寝て起きたら暗黒期!?ベルくんに会うまで死にたくねー!   作:お米大好き

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最近書く時間が取れない…。

ザルドさんの性格を優しく書きすぎたかな?


第八話、予定調和

 

 

 

 

 

 

 

 ずっと考えていた(後悔していた)。もしも選択を間違わなければ結末は異なっていたのではないか、もし初めから偽善なんてものを捨てていたのなら、結果は変えられたのではないだろうか…と。

 

 

 ずっと過去(後ろ)ばかり観て歩いて(生きて)来た。未来()を見て歩くには俺の足はあまりにも重く、脆かったから。

 

 

 

 

 『前を向け』周囲の人は何度も俺にそう言った。

 

 

 

 気遣ってくれていたのだろう。でも、次第にその声は数を減らしていき、いつの間にか俺に向けられる言葉は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

『どうしてお前なんだ…』

  

 

 

 

 近くを通り過ぎる誰かの陰口が、俺の背中を強く叩いた。

 

 

 

『…貴方が彼女達の代わりに犠牲になれば良かったのに』

 

 

 

 ……蔑む目と罵る声、心配や労りの声はいつしか、醜悪で身勝手な憎悪に変わっていた。

 

 

 

 耳を塞ぎ、目を閉じ、蹲り……そうして何もかもを閉ざした。

 

 

 

……もう聞きたくないから、もう何も受け入れたくなかったから、時間が経てばその内この声も消えてなくなってくれる。そう、思っていたんだ。

 

 

 

 

──もう1人にしてくれ──

 

 

 

 

…けど、世界は何も変わらなかった。声も、非難される恐怖も、何もかもが消えてなくなってはくれなかった。

 

 

 

 

『見捨てて逃げたんだろ、クズが……』

 

 

『どうせ、自分だけ助かればそれで良かったのよ……』

 

 

『よく平気で生きていられるな……』

 

 

 

 そんな声を周囲からはいつまでも浴びせられ続け、俺はいつしか何も感じなくなっていた。

 

 

 

──もう…いやだ…──

 

 

 

 世界も、人も、神さえも信じていなかった。未来(希望)など無いと決めつけていた。だからこそ───

 

 

 

 

 過去の選択を修正する機会が提示された時。俺は躊躇せずにその道を選ぶことが出来た。

 

 

 

 

 

 

 迷宮都市(オラリオ)を敵に回した。

 

 

 

 

 無関係な者たちをも巻き込み、抗争の火を燃やした。

 

 

 

 

 そこに迷いや後悔はなく、もう一度あの瞬間に戻る可能性があるのなら、何だってしてみせる。その想いと覚悟だけが、俺を()()()()()()

 

 

 

 

 

 そして俺を蔑み罵る声は瞬く間に悲鳴と怒号へと変わった。

 

 

 

 オラリオの住民、同業者(冒険者)たち、皆んなも俺と同様に疲弊しきっていたのかもしれない。

 

 

 

 もしかすると声の中には闇派閥の残党も混ざっていたのかもしれない。

 

 

 

 冷静になれな時、そんな事を考えた。……でも既に手遅れだ。

 

 

 

 俺の後ろには無数の怪我人の山が築かれ、火が街を覆っていく様に罪悪感は湧かず、寧ろ心地よささえ感じていた。

 

 

 

──これで……いい──

 

 

 

 

 そして勇者(都市)に敗北し、猛者(最強)に敗れ、最後には英雄(ルーキー)に倒された。

 

 

 

 

 

 だが全てを捨てた結果、俺は過去への抗いを成し遂げることが出来た。そこは確かに自分が目指した理想の世界……の筈だった。

 

 

 

 

 ただそこには───俺の居場所はなかった。

 

 

 

 

 

 当然の結果だ。

 

 

 

 過去(そこ)には()()1()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 似たような剣や盾は存在しても全く同じ物など存在しない、たとえ型を真似たとしても中身が同じものには永遠に成れない。

