寝て起きたら暗黒期!?ベルくんに会うまで死にたくねー!   作:お米大好き

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《》←タクト君にだけ聞こえる声


 ダンまち新作ゲーまであと1ヶ月。ああいった感じのゲーム得意じゃないけどダンまちの世界を自由に動けるのはすごい楽しみ。


第五話、始まり。

 

 

 

 

 

「ザル…ド…?」

 

 

 

 

 

 タクトが囁くと、男はフードを脱ぎ、素顔を現した。

 

 

 

 

 

「ほぅ、俺の名を知り、見破るとは面白い。……小僧、貴様何者だ」

 

 

 

 

 

 男は言葉を投げかけると、鋭い眼光でタクトを睨みつけた。その眼差しに射抜かれたタクトは、動くこともできなかった。

 

 

 

 

 

(ッ…迂闊だった…!)

 

 

 

 

 現状闇派閥の上層部しか知り得ないであろう情報を知っていると伝えるような自らの軽率な行動を咎めつつ、タクトは歯を食いしばった。

 

 

 

 

 

 そして、これからどうするべきかを考える。だが、そんなタクトの思惑など知ってか知らずか、目の前の男──ザルドはその静寂に飽きたのか。口を開いた。

 

 

 

 

 

「答えはしないか。ならばそれでいい、お前を俺の餌として認識する事にしよう」

 

 

 

 

 

 

 挑発的な微笑を浮かべながら、ザルドはゆっくりと一歩ずつ距離を縮めていく。その一方で、タクトは全く動けずに立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 足が固まり、身体が震え、脳が警鐘を鳴らし続ける。目の前に居る存在から逃げ出せ、と本能が告げている。

 

 

 

 

 

 それでも動けない。

 

 

 

 

───逃げ出せば始末される。

 

 

 

 

 

 その現実を痛感するほどに、タクトの前に立つ男、ザルドという存在は絶大な力を秘めていた。

 

 

 

 

 

 

《後へ跳べ》

 

 

 

 

 と声が、タクトの脳内に響き渡った。

 

 

 

 

 

 その声に従い、恐怖に取り憑かれた身体を無理矢理に動かし、後方へと飛び退く。瞬間、先ほどまで立っていた場所に衝撃が走る。まるで巨大な鉄球が叩きつけられたかのようなクレーターがそこに広がっていた。

 

 

 

 

 それを目の当たりにして、戦慄が全身を駆け巡った。

 

 

 

 

 

「……ほぉ。今のを躱すか」

 

 

 

 ザルドは感心したように呟くと、再び構えを取る。

 

 

 

 

「なら次だ。今度はどうする」

 

 

 その言葉と同時に、ザルドの姿が消える。

 

 

 

(消えっ────)

 

 

《屈め》

 

 

 

 

 再び、声が頭の中で響いた。タクトは思考よりも先に身体を動かし、頭を下げる。頭上を何かが風を切るように通り抜ける感覚を覚え。顔を上げると目の前には拳を振り抜いた状態のザルドが立っていた。

 

 

 

 

「っ……千鳥流し!」

 

 

 

 タクトを中心に放たれた電撃が、ザルドに向かって襲いかかる。しかし、ザルドは何事もなかったかのように腕を振り抜き、雷を無慈悲に打ち消してしまった。

 

 

 

 

「駆け出しにしてはなかなかの威力だ。及第点を与えてやろう」

 

 

 

 

「なっ!?電気を──」

 

 

 

 

《スキルを使え》

 

 

 

 

 

 またもや脳内に響く声に従い、スキルを発動しようとしたが。

 

 

 

「正義の使───ぐっ!?」

 

 

 

 

 発動を試みた瞬間。凄まじい衝撃がタクトを襲った。地面をバウンドしながら転がるも、何とか受け身を取って立ち上がる。すると、先程自分が立っていた位置に蹴りを放った姿勢のザルドが立っていた。

 

 

 

 

 

「加減したとは言えまだ動けるか、面白い。……さぁ、来い小僧、お前に冒険者としての素質があるか見極めてやる」

 

 

 

 

