ありふれた魔術師が世界最強になるのは間違っていない   作:ミーラー

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モルガンPU来ましたね!
めでたいと言う事でこっちも一区切りの所まで行きましょう!


第27話 最奥のガーディアン

 

 

 

エセアルラウネを瞬殺し、モルガンが可愛くなってから随分経った。あの後、しばらく全く目を合わせようとしてくれなかったが、階層を突破する頃には直っていた。

 

そして遂に、次の階層で俺達が最初にいた階層から百階目になるところまで来た。その一歩手前の階層でハジメは装備の確認と補充、俺は自分の実力確認のためモルガンに修行をつけてもらっている。

 

「攻めが甘いですよ。我が夫」

 

「っ!くそっ!」

 

つ、強すぎんだろ!とんでもない手数の多さだ。今までも何度も手合わせしているが、最近はかなりハードになっている。鍛錬を始めてから九割がモルガンの攻撃と言っても過言では無い状況だ。それほどにモルガンの攻めは暇がない。何とか躱し、迎撃して対応しているが、攻撃に転じることが出来ない。一瞬の攻撃の合間に一撃入れられたらいい方だ。だが、その攻撃もモルガンに届くことはなく、逆にこちらに返される。

 

モルガンが何も無い空間に槍を突き刺す。すると背後から槍が現れ、俺の頭を串刺しにするべく襲ってくる。俺は万能感知を使って紙一重でこれを避ける。

 

「モルゴース」

 

体勢を立て直し、モルガンの方を向くと既に漆黒の波が俺に押し寄せて来ていた。俺は縮地を使い回避し、攻撃に転ずる。手の平サイズの火球を作り出し発射する。

 

「アコーロン」

 

そう唱えられた瞬間、発射された火球の魔力が吸い取られ、炎の輝きは消え失せ消滅した。モルガンは吸い取った魔力で、俺よりも大きな火球を作り出し放って来た。

 

俺はこれを水属性魔術の吸収の特性と、虚数魔術の虚数空間を合わせ、火球を取り込む事で対処する。すぐに反撃しようと、今度は熱線攻撃を発動しようとしたが、モルガンの杖が地面に突き立てられているのを見て動きを止める。

 

「っ!?」

 

直後、俺の頭上に超巨大な魔力の塊が現れ、落ちてくるのを感じた。咄嗟に縮地を発動し回避しようとするが、少し遅く、巨大な槍の形を型どった魔力の塊が地面に突き刺さる。

 

「くっ!」

 

その衝撃で吹き飛ばされた俺は、なんとか受身をとり、すぐに状況を確認しようと顔を上げたが、既にモルガンの姿はなかった。それを認識した瞬間、俺の首に漆黒の剣が添えられた。

 

「私の勝ちですね?」

 

「ああ、降参だ」

 

正直、勝てる気がしない。モルガンはまだ分身を使ってない上、宝具も展開していない。魔物を喰らって強くなったとはいえ、モルガンからすればまだまだ俺は弱い。俺が目指す強者への道のりはどうやらかなり遠そうだ。

 

「我が夫は確実に強くなっています。自信を持ちなさい」

 

「そうは言っても、最近ずっとボコボコにされっぱなしなんだけど……」

 

「我が夫はいじめがいがあり、楽しいですので」

 

いや…そんなこと微笑みながら言われても……

 

「それに嬉しくもあるのです。我が夫の成長を傍で見られる事が」

 

モルガンに修行をつけられてから、かなりの実力の伸びは俺も感じている。モルガンからすれば、修行をつけている弟子が成長する姿を見て、嬉しく思う心境なのだろう。本当にモルガン様様だ。

 

「そう…か。なら、また修行を頼むモルガン」

 

「ええ、もちろん構いません。いつでも受けてたちます」

 

モルガンがかなり張り切っているような気がするが気のせいだろうか?未来の俺の運命や如何に……

 

その後、俺とモルガンは鍛錬を切り上げ、ハジメ達のいる拠点へと戻った。

 

拠点に戻った時には、ハジメの準備も終わっていたので、俺達は次の階層へと続く階段へ向かった。

 

その階層は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。柱の一本一本が直径五メートルはあり、一つ一つに螺旋模様と木の蔓が巻きついたような彫刻が彫られている。柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。天井までは三十メートルはありそうだ。地面も荒れたところはなく平らで綺麗なものである。どこか荘厳さを感じさせる空間だった。

 

