ありふれた魔術師が世界最強になるのは間違っていない   作:ミーラー

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第3話 ステータスプレート(1)

 

 

 

今俺達は神山という山にいるらしい。そしてこれから、ハイリヒ王国という国に行くそうだ。

どうやら教会側は、俺たちが戦う術を持たない事が分かっていたみたいだ。というのも、そのハイリヒ王国で俺達の受け入れ態勢が整っているらしい。

 

俺達はイシュタルについて行き、美しい回廊を進みながら促されるままその台座に乗る。台座には巨大な魔法陣が刻まれていた。

 

「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん、"天道"」

 

その途端、刻まれていた魔法陣が輝きだし、台座が滑らかに動きだした。

 

どうやら先ほどの"詠唱"で台座に刻まれた魔法陣を起動したようだ。ある意味、初めて見る"魔法"に生徒達がキャッキャッと騒ぎ出す。俺も内心ちょー興奮している。

 

やがて、雲海を抜け地上が見えてきた。眼下には大きな国が見えた。

 

その後、ハイリヒ王国の王宮で、国王と王妃、その娘と息子であるリリアーナ王女とランデル王子との挨拶をした後、勇者召喚成功の宴が催された。

 

そして今、俺は割り当てられた自分の部屋にいた。

 

「はぁ〜疲れた〜」

 

一日でこんなに疲れたのは、初めてかもしれない。俺はベッドに寝転がり窓の外にある、夜空を見上げる。ふと、小町や家族の事が脳裏に浮かんだ。ああ…そうか……もう会おうと思っても会えないんだ。小町…母さん…父さん……

 

総武高校の修学旅行での出来事を機に、俺はいじめを受けるようになった。

火種は文化祭の時に生まれ、修学旅行の出来事によって燃え広がった。

 

奉仕部に…いや、俺に舞い込んで来た三つの依頼。

 

戸部の海老名さんと付き合いたいから協力して欲しい。

 

海老名さんの今の関係が好きだからと、告白の阻止。

 

葉山のグループ関係の維持。

 

葉山の依頼など今までの俺なら、上辺だけの関係に価値など無いと言って切って捨てるような依頼だ。だが、俺は依頼を引き受けた。俺は知ってしまったからだ。グループ関係の維持。壊したくない今の関係。二人と過ごしていく内に、知ったから。

 

複雑な思いが絡み合う中、俺のとった行動は嘘告白。

 

だが、二人なら信じてくれると思っていた。

 

その結果がこのザマだ。二人からは拒絶され、小町との関係まで拗れそうになった。小町とはちゃんと話し合った事で何とか仲直り出来たが、学校ではいじめられるようになった。俺は小町と話し合い、両親にこの事実を打ち明けることにした。正直、小町がいなかったら打ち明けることなんて出来なかっただろう。

 

俺はこの一連の出来事を包み隠さず両親に打ち明けた。

すると、両親は俺を優しく抱きしめてくれた。お前の気持ちに気づいてやれずにすまん。と謝ってくれた。

 

その時は色々な感情が溢れ出して泣いてしまったが、俺は確かにその時、上辺だけじゃない何かを手に入れた気がした。

 

俺の現状を知った両親が俺に提案してきたのが転校だった。

 

総武高校に思い入れなど無くなった俺は、その提案を受けた。

学校が変わっても、俺は殻に閉じこもったままだった。上辺だけの関係なんて作る意味は無いと、閉じこもっていた時に出会ったのが、ハジメだった。

 

「俺は……」

 

「必ず……地球に」

 

「家に……帰ってみせる……」

 

そのまま俺は眠りについた。

 