 そう告げると、今度はゆっくりとこちらに歩いてくる。対するタクトは、既に満身創痍だった。全身が軋み、口からは血が滴り落ちる。息も絶え絶えで呼吸すらままならない状態だったが、気力だけでなんとか意識を保っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ……ははっ」

 

 

 

 

 状況は最悪。にも関わらず不意に笑いが込み上げてきた。もはや自身でも何を笑っているのか分からない程に錯乱している自覚はあったが、この時タクトは確かに希望を見つけた。

 

 

 

 

 奇妙に笑うタクトを見て、訝しげにザルドは問う。

 

 

 

「どうした、気が触れたか?」

 

 

 

 

 その言葉を聞き、タクトは確信した。この男は本気で自分を殺しには来ていない、と。いや、殺す気が無い訳ではないだろう、現に本気であれば自分はとっくに死んでいる。つまり、試されているのだ。

 

 

 

 

 

──黒竜を討つに相応しい器かどうかを。

 

 

 

 

 だから敢えて手加減をして俺の限界を測っているのだろう、この絶望的な状況を覆す事が出来るか否かを。

 

 

 

 

「敵の心配なんて随分と余裕ですね……」

 

 

 

 

 皮肉交じりにそう言い放つと、立ち上がり刀を構えた。それを見てザルドは愉快そうな笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 

 

「先輩なんだから後輩の魔法くらいビビらずに受け止めてくれるよなぁッッ!!」

 

 

 

 

 威勢よく啖呵を切り、身に紋様を浮かべ雷を纏うと同時。ザルドへと走り出した。

 

 

 

 

「くくくっ、よく吠えた!いいぞ小僧、お前の底を見せてみろ!」

 

 

 

 

 ザルドもまた、タクト挑発にのり迎撃態勢をとる。その目は獰猛な獣の如く爛々と輝き、口元は喜悦に満ちていた。

 

 

 

 両者の距離が急速に縮まる。交差する寸前、両者が同時に動いた。

 

 

 

 

 

───ガキンッ! 甲高い金属音と共に、火花が散る。拳と刀、互いの一撃がぶつかり合い拮抗する中、先に仕掛けたのはタクトだった。

 

 

 

 

「【滲み出す混濁の紋章、不遜なる狂気の器】」

 

 

 

 

 詠唱を唱え始めると、ザルドの眉がピクリと動く。

 

 

 

 

 瞬間、タクトは力を抜き、後ろに跳んだ。そして、入れ替わるようにして数十本の針の如き稲妻がザルドを襲う。

 

 

 

 

「温いッ!」

 

 

 

 

 しかし、腕の一振りでかき消されてしまう。だが、それは想定内だと言わんばかりにタクトはすぐさま次の一手を打つ。

 

 

 

 

 それは回避でも防御でもなく攻撃。身を低くし、地を這うように駆けながら一気に間合いを詰めると、刀を突き出す。

 

 

 

 

「【湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き眠りを妨げる】」

 

 

 

 

「ふっ、攻撃が単調だぞ、小僧ッ!」

 

 

 

 

 だが、それもあっさりと防がれ、ザルドは鼻で笑うとタクトの腹部目掛けて拳を放つ。

 

 

 

 

(……ッ)

 

 

 

 

《一歩下がれ》

 

 

 

 

 ここに来て再びタクトの脳内に声が響き、それに従って後方に下がると、今までいた場所にザルドの拳がめり込んでいた。

 

 

 

 

「ッ!。…【爬行(はこう)する鉄の王女、絶えず自壊する泥の人形】」

 

 

 

 

 その隙に、再び魔法の詠唱に入る。それを見たザルドは、攻撃をせずにタクトの様子を伺っていた。その佇まいからは、一切の油断は感じられない。

 

 

 

「褒めてやる。その歳でこうも完璧な並行詠唱を使えるとは……才能か。それとも誰かから学んだのか?いずれにせよ素晴らしい」

 

 

 

 

 その言葉に優しさなど微塵もなく。ただあるのは戦士としての純粋な賛辞のみだった。

 

 

 

「受けてやる、全力で撃ってこい」

 

 

 

 その言葉に、一瞬躊躇するが、意を決して魔法を唱える。

 

