寝て起きたら暗黒期!?ベルくんに会うまで死にたくねー!   作:お米大好き

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時間ができた……。


第三話、幕開け

 

 

 

 

[輝夜視点]

 

 

 

 

 

 

「……ふむ」

 

 

 

どうしたものか……。

 

 

 

 

 小僧の態度から見て冒険者を止めるつもりがない事は明白。

 

 

 

 

 ならば、こちらとしても対策を考えなければならない。

 

 

 

 

 まず、現状の問題としては小僧が無茶をしでかす可能性があるということだ。ダンジョンに潜る事に関しては特に問題はないだろう。

 

 

 

 

 階層を見誤らず、パーティを組み適した環境で挑んでいる限りは死ぬことはないはずだ。

 

 

 

 

しかしそれは相手が"モンスター"ならばの話。

 

 

 

 相手が同じ人間である場合、状況によっては危険に晒されることは容易に想像できる。 

 

 

 

 

 

「ならダンジョンへ潜らせるよりも先ずは対人戦の経験を積ませるべきか?」

 

 

 

 

 恐らくそれが一番効率が良い方法だろう。しかし、そうなると問題が一つ出てくる。相手だ。

 

 

 

 

(誰を相手にさせるか… )

 

 

 

 

 今の小僧を相手取れる者となるとファミリア内だと限られてくる。

 

 

 

 

 

(私はダメだ、このオラリオでは刀を使う者など殆どいない、相手にするなら剣、もしくはそれに近しい武器を扱う者が望ましい、それに少し面倒だ)

 

 

 

 

 そうなると選択肢は必然的に狭まってしまう。

 

 

 

 

「団長かリオン…」

 

 

 

 

 団長は…ダメだな、この忙しい時期、一個人の為に時間を使わせるほど私達には余裕がない。

 

 

 

 

 

 となれば残るはリオンのみとなる。

 

 

 

 

 実力的には申し分ないが……、正直なところ不安が残る。現存するLV.3の中では上澄、純粋な決闘ならまず負けはしないだろう、だがあやつは少々真面目すぎる。そのせいで視野が狭くなりがちだ。

 

 

 

 

 一方小僧は、少々臆病な所があるが視野は広い、戦闘では挑発や不意打ち、あるものは全部使って勝つ、といった感じだ。しかしそれがリオンとは相性が悪い。

 

 

 

 

 訓練ならまだしも実戦形式での模擬戦では、姑息な手段を嫌うリオンの性格が仇と出る恐れがある。

 

 

 

 

「しかしその点を除けば、小僧を鍛え上げるのに最適な人材でもある……か」

 

 

 

 

 結局のところ、答えは最初から決まっているのだ。私の為すべきことはただ一つ。

────────強くしてやろう。

 

 

 

 

 

  私が、そう決めた時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あれぇ…?俺さっきまで病室に…。なんで外に……」

 

 

 

 

 

 帰路を歩く私の視界に、呆然と立ち尽くす一人の馬鹿が映った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[タクト視点]

 

 

 

 

 

「あ…ありのまま今起こった事を整理するぜ…。俺は(ヘルメス)への返答を悩んでいた…そしていつのまにかここにいたんだ…な…何を言ってるのかわからねーし、頭がどうにかなりそうだ……催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなものじゃ断じてねぇ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わってい───バシッ

 

 

 

 

 

 

「いってぇ!」

 

 

 

 

 一人黄昏ていると突然後頭部に痛みが走った。振り返るとそこには。

 

 

 

 

 

「何をしている馬鹿者!早く来い恥ずかしい!!」

 

 

 

 

 

 輝夜さんが俺の後頭部を叩いたであろう右手で俺の腕を掴み、引っ張っていた。その表情は鬼気迫るもので、まるで俺が悪さをしたかのような錯覚に陥る。その後腕を引っ張られるまま、抵抗することなく輝夜さんの後に続いた。

 

 

 

 

 

 

[タクトの病室]

 

 

 

 

 

「……おい、タクト。これは一体どういう事だ……説明しろ」

 

 

 

 

 病室に戻ってくるなり仁王立ちで俺を睨みつける輝夜さん。その視線に冷や汗を流れる。

 

 

 

 

「い、いやぁ……その……俺にも何が何だか……」

 

 

 

 

 

 俺は輝夜さんからの質問に対し、曖昧な返事しか返せない。だって本当に分からないんだもの。

 

