寝て起きたら暗黒期!?ベルくんに会うまで死にたくねー!   作:お米大好き

63 / 67


 最初の頃は二千文字が限界だったのに最近は7000から9000近くまで行くことが増えました…。半分にして投稿したいけど話が進まない…。

……リメイクしたい。





第七話、開戦

 

 

 

 

「答えになっていないような……?」

 

 

 

 

 

 セルティは首を傾げながら、タクトの目をじっと見つめた。

 

 

 

 

「うーん、よくわかんないけど……良いことでもあったのかな?」

 

 

 

 

 セルティは少しだけ考え込んだ後、タクトにそんな言葉を投げかけた。そんな彼女の言葉に対し、タクトはポツリと呟くように言葉を放った。

 

 

 

 

「セルティさんは魔法が得意でしたよね?」

 

 

 

 

「え、んん、得意というか……それなりに使えるって感じ」

 

 

 

 

 セルティは突然の質問に驚きながらも、肯定の返事をする。そんな返事に対しタクトは続けて言葉を放つ。

 

 

 

 

「でしたら、1つお願いしたいことがあるんです」

 

 

 

 

「なに?」

 

 

 

「全責任は俺が持ちますから、あそこ壁に向かって1発ぶっ放してくれませんか?」

 

 

 

 

 

「……はい?」

 

 

 

 

 セルティはタクトの突飛なお願いに驚き、首を傾げた。しかし、彼の表情が真剣であることに気付き、少しだけ戸惑いつつも、彼の要望を受け入れることにした。

 

 

 

 

「……わかった。でも、どうして?絶対に混乱が起きると思うけど」

 

 

 

 

「大丈夫です、放つのは混乱が起きると同時なので」

 

 

 

 

 

 タクトの言葉に、セルティは疑問を抱きながらも、彼の真剣な様子に従うことに決めた。彼女は杖を手に取り、壁を見つめ、詠唱を唱える。

 

 

 

 

「【───】。いつでも撃てるよ…」

 

 

 

 

「魔法の待機状態、流石です。放つタイミングは約20秒後、ド派手な合図があるのでそれに合わせてください」

 

 

 

 

 そう指示され、この状況に疑問を抱きつつもセルティは頷きで返す。そして杖の先に魔力を集中させた。

 

 

 

 

(一体何を考えているんだろう?混乱が起きると同時…?。あ…アリーゼちゃん達がこっちに向かって来てる…)

 

 

 

 

 セルティは魔法の待機状態を維持したまま、アリーゼ達がこちらに向かってくるのを視界の端に捉えていた。そして遂に20秒が経過したその時だった。

 

 

 

 

「…来ますよ、セルティさん」

 

 

 

「え、う…うん……撃つ───」

 

 

 

 

 

──ドゴォォォォォン!!!!

 

 

 

 

 セルティが言葉を言い切るのとほぼ同時に、大爆発が起こった。闇派閥(イヴィルス)の襲撃開始の合図が、まるで天を揺るがすような轟音と共に放たれる。

 

 

 

 

 

「撃て」

 

 

 

 

「っ───!!」

 

 

 

 

 タクトの指示に従い、セルティは雷撃を放つ。稲妻が凄まじい速さで闇派閥(イヴィルス)の者たちに向かって放たれ、着弾と同時に爆発が起き、炎と煙が舞い上がる。

 

 

 

 

「っ、なんだ!?」

 

 

 

 

「うぉぉ!?───」

 

 

 

 

 奇襲を仕掛けた闇派閥(イヴィルス)と、それに対抗する冒険者たちから混乱の声が上がる。彼らの思惑とは裏腹に、その混乱は瞬く間に広がっていく。

 

 

 

 

「なんなんだよ今の魔法は!?気づかれて───」

 

 

 

 

「襲撃──!!襲撃──!!」

 

 

 

「せ、攻めろ!!冒険者達を全力でぶっ潰せ!!」

 

 

 

闇派閥(イヴィルス)だ!!闇派閥が現れたぞ──!!」

 