俺達が、しばしその光景に見惚れつつ足を踏み入れる。すると、全ての柱が淡く輝き始めた。ハッと我を取り戻し警戒レベルを上げる。柱は俺達を起点に奥の方へ順次輝いていく。

 

俺達はしばらく警戒していたが特に何も起こらないので先へ進むことにした。感知系の技能をフル活用しながら歩みを進める。二百メートルも進んだ頃、前方に行き止まりを見つけた。いや、行き止まりではなく、それは巨大な扉だ。全長十メートルはある巨大な両開きの扉が有り、これまた美しい彫刻が彫られている。特に、七角形の頂点に描かれた何らかの文様が印象的だ。

 

「……これはまた凄いな。もしかして……」

「……反逆者の住処?」

 

ハジメとユエの意見はおそらくあっているだろう。いかにもラスボスの部屋といった感じだ。実際、感知系技能には反応がなくとも俺の本能が警鐘を鳴らしていた。この先はマズイと。それは、ハジメとユエも感じているのか、うっすらと額に汗をかいている。いつも通りなのはモルガンくらいだ。

 

「ハッ、だったら最高じゃねぇか。ようやくゴールにたどり着いたってことだろ?」

 

ハジメは本能を無視して不敵な笑みを浮かべる。たとえ何が待ち受けていようとやるしかないのだ。

 

「……んっ!」

 

ユエも覚悟を決めた表情で扉を睨みつける。

 

そして、四人揃って扉の前に行こうと最後の柱の間を越えた。

 

その瞬間、扉と俺達の間三十メートル程の空間に巨大な魔法陣が現れた。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。

 

俺とハジメは、その魔法陣に見覚えがあった。忘れようもない、あの日、俺達が奈落へと落ちた日に見た自分達を窮地に追い込んだトラップと同じものだ。だが、ベヒモスの魔法陣が直径十メートル位だったのに対して、眼前の魔法陣は三倍の大きさがある上に構築された式もより複雑で精密なものとなっている。

 

「おいおい、なんだこの大きさは?」

「マジでラスボスかよ」

「……大丈夫……私達、負けない……」

「ええ、勝利は約束されています」

 

俺とハジメが流石に引きつった笑みを浮かべるが、モルガンは微笑みながら俺の手をしっかりと握り、ユエは決然とした表情を崩さずハジメの腕をギュッと掴んだ。

 

モルガンとユエの言葉に「そうだな」と頷き、俺とハジメも魔法陣を睨みつける。どうやらこの魔法陣から出てくる化物を倒さないと先へは進めないらしい。

 

魔法陣はより一層輝くと遂に弾けるように光を放った。咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにする。光が収まった時、そこに現れたのは……

 

体長三十メートル、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。例えるなら、神話の怪物ヒュドラだった。

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

不思議な音色の絶叫をあげながら六対の眼光が俺達を射貫く。身の程知らずな侵入者に裁きを与えようというのか、常人ならそれだけで心臓を止めてしまうかもしれない壮絶な殺気が俺達に叩きつけられた。

 

同時に赤い紋様が刻まれた頭がガパッと口を開き火炎放射を放った。それはもう炎の壁というに相応しい規模である。

 

俺達は同時にその場から飛び退き反撃を開始する。俺の熱線が白く輝きながら赤頭の首に接触した。そのまま首を飛ばすかと思ったが、実際は軽く火傷を負わせる程度だった。どうやら火属性の魔法を使うからか、火属性への耐性があるようだ。

 

だが、そこはハジメがカバーする。ハジメのドンナーが火を吹き電磁加速された弾丸が超速で赤頭を狙い撃つ。弾丸は狙い違わず赤頭を吹き飛ばした。

 

まずは一つとハジメが内心ガッツポーズを決めた時、白い文様の入った頭が「クルゥアン!」と叫び、吹き飛んだ赤頭を白い光が包み込んだ。すると、まるで逆再生でもしているかのように赤頭が元に戻った。白頭は回復魔法を使えるらしい。

 

ハジメに少し遅れてユエが緑の文様がある頭、モルガンが青の文様がある頭を吹き飛ばしたが、同じように白頭の叫びと共に回復してしまった。

 

その直後、ハジメから〝念話〟が送られてきた。

 

〝あの白頭を狙うぞ! キリがない!〟

〝んっ!〟

〝了解!〟

〝それがいいでしょう〟

 

回復した赤、青、緑の頭を俺とモルガンが引きつける。その間にハジメとユエが白頭を狙う。

 

ドパンッ!

