ありふれた魔術師が世界最強になるのは間違っていない   作:ミーラー

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遅くなって申し訳ないです。
引き続き時間がかかるかもしれませんが、読んでいただけると嬉しいです。

それにしても、ブリトマート可愛すぎん?これは追加するしかないな!


第31話 バーヴァン・シー

 

 

「赤いカカトのバーヴァン・シー。召喚に応じ参上したわ。お母様。あと…ク・サ・リ・メ♡」

 

開幕からとんでもない毒舌をかましてくるバーヴァンシー。まぁ事実を言ってるから何も言えんけど……まぁひとまず、召喚に成功したようでなによりだ。

 

「バーヴァンシー」

 

モルガンがバーヴァンシーの名を呼んだ時、バーヴァンシーはすぐにモルガンの方に視線を向けたが、すぐに逸らしてしまった。その顔は少し暗い感じがする。

 

「お母様…本当にごめんなさい…私…お母様の足を引っ張って…」

 

なるほどな…ブリテン異聞帯でのバーヴァンシーの結末は、本当に酷いものだった。なぜあんな結末になったのか…やはり一番最初に思い至るのは、ベリル・ガットという男の存在だ。あの男だけが原因ではないが、バーヴァンシーに悪影響を深く与えたのは間違いなくあの男だ。もし出てきたらぶっ飛ばしてやろう。まぁ来るはずないけど……

 

「もうよいのですバーヴァンシー。ブリテン異聞帯での出来事はすべて終わったこと。気にすることでありません」

 

モルガンはそこまで言うと、バーヴァンシーの所に駆け寄り抱きしめた。

 

「お、お母様!?」

「私の方こそ…不甲斐ない母親ですまない……お前一人幸せにできない母親ですまない…バーヴァンシー!よく…召喚に応じてくれました」

「お母様…わたしっ……わたしもっ…会いたかった…お母様!」

 

お互いが抱きしめ合い思い思いの言葉を言い合っている。やばい…泣きそうだ。この光景を、俺がどれだけ待ち望んだことか…二人の幸せのためにも、俺に出来ることがあれば何でもやるつもりだ。まぁバーヴァンシーにそんなこと言ったら「はぁ!?腐り目でクソザコのお前が何言ってんだよ」とか言われそうだが……

 

「バーヴァンシー。お前が許してくれるなら、私にもう一度母親になるチャンスをくれませんか?」

「何言ってるの?お母様。私のお母様は生涯唯一お母様だけよ。それ以外なんて有り得ないわ。だからお母様。私からも言うけど、もう一度私をお母様の娘にさせて?こんな出来の悪い娘だけど。今度こそお母様の役に立ってみせるから!」

 

バーヴァンシーは目の涙を拭いながら言った。

 

「バーヴァンシー。私に認めて貰おうと必死に頑張っているのは知っていました。そう思ってくれるだけでも嬉しく思います。ですが、私としては、もう少し自分自身のことにも目を向けてほしいのです」

「自分自身のこと?」

「ええ、昔はお前が普通に笑っていられれば、生きていられれば、それでよいと思っていました。ですが、やはり私は、お前に幸せになって欲しいのです」

 

バーヴァンシーは残虐にならなければ、妖精國では生きていくことが出来なかった。だがここにはもう妖精はいない。それが彼女にどんな影響を与え、どんな変化をもたらすのか。それは分からない。それでもモルガンとしては、バーヴァンシーに幸せになって欲しいのだろう。それは俺も同じ気持ちだ。

 

「まだお前は、幸せというものを知らなさすぎる。だからバーヴァンシー。もっといろいろなものに触れ、感じ、学びなさい。そしていつか、自分自身の答えを見つけなさい」

 

もしバーヴァンシーが自分自身の幸せを、答えを見つけることができたら、それがどのような形だとしても、俺は祝福するだろう。まだ確信は出来ないが、バーヴァンシーが道を踏み外すことは、もうほとんどないだろうしな。

 

「分かったわ。お母様、ちゃんと自分の答えを見つけるわ。……でも、やっぱり私はお母様の役に立ちたい。どんな形でも…だから……」

 

その言葉を聞いたモルガンは、少し微笑むとバーヴァンシーの頭を撫でながら言った。

 

「分かりました。何かあれば、必ずお前を頼ります。ですが、無理だけはせぬように。私はお前が傷つく姿など、見たくはありませんから」

「ええ、必ずお母様の所に戻って来るわ」

「約束ですよ」

 

二人はその存在を確かめるように、再び強く抱き締め合った。とりあえず、一件落着って事でいいだろう。前回の失敗は、お互いの距離が開きすぎたことにあるだろう。モルガンは女王だったし、仕方ない部分もあるだろうが、もう少し言葉を交わすべきだったと俺的には思う。まぁ今回はその心配はないだろうし、大丈夫だろう。何かあれば、連れ戻せば良いだけだ。