 

 

 

「皆殺しにしろ!!数ではこっちが勝ってんだ!!」

 

 

 

 

「落ち着け!!隊列を崩すな、すぐに迎撃しろ!!」

 

 

 

 

 

ここに一つの戦争が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、どうなってんだようちの新人(ルーキー)様はよぉ!?」

 

 

 

 

「あれ絶対わかっててやらせてたわ!!」

 

 

 

 

「セルティも躊躇いなく魔法撃っちゃてるし!!」

 

 

 

 

「あの子は場の空気に流されやすいのよ!!」

 

 

 

 

 ネーゼ、ノイン、アスタ、リャーナがそう言いながら、迫り来る闇派閥(イヴィルス)を迎撃する。だが、敵の数は減るどころか、むしろ増えるばかりだった。

 

 

 

 

「団長!!今破壊された北側だけじゃなく、西と南東からも敵兵が押し寄せて来てる!!」

 

 

 

 

「っ……まずいわね、完全に包囲されてるわ」

 

 

 

 

 輝夜の報告を聞き、アリーゼが苦虫を噛み潰したような表情でそう口にする。

 

 

 

 

「アリーゼ、南西の敵は私が引き受けます」

 

 

 

 

「わかったわ。ネーゼ、ライラ、リオンと一緒に南西をお願い。でも無理はしないで、闇派閥がどんな攻撃を仕掛けてくるかわからないから……嫌な予感がするの」

 

 

 

 

「「「了解(おう)」」」

 

 

 

 ネーゼ、ライラ、リオンはアリーゼの指示に従い、南西へと向かい防衛を始める。

 

 

 

 

 

「東はシャクティ達に任せて、私達は北を抑えるわよ!!この程度の数ちょちょいとやっつけてやりまし────」

 

 

 

 

 アリーゼが団員を鼓舞しようとしたその時だった。

 

 

 

 

「団長!!た、タクトが殺帝(アラクニア)に襲いかかって行った!!」

 

 

 

 

 砂塵の中を抜けてやってきたセルティが慌てた様子でそう叫ぶ。その知らせに、一同は戦慄した表情を浮かべたが、それもつかの間。

 

 

 

 

「あぁ少し頭が痛いわ………輝夜ァ!!」

 

 

 

 

「わかっている!!」

 

 

 

 

 アリーゼが叫ぶと、輝夜は瞬時に駆け出し、凄まじい速度でタクトの元へ駆けていく。

 

 

 

 

 アリーゼは急いで状況を整理し、周囲の団員に指示を出す。

 

 

 

 

 

「セルティとリャーナは魔法の準備!イスカはその護衛!。ノインとマリューは戦闘に不向きなサポート達をカバーして!。ここが済み次第輝夜の後を追うわよ!!」

 

 

 

 

 

 アリーゼの指示を受け、各々が行動を開始する。

 

 

 

 

(本当に何を考えてるのかしら!?お願いだから無事でいて!!)

 

 

 

 

 

 そう心の中で呟きながら、アリーゼは歯を食いしばる。だが、そんなことを考えている暇はないと自分に言い聞かせて目の前の敵を見据えるのだった。

 

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、ど〜なってやがんだぁ?襲撃を読まれてたってだけなら、理解できんだが、さっきの魔法、タイミングが良すぎんだろぉが」

 

 

 

 戦闘中のシャクティ達を見下ろしながら、女がそう呟く。彼女の名は、ヴァレッタ・グレーデ。神に与えられた二つ名は殺帝(アラクニア)

 

 

 

 

(流石に勇者(フィン)の野郎でも襲撃の時間まで読めるわけがねぇ。じゃぁ、誰かが情報を漏らしたか?)