 

「〝緋槍〟!」

 

閃光と燃え盛る槍が白頭に迫る。しかし、直撃かと思われた瞬間、黄色の文様の頭がサッと射線に入りその頭を一瞬で肥大化させた。そして淡く黄色に輝きハジメのレールガンもユエの〝緋槍〟も受け止めてしまった。衝撃と爆炎の後には無傷の黄頭が平然とそこにいてハジメ達を睥睨している。

 

「ちっ! 盾役か。攻撃に盾に回復と実にバランスのいいことだな!」

 

ハジメが悪態をつくが、本当に面倒な相手だ。

 

俺は手の平に小さな火球を作り、どんどん魔力を注ぎ込む。小さかった火球はどんどん膨張し巨大になっていく。自分の制御できる最大の大きさになった時には、直径十メートルを超えるほどになっていた。

 

俺はそれを白頭に向かって投げつける。

 

黄頭は白頭を守るため、俺の攻撃を受け止める。巨大な爆発が起こり、流石に今度は無傷とはいかなかったのか黄頭は丸焦げになっていた。

 

「クルゥアン!」

 

すかさず白頭が黄頭を回復させる。全くもって優秀な回復役だ。しかし、その直後、白頭の頭上でハジメの投げた〝焼夷手榴弾〟が破裂した。摂氏三千度の燃え盛るタールが撒き散らされる。白頭にも降り注ぎ、その苦痛に悲鳴を上げながら悶えている。

 

唐突に訪れたチャンス。これを逃さないため、モルガンに視線を送り、ハジメ達に〝念話〟で合図を送ろうとした時、絶叫が響いた。ユエの声だ。

 

「いやぁああああ!!!」

「!? ユエ!」

 

ハジメが反応し駆け寄ろうとする。それを邪魔するように赤頭と緑頭が炎弾と風刃を無数に放ってくる。だが俺とモルガンがそれをさせない。

 

「ハジメここは任せろ!」

「ユエの元に行きなさい」

「ああ!助かる!」

 

どうやらユエは黒頭に何かされたようだ。おそらく暗示か、デバフなどの攻撃だろう。

 

俺とモルガンはとにかく時間を稼ぐため、敵の攻撃を引きつける。

 

「モルガン!赤頭を頼む!」

 

「ええ、我が夫も気をつけて」

 

俺は青頭と緑頭を熱線攻撃で首を飛ばす。モルガンは空間に槍を突き刺し、赤頭の背後に槍の攻撃転移させる事で倒す。更に槍に魔力を込め、地面に突き立てる。すると、白頭の頭上に巨大な槍を出現させる。俺との鍛錬中に使った技だ。

 

放たれた槍は狙い違わず白頭に突き刺さる。あとは黄頭と黒頭だけ。ここで畳み掛けようと勝負に出た時、黒頭がハジメ達のいた方から吹き飛ばされてきた。

 

黒頭は俺に眼を向けてくる。すると、過去の出来事が一気に蘇ってくる。信じていた人に拒絶された過去を再生され、胸の中に不安が湧き上がってくる。そして気づけば、モルガンが一人前を歩いていた。

 

「モルガン!」

 

俺はモルガンの名を呼び、手を伸ばした。だが、その手は叩き落とされた。

 

「気安く私に触れるな。お前のような弱者が私の隣に立てるなど、本当に思っていたのか?」

 

「っ!?」

 

俺は…モルガンに拒絶された…のか?

 

『また…失うのか?』

 

俺は呆気に取られたまま、歩いて行くモルガンの背中を見つめる。

 

『また…繰り返すのか?』

 

今までの俺なら"押してダメなら諦めろ"と言って、手を下ろしていたかもしれない。

 

『また…諦めるのか?』

 

次々と自分自身に問われる疑問。

 

『失いたくない!』

 

『繰り返したくない!』

 

『諦めたくない!』

 

俺の気持ちが、心が、そう叫んでいる!

 

俺は誓ったはずだろ?モルガンが手を伸ばした時、必ずその手を掴むと。

 

 

だから!

 

 

俺は必死に目の前を歩くモルガンに手を伸ばす。

 

たとえモルガン本人に拒絶されたとしても…

嫌われたとしても…

必ず!

 

俺はモルガンの手を掴んだ。

 

その瞬間、だんだんと目の前の空間にヒビが入りだし、ガラスが割れるような音と共に辺りが光に満ちる。

 

そして最後に、俺は自分自身に問う。

 

俺はモルガンをどう思っている?

