寝て起きたら暗黒期!?ベルくんに会うまで死にたくねー! 作:お米大好き
早ければ次回ぐらいでアストレアレコード突入かな…?。
「貴方って人は何を考えているんですかっ!!」
「あ、いやそのぉ……すいませんでした…」
病室に響く怒声。俺の目の前には怒髪天を衝いているアミッドさんの姿があった。
理由は単純明快。
「病室で"魔法"を使うなんて……信じられませんっ!」
「……返す言葉もございません」
目が覚め、気分がハイ(混乱)になっていた俺は思わず試したいと思っていたことを実行した。
【千鳥】による器用への小補正。これがどれだけの効果を発揮するのか気になったのだ。
結果から言えば俺の予想通りだった。器用のステータスが高いほど動きが良くなる。
片腕を無くした状態だとどうしても重心がずれてしまうが、器用のステータスを上げれば問題なくなるんじゃないかと思い実践してみた。結果は成功。
いつも通りとは言えないが問題がない程度には動けたと思う。ただ─────。
"アミッド"の説教が終わったあと、
俺はベッドに横になり考えていた。
(このまま死の七日間に突っ込んで大丈夫か…?)
相手はLV.7…、戦うつもりはないがこのファミリアに所属している以上、いつかは対面する時が来る。
(その時俺は逃げ切れるか?)
わからねぇ。
(もし仮に戦うことになれば?)
間違いなく死ぬな。
ならどうするべきか。
いや、本当はどうするかもう決めている。
(ダンジョンに潜る。少しでも戦えるようにステータスを上げ現状に慣れる)
「……ダンジョンへ行くか」
決意を固め病室の扉へと手をかける。ドアノブを捻り部屋を出ようとした瞬間、何か柔らかいものにぶつかった。
(───ん?なんだ? これは……壁……?いや、違う。これは……人?なんで)
誰かが俺の前に立っている。誰だろうかとゆっくり顔を上げるとそこには見覚えのある顔があった。
腰まで伸びた黒髪に、整った顔立ち。赤い着物姿の美女、その表情はニコッと笑い固まっている。
あ、やべ、俺死んだかも。胸揉んだし…顔埋めたし……これ絶対殺される。
「えっと……すいません、決してわざとじゃないんです……」
俺は即座に謝った。許してくれるとは思わないが誠意は見せたほうがいいだろう。
頭を下げ謝罪の意を伝えると、輝夜さんは小さくため息をついた。どうやら怒ってはいないようだ。しかし、俺はこの後どうなるのかわから「今回は見逃してやろう、ライラとアーディを守り抜いた褒美だ。……但し、二度目はないと思え」
「…ありがとうございます」
どうやら、お咎めなしのようだ。よかったぁ……。
「……ところで小僧。ひとつ聞きいておくことがある」
「…?」
一体何を聞きたいんだ? 容態?それとも事件の内容か?。
輝夜さんが問いかけてくる質問を心構えをしながら待った。そして、彼女が発した言葉は──────。
「その
?、何処ってそんなの──。
「ダンジョンに決ま────」
俺の言葉が終わる前に、頬に鋭い痛みが走った。叩かれたのだ。それも思いっきり。輝夜さんに。彼女は右手を振り上げたまま、悲しげに顔を歪ませていた。
「何故、貴様はそんなにも愚かなのだ?。あれだけ酷い目に合ったのにまだ懲りないとは……。いや、そんなことは最早どうでもいい。私が聞きたいのは……どうしてその様な馬鹿な考えに至ったのか、ということだ」
輝夜さんの言っている意味がよくわからない。俺の考えてることなんか当たり前のことで別に特別なことではないはずだ。
俺の表情に察したのか彼女は深い溜息をつくと、呆れたような顔を浮かべた。
なんでそんな顔されないといけないんだよ。そう思いムッとした顔を向けると輝夜さんは少し困った様子を見せた後、口を開いた。
まるで子供に言い聞かせるようにゆっくりと言葉を紡ぐ。
「……小僧、お前は今絶対安静の身であろう。アミッドからも部屋を出るなと釘を刺されたはずだ。にも関わらず、何故外に、それもダンジョンへ行こうとしている?」
確かに言われた。けどそれは……。
言い訳を考えようとするが、上手く言葉が出てこない。それどころか何故ダンジョンへ向かおうとしていたのかすら思い出せない。
(……そもそもアミッドさんの説教が途中から記憶にない)
ダメだどれだけ考えても何も浮かんでこねぇ。
「小僧、よく聞け。今の貴様に出来ることなど何一つ無い。……それでも行くと言うのなら私は止めない。だが、もし、この先ダンジョンへ向かうというならば、誰でもいいファミリアの誰かを呼べ。一人で無茶なことだけはするな」