 

 

 

 

 そんな当たり前のことを、世界は行っただけだ───本当にくだらない程単純な工程(ロジック)だ。

 

 

 

 世界は同一の存在を許容しない、出来ない。

 

 

 結果、自死を迫られた。

 

 

 それを俺は、許容した。

 

 

 

 結末を変えられるなら何でもした、望みを叶えるためならどんな事でもやった。

 

 

 

 それなのに俺はあっさりと、簡単に自死を選び全てを放棄した。

 

 

 

……疲れていたんだ。本当に、疲れきっていた。どうしようもない虚無感が渦巻いて、それでも過去に後戻りすることも諦め切れずに、愚かな足掻きを続けながら生きてきた。

 

 

 

 だがそれもこれで終わりだ。

 

 

 

 過去の俺に託せるだけのものは託した(諦められる理由を見つけた)

 

 

 

 

──あぁ、やっと死ねる──

 

 

 

 後は、今度こそ俺が消えるだけ。俺は自らその選択を選び取ったんだ……だからこそもう迷うことはない、躊躇うこともない。後悔はない、迷いもない……そう、思っていたのに─────ッ!!

 

 

 

 

『……居るんだろ?出てこいよ』

 

 

 

『全部聞いてたんだろ?アリーゼ』

 

 

 

 望んでしまった。願ってしまった。期待して、求めてしまった。

 

 

 

『そう暗い顔すんなって、いつものように笑ってくれよアリーゼ』

 

 

 

 平然を装い、気づかれないようにそう振る舞った。今更"俺が"救われるわけにはいかない。この手は既に多くの血で染まっているのだから。

 

 

 

 彼女に手を伸ばしていいわけがない。

 

 

 

 そう理解しているのに、俺は。

 

 

 

『ハーレムって許されるかな?』

 

 

 

『やっぱアリーゼには上げて落とす…これだな』

 

 

 

 くだらないことばかりを、口走った。

 

 

 

 それに何の意味がある?その行為がどんな意味を持つ?。

 

 

 最後に最低で最悪な裏切りを残して消えるだけなのに、無責任で自分勝手なことばかりを……。

 

 

 何度も、何度も後悔と罪悪感に苛まれながら、俺は彼女へ手を伸ばした。だが……届くことはない。

 

 

 

 

 

 

ピコン

 

 

[一つの世界に同じ人物が居てはならない] 報酬、運命の改変、残り時間1分

 

 失敗時、2人の消滅

 

 

 

 それを世界は許さなかった。

 

 

 当たり前だ、こんな不条理で自己満足な行為が許されるわけが無い。

 

 

 

 それでも俺は、俺の手で運命を変えたかった(手を伸ばさずにはいられなかった)

 

 

 

 

ピコン

 

 

強制任務(ミッション)

 

 

〔デイリー〕

 

〔ウィークリー〕

 

 

年功任務(イヤリー)

・[前を向く]クリア

 

 

『LV.を代償に一時的な魂の共生を行います』

 

 

 

 

 

 

 

 何も感じず見えもしない、既に肉体は爆ぜて跡形もない、存在していない、その筈なのに……。

 

 

 

《フフ…貴方、本当に馬鹿》

 

 

 

 

 暖かい何かを感じた。

 

 

 

《キャハハ……私ってばチョロすぎるわ〜。私の事を捨て駒にしたことなんて、気にせず貴方を許しちゃうんだもん。……でもこれが最後。来世なんてない、本当にこれで終わりだから……。私の全てを捧げてあなたの魂を()()()()()()

 

 

 

 意識が薄れていく中で、声が聞こえた。その声色はとても優しげでそこに込められた感情は、想いであり……愛だった。

 

 

 

《そうすれば同じ存在ではなくなるもの…。フフ、さあ始めましょう?とても短い"私達"が織りなす復讐の物語を》

 

 

 