 

俺はモルガンを尊敬している。でもそれ以上に、愛おしくてたまらない。

モルガンの隣にいたい。ずっと手を繋いでいたい。そしてずっと笑いあっていたい。

 

ボヤけた視界が回復し始め、目の前に、美しいモルガンの顔がいっぱいに映る。

 

「我が夫?大丈夫ですか?」

 

「ああ、問題ない」

 

「我が夫の先程の気持ち、全て私の中に流れ込んできました。やはり、私の夫は生涯唯一貴方だけです。愛していますよ。我が夫」

 

「俺は……モルガンを」

 

俺はモルガンを見つめ、心を決めると、モルガンの顔に自分の顔を近づけ、優しい口付けをした。モルガンは少し目を見開くが、すぐに受け入れてくれた。

 

俺は何をカッコつけているのだろか……恥ずかしくて死にたいが気分だが、これが今の俺の気持ちだ。

 

数秒の触れ合うだけのキス。離れてからも俺に視線を向けてくるモルガンだったが、俺はあまりの恥ずかしさに目線を逸らして言った。

 

「これが今の俺の気持ちだ」

「我が夫…まぁ及第点と言った所でしょうか。次はしっかりと言葉で伝えるように」

「ちょっとそれはハードル高すぎませんかね?モルガンさん?」

 

俺達はお互いに微笑むと、気持ちを切替える。

 

すると、俺の右手が何かを握ってることに気づいた。

 

「我が夫、その剣は…」

 

「どうやら、俺達の勝利は本当に約束されているらしいな」

 

ここに来てやっと成功したようだ。召喚魔法の派生技能

 

ーー〝想像召喚〟

 

俺は視線をヒュドラに向け、その漆黒の剣を構える。すると、剣が赤黒く輝き、紫電が放出される。俺の魔力をどんどん吸い上げ、剣に魔力が渦巻き、輝きはより大きく増していく。

 

モルガンが戦っているハジメ達を離脱させたのを確認した俺は、手に取る奇跡の真名を謳う。

 

「卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め!」

 

魔力の高まりから、不味いと本能で察したのか、ヒュドラがこちらに一斉攻撃して来る。

 

だが、それがどうした?

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)!」

 

詠唱と共に剣を振り抜いた瞬間。禍々しく光る赤黒い魔力光がヒュドラの攻撃を全てかき消し、そのままヒュドラの巨体を呑み込んでいく。まるで階層全体が地震でも起こしたかのように激しく震動する。

 

跡には頭部だけが綺麗さっぱり消滅したヒュドラと、どこまで続いているかわからない深い穴の空いた壁だけだった。

 

あまりの威力に呆気にとられたまま動かないハジメとユエ。今まで苦戦を強いられていた相手が、一撃のもと切り伏せられたのだから仕方ないことだろう。

 

だが、技を放った八幡の方はかなり消耗していた。

 

「くそ…一気に魔力を使い過ぎたか?」

 

頭がガンガンするし、倦怠感も凄い。まだ、倒れるわけには行かないってのに、身体が言うことを聞かない。そうだ、まだ終わってない。さっき解析した時に、ヤツの身体の中に、もう一つ首が埋まってるのが見えた。

 

三人が頬を緩めながら戻ってくる。

 

「我が夫、お疲れ様でした」

 

モルガンが労ってくれているが、俺は構わず叫ぶ。

 

「ハジメ!まだ終わってない!」

 

俺の言葉に、ハジメ達がヒュドラの方に振り返る。その直後、音もなく七つ目の頭が胴体部分からせり上がり、俺達を睥睨していた。

 

七つ目の銀色に輝く頭は、予備動作もなしに極光を放った。

 

俺は自身に令呪を使用し、魔力を回復させ、モルガンと極光の間に割り込んだ。ハジメもユエの前に立ち塞がる。

 

俺は聖剣に魔力を集め極光を弾く。そして、魔力を回し〝オシリスの塵〟を発動してハジメに付与する。だが、極光は止まらなかった。咄嗟の事で聖剣に魔力が集まり切っていないのもあり、防ぎきれない分の余波が俺にダメージを与えてくる。

それにハジメに付与した無敵も、一瞬の内に消し去ってしまった。

 

この極光、無敵貫通の効果があるのか!?

