ありふれた魔術師が世界最強になるのは間違っていない 作:ミーラー
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楽しんでいただけると幸いです。
ちなみに本編ですが、もう少し隠れ家生活を書くつもりです。なるべく早く次に行けるようにしようと思っているのですが、どのサーヴァントをどこで出そうか結構迷い中です。
もう少しお付き合い下さい。
ではどうぞ!
隠れ家生活~5日目~
人工太陽の朝日が、俺の顔を照らしているのを感じる。まだ覚醒しきらない意識のまま俺は体を起こす。少しずつ意識が鮮明になっていくと同時に、自分の現状を把握していく。
そうだ…あの後疲れてすぐ寝たんだったな…
俺はバーヴァンシーに胸をバコバコ叩かれた痛みを神水で治し、しっかり風呂でリラックスした後、ベッドダイブしたらすぐに夢の世界へ旅立ったのだ。
俺の腹時計的には、現在の時刻は午前六時といったところだ。いつもなら二度寝直行コースなのだが、異世界に来てから寝起き特有の体の重さをあまり感じなくなっている。結構規則正しい生活をしているのと、もしかすればステータスの影響もあるのかもしれない。
俺は柔らかいベッドから降りると、少し伸びをした後ベッドルームを出る。
人工太陽の光を体で感じつつ、俺はモルガンとバーヴァンシーを探しに行くことにする。もしかしたらまだ寝ているかもしれないが、俺としては少し様子を見ておきたかった。
モルガン達はオスカーの住処の中にベッドルームがあるので、おそらくそこにいるだろう。
俺は景色を見ながら住処に歩を進める。すると、視界の隅に探していたモルガンとバーヴァンシーの姿が映った。驚いて二度見してしまったが、どうやら見間違いではないようだ。
こんな朝早くに何してんの?とか思いながら俺が見ていると、モルガン達もこちらに気づいたのか、近づいてくる。
「おはようございます。八幡」
「おはよ」
「おう、おはよう二人とも」
さて、さっそく聞いてみることにしよう。
「二人は、こんな朝早くに何してたんだ?」
「バーヴァンシーと朝の散歩です」
そう言ったモルガンは幸せオーラ全開。隣にいるバーヴァンシーも楽しそうな様子だ。何だ…この尊い光景は!
「そうか、もしかしなくても俺…邪魔だよな?」
俺は即時撤退を決断する。こんな尊い光景を俺が穢すわけにはいかない。
俺の言葉に、モルガンはバーヴァンシーの方に視線を向ける。それにつられて、俺もバーヴァンシーに視線を向ける。
俺達に視線を向けられたバーヴァンシーは、頬をほんのり赤く染め、すぐに視線を逸らしてしまった。
ん?
「…別に、邪魔じゃないわよ。一緒に来たいなら…来る?」
うん。ちょっと待とうか…いや、誰だよこの娘。俺の記憶にあるバーヴァンシーと違うんだけど?俺の知っているバーヴァンシーは俺を誘うことなんてしないはずだが…
それに加えて、昨日の話し合いで俺はバーヴァンシーを責め立てたのだ。立ち直らせるためとはいえ、嫌われていてもおかしくないことをした。何か裏があるかもと考えてしまう。
「八幡。バーヴァンシーは嘘をついていませんから、疑う必要はないですよ」
俺がバーヴァンシーの反応を訝しんでいると、モルガンが助け舟を出してくれた。モルガンの妖精眼は嘘を見破ることができる。つまり、バーヴァンシーは本心から誘っているということだ。
さてどうしたものか…もし、二人について行くという選択をすれば、二人の尊い様子を近くで見ることができる。逆に、ついて行かないを選択すれば、二人の尊い様子を遠くから眺めることが出来る。
────これ究極の選択だわ…
「八幡は家族の時間は大事だと思いますか?」
俺が究極の二択について真剣に悩んでいると、モルガンが質問を投げかけてきた。
ん?家族との時間は大事に決まっているだろ?何だその質問は……待てよ、なるほどそういうことか!家族との時間は大事。つまり、部外者の俺はサッサとどっか行け。ということだな?
……泣いていい?