 

 

 

「【結合せよ。反発せよ。地に満ち、己の無力を知れ!!】…ここで決める!!」

 

 

 

 

 

 

 その言葉と共に、タクトとザルドの間に、ボンッ、と何かが投げ込まれ。小さな爆発と共に周囲を煙で覆い尽くした。

 

 

 

 

 

「なるほど、目くらましか。良いタイミングだ」

 

 

 

 

 ザルドは感心した様子で呟やくと、辺りを見渡した。

 

 

 

 

(この程度の煙、すぐに晴らしてやっても良いが……ここは一つ乗ってやるとしよう)

 

 

 

 

 そして、ザルドは構えを取ると、静かに目を瞑った。

 

 

 

 

「LV.7なら受けられるよなぁッ!!【破道の九十】!!」

 

 

 

 遠回しに避けるなと告げ。タクトはザルドの横を駆け抜ける。

 

 

 

 

「来い!!小僧ォォォォオ!!!」

 

 

 

 

 それに答えるかのように、声を張り上げるザルドを尻目に、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タクトは走り去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 やがて煙が晴れる頃、そこに1人佇むザルドは口元に笑みが浮かべていた。

 

 

 

 

 

「くっははははは、あの状況でこの俺を欺くとは。面白い奴だ。暇つぶしのつもりだったが存外楽しめたな」

 

 

 

 

 

 そう呟き、タクトが逃げていった方向を眺める。既に気配は消え、姿も見えないが、ザルドは確信していた。

 

 

 

 

──あの男はいずれまた自分の前に立ち塞がるだろう、と。

 

 

 

 

 

 

「さて、お前は俺達が与える試練を乗り越えられるか?──後輩」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、タクトは既に限界を迎えていた。

 

 

 

 走る気力すら失い、フラフラと街の中を彷徨う。ふと、足に力が入らなくなり、その場に崩れ落ちた。

 

 

 

(っ、ここまでか……でも、何とか、逃げて、これたな……)

 

 

 

 もはや指一本動かす事も出来ず、意識が遠のいていく感覚に襲われる。

 

 

 

 

「しっかりしろ、アタシ1人じゃお前を運べねぇんだからよ」

 

 

 

 

 そう言い。バシバシ、と背を叩かれてなんとか意識を繋ぎ止める。そして、顔だけを上げると。呆れた様子のライラがこちらを見つめていた。

 

 

 

 

「一応俺病人なんですけど……」

 

 

 

 力なく呟くと、フン、と鼻を鳴らして答えてくる。

 

 

「それはアタシも一緒だっての。あの状況で1人逃げなかった事を褒めて欲しいくらいだ」

 

 

 

 

 

 ライラはそう言いながら、タクトの腕を掴み立ち上がらせると、そのまま体を支え歩き始めた。

 

 

 

 

 

「……いや、そもそもライラがあの路地に俺を連れ込んだかr「テメェが問題を起こしたから一目のつかない所に連れて行ったんだろうが」……本当にそれだけかねぇ」

 

 

 

 

 

 疑いの眼差しを向けるも、当の本人はどこ吹く風といった様子だった。

 

 

 

 

 そうして2人は人っ気の多い通りへと戻ってきたのだが不意に背後から声をかけられ振り返ると、そこには見覚えのある顔があった。

 

 

 

 

 

「タクト!ライラ!どうして2人とも病院を抜け出し……え、ちょっと、大丈夫!?」

 

 

 

 

 駆け寄ってきたアリーゼは、タクトの状態を見て慌てたように駆け寄り、体をペタペタと触る。それを、何故か若干不機嫌な顔で見ているライラだったが、そんな事などお構いなしにアリーゼは心配そうにしている。

 

 

 

 

「……一体何が合ったの?」

 

 

 

 

「あー、まあ、色々と…な」

 

 

 

 

 

 説明が面倒になったタクトは、適当にはぐらかすと、これ以上聞くなという意味合いを込めて視線を逸らした。しかし、当然の如くそれが通じる筈もなく、詰め寄られながら問い質される事になったのだった。

 

 

 

 

「それで?何があったの」

 