 

 

 

 

 

 ヴァレッタは考えながら、部下に指示を出し、状況を整理する。

 

 

 

 

(裏切り者…それとも魔法やスキルの類か?。いや、どれもしっくりこねぇ、襲撃自体は成功してた、もし冒険者のカスどもが事前に時間を知らされてたとすればあんなアホずら晒すわけがねぇ)

 

 

 

 

 ヴァレッタはこの状況に疑問を感じ、考え続ける中で、一つの答えが浮かび上がらせていた。

 

 

 

 

(爆破のせいで魔導士の姿は見えなかった、もし、それが意図的に姿を隠したんだとしたらどうだ?。──つまり)

 

 

 

「少数か、もしくは個人による独断……そういえばこの場には正義気取りの偽善者(アストレアファミリア)共もいやがんのか」

 

 

 

 

 ヴァレッタはそう呟くき、ゆっくりと口角を釣り上げた。ヴァレッタは襲撃決行前、悪神から告げられた忠告を思い出していた。その時、悪神は冷酷な微笑みを浮かべて次のように語ったのだ。

 

 

 

 

 

──正義の眷属に面白い奴が入ったみたいだ。そいつには注意した方がいいよ、こちらの手の内を知ってるみたいだから。

 

 

 

 

 

「大体わかった。襲撃者はエレボスの野郎が言ってた新人……丁度いい、この機会にぶっ殺してやるぜぇ」

 

 

 

 

 

 ヴァレッタはそう言いながら、手に持った剣を構えた。

 

 

 

 

その時だった──。

 

 

 

 

 

───ギィィン!!

 

 

 

 

 

 

 突如として、空から降り立った襲撃者。彼の手に握られた一振りの刀とヴァレッタの剣が激しくぶつかり合い、鋭い金属音が響き渡る。火花が舞い踊り、闘志に燃える両者の瞳が鋭く光る。ヴァレッタは驚愕と興奮を胸に秘め、不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「よぉ、いきなり斬りかかるとは、なかなか豪胆なご挨拶じゃねぇか?」

 

 

 

 

「いやぁ〜悪い悪い。手が滑ったんだよぉ。てことで、次は絶対その首を刎ねるぞぉ」

 

 

 

 

 

 ケタケタと笑いながら、目の前の少年がそう口にする。しかし、少年の瞳には一切の感情を宿す余地がなく、機械のような冷たい輝きを放っていた。

 

 

 

 

 

 そんな少年の様子を、ヴァレッタは挑発するように笑いながら観察する。

 

 

 

 

「カスが1人で襲撃なんて面白ぇ事してくれんじゃ……って、テメェまさか──」

 

 

 

 

「そう見つめんなって…照れるだろ?」

 

 

 

 

 そして、そんな2人のやり取りを聞いていたこの場に残る闇派閥(イヴィルス)たちは、この状況に足の動きを止めていた。

 

 

 

 

「ヴァ、ヴァレッタ様!!どうし──」

 

 

 

 

「ハハハ、ヒャハハハハハハ!!!。今思い出したぜぇ?テメェ、最近噂のルーキーじゃねぇか!!」

 

 

 

 

 その言葉を聞いて周りから動揺の声が上がる。しかし、当人達はそれを気にせずに会話を続ける。

 

 

 

 

「ほへぇ……有名人は辛いな〜」

 

 

 

 

「はっ!!余裕かましてんじゃねぇぞぉ?先週(テイマー)の件だけでもイラついてたのによぉ、決めた…今ぶっ殺す、女誑しのクソガキ」

 

 

 

 

 

 ヴァレッタの言葉にタクトは目を丸くすると、突然腹を抱えて笑い出した。

 

 

 

 

「ッヒヒッ……アハハッ!!マジで言ってんのヴァレッタちゃん!?ならおいで?君ならいつでも歓迎するよ!」

 

 

 

 

「アァ?気でも狂ったかぁ?」

 

 

 

 

 タクトの態度の変化についていけなくなったヴァレッタだったが、目の前の少年が自分よりも弱い事を先の一撃で理解していた。だからこそヴァレッタは再び剣を振るうために力を入れようとした時だった。

 

 

 

 

 

───ピタッ

 

 

 

 

