ、燃エル空、燃エル大地───
「……この状況で2発目……」
「……ッ!!」
代行者ノ名ニオイテ命ジル与エラレシ我ガ名ハ
タクトは慌てて
(くっ……!間に合え!!)
「トラッ───「【ファイアーストーム】」
直後、を中心とした広範囲に燃え盛る火炎の嵐が吹き荒れタクト達を飲み込む。そして17階層、その8割を火の海へと変えた。
8割火の海…空気大丈夫かな?