 

俺はこの状況はマズいと判断し、聖剣に魔力を集中させそれを爆発させる。

 

衝撃波で吹き飛ばされるが何とか立ち上がる。

 

「我が夫!」

 

「俺は大丈夫だ!問題はハジメの方だ!」

 

光が収まったあとハジメは最初に立ち塞がった場所から動いていなかった。仁王立ちしたまま全身から煙を吹き上げている。地面には融解したシュラーゲンの残骸が転がっていた。

 

「ハ、ハジメ?」

「……」

 

ハジメは答えない。そして、そのままグラリと揺れると前のめりに倒れこんだ。

 

「ハジメ!」

 

ユエが叫びながら駆け寄る。俺とモルガンも続いてハジメの容態を確認する。

 

うつ伏せに倒れこむハジメの下からジワッと血が流れ出してくる。俺の〝無敵〟とハジメの〝金剛〟を突き抜けダメージを与えたのだろう。もし、ユエの〝蒼天〟にもある程度は耐えたサソリモドキの外殻で作ったシュラーゲンを咄嗟に盾にしなければ即死していたかもしれない。

 

ユエは急いで神水を飲ませようとするが、そんな時間をヒュドラが待つはずもない。今度は直径十センチ程の光弾を無数に撃ちだしてきた。まるでガトリングの掃射のような激しさだ。

 

「モルガン!ここは俺が何とかする!だからユエを手伝ってやってくれ!」

 

「しかし我が夫は…」

 

「モルガン…頼む」

 

俺のその言葉に頷いたモルガンは、ハジメを担ぐユエを支えながら柱に隠れる。

 

「さて…じゃあ、やりますか」

 

「クルゥァァアアン!!」

 

ヒュドラが咆哮を上げると、俺に向けて集中的に、光弾を撃ちだしてきた。俺はそれを思考加速と万能感知によって完璧に躱す。そして、縮地と空力を使い、ヒュドラの不意をつく形で着実にダメージを与えていく。

 

いくら俺の魔力が無制限に湧き出て来ると言っても、宝具の連発はあまり出来ない。令呪の魔力も一度目の宝具使用と、極光を防ぐのにほとんど使ってしまった。だから今俺のすべき事は、ハジメを復活させるための時間稼ぎだ。そして、時間が経てば俺の魔力も回復していく。

 

俺はとにかくヒットアンドアウェイを愚直にこなしていく。避け。攻撃する。避け。攻撃する。これを無心でこなしていく。

 

俺は時間の感覚も忘れ、何十回、何百回とヒットアンドアウェイを続けたその時、銀頭の頭に巨大な槍の形をした魔力が落ちた。そして、待ちわびた人達の声が聞こえた。

 

「お待たせしました。我が夫」

「待たせたな八幡」

「ん!」

 

どうやら全員、一応無事のようだ。

 

「ハジメ、大丈夫なのか?」

「ああ、むしろ身体が軽いくらいだ」

 

全く大丈夫そうな見た目じゃないが、大丈夫らしい。

 

「さて、反撃開始と行くか!」

 

ハジメの宣言に全員が頷く。俺達が全員揃い、戦闘態勢に入ったのを感じたヒュドラは、更に攻撃の密度を上げてきた。

 

しかし、全員が揃った時点でヒュドラの敗北は決定した。

 

「錬成!」

 

ハジメが詠唱すると地面が隆起し始める。そして、所々に杭のような形状に変化させる事で、しっかりとヒュドラを封じ込める。更にそこに爆薬など類いも忘れずに置いていく。

 

「蒼天!」

 

ユエが詠唱を唱えると、青白い太陽が出現し身動き取れない銀頭に直撃する。ハジメの置いていった爆薬などにも連鎖的に爆発していき、銀頭に少なくないダメージが入る。

 

「残りの令呪を全て使用!モルガンの魔力へ!」

 

そこまで残っていない令呪の魔力をモルガンに譲渡する。しかし、これで十分のようだ。モルガンは詠唱を始める。

 

「それは絶えず見た滅びの夢、報いはなく、救いはない。最果てにありながら、鳥は明日を歌うでしょう。はや辿り着けぬ理想郷(ロードレス・キャメロット)

 

結晶体の柱が銀頭を囲うように出現する。その直後、銀頭に高密度の魔力が降り注がれる。その攻撃は銀頭の防御を容易く突き抜け、跡形もなく消し去った。

 

感知系技能からヒュドラの反応が消える。今度こそヒュドラの死を確信した俺とハジメは、そのまま後ろにぶっ倒れた。

 

「我が夫!」

「ハジメ!」

 

「「流石に……もうムリ……」」

 

モルガンが俺の元に駆け寄ってくる姿を最後に、俺は意識を手放した。

 

 

 

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