やはり俺がリリベルなのはまちがっている。   作:新太朗

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悪夢と我がまま

千束視点

 

どこかを歩いている。霧に包まれてここがどこかは分からない。仕方ないので少し歩いてみる事にした。だけど、歩けど歩けど霧が晴れる事はなかった。

しばらく歩いているといきなり霧が晴れた。だけど、真っ白な世界がそこには広がっていた。

 

「八幡!」

 

目の前にいつの間にか八幡が立っていた。私は急いで駆け寄った。流石は八幡だ、私を助けに来てくれたんだろう。

 

「…………え?」

 

八幡に近づこうとしたら『パーン!』って音が周りに響いた。すると八幡の胸が赤くなってきた。続いて『パパパーン!』と連続した音が響いた。八幡の体のあちらこちらが赤く染まった。

 

「八幡!?」

 

私は急いで駆け寄った。八幡の体は銃で撃たれて無数の穴を開けていた。私は服を脱いで止血した。まだ病院に運べば助かるはず!

 

「おもっ!?」

 

八幡を運ぼうとしたけど、ピクリとも動かなかった。まるで岩でも乗っけているくらい重い。八幡の体重はそこまで重くないはずだ。なのにまったく動かなかった。

 

「八幡!大丈夫だよ、絶対に助けるから!」

 

私は力いっぱい八幡を引っ張ったけど、さっきから全然動かなかった。それにしてもどうして八幡はさっきから静かなんだろう?

 

「嘘、だよね……う、動いていない」

 

八幡の左胸に耳を押し付けて心音を確認したらそこから普段聞こえてくるはずの音がまったくしなかった。

それに八幡の腐って淀んでいる目が綺麗になっている。そんなはずない!いつもの彼の目がこんなにも綺麗なはずない!

そこで私は気がついた。八幡が死んでしまった事に。

 

「―――はっ!?」

 

そこで私は目を覚ました。さっきのは夢だった。確か昨日は八幡と深夜までずっと青春ラブコメ映画を鑑賞していたはずだ。

だけど、ソファーには私だけしかいなかった。毛布を掛けられている所を見るに八幡が掛けてくれたんだろう。

 

「そうだ!」

 

私は急いで八幡の寝室に向かった。ベッドで寝ている八幡の布団を引き剥がして左胸に耳を押し付けた。そこからは心音が聞こえてきた。

 

「よ、よかった。動いている……」

 

「ちさと?」

 

「八幡!起きて!」

 

「いま、なんじ?……まだ4じ……ねかせろ」

 

「起きて八幡!寝たら死ぬよ!」

 

「それゆきやまでそうなんしたときのせりふぅ……」

 

寝ぼけている八幡を私は強引に叩き起こした。もしこのまま寝かせたら夢のように死んでしまうかもしれない!

そんなのは絶対に嫌だ!私は八幡の寝巻きの胸元を掴んで揺らして八幡を叩き起こした。あの悪夢を正夢にしないで!

 

 

 

八幡視点

 

喫茶リコリコの有名な店員と言えば、誰だろうか?レジ打ちの遅い褐色店長?結婚願望がある酒乱のお姉さん?最近入った黒髪の美少女?厨房の目の腐った男?

いや、全員違う。正解は看板娘の錦木千束だろう。元気いっぱいでお客さんにフレンドリーの千束だが、今日は朝から元気がない。

 

「千束。3番のオーダーだ」

 

「んー……」

 

「千束!3番のオーダーだってよ」

 

「んー……」

 

「千束。仕事をしてください」

 

「んー……」

 

店長、ミズキさん、井ノ上に対して反応が薄い。三人が怪訝な表情でお互いに顔を見ていた。それに常連のお客さんも千束が出てこない事に厨房の中を見てきた。

俺と千束の状態を見て、ニヤニヤしていた。その表情は何なんですか?

 

「千束。仕事しろ」

 

「……いやだ」

 

ここまでテンションが低い千束は初めてかもしれない。どうしたんだ?何か変なものでも食べたか?背中でくっ付くのは今に始まった事ではないけど、仕事をしないのは初めてだ。

 

「どうした?」

 

「…………八幡が銃で撃たれた夢を見た」

 

「ああ。なるほど……」

 

先日のウォールナットの依頼で俺が防弾着ぐるみで撃たれたのを着ぐるみがない状態にした夢を見たのか。だから今朝、あんなに必死だったのか。

店長、ミズキさん、井ノ上に助けを求める視線を送っても自分でなんとかしろ返ってきた。この問題児を俺にどうしろと?

 

「千束。どうすれば元気になる?新作スイーツ食べるか?」

 

「……食べる」

 

「ほれ……」

 

「うん……美味しい」

 

いつもならこれで元気になったり機嫌が直るんだけど、今日は直らなかった。仕方ないので今日は千束の我がままを聞く事にした。

夕方まで千束は俺の背中から離れる事無く一日が終わった。トイレや風呂の中まで入って来そうだったのでなんとか阻止した。

 

「…………」

 

「…………」

 

千束の大好きな映画鑑賞に付き合う事にしたけど、千束は映画の内容が頭に入っていない様だった。一本見ただけで鑑賞会はお開きなった。

 

「千束!復活!!」

 

次の日、千束は元気を取り戻していた。一日中、俺から元気を貰ったらしく、今日はいつもより元気に看板娘をやっていた。

何日も塞ぎ込んでいたらどうしようかと思った。でも元気になって、良かった。

 

「八幡」

 

「どうした?」

 

「明日、ヒマ?」

 

「暇だけど?」

 

「デートしよ!」

 

「…………はぁ?」

 

千束は笑顔で俺をデートに誘ってきた。だけど、俺は警戒していた。千束がこの手の笑顔を見せる時はろくな事が起こらないからだ。何を企んでいる?

 

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