 

 

 

 腕を組み、仁王立ちでこちらを見るアリーゼに対し、タクトは目を逸らす。すると、横から溜息が聞こえた後、ライラが一部を除いて事情を説明し、最終的にザルドの事は実際に交戦した俺が話した。一部スキルのせいで話せなかったが。

 

 

 

 

 

 

「つまり、タクトが暴走、ライラが誘導、LV.5以上の闇派閥が乱入して、その場を逃走したって事でいいのね?」

 

 

 

 

 その言葉に頷くと、はぁ、と再度溜息を吐くアリーゼ。

 

 

 

 

「あなた達よく生きてたわね……死んでてもおかしく無い状況じゃないの」

 

 

 

 

 

「いや、ほんと死ぬかと思った」

 

 

 

 あの時、一歩間違えれば死んでいた可能性が高かったのだ。その恐怖を思い出しながら身震いするタクトに対し、呆れたように言うアリーゼ。

 

 

 

 

「そりゃそうでしょう。普通だったら今頃墓場で眠りこけてるわ」

 

 

 

 

 そこで言葉を切り、真剣な表情になると、言葉を続ける。

 

 

 

 

「…私の勘がそれ以外にも何か隠してるんじゃないかって訴えかけてるんだけど…気のせいかしら?」

 

 

 

 

 その問いに、思わずビクッと肩を震わせると、タクトは慌てて誤魔化す様に笑って見せた。

 

 

 

「あはは、何のことかな〜?」

 

 

 

「おい馬鹿、やめとけ」

 

 

 

 

 小声で囁くライラの言葉を無視し、笑顔で2人を見つめ続けるアリーゼだったが、やがて諦めたのか、やれやれ、と首を横に振った。

 

 

 

「いいわ、今はもう聞かないであげる。それより、今はタクトの怪我の方が心配だし、そろそろ……っと来たわね!」

 

 

 

「そろそろ…?」

 

 

 

 

 言葉と共に前方を見るよう促され、そちらに視線をやると、こちらに駆けてくる人物が目に入る。

 

 

 

「アリーゼ…突然走り出してどう…し…たの…で…ライラにユウギさん?。その傷は。何があったのですか?」

 

 

 

 

 

 少し息切れ気味な状態で声をかけてきたのは、リューさんだった。そして、俺とライラを交互に見やると、再び問いかけてきた。

 

 

 

 

「何があったのか説明して頂けますか?」

 

 

 

 

 

 そう言うなり、俺たちに詰め寄ってくるリューさんに気圧されつつ、これまでの経緯を話す事にした。

 

 

 

 

 1人で行動していた事、路地裏で絡まれた事、相手が予想よりも強くて死にかけた事。アリーゼに話した時と同様。ザルドの特徴のみを説明すると、話を聞き終えたリューさんは、少し険しい表情になった。

 

 

 

 

 

「顔に複数の傷…。全身を覆う黒い鎧。…その様な風貌をした人物に心当たりがありません」

 

 

 

 

 

 俺の傷を治し終わりそう答えた後、考え込むように俯くリューさんだったが、すぐに顔を上げると言った。

 

 

 

 

「一度ギルドに報告した方がいいかもしれませんね。もし闇派閥の一員だとしたら放って置くわけには行きません」

 

 

 

 

 リューさんのその言葉に反対する者はおらず、俺たちは一路、ギルドを目指す事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────。

 

 

 

 

 タクト達がギルドを目指して動き出した頃、とある場所の地下で祭司服を着た初老の男と黒いローブに身を包んだ怪しげな男神が、ある一点を見つめながら話をしていた。

 

 

 

 

 

「本当によろしいので?これ程の者。少し勿体無いのでは?」

 

 

 

 老人がそう問うと、神は口元を歪め、笑いながら答える。

 

 

 

──仕方ないよ。親としては悪いとは思うし勿体無いと思うけど、俺個神としては必要な事だからね。

 

 

 

 

 

「そうですか、貴方様がそういうのであれば私は何も言いますまい」

 

 

 

 

 ──そう言ってくれると助かるよ。ところで君の予想だとどれくらい強化されるんだい?。

 