 俺の魂に、彼女の魂が溶け込む。もう戻ることは出来ない、引き返す道もない。

 

 それは、全てを捨てて望んだ俺の結末(わがまま)

 

 

 自分の手で結末を変えたい、そんな傲慢で身勝手な願い。

 

 

 

 でもそれでいい。この先どんな結末になろうとも、それは全て俺が前を向き選んだ選択の果てなのだから。

 

 

 

 

──……ありがとう──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 

 

 

 

「おっと、今度は逃さんぞ。駆け出し(ルーキー)

 

 

 

タクトは咄嗟に振り向き、後ろに跳んだ。しかし───。

 

 

 

「先ずは挨拶がわりだ」

 

 

 

 

 

 瞬きにも満たない一瞬、タクトの瞳に映るザルドの姿が僅かにブレた。

 

 

「く───ッ!!」

 

 

 鼓膜が破れそうになるほどの炸裂音と、全身を強打する衝撃がタクトを襲う。

 

 

 

 

 そして、その圧倒的な衝撃にタクトは身を任せ、地面を転がりながら、ついには建物の壁に激突して、やっとのことでその勢いを抑えた。

 

 

 

(剣圧……最初の一撃で殺す気かよ)

 

 

 タクトは口から滴る血を、咳き込むようにして吐き出しながら次の攻撃に備えて立ち上がった。

 

 

 

「……随分なご挨拶をどうも。出来ればもうさよならしたいんだがなぁ、ザルド(おっさん)

 

 

 

 「ふん……抜かせ」

 

 

 

 彼の挑発を鼻で笑い飛ばすと、ザルドは黒色の大剣を構えた。そして、その口から告げるのは──

 

 

 

「貴様は何者だ?」

 

 

 

「唐突ですね、一体何を言って──」

 

 

 

 そう口にした瞬間、タクトの頬を何かが通過した。そして少しだけ熱を帯びた左頬に触れれば、そこには薄く引かれた傷があり、少量の血が滲んでいた。

 

 

 

「騙るな…この短期間で貴様は熟しすぎている…」

 

 

 

「ハハハ……俺が前回会った少年とは別人、と?」

 

 

 

 

 タクトはその質問に、空笑いで返答した。しかしザルドは眉間に皺を寄せると、その瞳を僅かに細めた。そして再度タクトは口を開く。

 

 

 

「…………取引だ、ザルド。俺がアンタに期待を抱かせたらこの場は見逃してくれ」

 

 

 

「期待だと?笑わせるな、貴様のような餓鬼に俺が何を期待するというのだ?」

 

 

 

「時代の英雄」

 

 

 

 その単語に、ザルドはピクリと反応した。そして、タクトへ視線を注ぐと……低く重い声を放った。

 

 

 

「…………俺の前で()()()語るか……いいだろう、少し興が乗った」

 

 

 

 

 

「だがもしそれに値する力がないのなら……情報を吐かせたのち、貴様をここで喰らうまでだ」

 

 

 

 その言葉に、タクトは嗤う。そしてまるで演劇をしているかのように大袈裟に両手を広げると、ザルドへ口を開いた。

 

 

 

 

「…取引成立だ。残り3分間で俺の全力を見せてやる、観て聴いて感じて、全てをその身の糧としろ」

 

 

 

「…先手は譲ってやる」

 

 

 

 

 その言葉にタクトは口角を吊り上げ───。

 

 

 

「【さあ──復讐劇を始めよう】」

 

 

 

 紡がれる。それは果たされるべき契約。本来成立するはずのない世界への叛逆。それでも為されなければならない無謀な挑戦状。

 

 

 

 

「【仇為(あだな)すモノに破滅を、穢れた魂に終焉を】」

 

 

 

 タクトの背後に、漆黒の魔法陣が広がった。魔法陣はゆっくりと彼の体に迫り、溶け込むようにその背(ステータス)へと融合された。

 

 

 