 

~~~~~~~~~~~

 

 

翌日から早速訓練と座学が始まった。

 

まず、集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

非常に気楽な喋り方をするメルド。「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。

 

まぁその方が俺みたいなコミュ障からしたら、助かるな。はるかに年上の人達から丁寧な態度を取られると居心地が悪くてしょうがない

 

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

 

「アーティファクト?」

 

アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝が質問をする。

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

 

なるほど、と頷き生徒達は、顔をしかめながら指先に針をチョンと刺し、プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。俺も同じように血を擦りつけ表を見る。

 

すると……

 

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比企谷ハチマン 17歳 男 レベル:1

天職:魔術師、召喚士

筋力:40

体力:40

耐性:40

敏捷:40

魔力:280

魔耐:80

技能:魔術・召喚魔法・召喚陣作成

・召喚詠唱補助・魔術礼装スキル作成

・高速魔力回復・鑑定・言語理解

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と、表示された。

 

これって、完全にFateなんだが……やばい……超嬉しいんだが!!いや、落ち着け……脳内トリップしてる場合じゃない。ツッコミどころが多すぎる……ちょっと整理しよう。

 

1、俺の天職はおそらく、Fateの魔術師である事。もう一つの天職である召喚士はちょっとよく分から無いので保留。

 

2、ステータスの数値がこの世界ではどれほどのものか分からないので保留。

 

3、技能はなんかいっぱいあってつおそう。

 

いかん!考えるに連れて、だんだん思考が幼児化している!落ち着け……技能についてもう一度考えよう。

 

ある程度意味の分かるやつはいいとして、まずこの魔術礼装作成ってのはそのままの意味なのか?

 

そう思った瞬間、俺の脳内にある情報が流れ込んできた。

 

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魔術礼装スキル作成

 

・魔術礼装の作成が可能。

・魔術礼装に付与するスキルの作成が可能。

・練度によって、作成するスキルに応用がきく。

・練度によって、1つの魔術礼装に付与出来るスキルの量が変化する。

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チートやん……てか、これ何?

目の前にウィンドウのような物が現れたんだが…

すると、ウィンドウの文字が変化した。

 

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鑑定

 

物質、物体、情報などの状態を知ることが可能。

練度によって、更に深い情報を知ることが可能。

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どうやら、さっきのは鑑定の効果だったようだ。というか、これだけでもうチートな気がする…

だが、今知りたいことは知れたしよしとしよう。

 

他の生徒達もマジマジと自分のステータスに注目している。

 

メルド団長からステータスの説明がなされた。

 

「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に"レベル"があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

 

どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がる訳ではないらしい。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

 

メルド団長の言葉から推測すると、魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないらしい。地道に腕を磨かなければならないようだ。努力は好きだしそりゃいいな。

 

「次に"天職"ってのがあるだろう? それは言うなれば"才能"だ。末尾にある"技能"と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

俺、結構チートだった件。平静を装っているが、内心はっちゃけている。だって魔力に関しては、この世界の平均の28倍ということだ。その他のステータスも数倍はある。

 

やはり俺は腐った目以外は、高スペックなようだ。ムフフ〜

キモイな……そうだハジメはどうなったんだ?

 

「ハジメ、どうだった?」

 

「八幡……これ……」

 

「ん?どれどれ……なにこれ 」

 

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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

天職:錬成師

筋力:10

体力:10

耐性:10

敏捷:10

魔力:10

魔耐:10

技能:錬成・言語理解

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ド平均だった。これは……どう声をかければいいんだろうか?鑑定でハジメの心の傷を癒す、的確な情報を知ることとか出来るか?

 

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南雲ハジメ

 

傷心中だと推定。

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いくら鑑定といえども万能ではなかった。

まぁ鑑定の技能説明欄にも、状態を知ることが可能としか書かれてないしね……

 

もしこれが自分だったらと思うと泣きそうだ。

ハジメ……お前はすげーよ。

 

俺は絶対に、ステータスプレートをハジメに見せないと誓っ「八幡はどうだったの?」た。

 

「ハジメ……本当にいいのか?」

 

「う、うん」

 

俺はハジメにステータスプレートを渡した。

結果、ハジメは遠い目をしながら固まった。

だがハジメヘの追撃は終わらない。

 

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天之河光輝 17歳 男 レベル:1

天職:勇者

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

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まさにチートの権化だった。

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

 

「いや~、あはは……」

 

団長の称賛に照れたように頭を掻く光輝。ちなみに団長のレベルは62。ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。しかし、光輝はレベル1で既に三分の一に迫っている。成長率次第では、あっさり追い抜きそうだ。技能も俺より多いしな…

 

今度は俺の番が回ってきた。

俺はステータスプレートをメルド団長に渡した。

だが、

 

「魔術師?聞いた事ないなぁ〜魔法士とかなら分かるんだが……それに天職が二つというのも、前代未聞かもしれんな……」

 

どうやら、想像以上にヤバめらしい……

 

「まぁ魔力がかなり高いから、魔法系の訓練をする事になりそうだな……何はともあれ、凄まじい事に変わりはないな!はっはっはっは」

 

俺はプレートを返してもらい、ハジメの元に戻った。

 

「ハジメ……大丈夫か?」

 

「は……ははは」

 

こりゃダメだ、まぁ無理もないが、くそ〜どうやって慰めればいいんだよ〜

 

俺は、ハジメをどうやって立ち直らせるか、必死に考えを巡らせるのだった。

 


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