 

 

 

 神が問うと、老人は暫く考えた後に口を開いた。

 

 

 

 

「そうですね、素材の質から見て最低でも2つは上がっていると考えて良いでしょう。LV.2で我々の戦士を1人倒す程ですから」

 

 

 

 

 

──それは楽しみだ。少しでも強く、オラリオを混乱させる為の駒に成長して欲しい物だね。

 

 

 

 

 そこまで言うと、満足したように頷いた後、その場から立ち去ろうとする神に対し老人は再度問いかけた。

 

 

 

 

「最後にお聞きしたいのですが。貴方様がこの少年に求める役目とは一体何なのでしょうか?」

 

 

 

 

──役目?ないよそんなもの。さっきも言った通り、オラリオを混乱させる為の駒の一つだよ。だからね、バスラム。君はその子に"冒険者を殺せ"そう命じてやればいい。

 

 

 

 

 まるで自分の子供に向けるような、優しげな表情でそう言うと最後に、あ、そうだ、と思い出したように付け加える。

 

 

 

 

──ついでにこう命令してくれないか?。

 

 

 

 

「タクトを殺せ」

 

 

 

 

──ってね。その子の親友らしいから。きっとスキルがパートナーの下に導いてくれるだろうさ。

 

 

 

 

 

 それを聞いた老人は、畏まりました、と恭しく礼をすると、男神は今度こそその場を後にしたのだった。 

 

 

 

 

 

 

───────────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、ギルドへ向かい大通りに出たタクトはと言うと────。

 

 

 

 

 

「あ、アストレアファミリアだぁ!」

 

 

 

 

「そうよ、正義の味方、アストレアファミリアよ!。貴方は確かリアちゃんね!」

 

 

 

 

 

「覚えててくれたんだぁ!」

 

 

 

 嬉しそうな表情を浮かべ、アリーゼに飛びつく少女改め、リア。

 

 

 

 

 

(流石の知名度だな……歩く度に話しかけられてる。本当ならもうギルドに着いててもいい頃なのに)

 

 

 

 

 そんな事を考えながら歩いていると、不意に背後から声がかかった。

 

 

 

 

「ユウギさん、体の調子はどうですか?」

 

 

 

 

「ん?リューさん。もう大丈夫そうです。痛みどころか何故か少しずつ疲れも消えていってるような気がしますし」

 

 

 

 

「ふふ、そうですか。なら良かったです」

 

 

 

 

 そう言い、嬉しそうに笑うリューさん。それを見て、自然と頬が緩むのを感じる。しかし、不意に背後から視線を感じ、振り向くと、何故かライラ…の後ろにいるアリーゼが少し頬を膨らませてこちらを見ていた。

 

 

 

 

(え、何その顔……。何でそんな不満そうな顔してんの……?何か怒らせる事したっけ……)

 

 

 

 

 

 不思議に思い、首を傾げていると、隣を歩くライラが呆れた様に溜息を吐いて口を開く。

 

 

 

 

「タクト…お前、本当に鈍いな」

 

 

 

 

「え?何が?」

 

 

 

 

 全く身に覚えのない言葉に更に首を傾げると、ライラはもう一度溜息を吐き、アリーゼを指さす。

 

 

 

 

 

「あれは、ヤキモチだ」

 

 

 

 

「誰に?」

 

 

 

 

「お前に」

 

 

 

 

「俺が?」

 

 

 

 

「……お前さてはわざとか?」

 

 

 

「はい」

 

 

 

 

「……はぁ……なんでアタシはこんな奴を

 

 

 

 

 即答する俺に呆れたように肩を竦めるライラだったが、それ以上何かを言う事はなかった。

 

 

 

 

 

 それにしても、ヤキモチか……。

 

 

 

 

(うーん、勘違いだったら恥ずかしいしなぁ……とりあえず答えは保留しとこう)

 

 

 

 

 心の中でそう結論付け、再び歩き出すのだが、そんなタクトの足を誰かが掴んだ。思わず後ろに倒れそうになるところを踏ん張り振り返ると、そこには先程の少女がこちらを見上げていた。

 

 

 