「【幕切れを告げよう――終末の鐘は静寂にして零を刻んだ】」

 

 

 

それは、鳴り響く嘆きの唄。

 

 

 

 

 まるで、これから起こる"何か"へ嘆くような……そんな儚くも美しく、そして残酷な魔法。

 

 

 

 

「【一度限りの奇跡を今ここに】」

 

 

 

 最期の願いを成就させるために"精霊"から与えられた最後の贈り物。

 

 

 

 

 

「【敗者達の記録(ルーザーズ・レコード)】」

 

 

 

 

 

 

 それは"記録の再現であり再生”。一度発動が為されれば、()()()()()()()()()()()()発動した事象は継続される。

 

 

 

 

「ほう」

 

 

 

 ザルドは思わず、感嘆の声を零した。なぜなら今目の前にいる少年は───。

 

 

 

「俺も冒険者をして長い。精霊を目にしたこともあるが…。宿すではなく、混じった奴を目の当たりにしたのは今回が初めてだぞ……」

 

 

 

 ザルドの目の前にいる少年は既に人の身では到達することが難しい領域まで辿り着いていた。いやむしろ、この魔法は最早その領域に踏み込んでさえいた。

 

 

 

 瞬時にタクトの現状を把握するあたり流石はLV.7(最恐)と言うべきであろうか。

 

 

 

「さぁどうした小僧、その魔法で"何が"変わったのか俺に見せてみろッ!」

 

 

 

 ザルドの言葉を無視してタクトは───

 

 

 

「お前は知らなくちゃいけない。魔法とスキルの正しい使い方(応用)を」

 

 

 

 淡々と、そう告げた。

 

 

 

 その言葉にザルドは眉を僅かに動かしたがそんな事を気にせず少年は言葉を続ける───。

 

 

 

「呪印状態、その発動条件はマインドダウン。発動の効果はステータスの向上と魔力(マインド)の回復」

 

 

 

 それはタクトが今現在持つ"魔法の知識"。そして、それを応用した技術。

 

 

 

「魔力の回復、これは自己精癒(時間経過)ではなく外部から供給、もとい吸収だ。身を置く環境が魔力が満ち溢れてほど吸収効率が良くなりダンジョンなら魔力切れになることはない」

 

 

 

 刀を握る右手を空へと伸ばし、まるで誰かに向けて説明するように言葉を並べる少年にザルドは疑問浮かべるが、それでも彼の話を聴き続けた。

 

 

 

「この時取り込む魔力は普段使っているものとは違い、魔石や天然武器(ネイチャーウェポン)のような自然に生まれた魔力、つまり既存(マインド)とは異なる別物、例えるなら自然エネルギーだ」

 

 

 

 

 それは、魔法に精通する冒険者でも知ることのない領域の話。それをまるで既知の事実を語るようタクトは静かに口を動かした。

 

 

 

「そんな呪印状態のデメリットは大きく分けて二つ。状態2の強制気絶(マインドダウン)と残虐性の付与だ」

 

 

 

 少年は、空へと伸ばした右手に魔力を込めた。天と地を繋ぐ一筋の糸を掴み取る様に。

 

 

 

「前者は使い所を間違えなければいい。後者は────」

 

 

 

 

『【正義の使徒】が使用されようとしています、許可しますか?』

 

 

《YES》

 

 

 

「──正義の使徒(打ち消せる)

 

 

 

 瞬間、少年の体からドス黒いオーラが溢れ出し、その身に小さな黒い炎の様な紋様幾つも刻んだ。

 

 

 

 

「準備ができた、ここから先全てが予定調和だ」

 

 

 

 

 少年はそう言ってザルドに嗤笑を向け、彼はそれを無言で受け止めて構えを取った。それは戦いが開始される事を意味する合図である。

 

 

 

「死ぬ気で来い小僧…。そして俺を楽しませ──「【神使の雷獣(テオス・カメーロパルダリス)】」─ッッ!!!」

 

 

 