 殺人鬼としての勘が、進もうとするヴァレッタを制止させた。

 

 

 

 

 

「…テメェら、一斉に襲いかかれ。確実に殺せ!!」

 

 

 

 

 ヴァレッタが静かに指令を下すと、タクトを取り囲む|闇派閥闇の使者達は全員が武器を構え、襲いかかろうとした。だが、凶器が届くよりも先によりも先にタクトが動いた。

 

 

 

 

 

「【千鳥流し】」

 

 

 

 

 

──バチバチッ

 

 

 

 

 

 

 たった一言。たった一撃。それだけで彼の周囲が鮮血に染まる。

 

 

 

 

 その光景を見たヴァレッタの目は大きく見開かれ、同時に確信を得ていた。

 

 

 

 

「あらら、駒が死んじゃったかな?ヴァレッタちゃん」

 

 

 

 

 ヴァレッタが見たものは、自身の配下たちが倒れ行く姿と目の前に立つ少年の邪悪な笑顔だった。

 

 

 

 

「……テメェ」

 

 

 

 

(コイツ自信の源はこれ(電撃)かぁ?威力だけ見りゃ脅威だが…この程度なら簡単に潰せる。数人──)

 

 

 

 

「数人囮にすれば問題ない。コイツの手札がこれだけなら簡単に殺せる。そう考えてんだろ?」

 

 

 

 

 嘲笑を含んだその言葉に、ヴァレッタがピクりと眉を動かしたのを、タクトは見逃さない。

 

 

 

 

「おや?違ったかなぁ?なら、俺の勘違いだなぁ」

 

 

 

 

「舐めた真似してくれたじゃねぇかぁ……」

 

 

 

 そう呟くと同時にヴァレッタは自身の部下達()を見る。

 

 

 

 息はあるようだが、全員に意識はない。このままでは出血多量で死んでもおかしくい熱傷を負っていた。

 

 

 

「はっ!流石は正義の眷属様だなぁ?相手が闇派閥でも殺しはしないなんてお優しいことで」

 

 

 

 

「殺してもよかったんだがなぁ……ファミリアに面倒かけんのは嫌でなぁ?あ、もしもヴァレッタちゃん自ら殺してほしいんなら、その首を刎ねてやるよぉ?」

 

 

 

 

 タクトが笑いながら言うと、ヴァレッタは鋭い視線を彼に向けた。そして苛立ちを含んだ声でこう呟く。

 

 

 

 

「……まさか、この程度で勝てる思ってんじゃねぇだろうなぁ?それなら興醒めもい〜ところだぜぇ?クソガキィ」

 

 

 

 

「っは、それはこっちのセリフだぞ?【殺帝(アラクニア)】ってこんなつまんねぇ女だったわけ?」

 

 

 

 

「あ”ぁ?」

 

 

 

 

 ブチッ、と何かが切れる音が微かに響いた。見ればヴァレッタは眉間にシワを寄せ、怒りを露わにしていた。

 

 

 

「あれ?ムカついちゃった?もっと怒りを抑えた方がいいって、せっかくの美人が台無しだよぉ?ほらスマイル、スマイル」

 

 

 

 

「調子乗ってんじゃねぇぞクソガキ!!」

 

 

 

 

 ステータスに任せた瞬撃。ヴァレッタは一瞬にして距離を詰め、タクトに向けて武器を振り下ろした。

 

 

 

 

「おっ──残念」

 

 

 

 

 しかし、その一撃は彼の身体に触れる前に弾き飛ばされる。

 

 

 

 

「ッ……正義の眷属様はアタシをイラつかせるのが得意だなぁ〜おい」

 

 

 

 

 2人の間に割って入ったのは──。

 

 

 

 

「流石は輝夜さん。一太刀とはいえ、格上の一撃を弾くなんて」

 

 

 

 

 輝夜だった。彼女はヴァレッタの一撃を弾き返すと、タクトを守るように立ち塞がった。

 

 

 

 

「面倒ごとに巻き込みおって、小僧、貴様この後どうなるかわかっているのだろうな?」

 