 

 

「お兄ちゃん!」

 

 

 

「えっと……ど、どうしたのかな?」

 

 

 

 

 突然話しかけてきた少女に驚きながらも、何とか笑顔で問いかけると、少女は元気よく言い放った。

 

 

 

 

「お兄ちゃんもアストレアファミリアなの?」

 

 

 

 

「そうだけど……よく気づいたね」

 

 

 

 肯定しながらそう答えると、その途端、少女は目を輝かせながら詰め寄ってくる。その表情からは、純粋な尊敬の念が見て取れた。

 

 

 

「えへへ!。いつも街のみんなを守ってくれてありがとっ!」

 

 

 

 

 満面の笑みで感謝の言葉を口にすると、そのまま小走りで駆けていく少女。その後ろ姿を見送り、俺も思わず笑顔になる。そして、そのすぐ後、俺の隣に並んだリューさんが、微笑みながら言った。

 

 

 

「よかったですね」

 

 

 

 

「あはは……俺まだまともに活動した事ないんですけどね」

 

 

 

 

「これから頑張れば良いんです」

 

 

 

 優しく微笑みかけてくるリューさんに、ありがとうございます、とお礼を言った

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ〜〜〜〜れ〜〜〜〜っ!!」

 

 

 

 

 

 俺達の視界の奥から情けない男神の声が聞こえてきたのは。

 

 

 

 

「ははっ!いただきだぁ!」

 

 

 

 

「俺の全財産の444ヴァリスがぁぁぁ!!誰か取り返してぇぇぇんっ!!」

 

 

 

 

 

 頭の中が真っ白に染まった。先程までの穏やかな気持ちは何処かへ吹き飛び、一瞬にして恐怖と混乱が心を支配する。だが、それとは別に頭の片隅では冷静な自分もいて、それが逆に不気味さを際立たせていた。

 

 

 

 

「……始まった」

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

──始まってしまった。

 

 

 

 

 

「神からサイフをブンどるなんで世も末ね!!というか所持金が微妙にしょぼいわ!神なのに!!」

 

 

 

 

 

 これが、自分の日常が崩れ去る音なのだと、そう理解した。

 

 

 

 

 

 そこからはあっという間だった。リューさんがスリをした男を捕まえ。そこにアーディさんが合流して男を逃した。

 

 

 

 

 そんな中ずっと、俺はその場から動く事ができなかった。

 

 

 

 

 

(どうする…俺はこの先どう動けばいい…?)

 

 

 

 

 

 

 

 混乱して働かない思考。そんな時。

 

 

 

 

《お前はどうしたい?》

 

 

 

 

 

 頭の中で自分の声が聞こえた。それはひどく無機質で、何の感情も感じられない声だった。

 

 

 

 

《お前が今、何をしたいのかはわかっている。だからこそ問う。お前の望みはなんだ?》

 

 

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、全てがクリアになった気がした。それと同時に自分のするべき事もわかった。

 

 

 

 

──死なせたくない。

 

 

 

 

《そうか、なら動け。考える事をやめるな》

 

 

 

 

 そう言って、声は聞こえなくなった。

 

 

 

 

そして次に聞こえてきたのは。

 

 

 

 

 

「…なるほど、な〜るほど。まさに『正義の使者』だったわけだ。いいね、実にいい。俺達のこの出会いは」

 

 

 

 

 

「……?何を言っているのですか?」

 

 

 

(……っ!?結構話し進んでるな…)

 

 

 

 

 

 タクトが声のする方へ視線を移すと、そこにいたのは観覚えのある男神がリュー達、主にリューの方を見て笑っていた。

 

 

 

 

 

 

「なに、君達に助けてもらって良かったって話さ。繰り返すけど、ああ、見事だ。本当にお見事」

 

 

 

 

 

 

神の語りは続く。

 

 

 

 

 

「何が見事って、みんなが『正義』を探してるってこと。単なる勧善懲悪じゃない落としどころ。感動しちゃったよ。…特にエルフの君。面白いなぁ」

 

 

 

 

 神は笑いながらリューを指さした。対するリューは一瞬目を見開き、少し表情を強張らせた。

 

 

 

 

「私が……?」

 

 

 

 

「こんな時代だからこそ君がどう思い、どう染まるのか。そしてどんな『答え』を出すのか。……ああ、興味ありまくりだよぉ」

 

 

 

 

 エレンと名乗る神は心底楽しそうにリューを見遣る。しかし、不意に視線をずらすと、今度はタクトの方を見据え、こう告げた。

 

 

 

「そこの黒髪の子、君もね」

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 タクトは思わず声を漏らした。

 

 

 

 

(……どうして俺を…?)