「はぁ、何を言っているのですか?”我が夫”」
モルガンが我が夫という部分を強調しながらジト目を向けてくる。
「貴方は私の夫なのですから家族でしょう?つまり、一緒にいても何ら問題はありません」
なるほど…確かに言われてみればそうだった。
「それとも、私達では不満ですか?」
「いいえ」
モルガンが試すような笑みを浮かべながら俺に問いかけてくる。その問いに俺は即答で返す。この二人に不満なんてあるわけない。むしろ、この尊い空間に俺がいる意味あるんだろうか?
「そんなの誰も気にしないわよ。ほら、さっさと行くぞ」
バーヴァンシーは俺の腕をガッシリ掴むと引っ張ってくる。
ちょっと、バーヴァンシーさん?やっぱりキミも俺の心読んでるよね?そしてモルガンさんは何サラッと反対側の腕を掴んでるんです?
二人の美女に挟まれるという、傍から見ればただの羨ましい光景でしかないが、俺的には二人の行動に困惑する他ない。そしておそらくだが、俺の心の声を理解しているはずの母娘二人は特に気にすることなく歩き出している。
この時点で究極の二択の一つである、二人について行かない。という選択肢が無くなったことを悟った俺は、大人しく二人について行く。
「そういえば、八幡は何をしていたのです?」
「お前ら二人の様子が気になってな、ちょうど見に行こうとしていた所だったんだよ」
俺の答えに「なるほど」と納得した様子を見せるモルガン。「だったらちょうど良かったな」と何だかさっきから俺の認識とズレた反応をするバーヴァンシー。
「話し合いは上手くいったんだよな?」
二人の様子を見れば一目瞭然ではあるが、一応確認の意味も込めて聞いてみる。
二人はお互いに視線を合わせると自信満々に答えた。
「「当然よ(です)!」」
これなら、俺も胸の痛みに耐えた甲斐があったというものだ。胸の痛みを代償に二人の笑顔が見れるなら安いものだしな。
そんなことを思いながら俺は足を進める。二人の歩幅に合わせてゆっくりと。住処の景色を眺めながら歩いていく。
「あっ!聞いてよ!そういえば今日不思議な夢を見たの!」
「奇遇ですね。実は私も見ましたよ」
バーヴァンシーとモルガンが見た夢か…興味深いな。
「バーヴァンシーはどんな夢だったんだ?」
「んー…あまり詳しくは覚えてないけど、妖精騎士が増えた夢だったわ」
妖精騎士が増える…か。あの濃いメンツの中に入ってこれるヤツってことは、その妖精騎士も独特な特徴を持ってるのかもな。
「モルガンは?」
「…実は、私も新しい妖精騎士が増えた夢を見ました」
うん。これ何か起こりそうな予感するんだけど気のせい?普通に正夢でした。なんてこともあるかもしれん。
「その妖精騎士の特徴は?」
「ゴッツイ鎧姿だったわね」
「私も同じで、しかもその中は女性でしたね」
「そうそう!」
いや、二人とも同じヤツの夢を見てたのかよ…しかもそれ、バーゲストとキャラ被ってね?
「そういえば、まだ私以外の妖精騎士はきてないのね」
「まぁな。一応、俺はいつでもいけるが…」
俺はそこでモルガンに視線を向ける。サーヴァント召喚の痕跡を隠蔽してくれているのはモルガンだ。神エヒト対策として、バレるまでに稼げる時間は稼いでおいた方がいいだろう。
「私も構いません。早く我が妖精騎士達が勢揃いしているところを見たいですが、召喚するならハジメやユエと相談してからということになるでしょう」
「そうだな」
これは俺達だけの旅じゃない。ハジメとユエの許可は必要だ。もし許可なく召喚し続ければ、知らないうちに隠れ家に人が増え続けるという状況になるだろう。そんなの恐怖でしかない。
「召喚するサーヴァントリストみたいな物を作っておいた方がいいかもな…」
「ええ、それがいいでしょう」
「…ちなみに聞くけど、妖精騎士以外で召喚しようとしてるヤツとかいるの?」
バーヴァンシーの言葉に俺は少し考える。正直、俺もそこまで詳しく考えていたわけじゃない。俺達の目的は神エヒトを倒し、故郷に帰ること。そうなるとやはり、神に対する特攻を持ったサーヴァントが好ましいだろう。
俺の記憶だと確か…スカサハ、マルタ、カルナ、ナポレオン、太公望、信長、ヴリトラもだっけ?あと、神性特攻じゃないけど千子村正とか来たら勝ち確なんじゃね?