 

 

 

 ヘルメスがここに来たのは覚えてる。何処で知ったのかは知らんが俺の発言の真意を確かめに来ていたことも。

 

 

 

 でもそこから記憶が曖昧で、意識がはっきりしたのは外にいたときだ。寝落ちに近い感覚と言えばいいのだろうか?。そう輝夜さんに伝えると。

 

 

 

 

「ふざけている…訳ではなさそうだな…」

 

 

 

 

 彼女は顎に手を当て、考え込むように目を瞑った。

 

 

 

 

 ボソボソと「厄介な神に目をつけられた」とか、「一服盛られたか?」などと物騒な単語を呟いている。

 

 

 

 

 俺はそれを聞きながら、改めて自分の身体を確認。うん、特に異常はない。

 

 

 

 

 強いて言えば、少し頭が痛いくらいだ。

 

 

 

 

「……とりあえずは大丈夫そうです」

輝夜さんは未だ険しい顔つきだったが、ひとまずは納得してくれたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから数分程沈黙が続いた頃。輝夜さんが再び口を開いた。その口調は先程の険しさはなく、普段通りの落ち着いたものだった。

 

 

 

 しかし、それは同時に何かを決心したという表れでもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日は私もここに泊まる」

 

 

 

 

 

「…はい……はい?」

 

 

 

 

輝夜さんが放った一言に、思わず固まった。いや、意味が分からん。なんでいきなりそうなった?。

 

 

 

 

 困惑する俺をよそに、輝夜さんは話を続ける。

 

 

 

 曰く、俺がアミッドさんに時々体の様子がおかしいと伝えていた件を耳にしていたらしい。で、今回の事はヘルメスが関係しているのではなく、別の要因で起こっているのではないかと考えたとのこと。そこで、俺の身に何か異変がないか一緒にいれば分かるんじゃないかという結論に至ったらしい。

 

 

 

 

 決定打は以前俺が独房に居た時、見せた一面だとさ…?。

 

 

 

 

 

「えっとつまり、監視です?」

 

 

 

 

 

 輝夜さんはコクリと首を縦に振る。

 

 

 

 

 

 う~む……。確かに理に適っている…気がするが、なんか釈然としない。というか、仮にも副団長が部下1人の為に病室にお泊まりするなんてアリなのか?。

 

 

 

 

 いやまあ、別に良いんだけどさ。むしろ役得だけどさ。けどやっぱり少しモヤッとするよね。とはいえ、この場であれこれ言ったところで何も変わらないので諦めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─1時間後─

 

 

 

 

 

 輝夜さんは俺のベッドの横の椅子に座り、読書をしていた。時折、ページを捲る音が部屋に響く。

 

 

 

 

 

 

 俺はその間、特にやることもなくボーっとして時間を潰す。暫くすると、部屋の扉からノックが聞こえてきた。誰だろうと思い、輝夜さんに目配せ。

 

 

 

 

 輝夜さんは小さく首肯し、本を閉じると立ち上がった。

 

 

 

 

 

ガチャリと扉が開くと─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──2時間後──

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハシャーナさんが事情聴取に訪れ帰って行った。

 

 

 

 

 

 病室に入るなり輝夜さんと顔を合わせ「ひっ…」と言ったのは少し笑えた。

 

 

 

 

 

 食事は事情聴取ついでに見舞いとしてハシャーナさんが持ってきてくれたリンゴを食べた。

 

 

 

 

 

 ちなみに事件についてはスキルのせいで重要な部分は殆ど話せず、「お前は何を言っているんだ…?、遂に頭までおかしくなったか…?、もう手遅れだったか……」と言われた。

 

 

 

 

 解せん。

 

 

 

 

 

 腹いせに「報告書頑張ってくださいねぇ」と言ったら歯をキリキリさせながら出て行きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──1時間後──

 

 

 

 

 時計の針は九時を指し、外はすっかり暗くなっていた。窓の外を眺めると、街灯に照らされた道には冒険者だ溢れている。皆、迷宮帰りなのだろうか。

 

 

 

 

 

 俺がそんなことを考えながらボーっと外を見ていると、隣に座っていた輝夜さんが声をかけてきた。

 

 

 

 

 

「どうした?、何処か体調が悪いのか?」

 

 

 

 

 

 俺は慌てて否定する。実際、体調は特に悪くない。むしろ調子が良いくらいだ。そう伝えると、輝夜さんは安堵の表情を浮かべる。

 