 

 

 

「いやいや、勘弁して下さいよ。俺はただ、正義の眷属なりに殺人鬼を足止めしただけですよ?」

 

 

 

 

「それでより危険な死地に踏み入る私の身にもなれ、馬鹿者」

 

 

 

 

「でも得意ですよね?尻拭い」

 

 

 

 

「貴様、本当に首を刎ねられたいか?」

 

 

 

 そう軽口を言い合いながら、2人は視線を前に向け続けた。

 

 

 

 

「ったく、増援が来ただけで攻撃やめるとか……興醒めもいいとこだぜぇ?ヴァレッタちゃんよぉ」

 

 

 

 

「黙れ、クソガキ。こっちはテメェをぶっ殺すプランを考えてるところなんだよぉ」

 

 

 

 

 

「あれ?二体一にビビってる?……それとも"俺が"怖いのかい?」

 

 

 

 

 ヴァレッタの額に青筋が浮かぶが、彼女は怒りで喚くことはせず静かにタクトを見つ続ける。

 

 

 

 

「あぁ怖いねぇ〜。テメェの魔法も、その足元にあるマジックアイテムも……本当にうざってぇ相手だよテメェ〜は」

 

 

 

 

 ヴァレッタの言葉を受け、タクトは暗い瞳のまま静かに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 その笑みからはどす黒い感情が感じ取られ、狂気に満ち溢れていた。

 

 

 

 

──まるで目の前の獲物の殺し方を考えているかのようだ。

 

 

 

 

 

「ははっ……偽るな、違うだろ?らしくないぞ、殺帝(アラクニア)。お前は警戒してるんじゃない、時を待ってるだけだ、最高のタイミングを……。だから、まだ俺を殺さない」

 

 

 

 

 タクトの言葉にヴァレッタはピクリと反応するが、すぐに平静を装った。しかし、タクトは構わず言葉を続ける。

 

 

 

 

「調子に乗ったガキがこの後どんな表情を晒すのか?。どんな感情を露わにするのか?それを想像しながら、今か今かと待ち構えている……そうだろ?」

 

 

 

 

「小僧?それはどういう意味───」

 

 

 

 

 ヴァレッタは何も言わなかった。だが、彼の発言が的を射ていることを彼女は理解していた。だからこそ何も言わず、静かに笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

「あぁ、そうか、そうだったぜ。テメェは知ってやがるんだったなぁ?なら一つ私からいい事を教えてやる」

 

 

 

 

 ヴァレッタが剣を向ける、それはタクトではなくその後ろで戦闘している冒険者達に向けられていた。

 

 

 

 

「もう開始の時間だ、せいぜい情けねえ面ァ晒しやがれ!!」

 

 

 

 

 そして彼女はそう告げた。その瞬間、周囲にいる闇派閥(イヴィルス)の者達が一斉に武器を捨て駆け出し、戦場の中心へと向かう。

 

 

 

 

「武器を捨てた…?。小僧奴らを行かせ──「輝夜さん」」

 

 

 

 

 タクトは冒険者達の元へ向かおうとする輝夜を呼び止める。彼女は訝しげな表情を向けるが、タクトは静かに視線を戦場の方へ向けていた。

 

 

 

 

殺帝(アラクニア)の足止めをお願いします。30秒で構いません、俺の邪魔をさせないでください」

 

 

 

 

 その言葉を聞いた輝夜は、タクトの顔を見て全てを察したように頷いた。

 

 

 

 

「無茶を言う……これは貸しだ」

 

 

 

 

 そう言って輝夜はヴァレッタへと刀を構え、駆け出した。それを見たタクトは、ゆっくりと地面へと視線を向けていく。

 

 

 

 

 

「あぁ、そのつもりだよ輝夜さん。……さてと」

 

 

 

 

 タクトはそう呟くと、ゆっくりと顔を上げて笑みを浮かべた。そして──

 

 

 

 

───バチバチッ

 

 

 

 

 

