ありふれた魔術師が世界最強になるのは間違っていない   作:ミーラー

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第38話 大英雄と戦った結果

 

 

「◼️◼️◼️◼️ーー!!」

 

「はぁぁあああ!!」

 

聖剣と斧剣がぶつかり合い、八幡とヘラクレスの周辺を激しい魔力が渦巻き雷が発生する。

 

その直後、訓練場に巨大な爆発音が轟いた。

 

爆風によって訓練場全体に砂煙が舞い、二人の姿を覆い隠す。

 

(もう少し早めに止めておくべきだったか……)

 

エミヤはこの状況に歯噛みする。

 

いつものエミヤなら、問題なく二人の剣がぶつかり合う前に止めに入れたていただろう。

 

──────しかし出来なかった。

 

大英雄(ヘラクレス)を前に奮闘するマスターを見て、もっと見ていたいという欲求が現れたからだ。

 

最終的にどちらに軍配が上がったのか分からないが、八幡が敗れた可能性の方が高い。

 

確かに八幡は凄まじい魔力を聖剣に込めていた。しかし後一歩のところでヘラクレスに追いつかれてしまった。しかもヘラクレスの攻撃は宝具、射殺す百頭(ナインライブズ)だった。

 

単純な力比べでは八幡が圧倒的に不利。

あのまま押し込まれたと考えるのが妥当だろう。

 

エミヤは試合の終了を告げようと、二人のいる訓練場の端まで移動しようと駆け出す。二人の魔力は感じられるため、おそらく無事ではあるのだろうが万が一ということもある。

 

エミヤがさらにスピードを上げ近づこうとした、その時。

 

八幡の魔力がさらに膨れ上がった。

 

その直後、ガキン!という金属音が鳴り響き、周囲の砂煙が一気に吹き飛んだ。

 

それによって見えなかった二人の様子が露わになる。

 

エミヤはその光景に驚き固まった。

 

聖剣を振り抜いた八幡によって斧剣が弾かれ、ヘラクレスが仰け反った体勢になっていたのだ。

 

八幡が振り抜いた聖剣の軌跡が赤黒く輝く。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)

 

小さく呟かれたその言葉に聖剣が反応し、力を解き放つ。

 

赤黒い一つの極光がヘラクレスを飲み込んだ。

 

極光によって地面は抉れ、余波が大気を震わせる。

 

禍々しくも美しい聖剣の光が奈落の星空へと登り、その輝きを放ち続ける。

 

後に残ったのは聖剣の膨大な魔力によって燃え尽きたヘラクレスと、聖剣を支えにした状態で片膝を地面に着いた八幡。そしてそれを見ているエミヤだけだった。

 

(これが、十七歳の少年が持つ力か……凄まじいな)

 

エミヤは目の前の光景に驚きつつも、嬉しさを感じていた。

 

八幡の情報はエミヤにもしっかり届いている。そのため八幡の挫折、決意、努力、それら全てを知っている。だからこそ八幡の成長が見られたことが心の底から嬉しいのだ。

 

十七歳の少年が持つには大きすぎる力。しかしエミヤに不安などない。

 

なぜなら、

 

今の八幡には彼女(モルガン)がついているのだから。

 

エミヤは微笑みながら八幡に近づく。

 

「大丈夫かマスター?」

「大丈夫に…見えるか?」

 

掠れた声で反応した八幡は頭から血を流しており、肩で息をしている。あれだけの魔力を一気に放出したのだ。疲労困憊になっても不思議じゃない。

 

「いいや、まったく見えないな」

「くそ…最後の一撃で、全部の命を削るつもりだったんだけどな……。なんであの体勢から反撃できんだよ」

「確かに、あの反撃は凄まじかったな」

「化け物め…」

 

ヘラクレスの命を削ったお前が言うのか?という話だが、エミヤから見てもヘラクレスの反撃は普通の人間では不可能なレベル。元々の身体能力と身体の使い方を熟知しているヘラクレスだからこそ出来た反撃といえる。

 

「しかしマスターはヘラクレスの命を一撃で三つ削った。人の身でそれを成し遂げたんだ。十分誇れると思うが」

「いや…まだまだダメだな。今回の戦いで…目標には全然届いていないことが分かった。命を三つ削ってもその結果が満身創痍じゃなぁ……。やっぱまずは自分の身体の使い方を理解しないと…それから体幹トレーニングも必要だし、他にも剣の技術も見直さないと……」

 

八幡は胡座をかくと、ブツブツと呟きながら今回の戦いの考察を始めた。

 

「やれやれ、困ったマスターだ」

 

エミヤはその姿に苦笑いを浮かべつつも、温かい目で見守っている。さらには、八幡のトレーニングメニューでも作ろうかと考え出す。やはりOKANである。

 

「◼️◼️◼️……」(オレ、忘れられてね?)