 

「おい、八幡。訳ありなんだろが、どういうことだ?」

「ん…説明求む」

 

そういえばハジメ達もいたんだったな……忘れてた。ん〜これはまたモルガンの時みたいに、かなり説明しないといけないな……ハジメ、なんでFGOやってくれなかったんだよ……

 

俺はユエにも分かるように、モルガンのことから説明した。その結果……

 

「……ぐす……モルガン……バーヴァンシー……二人ともつらい……私もつらい……」

 

泣いてしまった。俺達と会って間もない時のようだ……それにしても、ユエは本当にいいやつだな。モルガンのことはともかく、会ったことのないバーヴァンシーのためにも涙を流している。今の俺は……他人のために涙を流せるだろうか………

 

「八幡、とりあえずバーヴァンシーとの顔合わせの仲介を頼む」

「了解」

 

俺は思考を止め、未だに抱き合っている二人に近づき声をかける。

 

「二人とも、少しいいか?」

「何でしょうか?」

「おい…今いいとこだろ?空気読めよ」

 

相変わらずの口の悪さだ。まぁいつもこんなんだし、確かにいいところを邪魔したのは確かだから何も言えんけど……

 

「バーヴァンシー。我が夫に対して失礼ですよ」

「夫?……は?お母様…今夫って…夫って何!?しかも……コイツが!?」

 

めっちゃ想像通りの反応だ。FGOのバレンタインの時もめっちゃ驚いてたしな。まぁ、この話はすぐに解決する気がしないし今はスルーさせてもらおう。

 

「その事はとりあえず後にして、今の仲間を紹介させてくれ」

「私としたことが…忘れていました。バーヴァンシー。こちらが、今の私の仲間です」

「南雲ハジメだ」

「ユエ」

 

俺が強引にハジメ達を紹介する流れに持っていったことで、バーヴァンシーは鋭い目付きで俺を睨んできた。まるで、後で覚えてろよ?とでも言いたげな表情だ。そして渋々、ハジメ達の言葉に応じた。

 

「私はバーヴァンシー。お母様の口ぶりからして、かなり信頼されてるみたいだけど……ふぅーん…なかなか使えそうな奴らじゃない。それに、ユエ?あんたって吸血鬼?」

「ん…私は吸血鬼だけど…それが?」

「ふぅーん。ユエ、これからよろしく」

「?…こちらこそ」

 

ユエは何が何だか分からない様子だった。俺も詳しくは分からないが、まぁお互い吸血鬼だし、バーヴァンシーにしか分からない何かを、ユエから感じ取ったのかもしれない。

 

「それで?アンタが南雲ハジメ?」

「お、おう。そうだが」

「アンタはお母様の何?」

 

バーヴァンシーの鋭い瞳がハジメに襲いかかる。その瞳には、嘘は一切許さないという思いと威圧が乗っている。しかしハジメは、少しの怯えも見せることなく答えた。

 

「仲間だな」

 

お互いの視線が交錯し見つめ合っている二人。だが少しして、もう納得したのか、バーヴァンシーの方から視線を逸らした。

 

「そっ…嘘は言ってなさそうね。それに、私の威圧を受けて平然としてられるのも大したものだし…まぁ及第点ってとこね。まぁこれからよろしく。ヘトヘトになっても使ってやるよ」

 

ヘトヘトになるまでじゃないんだ……モルガンとの語らいでしおらしくなったかと思ったが間違いだったようだ。だが、素直によろしくと言うあたり少しの変化はあったのだろう。うん…きっとそうだ。

 

バーヴァンシーから開放されたハジメは俺のところに来て一言。

 

「なんか凄いのが仲間になったな」

 

うん…ハジメの言いたいことはすごい分かる。俺も初対面ならハジメと同じ反応をしていたことだろう。まぁバーヴァンシーとの会話は慣れが必要だからな。とか言ってる俺もさっき初めて会話したんだけどね?

 

「まぁ根はいい奴……だから安心しろ。会話は慣れろとしか言えん」

「今なんか間があったような気がするんだが……結構難しそうだな…ユエはどうだ?」

「……ん、まだなんとも言えない。けど、何だか不思議な気持ち。何となくだけど…信頼できる気がする」

 

ユエにはなかなか好印象だったようだ。この調子でバーヴァンシーと友達関係になって欲しいところだ。そうすれば、今までと違った影響をバーヴァンシーに与えることができるだろうしな。

 

「とりあえず、顔合わせは終わったことだし、オレ達は工房に戻って作業に入るが、八幡はどうする?」

「んーそうだな…俺も行「行かせると思ってんの?」く」

 

俺がハジメについて行こうとした時、ドスの効いた声を発しながら、俺の肩を掴んでくる女の子が一人。

 

 

あっ……これヤバいやつだ………………

 

 

 


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