 少年が何かを呟いた瞬間、空に雷光が走る。避けることを許さぬ雷獣が2人へと迫る。魔法の規模からみて回避は出来ないと悟ったザルドに残された道は───

 

 

 

「ッッ───!!!」

 

 

攻撃の一点のみ。大剣を振り上げると渾身の一撃を放つ───刹那。

 

 

 

「…流石」

 

 

 

 雷獣は二つに裂けた。

 

 

 

 

 ドォォォォォンッッッ!!!と、轟雷がザルドの鼓膜を震撼させ砂埃が舞い上げる。その衝撃により、彼は地面を大きく抉りながら吹き飛んだ。しかしそれはザルドに致命傷を負わせるには及ばず。その証拠に…

 

 

 

「クク、クハハハッ!!いい、実にいいぞ!!LV.2にしてこの破壊力とはなッッ!!」

 

 

 

 彼は何事も無かったかの様に立っていた。『多少痺れたぞ』と付け足すその口は嗤笑を浮かべながら告げた。

 

 

 

「だがまだまだ甘いな。この程度では足りん。見せてみろッッ!!俺を満足させられる程の力を!!」

 

 

 

 それはこれ以上甘やかすつもりはないと言う、ザルドからの最後の警告であった。その発言にタクトは───

 

 

 

「【千鳥(ちどり)】」

 

 

 と、小さく口にした。そして彼の体が雷を纏った瞬間、タクトはザルドの背後へと移動していた。

 

 

 

「いい速度だ、だが」

 

 

 

 しかし相手はザルド(LV.7)、そう動く事が分かっていたかのように体を僅かに捻らせ大剣を走らせる。

 

 

 

 そして常人には視認できぬほどの速度で振るわれた大剣は正確にタクトの胴体を捉えていた───

 

 

 

 

───筈だった。

 

 

 

「…ほう」

 

 

 

 

 迫る横薙ぎ()をタクトは刀で弾いてみせた、直後その反動によりザルドの体が大剣を掲げ少し宙へ浮き───。

 

 

 

 

「──雷切」

 

 

 

「!!」

 

 

 

 瞬きよりも速い刹那の抜刀。鞘から抜かれた黒刀が雷を纏い、今度はザルドの胴体へと迫る。

 

 

 

(納刀が見えなかった、いや、納める動き(モーション)が無かったと言うべきだろうな……)

 

 

 

 ザルドが今現在持つ情報では到底理解できない"速さ"そして"技術"。ザルドは内心舌を巻いていた。が、しかしそれは剣を弾いた事に加え納刀の動作が無かったことに対してであり、決して自身に迫る一刀に対してではない……。

 

 

 

(既に3種の魔法を見せている、スキルと考えるべき──いや違うな)

 

 

 

 

 冒険者が覚えられる魔法は魔導士(マジックユーザー)であっても最大数は3つであり、それ以上は九魔姫(ナイン・ヘル)の様な一つの魔法からなる派生。

 

 

 

 

(ステータスに恵まれている様だが……惜しいな)

 

 

 

 

─── ガキンッ!!と刀が弾かれる音が響き渡ると同時。ザルドは自身の胴体から数センチの位置で止まる刃を目にしながら拳を構え

 

 

 

 

「無駄だ、この鎧の前では生半可なエンチャントでは太刀打ちできんぞ」

 

 

 

と、そう言い放った。

 

 

((パワー)が足りん。LV.2…いや、今は擬似的にLV.4程度か?、それでも駆け出しには酷な話だ…)

 

 

 

 

「次に相まみえる時までにせいぜいステータスを上げておけ…後輩(ルーキー)

 

 

 

 その一言と共にLV.7によるステータス任せの1発(拳)が振り抜かれる。

 

 

 

 

そして次の瞬間にタクトは自身の腹部に衝撃を感じて吹き飛ば──されることはなかった。

 

 

 

 

「……なに?」

 

 

 