 雷が身体を包み込むようにタクトの全身を駆け巡る。

 

 

 

 

 

「【千鳥・ニ重(ダブル)】」

 

 

 

 

──バヂッバヂヂヂヂッ

 

 

 

 暗闇に包まれた工場に、煌々(こうこう)と輝く雷光が一際強まり、轟音を増してゆく。そして、雷は一筋の矢となり、工場内で踊るようにして流れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 

 

 

「【ルミノス・ウィンド】!!」

 

 

 

 

 

「「「ぐああぁぁぁぁぁぁ!?」」」

 

 

 

 

 

 覆面のエルフから放たれる複数の緑風の玉、それは強風の如き速度で闇の者達へと襲いかかる。魔法が直撃した者達は、身体を後方へと吹き飛ばし、再起不能に陥った。

 

 

 

 

 

「流石はリオン!魔導士でもねぇのに馬鹿げた威力だぜ。こりゃ楽勝──と言いてえが」

 

 

 

 

「上手く行き過ぎてる…よね?」

 

 

 

 

「ああ、アーディ(Lv.3)が加わったとはいえ普段通りならアタシら4人だけでここまで簡単に制圧できるわけがねぇ」

 

 

 

 

 ライラ、アーディの言葉に、リューとイスカは頷いた。そして2人もまた違和感を感じていた。

 

 

 

 

「相手が弱過ぎるよなぁ……ライラ、このメンバーで一番賢いのはアンタだ、なんか気付いちゃいないのか?」

 

 

 

 

「……臭え、超臭え。そもそもフィンが二つのファミリアに指令を出すくらいだ、絶対に何か……」

 

 

 

 

 冒険者としての経験上、ことがうまく進むほどその後には何かしらのトラブルが待っている。この場にいる全員がそれを理解していた。

 

 

 

 

 その時だった、ふとアーディが何かに気付く。

 

 

 

 

──ザッ……ザザッ……ザッ

 

 

 

 

 そんな音を立てながら、ゆっくりと地を這う者がいた。

 

 

 

 

「はぁ…はぁ……お願……しま……」

 

 

 

 

 それは、戦場から逃走しようとした闇派閥の者だった。身体中に切り傷や痣ができており、ボロボロになった衣服に血がついている。

 

 

 

 

「っ、大丈夫で──「リオン待て」っ!?」

 

 

 

 

 リューが思わず駆け寄ろうとすると、ライラがそれを止めた。

 

 

 

「お願……ま…す」

 

 

 

 

 地を這うの男は、震える声でそう呟き、震える手を4人へと伸ばした。

 

 

 

 

 その男の姿を見たリューが、顔を強張らせる。

 

 

 

 

「ライラ!止める理由はわかる!だがこのままではこの男は死んでしまう!何も死なせ──」

 

 

 

 

「わかってんなら理解しろリオン!相手は闇派閥(イヴィルス)だ。こうなったのも自業自得ってだけだ」

 

 

 

 

 

 ライラの言葉に、リューは悔しそうに歯を食いしばる。だが、そんな時だった──。

 

 

 

 

 

「2人とも!喧嘩はダメだよ?確かにこの人は闇派閥()だけど……死なせることはないと思う。私が治すから、助けてあげよう?」

 

 

 

 

 アーディがライラとリューの間に入り、2人にそう提案した。その態度からは他者を思いやる優しさが垣間見えていた。

 

 

 

 

 

「アーディ、でも少し危険じゃね──「大丈夫!何かあった時3人が助けてくれるって信じてるから!」

 

 

 

 

 そう笑顔で言われてしまっては、2人は言い返すこともできなかった。そしてライラとリューは互いに視線を合わせると、同時に頷いた。

 

 

 

 

 

 そして二人はアーディの元へ行き、傷だらけの男を見る。身体中から出血し、目はすでに虚ろになっていたが……その顔は安堵したように微笑んでいた。

 

 

 

 

 

「お願い…します…」

 

 

 

 

 