 

 

 

 動揺するタクトを置いて、神は尚も語る。

 

 

 

「君の事は知り合いから聞いたんだぁ。名前は確か……タクト君だっけ?」

 

 

 

 

(っ!?……ザルド経由か…?)

 

 

 

 

 その言葉を聞き、心臓が跳ね上がるような錯覚に襲われた。しかしそれも一瞬の事、すぐに冷静さを取り戻すと、警戒を強めて返答した。

 

 

 

「俺に何か用ですか?」

 

 

 

「んーん、今は特に何もぉ?でもそのうちわかると思うよぉ?」

 

 

 

「……どういう事です?」

 

 

 

 

「さぁてね。まあ、一つ言えるとすれば君のお陰で予定を早める事にしたよ」

 

 

 

 

「……予定を、早める?……」

 

 

 

 タクトの問いに、神は嬉しそうに答えた。

 

 

 

 

「そうそう、本当は数日後のつもりなんだけどねぇ。今回は特別サービスって事で、早めにやっちゃおうかなって。いやー楽しみ楽しみ!ワクワクしちゃうなぁ〜」

 

 

 

 終始テンションが高い神だったが、ふと何かを思い出したように声を上げた。

 

 

 

 

「あっ!そうだそうだ!すっかり忘れてた!」

 

 

 

 そう言って、何かを思いついたようにポンっと手を叩くと、こちらに歩み寄りながら話しかけてくる。

 

 

 

 

「ねえ、タクトくん。君、僕と来る気はないかい?」

 

 

 

 

 突然の誘いに思わず眉をひそめるが、同時に警戒心を高める。神である以上、何をしてくるかわからないからだ。

 

 

 

 

 そんなタクトの様子を知ってか知らずか、神は相変わらず軽い調子で続ける。

 

 

 

 

「君はこっち側の人間だと僕は思うんだよねぇ」

 

 

 

 

 そう言いながら近づいてくる神に対し、いつでも動けるよう構えていると、やがてすぐ近くまで来た神は耳元で囁いた。

 

 

 

 

「だって、ほら──」

 

 

 

 

──俺と同じ目をしているからね。

 

 

 

 

 

 その瞬間、全身の毛が逆立つような感覚を覚えた。目の前にいる神の目は、まるで深淵のように暗く、深く、底が見えない闇のようだった。それは、見ているだけで呑み込まれてしまいそうな程深いもので、本能が警鐘を鳴らすのを感じた。

 

 

 

 

 

「「ダメ(だ)!!」」

 

 

「──っ!?」

突如聞こえた声にハッとして振り返ると、そこにはとアリーゼ、ライラ、アーディが立っていた。

 

 

 

「ダメだよ!改宗(コンバート)するならガネーシャファミリアだよね!タクト君!!」

 

 

 

 

「「それもダメ(に決まってんだろ)よ」」

 

 

 

 

 三人の言葉を聞いた瞬間、神の目に光が戻る。すると、神はまるで最初からそうしていたかのように、微笑みながら話を続けた。

 

 

 

 

「あはは、冗談だよ。ごめんねぇ、変な空気にしちゃって」

 

 

 

 

「……気にしてません」

 

 

 

 

「……と。もうこんな時間か。もっと君たちと騒ぎたかったけどそろそろ行かせてもらうよ。急ぎの用事もできたしね」

 

 

 

 

「そうですか、ではお気をつけて」

 

 

 

「うん、それじゃあね。また会おう」

 

 

 

 そう言って去っていく神に、タクトは最後まで不安を拭えないまま見送るのだった。

 

 

 

 