それだけ言うと、輝夜さんは俺の横を通り過ぎて行った。
俺は何も言えず、ただ彼女の背中を見つめるだけだった。
結局俺は何をしたいのだろうか。
輝夜さんと別れ病室へと戻ってきた。ベッドの上に座り、天井を眺めながら考える。
(…なんかモヤモヤすんなぁ……)
病室でボーっとしていると、部屋の扉がノックされる音が聞こえた。返事をすると、扉が開き入ってきたの────
「おや、意外と元気そうじゃないか、俺の名前はヘルメス、しがない神さ」
整った顔立ちに軽薄そうな笑みを浮かべる金髪の優男。
───この世界に来て初めて会い、会うのが怖いと避けていた神物だった
「いやぁ、まさかこんな形で会うことになろうとはね。……にしても驚いたよ、闇派閥に狙われた挙げ句、新種のモンスターに襲われ生き延びるなんて……すごいじゃないか」
目の前の神はヘラヘラと笑いながらそう言った。
「……で?なぜ神様がわざわざ他所の眷属である俺に会いに来たんですか?」
この神がどんな目的で来たかは知らないがあまり良い予感はしない。
「おいおい、そんな警戒しなくったっていいじゃないか。別に君を取って食うわけじゃない。ただちょっと話があってきただけさ」
嘘つけ、絶対ろくでもない用事だろ。この神の笑顔を見てると尚更そう思う。
だって俺の中での
「実はねぇ、ここに来たのは本当に偶然なんだ。ほら、俺ってば結構気紛れなところがあるから、偶々此処に立ち寄った時に君の話を耳にしてね。それで、こうして訪ねて来たって訳なんだ」
俺の話を聞いてやってきた?。一体どういうことだ?。一体何を考えているんだ?。
そんな疑問が顔に出ていたのか、ヘルメスは小さく笑うと口を開いた。
彼の口から放たれた言葉は俺にとって衝撃的な内容であった。
「ベル君にマジ感謝だくそったれ」
「……ッ」
え? なんで? と俺は思わず口に出しそうになるのを必死に抑えた。
「この言葉を偶然耳にしてねぇ……俺の勘が告げているんだ。確かめておくべきだと」
俺は、
「その様子だとどうやら俺の勘は当たっていたみたいだ。…で?何処でその情報を知ったんだい?」
その問いに対し、俺は口を開こうとしたが、言葉が出てこない────
───さて、一体どう答えるべきか。
神に嘘は通じねぇ、かと言ってここで下手に答えれば、敵対こそされないものの今後確実に監視が付く。
それは困る。この先コイツに目をつけられるのは面倒だし、何より俺を警戒して本来の役割を疎かにでもされようものなら最悪だ。
しかし、このまま黙っているのも得策じゃねぇ、何かしらのアクションは起こすべきな。
そう考えた俺はベットから立ち上がり、ゆっくりとした足取りで部屋にある窓際へと向かう。そして、そのままカーテンを開け、外の風景を見ながら──────── 俺はゆっくりと口を開いた。
その口から出たのは、ただ一言。
「はぁ?」
だった。
俺の返答が余程想定外だったのか、ヘルメスは目を見開き固まっていた。その表情からは驚きの感情しか読み取れない。やがて、我に返ったのか、彼は苦笑いを浮かべた。まるで、俺の言動に困ったかのように。だが、そんなこと知ったことではない。
「俺はアンタの敵ではねぇよ。だから、安心してくれ」
(今の所は…だがな…)
俺はそれだけ言い残し、二階の窓から外へと飛び降りた。
タクトが去り取り残されたヘルメスは頭を掻いた。その表情は困惑の色に染まり、眉間にシワを寄せている。
「敵ではない…か。……いやぁ参ったね、これは……」
ヘルメスは呟き、大きな溜息をつく。
「逃しても良かったのですか?ヘルメス様」
ヘルメスが振り返るとそこには、いつからいたのか、少女立っていた。
「ん?あぁ問題ないさ、今回の会話で彼が闇派閥側の人間でないことは分かった」
ヘルメスは先程のヘラヘラとした笑みではなく、真剣な眼差しで彼女を見つめる。
(ただ、気になるのは彼の雰囲気の変化、か。あの沈黙の間に何があった?)
ヘルメスは思考を巡らせる。
(それに敵ではない…ねぇ。言葉に偽りはなかったが、そのままの意味で受け取ると……"味方でもない"ということにもなる。……余計な事をすれば敵に回る可能性もある……か。なら今手を出すのは得策じゃない)
そこまで考えると、ヘルメスは再び深いため息をついた。
「やめだやめ…、下手に手を出せばこっちが噛まれかねない」
(一応彼もアストレアファミリアの眷属だ、何かあればアストレアかアリーゼちゃん辺りがなんとかするだろ)
ヘルメスはそう結論付け、病室を出た。
誤字報告ありがとうございます!。