「うん、いま助けてあげるね?大丈夫、大丈夫だから」

 

 

 

 

 

 アーディは優しい声音でそう言うと、男に手を伸ばした。そして彼女の手が男の傷口に触れた瞬間──。

 

 

 

 

 

 

「………神様…どうか」

 

 

 

 

 

「違うよ?私は神様じゃ───」

 

 

 

 

 

 隠し持っていた【装置(スイッチ)】を起動させる。

 

 

 

 

 

「娘と妻に合わせてくださいぃぃ────!!」

 

 

 

 

 

カチッ

 

 

 

 

 

 何かが鳴る音がした。

 

 

 

 

 一瞬にも満たない時間の狭間。

 

 

 

 

 しかし4人にとっては、長い時間に感じられた。が、それもすぐに終わる。

 

 

 

 

 何が起きるのか、リュー達が理解するよりも早くそれは起きた。

 

 

 

「ぁ─────────」

 

 

 

 

 そうアーディが声を漏らすのと、リュー達の視界は白に染まった。

 

 

 

 

 直後やってくる、衝撃、振動、爆熱。

 

 

 

 

 

 そして、それらは建物全体を揺るがし、爆心地から離れていた冒険者達でさえ突如として起こったその爆音と衝撃に言葉を失い、目を見開いていた。

 

 

 

 

 

「……………ぇ?」

 

 

 

 

 エルフの少女は理解を拒んだ。

 

 

 

 

「……………まさか」

 

 

 

 

「…………アーディ?」

 

 

 

 

 2人の団長は凍てついた。

 

 

 

 

 

「……………自爆した?」

 

 

 

 誰かがそう口にした。

 

 

 

 

──全ての者がその事態を理解するまでに、おそらく数秒は必要になっただろう。

 

 

 

 

 

 そんな中ライラが最初に事態を把握してしまい、そして──。

 

 

 

 

「自爆だぁぁあああ!!全員────!?」

 

 

 

 

 そう叫ぼうとした瞬間、それは冒険者達によって遮られた。

 

 

 

 

 

「く、来るなぁぁ──」

 

 

 

「やめ────」

 

 

 

 

「ま、待っ───」

 

 

 

 

 闇派閥の自爆により、悲鳴と恐怖の声と共に、再び複数の爆発音が響き渡っていく。

 

 

 

 

 あまりにも悲惨で異常なその光景は……戦場慣れしている冒険者達にも、かなりの動揺を与えていた。そしてその中でも一番動揺していたのは、リュー・リオンだった。

 

 

 

 

 

「……アー、ディ」

 

 

 

 

 そう口にした少女の視界には爆破により削れた地面と場に残された少量の鮮血だけしか映らず、少女の亡骸は、何処にも見当たらなかった。

 

 

 

 

「アーディ!、アーディィ!!」

 

 

 

 

 何度もその名を呼んだ。が、返事はなく、代わりに聞こえるのは複数の爆発音、そして悲鳴が響くだけ。

 

 

 

「アーディィ!!」

 

 

 

「おいリオン!!動け!!これ以上被害を増やさせるな!!」

 

 

 

 

 ライラがそう叫ぶ。だが、リューはそれに応じる余裕はなかった。彼女の心は最愛の友人の亡骸を探すことに、全てを奪われていたからだ。

 

 

 

「アーディ、お願い……返事をして……」

 

 

 

 少女は懇願するように、そう呟いた。だが、その願いは届かない。それがわかっていても、彼女は求め続けた。

 

 

 

 

 そしてそんなリューを他所に事態はさらに最悪な方向に進んでいくことになる。

 

 

 

 

「アーディ──「アーディは死んだよ、クズ1人の命を引き換えに無駄死にだ」……ぇ」

 

 

 

 

 そう口にする男の声はライラとイスカにとって既視感のある声であり……そしてリューにとってもよく知る声だった。

 

 

 

 

「現実を受け入れたくないならそのまま泣いているといい。その結果、探す事になる死体が増えても、な?」

 