「ユウギさん、大丈夫ですか?」

 

 

 

 

 

 心配そうに聞いてくるリューさん対して、俺は静かに首を振った。

 

 

 

 

 

「…大丈夫です」

 

 

 

 

 嘘をついた。本当は大丈夫なわけがない。正直今すぐオラリオから離れたい気分だった。

 

 

 

 

(最悪だ……よりによってエレボスに目をつけられるなんて……)

 

 

 

 頭を抱えたくなる衝動に駆られるが、なんとか我慢する。

 

 

 

(いや、落ち着け……少し時間はある。その間に対策を考えればいいんだ)

 

 

 

 

 

 そうして気持ちを切り替えようとした時だった。

 

 

 

 

 

「アストレアファミリアの皆さぁぁん!やっと見つけたっす!!フィンさ…勇者(ブレイバー)からの指令です!!」

 

 

 

 

 

 

 

 それは時間は与えないと言う知らせであった。








結構描き直した……。元はタクト君にエレボス襲わせて「それは悪手だ」って感じで仲間割れルートだった。




▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲





ここから先一部残ってた消し忘れのボツルート。





「タクト!ライラ!2人ともどうして病院を抜け出し……ってその怪我どうしたの!?」




「……最悪だ」



 警邏の途中だったのだろうか、タクトの怪我を見て驚くアリーゼとその背後に続くアーディとリューの姿が見える。2人もタクトの姿を見るや血相を変えて駆け寄ってきた。




「何があったのですか?」



 心配そうに聞いてくるリューに対し、バツが悪そうに顔を逸らすタクトの代わりにライラが答えた。…路地での一部を除き。





「って、わけだ」



 それを聞いたリューがタクトへと詰め寄り、胸倉を掴んで顔を寄せる。


その瞳には怒りの色が見て取れた。しかし、今のタクトに反抗する力はなく、為すがままにされるしかなかった。



 

その様子を後ろから見ていた3人はヒヤヒヤしながら見守る。




「街中で魔法を使おうとするとはどういう事だ!。貴方は自分が何をしたのか分かっているのか!?」




 そんなリューの剣幕に怯みながらも反論する。だが、その内容はあまりにも弱々しかった。





「お、"俺は"悪くない。いや、多分だがこの件に関しては"別の俺"が悪い、うん。それに向こうが先に仕掛けてきたんだし、正当防衛だって、多分」




 その言葉を聞き、リューの額に青筋が浮かぶ。




「あれ?怒った?怒ってる?いやまぁ、確かに怒るだろうけどさ。ほら、俺だって被害者じゃん?短期は損気。嫌なことあっても笑って過ごそうよ」



 ヘラヘラとした態度をとるタクトに対し、遂に我慢が出来なくなったのか、掴んでいた手を離し、ビンタを食らわそうと手を振り上げた瞬間、ガシッとその手を掴まれる。




「……その辺にしとこうよ。暴力はダメだよリオン」





 いつの間にか近寄っきていたアーディだった。その表情は笑顔ではあったが、明らかに怒っているのが分かる。その迫力に気圧され、渋々と振り上げていた手を下ろした。




「それにタクト君もどうしてそんなにリオンを煽るような言い方をするのかな?。普段の君らしくないよ?」



 
その言葉にタクトは何も答えず、ただそっぽを向くだけだった。



(もしかして喧嘩中…なのかな?)



それを見たアーディはそんな事を考えるも、このままではいけないと思い仲裁に入る事にした。




「とりあえず2人とも落ち着いて?。ね?」


 そう言われ、少し冷静さを取り戻したのか、大きく深呼吸をして、落ち着きを取り戻す。



そして、タクトもまた冷静になった頭で考えを改め始めていた。




(やっぱりやめた方が良いのか?、これは)



[激怒させよう] 報酬、器用+120、器用+100





(でも報酬がこれだけ良いと言う事は今の状況と合わせて考えたらこの後確実に。……ここはあえて嫌われてでも良いからやっておくべ……あれ、ちょっと待て───)




「既に3人揃ってる…?」




 突然の出来事に思考が停止するタクトだったが、その言葉によって我に帰る。

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