「私としては、まずキャスターを召喚してもらいたいですね」
「キャスター?」
「はい。単純に隠蔽を増やすためです。私だけでも問題ないでしょうが、念には念を。というやつです」
キャスターと聞いてパッと思いつくサーヴァントといえば…キャストリア、スカサハ=スカディ、あとマーリ……いや、やめておこう。これ以上は考えてはいけない気がする。
俺は急な寒気に身体を震わせた。モルガンの方をチラリと見ると、明らかに機嫌が悪そうな表情になっている。モルガンの前では、あの男のことはやはり禁句のようだ。
「モルガンは誰を呼んで欲しいとかあるのか?」
「特にありませんが、呼んで欲しくない者がいることは、もう分かっていますね?」
「はい」
モルガンが満面の笑みを向けてくるが、明らかにそれは表面的なものだ。モルガンから発せられる謎の圧力はまったく隠せていない。俺は素直に頷くしかなかった。
俺達はそんな調子で話しながら、朝のひと時をゆっくりと過ごしていった。
▲▽▲▽▲▽▲
朝の散歩を終えた俺達は、ちょうど起きてきたハジメとユエも加えた五人で朝食をとり、その後はそれぞれやりたいことをする。ハジメとユエは相変わらず工房に籠り、俺とバーヴァンシーはモルガンの魔術講義を受けた。
そして現在、俺は昼食の準備をしている。俺とハジメはヒュドラ肉を使った特製ハンバーグ、モルガンとバーヴァンシーとユエは、この隠れ家で栽培している野菜で作ったスープと、川で取れた魚の塩焼きだ。ちなみにユエはハジメの血も飲むらしい。
「完成まであと三分ってとこか…」
俺は、目の前でジュージューと音を立てているハンバーグを見て呟く。我ながらなかなかの出来だ。とは言ってもそれは見た目だけの話で、食材が食材なだけに格別美味いというわけではない。むしろ不味い。だが、魔物を食べれば強くなれる俺とハジメに、食べないという選択肢はない。
ちなみにだが、ヒュドラの解体は本当に大変だった。いかせん皮が硬すぎて、半端な刃物じゃ傷をつけることすら出来ない。最終的には聖剣で解体するという方法で解決した。
取った外皮は何かに使えそうだよな?今度モルガンかハジメに武器でも作ってもらうか?いや…サーヴァント召喚の触媒に使えるか?ヒュドラといえば確か…
────あれ?これ
まさか俺にも「やっちゃえバーサーカー!」と言える日が来るのか!?来てしまうのか!?召喚したら一回は言ってみたい!
よし、召喚したいサーヴァントリストに入れるとしよう。
────ん?
ヘラクレスの事で頭がいっぱいだった俺は、突然の苦味のある匂いに思考が一瞬硬直する。だがすぐに原因を理解した脳が、体に動けと命令を下す。
目を開け、瞬時にフライパンとハンバーグの隙間にフライ返しを突っ込み、ひっくり返す。
そこには───
「ヘラクレスーーー!!!」
表面が真っ黒に染まったハンバーグがあった。
くそ!ここまで完璧に仕上げたのに!
ヘラクレス、絶対に召喚するから待っとけよ!
ハンバーグの恨みは重いぞ!
「どうしました!八幡!」
「どうした!八幡!」
「どうした?」
「何かあった?」
モルガン、ハジメ、バーヴァンシー、ユエの順で次々とキッチンに入ってくる。
「ハンバーグが焦げた…」
俺がそう告げると、全員がフライパンに視線を向ける。
「これは…」
「こりゃみごとに焦げてるな」
「黒いな」
「黒い…」
このハンバーグを食べるのが、俺とハジメだけだったのが不幸中の幸いかもしれない。今までの奈落生活で、不味い物(魔物の肉)をたらふく食べてきた俺達は、もはや魔物肉のエキスパートと言っても過言ではない。
「おい八幡…これ火つけっぱなしなの、大丈夫なのか?」
「え?」
ハジメの声に反応し、俺はフライパンを見る。ジュージューと相変わらずいい音を鳴らしているハンバーグ。
俺はフライ返しを手にハンバーグをひっくり返す。
「ヘラクレスーーー!!!」
俺は叫んだ。
~現在の筆者~
このサーヴァント出したいなー。こっちもいいなー。あのサーヴァントもいいよなー。
さて…エヒト側どうしよ。