八幡視点
俺はリコリコで餡蜜をウォールナットこと胡桃に食べさせていた。それにしてもこのハッカーもリコリコに馴染んできたな。
押入れにパソコンを持ち込んで作業部屋にして犯人探しに力を入れていたはずなのに今は餡蜜を食べてやがる。
「それで分かったのか?」
「ボクを誰だと思っているんだ?」
生意気な子リス?すると胡桃がゴーグルを俺に渡してきた。最先端のVRらしいけど、凄いのかイマイチ分かっていない。
だけど、装着してみると凄い事が分かった。凄すぎだろ!?
「おおぉぉ……凄いな、これ」
「ボクが作ったんだぞ。当たり前だろ」
あの写真からここまでのものを作り出すなんて、流石は最高峰のハッカー様だな!銃取引の現場にいるのは男三人に女一人だった。
男二人は作業着を着ている所を見るに武器商人の前に立っている男の部下って感じか?そして女の顔を見て俺は驚いた。
「99号……」
昔の面影を感じるが、どこか凶器染みたものを感じさせる。俺と別れて数年の間になにがあったんだ?まずはこの男を捜さないと。
「防犯カメラに一瞬でもそいつらが映れば、八幡たちの端末に位置情報が送信されるようにしておいた」
「流石だな。もう一杯、食うか?」
「ああ。貰おう」
「―――んああぁぁ!!悔しい!!」
俺と胡桃が話していると千束はVRゲームの真っ最中だった。専用のコントローラーを使ってのサバイバルゲームだそうだ。俺はこの手のゲームは苦手で、どちらかと言うと育成ゲームの方が好きだ。
「ただいま戻りました」
「たきな!これやって!これ!」
「ゲームですか?」
買出しから戻ってきた井ノ上にゲームを代わりにしてもらうのかよ!それでお前はいいのか?俺は今の内に餡蜜の皿を片付けた。
それにしてもあのちっこい体のどこに2杯の餡蜜が入るんだ?
「よっしゃぁぁぁ!流石、たきな!」
どうやら井ノ上は勝ったようだ。片付けが終わったのでシューアイスでも食べるかな。あれ?可笑しいな、一つなくなっている。
誰かが食べたのか?食べたらなら一言言ってくれないと困るんだけどな。
「八幡……たきなのパンツ見た事ある?」
「お前は俺を変質者にしたいのか?」
「そうじゃなくて……」
千束は更衣室を行き、そこで着替えている井ノ上のスカートを捲り上げた。おいおい、いくら同性だからってやっていい事と悪い事があるだろ。
「な、に……これ?」
「下着です」
「男物じゃん!!」
「これが指定なのでは?」
「し、指定!?」
「はい。前に比企谷さんに聞いたらトランクスだと」
「……八幡?」
トランクスが指定なんて言った覚えはないけど、井ノ上が下着は何を履いているかと聞いた事があったのでトランクスと答えておいた。
「何を履いているかと聞いてきたんでトランクスだと答えただけだ」
「たきな!明日、12時に駅前に集合ね!」
「仕事ですか?」
「パンツ!買いに行くの!私服で来るんだよ!いい!?」
千束はそう言って先に帰った。井ノ上はこちらに視線を送ってきた。でも下着は自由だから別に俺はいいと思うけどな。
「これの何がいけなかったんでしょうか?」
「さあ?俺も下着に拘りがある訳ではないからな」
「この下着、動きやすくいいと思うのですけど」
「だよな。千束は何が気に入らないんだ?」
俺と井ノ上は首を傾げるしかなかった。今時女子の千束としては女の子が男物の下着を履いている事が許せないんだろうな。
「比企谷さんは千束の下着を見た事、あります?」
「まあ、あいつは普段からセーフハウスで下着で過ごしているからな」
もうちょっと女性らしさってものを持って欲しいけどな。こっちとしても目のやり場に困るけど、今はもう慣れて例え全裸でも問題ないと思う。
そもそも千束が俺の前で全裸になる事なんてないと思うけど。
「比企谷さん。お願いがあるのですけど……」
「どうした?」
「私服を貸していただけませんか?」
「どうして?」
「私服、持っていないので」
私服を持っていないなんて人間がいるのか!?まあ、俺の私服は全部千束が選んだもので俺の趣味はまったく入っていない。
千束が言うには俺の趣味はダサ過ぎらしい。どうして!?前に買った『Iラブ千葉』と入ったTシャツを捨てられた。気に入っていたのに。
「流石に俺の私服で行くと千束がキレると思うぞ」
「そうですね……」
「ネットで調べてそれぽい服を買ってくればいいんじゃないか?」
「そうします。お先に失礼します」
「ああ。明日は楽しんで来い」
俺が井ノ上を見送ると胡桃がこっちを見て、ニヤニヤしていた。この顔はお客さんが時々俺と千束に向ける顔だ。
「八幡。二股はどうかと思うぞ?」
「生憎と彼女いない暦=年齢だ」
「それ、千束の前では言わない方がいいぞ」
何を言っているんだ?あいつだって、彼氏いない暦=年齢だぞ?そもそもリコリスやリリベルが自由に恋愛なんてものは出来ないんだよ。
少なくとも俺は千束が死ぬまで誰かに構っている暇はない。俺の手であいつを送ってやる日まではな。