やはり俺がリリベルなのはまちがっている。   作:新太朗

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定休日と82号

八幡視点

 

本日はリコリコの定休日につき、俺しか店にはいない。店長は古い知り合いに会いに行き、ミズキさんはマッチングアプリの相手に会いに、千束と井上はリコリコの新たなメンバーとなったウォールナットの日用雑貨を買いに出かけた。

一人になった俺は店で普段、掃除していない場所を掃除しつつ、夏に向けての新作スイーツを考えていた。

 

「もう夏か……」

 

最近、外が暑くなってきたので嫌でも夏になってきたと思わせる。まあ、リコリコは冷房完備だから涼しいんだけどな!

さて、店長のコーヒーに合うスイーツを考えないと。喫茶店に合う見た目が重要だよな。派手にしても喫茶店の雰囲気を壊すだけだ。

 

「シューアイスとかき氷のどっちがいいだろうか?」

 

試しにシュークリームを凍らせたシューアイスを作ってみた。これが中々美味しかった。俺にはパティシエの才能が!?

DAを辞めた時は洋菓子職人にでも転職するのもいいかもしれない。でもどうやって辞めるかが問題なんだよな。

そんな事を考えていると店の扉が開いた。千束たちが帰ってきたのか?しかし夕方に帰ってくると言っていたのでまだ早かった。

 

「申し訳ありません。本日は定休日につき……」

 

「ええ、知っているわ。だから来たのよ」

 

このお客様は何を言っているんだ?定休日だから来た?普通は営業日に来るのが普通だろうに。何を考えているんだ?

 

「本日は自分以外、誰もおらず……」

 

「それも知っているわ。だからよ」

 

マジで、このお客様は何を言っているんだ?俺は店の入り口で立っているお客様を見た。黒髪ロングで一瞬、井上かと思ってしまった。

だけど、井上にはある幼さがあるがこのお客様にはそれがなかった。まるで氷柱のような女だな。学生服を着ている所を見ると未成年なんだろう。

 

「失礼ですが、ここにはどのような用件で?」

 

「あなたに会いに来たのよ。88号」

 

「っ!?……誰だ!」

 

俺は入り口から離れて、武器の代わりに椅子を持って威嚇した。俺の事を『88号』と呼ぶからにはあの組織の関係者なんだろう。

しかしあの組織の人間はもういないはずだ。もしかして、あの手紙の送り主か!?だとしてもこいつに『お兄ちゃん』なんて呼ばれる筋合いはない。

 

「お前があの手紙の送り主か?」

 

「手紙?何の事を言っているの?」

 

「違うのか?」

 

「ええ。私は82号よ」

 

82号って事は間違いなくあの組織に所属していたんだろう。しかし番号だけ言われてもさっぱり分からない。

俺は82号を観察した。中々整った顔に長い黒髪に少し上からの物言いだけでは思い出せない。

 

「……ちょっと待ってくれ。思い出すから」

 

「ならコーヒーの一杯でも出してくれないかしら?」

 

「定休日なんだが……分かった。適当に座ってくれ」

 

「ええ、そうさせてもらうわ」

 

82号と名乗った女はカウンターに座り、俺はコーヒーの準備を始めた。その間も目の前の女を観察したが、これって思い出せない。

まったく美人ってやつは何をやらせても絵になるな。ただコーヒーを飲んでいるだけなのに。

 

「あ、思い出した」

 

「漸く?時間がかかり過ぎよ」

 

「『体育座りの82号』が」

 

「あなた。私の事をそんな風に見ていたのね」

 

だって、お前いつも施設の部屋の隅で体育座りで一人で居たじゃないか。訓練ではいつもビリでよく食事抜きにされていた記憶がある。

でも直接話した事は一度もない。そもそも施設に居た時の記憶なんてよく覚えているな。

 

「それで?ここにはどうして来たんだよ。昔話をするためではないだろ?」

 

「ええ。もちろんよ……あなた、99号の事は覚えている?」

 

「99号?もちろんだ……俺の後ろをよくついて来た子だろ?それが……」

 

「彼女、生きているわ。しかも国内に居るわ」

 

82号の言葉に俺は特に動揺する事はなかった。あの手紙を読んだ時からそんな気がしていたからだ。俺の動揺のなさに82号は何も言わなかった。

 

「知っていたの?」

 

「いや、手紙を貰ったんだ。近々会いに行く、と」

 

「そう……忠告よ。あなたは99号に会わない方がいいわ」

 

「どうしてだ?」

 

もし99号が生きているなら俺は会いたい。俺はあの子に救われたのだから。だが、82号は険しい顔をしていた。何がどうした?

 

「今、99号はテロリストと一緒に行動しているわ」

 

「テロリストと一緒だと!?」

 

「私は今、雪ノ下建設の対暗部部隊に所属しているわ。そこに居ると色々と情報が入ってくるの」

 

それで99号がテロリストと行動していると知ったのだろう。しかもそのテロリストがDAが追っている例の武器取引の相手だと言ってきた。面倒に面倒が重なってきた。

99号は昔の俺を救ってくれた。誰も信じられなかった時に俺に笑顔を向けてくれた。たった一つの希望だ。

 

「八幡!ただいま~……って、どうしたの!?」

 

「何が?」

 

「目が……いつも以上に腐っているよ?」

 

「マジ?」

 

鏡で確認してみたら確かにいつも以上に腐っていた。昔の関係者に会って、99号の事を聞かされたからだな。82号め!

 

「女の匂いする……」

 

「え?」

 

千束、お前は犬ですか?その後、千束に色々と聞かれたけどシューアイスで誤魔化した。作っておいて良かった。

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