 

 

 

 その手に握られた黒刀は、闇夜に輝くような姿を見せ、血塗られた刀身が幻想的な光を放っている。そして、その切先からは、生命の息吹を奪った証とも言える、赤い滴が静かに地面へと落ちていた。

 

 

 

「ユウギ……さん…?」

 

 

 

 

「おいタクト、テメェそれ──「闇派閥の奴らは一般人も含めてこの一斉起爆を(自殺)を行ってる。結構数は減らしたが全部潰すよりもここ(工場)の倒壊の方が早い」 ─……っ」

 

 

 

 

 ライラの言葉を遮ってタクトがそう説明した。その声色は、冷たく感情を感じさせないものだった。

 

 

 

 

「今頃アリーゼとシャクティが脱出の算段を立てている筈だ、これ以上犠牲者を出したくないなら一刻も早く合流してこい」

 

 

 

 

「してこいって、その言い方じゃお前は「俺は別行動だ、アリーゼにも許可は取っている」は?」

 

 

 

 

 その発言に、イスカは理解が出来なかった。だが考える余裕はもうない、次々と爆発音が鳴り響く中、ライラの叫び声が響く。

 

 

 

 

「おい!これ以上話してる余裕はねえ!!タクトもただの馬鹿じゃなえ!何か考えがある筈だ!!さっさとアリーゼ達に合流してアタシらも避難するぞ!!リオンもさっさと来い!!」

 

 

 

 

 そう叫ぶライラだったが、リューはその場に呆然と立ち尽くしたまま、動こうとしなかった。そんな彼女にタクトが告げる。

 

 

 

 

 

──疑念を抱いたなら……その目で見極めろ。

 

 

 

 

 その言葉を最後に、タクトはその場を去っていった。それと同時にイスカも動き出しており、リューの腕を掴むとそのまま引っ張って行く。ライラも二人の後に続くように駆け出し、その場を立ち去った。

 

 

 

 

 

 その後、まもなくして工場は爆破による衝撃で崩壊し、工業地帯の一角は荒廃し瓦礫が山となり、逃げ遅れた者達の小さな呻き声が赤く染まる都市の夜闇へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 

 

 

「ッ……LV.2の身体だとキツイか」

 

 

 

 

 

 工場跡から少し離れた建物の屋上に、タクトはいた。その場に膝をつき、先ほどよりも顔色が悪くなっている。

 

 

 

 

 

魔力切れ(マインドダウン)寸前、だな……それにしても、少し暴れ過ぎた」

 

 

 

 

 彼はそう呟くと、溜息をつく。そして周囲を見回すように首を動かすと、遠方に視線を向けた。

 

 

 

 

「今回は早めに蹴りをつけた…。彼女の行動が気になるが、一先ずはこれでいい」

 

 

 

 

(あと8分は余裕がある。教会に向かいつつ魔力を───ッ!?)

 

 

 

 

 そう頭の中で計画立てようとしたその時、彼は何かを感じ取り、周囲を見渡した。そして同時に一つの気配を感知する。

 

 

 

 

「あぁ、最悪のイレギュラーだ…クソが」

 

 

 

 

 

 彼はそう言うと、壁を蹴って屋根を伝い走り出した。

 

 

 

 

(逃げ切るのは不可能、なら少しでも教会に近づいて早期決着を──)

 

 

 

 

 そう考え、タクトは屋根から飛び降りた。だがその瞬間──。

 

 

 

 

 

───ドォォォン!!

 

 

 

 

 

  そんな轟音が、彼の耳を掠めていった。同時に身体を掠る瓦礫の感触と痛みに表情を歪めるが、すぐに周囲を確認するとそこには───

 

 

 

 

 

 

「おっと、今度は逃さんぞ。駆け出し(ルーキー)

 

 

 

───漆黒の鎧(フルプレート)に身を包んだ、最恐(ザルド)の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 






次回!

未来vs最恐

友だったもの

の2本です。


次の投稿は最低でも2週間はかかります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。