 

 

 

 

 その表情を見て、俺は改めて輝夜さんが優しい女性なのだと感じた。

 

 

 

 

 

 

 普段から厳しい言動が目立つ輝夜さんだが、根っこの部分はとても優しく面倒見の良い性格をしている。だからこそ、団員からの信頼が厚いのだと思う。

 

 

 

 

 

 

 俺の視線に気づいたのか、輝夜さんは咳払いをし、「あまり女性の面をジロジロ見るものではないぞ」と注意されてしまった。俺は苦笑いしながら謝罪し、再び窓の外に目をやった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間があるとつい脳裏をよぎる。

 

 

 

 

 

 正直なところ、俺は今かなり幸せだ。憧れの魔法が使えて好きな作品の世界で自由に生きている。時々辛いことも悲しいこともあるが、それでも毎日充実していると思う。

 

 

 

 

 

 こんな生活がずっと続けばいいと思っている反面、いつかは終わりが来ることも理解しているつもりだ。

 

 

 

 

 

 だから、今の生活を精一杯楽しまないといけない。そして、その時が来たときに後悔しないように生きなければならない。

 

 

 

 

 

 

 そう。

 

 

 

 

 

 そうなんだ。

 

 

 

 

 

 そうわかっている。

 

 

 

 

 

 

 それでも俺は心の奥底では何度も思ってしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 今まで原作にはないイレギュラーだらけだった。もしかしたら俺が知る原作とは違う展開になって悲劇は起きないんじゃないだろうか?。

 

 

 

 

 

 俺がこのまま冒険者を続けて、誰も死なず、幸せな結末を迎えることだってあり得るんじゃないだろうか?。

 

 

 

 

 そしてそう思うと、胸が締め付けられるような感覚に陥る。

 

 

 

 

 

 結局俺は怖いんだろう。

 

 

 

 

 

 俺の知っている物語通りに物事が進むことが……俺の行動一つで取り返しがつかない事態になるのではないかと。そう考えてしまうと不安と罪悪感で押しつぶされそうになる…。

 

 

 

 

 

 

 厄災を除けば皆んなは死なない、なら"アーディさんだけ"を守ればいい。他は見捨てろ……それが正しい選択なんだ……。

 

 

 

 

 

 俺は物語の主人公ではない。英雄譚に出てくる様な勇者でもない。俺にできることなんて限られている。

 

 

 

 

 

 

 だから俺はいつものように蓋をする。考えないようにする。そうすれば少しは気が紛れるから。

 

 

 

 

 

「……ッ」

 

 

 

 

 

──気づけば、輝夜さんの顔が目の前にあった。

 

 

 

 

 いつの間に近づいてきたのだろう。彼女は俺を心配そうな顔で見ていた。

 

 

 

 

 彼女の瞳に映る俺の姿は、酷く情けない顔をしていた……。

 

 

 

 

 俺は何も言えず、ただ黙って俯いていた。輝夜さんも何も言わずに俺を見ているようだ。恐らく彼女から見たら、まるで迷子になった子供のような顔をしているのだろ。

 

 

 

 

 

 俺自身、自分がどんな感情を抱いているのかわからない。いや、きっとこの気持ちを言葉にするのは難しいのだろう。

 

 

 

 

 それは俺の中で明確な形を持たず、もやがかかったようにハッキリとしないからだ。しかし、例え形にならなかったとしても、俺の中にある確かな思いがある。

 

 

 

 

 

 俺は輝夜さんに何かを言って欲しかった何かしらの言葉をかけて欲しい。

 

 

 

 

 

──でも、輝夜さんは俺に何も言わなかった。

 

 

 

 

 沈黙が続く中、輝夜さんは椅子から立ち上がると部屋から出て行こうとした。

 

 

 

 

──行かないで……!。

 

 

 

 

 俺は咄嵯に立ち上がり、輝夜さんの手を掴んでしまった。輝夜さんは驚いた様子で振り返り、俺を見る。

 

 

 

 

 俺は何と言えば良いのかわからず、そのまま固まる。

 

 

 

 

 

──どうして俺は引き留めた?。

 

 

 

 

 自分でもよく分からない。

 

 

 

 

──何故俺は輝夜さんに何かをして欲しいと思った?。

 

 

 

 

 自分の事なのに、全く分からなかった。

 

 

 

 