 ザルトは目の前の事象に驚きをみせた。それもそうだろう、何故なら。

 

 

 

 

「っ…ギリギリ、だな……」

 

 

 拳はタクトの腹部へ当たる直前で止まっていたのだ、いや正確に言うのならタクトの右手に掴まれる形で止められていた。

 

 

 

「そういう仕組みか…!!」

 

 

 

「……()()()俺の切り札の一つだよ───」

 

 

 

 少年は、まるでその力を誇示するかの様に笑った。そして次の瞬間───

 

 

 

───ぶっ飛びやがれ。

 

 

「【衝撃(インパクト)】」

 

 

 

 ザルドの拳とタクトの手、その接触面から衝撃が迸り、ザルドは大きく後方へと吹き飛ばされる。その勢いは地面を大きく抉りながら砂埃を巻き込み、20にも及ぶ建物を巻き込み(破壊して)その勢いを止めた。

 

 

 

 

「ッ……腕が折れたな。仕方がなかったとはいえ魔力を込めすぎた」

 

 

 

 

 視界の悪い中、タクトは折れた右腕に視線を向け、静かに呟いた。しかしその顔は苦痛に歪んではいるものの何故か口角が上がっている。

 

 

 

(まあいい、これくらいなら4、5分もあれば治る……問題は──)

 

 

 

 

───撃たされるであろう、最後の一撃。

 

 

 

 少年は小さくため息を吐く。するとその時、晴れ始めた砂煙から声が響いてきた。

 

 

「クハハハハ!!いいぞ後輩(ルーキー)!!」

 

 

 

 それは、まるで少年(タクト)の行動を楽しんでいるかの如く、その声の主は無傷で嗤っている。

 

 

 

「ハハハ……最初は派生だと考えたが違う、お前は既に少なくとも5つの魔法を習得しているな?」

 

 

 

「……」

 

 

 

「無言ということは肯定とみなす。そして、お前が今しがた見せた魔法は"磁力"だ」

 

 

 

(……流石)

 

 

 

「黙ってる意味もない…か。正解ですよ」

 

 

 

  もう隠すつもりも無いとタクトは口を開く。

 

 

 

「【磁石の戦士(バルキリオン)】」

 

 

 

 そう呟いた瞬間、タクトの足下に転がる瓦礫が宙に浮く。それを見たザルドは『やはりか』と納得した様子で頷いた。

 

 

 

「S極とN極、俺の半径1m内に存在している物質に最大4つまで付与できる。仕組みは磁石と同じだが、磁力に関しては付与する際の魔力量に左右する」

 

 

 

 そうタクトが説明した瞬間、宙に浮かんでいた瓦礫は力を失った様に地面へと落ちて転がった。

 

 

 

「俺の剣を弾いたのは武器に同じ記号を付与し、拳を受け止めお前が弾かれなかったそれも」

 

 

 

「アンタの拳と俺の手にSマーカーをつけ、俺の足と地上を引き合わせた」

 

 

 

「ほう……最後に二つ聞かせろ。答え次第では一旦見逃してやらんこともない」

 

 

 

「納刀についてならスキルの応用だ、仕舞って、出す。それ以上は話す意味もないし時間が勿体無い」

 

 

 

 少年のその一言で全てを察した様に、ザルドは少し残念そうに、そして期待通りだとでも言いだけな表情でタクトを見据え……。口を開いた。

 

 

 

「そうか、では最後の質問だ……お前が最初に使用したあの魔法、あれは──」

 

 

 

 

呪詛(カース)だな?──と

 

 

 

「……」

 

 

 

 その問いかけに、少年は黙ってしまった。そしてザルドは、少年のその態度に『なるほど』と小さく口にして笑う。

 

 

 

「効果とペナルティまでは聞くまい、それを聞いてしまえば取引の意味が無くなってしまいそうだ」

 

 

 そう言って、ザルドはゆっくりと大剣を地面へと突き刺し、

 

 

