ありふれた魔術師が世界最強になるのは間違っていない 作:ミーラー
令呪の設定を少し変えました。
最初はもともと発現した状態で話を進めていたのですが、奈落に来てから発現した。
という形にしました。
もう手遅れ感ありますが一応編集しましたので気になったら見て下さい。
まぁ見なくても今後にめちゃくちゃ関わってくる事ではないので、気にしなくても大丈夫です。
この件は自分の知識不足でした。申し訳ないです。
二人が拠点に戻り、技能の鍛錬を始めてから数日が経った。
どの技能も順調に成長している。その中でもハジメの錬成と俺の鑑定に変化があった。なんと派生技能が付いたのだ。ハジメの錬成には〝鉱物系鑑定〟がついた。王都の王国直属の鍛冶師達の中でも上位の者しか持っていないという技能だ。
俺は鑑定に〝解析〟言語理解に〝速読〟がついた。まず解析は、自分より圧倒的に強い魔物のステータスや、魔力、異常のある場所、技能の効果や使い方など、あらゆる事を解析し、見ることが出来る。まぁ、圧倒的に強い魔物と言っても、まだ二尾狼しか鑑定したことないんだが……
この解析をつけることが出来たのは、魔力操作を取得出来たことが大きいだろう。魔力操作は文字通り魔力を直接操作できる。これによって魔力による脳の強化が可能になり、解析による多大な情報処理に少しは耐えられるようになった。まぁ使い過ぎると頭が痛くなるんだが……
そして、言語理解に速読がついたことで、解析からの情報を一瞬で読み取る事が可能になった。正直めちゃくちゃ助かってる。
トータスに来て二週間たった頃に言っていた、"情報を一瞬で読み取る"を、何とか成功させた形だ。
早速、俺達は周囲の物を、片っ端から調べることにした。例えば、緑光石に鉱物系鑑定を使うとステータスプレートにこう出る。
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緑光石
魔力を吸収する性質を持った鉱石。魔力を溜め込むと淡い緑色の光を放つ。
また魔力を溜め込んだ状態で割ると、溜めていた分の光を一瞬で放出する。
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なんとも簡易な説明だ。だが、十分にありがたい情報である。
ハジメはニヤリと悪巧みを考えついたように笑った。それからもあちこち役立ちそうな鉱物を探して彷徨っていると、遂に、ハジメの相棒にして切り札となる武器を作るために必要な鉱物を発見した。
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燃焼石
可燃性の鉱石。点火すると構成成分を燃料に燃焼する。燃焼を続けると次第に小さくなり、やがて燃え尽きる。密閉した場所で大量の燃焼石を一度に燃やすと爆発する可能性があり、その威力は量と圧縮率次第で上位の火属性魔法に匹敵する。
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ハジメはこの説明を見た瞬間、脳内に電流が走ったような気がした。
燃焼石は地球で言うところの火薬の役割を果たせるのではないか? だとしたら、攻撃には使えない錬成で最大限の攻撃力を生み出せるかもしれない! と。
ハジメは興奮した。作製するには多大な労力と試行錯誤が必要だろうが、それでも今まで自分を幾度となく救ってくれた錬成で、遂に攻撃手段を得ることができるかもしれないということが堪らなく嬉しかったのだ。
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タウル鉱石
黒色で硬い鉱石。硬度8(10段階評価で10が一番硬い)。衝撃や熱に強いが、冷気には弱い。冷やすことで脆くなる。熱を加えると再び結合する。
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そして、寝食を忘れてひたすら錬成の熟達に時間を費やした上、何千回という失敗の果てに、ハジメは遂にとある物の作製に成功した。
全長は約三十五センチ、この辺りでは最高の硬度を持つタウル鉱石を使った六連の回転式弾倉。長方形型のバレル。弾丸もタウル鉱石製で、中には粉末状の燃焼石を圧縮して入れてある。
すなわち、大型のリボルバー式拳銃だ。
しかも、弾丸は燃焼石の爆発力だけでなく、固有魔法〝纏雷〟により電磁加速されるという小型のレールガン化している。その威力は最大で対物ライフルの十倍である。ドンナーと名付けた。なんとなく相棒には名が必要と思ったらしい。
「……これなら、あの化け物も……脱出だって……やれる!」
ハジメはドンナーの他にも現代兵器を参考に作った兵器を眼前に並べて薄らと笑った。
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ハジメが銃を作り始めてから俺が何をしていたのかと言うと、もちろん鍛錬だ。魔術の鍛錬ももちろんしていたのだが、それよりも、令呪と莫大な魔力を得た俺がする事と言えば一つしかない。
サーヴァント召喚だ。
ついにこの時が来た。
サーヴァント召喚をするにあたって重要な事はただ一つ、とにかく意識を失わないことだ。
魔力枯渇を起こさずに、最後まで意識を待たせる。そうすれば、召喚詠唱補助も発動してくれるだろう。
そして肝心の魔力についてだが、令呪の魔力と魔法回路の魔力生成、それに高速魔力回復を合わせて、サーヴァント召喚を行う。
解析を使った結果、それなりの確率で成功するとの事。
「令呪使用。全三画を自身の魔力へ」
令呪三画の魔力が身体の中を満たし始める。
俺は意を決して、召喚魔法陣を描き詠唱を開始した。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。
降り立つ風には壁を。
四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ……ッ!?」
俺は詠唱を紡ぐ。召喚陣が淡く輝きはじめると同時に、いきなりごっそり魔力を持っていかれ目眩がした。
俺はすかさず"高速魔力回復"を発動する。
身体中が一瞬の内に魔力で満たされる。
しかし、増えた魔力が次の瞬間には失われていく。ここからは完全に持久戦だ。
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を…破却…する」
詠唱に関しては、技能の召喚詠唱補助のおかげもあり、頭の中に詠唱する文字が浮かび上がり、口を動かす動作や、発声も補助してくれている。
「告げる。汝の身は…我が下に、我が命運は…汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、理に従うならば…応えよ」
頭はガンガンするし目眩もするが、何とか意識を保っている。
「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者」
ここで俺は、あるサーヴァントの事を想像しながら詠唱する。
「されど汝は…その眼を混沌に曇らせ…侍るべし。
汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を…手繰るもの」
もし…彼女が来てくれるなら…
今度こそ…
幸せになって欲しい…
報われて欲しい…
そして…ずっと……
笑っていて欲しい…
いつの日か思った思いを自身の心に宿し、最後の詠唱を紡いだ。
「汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
そう言った瞬間とてつもない光量が溢れ出した。
暫くして光が収まると、召喚陣の中に人の影があることに気づいた。
そのシルエットを見た瞬間、召喚に応じてくれたのが彼女だと確信した。
綺麗で長い銀髪、雪のように白い肌、厳しくも美しい顔立ち、黒を基調に所々に水色をあしらったドレス、特徴的な黒い槍を手に持った女性。
「バーサーカー、モルガン。召喚に応じ参上しました。ようやく会えましたね、我が夫。」
そう言ってモルガンは微笑んだ。
それを見た瞬間、とてつもない安堵感と疲労によって意識を手放した。