──輝夜さんは俺に何をしてくれる?。

 

 

 

 

 期待なんてしていないはず……それなのに、俺は輝夜さんにすがるような目で見つめていた。輝夜さんはそんな俺を見て小さくため息をつくと

 

 

 

 

 

───俺の頭を撫でながら優しく微笑みかけてくれた。

 

 

 

 

 

───違う。俺は、そんなことをして欲しかったわけじゃない。

 

 

 

 

 

────俺は輝夜さんに慰めて欲しくなんか無い。

 

 

 

 

 

 

 

──俺は、俺は……。

 

 

 

 

 

──怒って欲しい。叱って欲しい。罵倒してほしい。俺は輝夜さんに優しくされる資格はない。

 

 

 

 

 

──俺は……

 

 

 

 

 

「心配するな、少し花を摘みに行ってくるだけだ、また戻ってくる」

 

 

 

 

 

 俺の異変を察したのか輝夜さんは優しく声をかけると、部屋の外に出ていった。

 

 

 

 

 

 

 扉が閉まり、部屋に静寂が訪れる。先ほどまで渦巻いていた黒いモヤが消え、心が軽くなっていくのを感じた。

 

 

 

 

 

 どうして俺はあんなにも苦しかったのだろうか。俺は窓の外を眺めながら、考える。

 

 

 

 

 

 

 ……答えは出ない。叱られたいなんて普段の俺からは考えられない思考だ。ましてや、罵倒してほしいなど、どうかしている。

 

 

 

 

 

 輝夜さんには悪い事をしちゃったなぁ。後で謝ろう……。

 

 

 

 

 

 そんなことを考えながら、俺は窓の外を見続ける。暫くすると、扉がコンコンとノックされた。輝夜さんかな?と思ったが輝夜さんならノックはしないだろうと、返事を返す。

 

 

 

 

 

 入ってきたのは。

 

 

 

 

 

 

「こんな時間にごめん、タクト」

 

 

 

 シオンだった。

 

 

 

 

 

 

 

 病室にやってきたシオンは開口一番に謝罪を口にした。俺は気にするなと返答を返したが、どうも様子がおかしい。いつもの彼とは違い、自信無さげで、何処か申し訳なさそうな表情を浮かべている。そんなシオンに違和感を覚えながらも、俺はシオンの話を聞くことにした。

 

 

 

 

 

「それで、こんな時間にどうしたんだ?」

 

 

 

 

 

 俺が質問を投げかけると、シオンはゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

 

「タクトはさ…もしも、もしもだよ……大切な人を助けるために他の人を切り捨てなきゃいけない状況になったら。……その人を助ける為に、自分は見殺しにしないといけない状況になったら……タクトはどうする?」

 

 

 

 

 

 俺の問いかけに、シオンは震える声で答える。俺は彼の問いにすぐには答えられなかった。

 

 

 

 

 

 

 俺が黙っている間も、(シオン)は辛そうな顔でこちらを見ている。俺は(シオン)がなぜそのようなことを聞いてきたのか理解出来なかった。だが、真剣に聞いている友に適当なことは言いたくなかったので、考えをまとめると正直な気持ちを伝えた。

 

 

 

 

 

「俺は、もし自分を犠牲にしなければならない時がきたら、迷うと思う。でももし大切な人が助けを求めて来た時は、迷いながらでも助けるだろうな…」

 

 

 

 

 

 それが、俺の本心だった。俺の回答を聞いたシオンは、安心と不安が入り混じったような複雑な表情をしていた。そして、小さく笑みをこぼすと

 

 

 

 

 

───ありがとう、流石は僕の相棒だ。

 

 

 

 

 

 そう呟いた。そして、彼は部屋を出ていった。俺はシオンが出て行ったあと、再びベッドに横になると天井を見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

なんだったんだ?。

 

 

 

 

 

 

 俺はシオンの言葉の真意を測りかねていたが、やがて眠気に襲われ眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 もしもこの時、俺がシオンの話をもっと深く追求していたら……未来は大きく変わっていたのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──同時刻──

 

 

 

 

「さぁそろそろ始めようかオラリオ」

 

 

 

 1人柱の神が告げる、物語の始まりを、それは戦争(悲劇)の幕開けである。

 

 

 

 

 

別れ]報酬、全ステータス+15






 もしも輝夜さんが病室に残らなければタクトくんがダンジョンへ向い○ぬ可能性…が…。
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