 

八幡とエミヤの二人が自分の世界に入ったことを悟ったヘラクレスは、自分が忘れられていることにちょっと悲しくなる。

 

宝具によっていずれは完全復活するとはいえ、一応命を三つも失っている状態なのだ。少しは構ってくれてもいいのでは?と思うヘラクレス。

 

しかし現実は非情である。

 

八幡はさらに考察を深め、ブツブツと独り言を呟いている。そして頼みの綱だと思っていたエミヤも、腕を組み目を瞑った状態で何やら物思いに耽っている。

 

さすがに辛くなったヘラクレスは、そろそろ自分に気づいてもらおうと身体を復元させる。燃え尽きた肉体は瞬く間に修復され、さらに強靭なものとなって蘇る。

 

すると、

 

「ん、ヘラクレス。大丈夫だったか?」

 

ヘラクレスの願いが届いたのか、自分の世界に入っていた八幡を連れ戻すことに成功した。

 

「◼️◼️◼️ーー」(サムズアップ)

「それならよかった」

 

八幡は立ち上がりヘラクレスを労うと、今度は隣のエミヤに視線を向ける。

 

「エミヤは……なんか考え事か?全く微動だにしないけど……」

「◼️◼️◼️……」(彼はオカンだから仕方ない……)

「そうだな」

 

未だ八幡のトレーニングメニューを頭の中に思い描くエミヤのことなど露知らず、二人は『エミヤはオカンだから考え事してて当然だよね?』という理由で話を終わらせた。なんとも酷い話だが、それだけエミヤが優秀すぎるということなのだろう。

 

八幡とヘラクレスはエミヤを放置して訓練場を後にしようと動き出す。

 

しかし、ここで重大な問題に気づいた。

 

「なぁヘラクレス。この訓練場をモルガンが見たらどうなると思う?」

「◼️◼️◼️◼️……」(殺されるかもな)

「うん、ありえる」

 

二人の激しいぶつかり合いによって地面はクレーターだらけで、訓練場の中心部は約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)の影響で大きく穴が空いている。

 

周りの城壁はあのモフモフ野郎を想定して作られているだけあり傷一つないのは救いだったが、だからと言ってこの状況をモルガンに見せるなど言語道断。

 

「ヘラクレス、これから隠蔽工作に取り掛かる。準備はいいな?」

 

八幡はヘラクレスにそう耳打ちする。

 

今の状況を打破するにはそれ以外の方法は存在しないだろうという判断。確かにそれ自体は何も間違っていない。

 

しかし、

 

「何を隠蔽するつもりなのですか?二人とも」

 

背後から突如声をかけられる。

 

その声色はいつも通り感情の起伏が少なく透き通った声なのだが、今の二人にはさらに恐怖心を駆り立てる

スパイスにしかならない。

 

二人は首をロボットのようにギギギと動かし、声の主の方へと視線を向ける。

 

そこには無表情のモルガンが仁王立ちしていた。

 

「も、モルガンさん……なぜここに?」

「なぜ?不思議なことを聞きますね。そんなことは既に分かっているでしょう?」

「はい。訓練場を破壊して本当に申し訳ありませんでした」

 

八幡はヘラクレスと共に正座し潔く頭を下げる。しかし、

 

「八幡、貴方は少し勘違いをしていますね」

「勘違い?」

「八幡は訓練場を破壊したことに対して私が怒っていると考えているようですが、それは違います。私がここへ来た理由は、二人が皆の睡眠を妨害したことに対してです」

「あ…」

 

現在の時刻は夜。それも深夜だ。そんな時間にバカスカ大乱闘をしていれば誰でも目を覚ましてしまう。

 

いつもの八幡なら問題なくその点を配慮して行動出来ていただろうが、ヘラクレスとの対決という楽しみすぎる予定に意識が行ってしまったことで起こった悲劇である。

 

「訓練場に関しては別になんとも思っていません。また直せばいいだけですから。しかし、貴方達の力は既に周りに大きな影響を与えるということをもっと考えて行動するように」

 

(いや、数時間前までモルガンもスカサハと一緒に暴れてた気g「それは気のせいです」

 

八幡の心の中を瞬時に読み取ったモルガンは悪びれる様子もなくすまし顔で言い放つ。

 

「いやでm「気のせいです」」

 

「いやd「気のせいです」」

 

「いy「気のせいです」」

 

「「気のせいです」…はい」

 

圧倒的理不尽の前で八幡は無力だった。

 

「どうやら我が夫は反省が足りないようですね……。明日は一日、寝室に監禁するとしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「What?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、ヘラクレスとエミヤは訓練場の修理に駆り出され、八幡を見たものは誰もいなかったらしい。

 





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