 

「最後にお前の持つ全てを使い最高の一撃を俺に見せてみろ、さすれば今だけは見逃してやろう」

 

 

 

 

 1歩後ろへと下がり、そう口にしたザルド。

 

 

 

「……」

 

 

 

 『今だ、やれ』と、その目が少年に伝えている。そしてタクトはそれを理解して小さく息を吐き……。

 

 

 

「……ついでだ、しっかり聞け」

 

 

 

 そう言って、まるで独り言を聞かせるかのような静かな声音を発した。

 

 

 

「千鳥は唯の攻撃魔法じゃない、エンチャット(付与魔法)だ。この違いは理解しておけ、この先必ずお前の武器となり、お前を蝕む呪いになる」

 

 

 

 

 そう言って……、少年の雰囲気は一変した。その小さな体のどこから出るのか、濃密な魔力が溢れ出して周囲に漂い始めた。その変化が意味する事とは───。

 

 

 

 ザルドは口角を歪め笑みを浮かべる。

 

 

 

(やはり、まだ先を持っていたか)

 

 

 

「千鳥は重ねがけ(連続付与)が出来ない。正確には発動中に再使用すると前者は少しして解除されてしまう、だから───」

 

 

 

 直後、何かを感じ取ったザルドは確信したかのように口角を大きく上げて叫んだ。

 

 

 

「撃ってこいお前の全力をッ!!」

 

 

 

───これが答えだ。

 

 

 

「【千鳥・五重(クインティ)】」

 

 

 

 瞬間、少年を右脚を中心に雷が迸る。それは先程とは比べ物にならないほど強く激しいもので、それは最早稲妻と呼ぶにはあまりにも大きく───。その光は、その一撃の恐ろしさをまざまざと見せつけていた。

 

 

 

(重ね掛けではなく同時発動か──面白い)

 

 

 

 

 そしてザルドは歓喜に満ち溢れていた、久しい戦いに、強者との勝負に……。

 

 

 

 

「「──────ッッッ!!!!」」

 

 

 

 2匹の雄はその一撃を前にただ叫ぶ。

 

 互いの全力、そして己の意地を見せ付けるが如く─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クハハハハッ!!」

 

 

 瓦礫とかした街の一角。砂煙が晴れ、再び姿を現したザルドはどこか清々しそうに笑った。

 

 

 

 

「まさかLV.2が俺の骨にヒビを、鎧が無ければ折れていた、か……」

 

 

 

 もう使い物にならんな……と言いながら籠手を外す。

 

 

「次に相まみえた時は俺も全力を尽くそう。後輩」

 

 

 大剣を背に担ぎ移動し始めたザルドの視界は雷を纏い走り去る少年の背を捉え続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲

 

 

 

 

「走れ…急げ…跳べっ……!」

 

 

 

 

 少年が走る、雷に包まれ。その身を稲妻の様に、速く跳ねさせ。

 

 

 

(くそ……っ)

 

 

 

 

 裾から見える右腕と左足は紅く染まっており、唯一無事に見える右脚からは血が滴り落ちている。

 

 

 

(時間を使いすぎたッ…!!)

 

 

 

 一歩でも踏み間違えればその身を宙に舞わせてしまうだろうその状態で少年は駆ける。その理由は一つ、少年の視界に映り込んだ一つの人影がそうさせていた。……少年は目的地へと辿り着いたのだ。

 

 

 

 

 

─── ドサッ!!と、少年が地面へと倒れ込むと同時、一人の少女が少年に駆け寄った。

 

 

 

 すると少女は、その血塗れの姿を見て、驚き、目を大きく見開いた。そして

 

 

 

 

「タクト君ッ!!?」

 

 

 

 少年は、その声を聞くと安心したかの様に小さく笑って、

 

 

 

 

間に合った(アーディ)……」

 

 

 

  そう呟いた。

 

 





完結までいけば未来編書きたい。


次回、友だったもの。


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