やはり俺がリリベルなのはまちがっている。   作:新太朗

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ガイドと護衛

たきな視点

 

リコリコの営業も終わったけど、店員は全員まだ帰ってはいなかった。これから依頼の説明が千束からあるからだ。

 

「さて、次の依頼だけど……なんと護衛です!」

 

「比企谷さん。このシューアイス、美味しいです」

 

「そうか。コーヒーと合うな」

 

「ちょいちょい!そこ、ちゃんと聞く!」

 

比企谷さんのシューアイスを食べていると千束にタブレットで叩かれてしまった。タブレットはクルミのものだからあまり粗末に扱うのはどうかと思いますよ、千束。

 

「会社の重役で命を狙われているから護衛して欲しいんだって」

 

「狙っている相手はどれくらいなんです?」

 

「それが恨みを買い過ぎて誰か分からないんだって」

 

せめて狙っている相手くらいは知りたかった。それなりに腕がある殺し屋なら有名だと思うし、対策だって楽に立てられる。

依頼人で護衛対象は72歳の日本人。過去に殺し屋に妻子を殺されており、渡米していたが、昨年、医者に余命宣告を受けた。

病気で筋肉が動かせず車椅子生活していたが、余命の事もあって日本に帰国した。

 

「そこでガイド兼護衛をうちに依頼してきたの!」

 

「それでその日の予定はどうるんですか?」

 

「そうだね……出来るだけ多くの場所を回りたいけど、無計画だと……」

 

「しおりでも作るか?」

 

「それだ!」

 

千束はクルミの提案が気に入ったのか、すぐさましおりの作成をクルミと一緒に取り掛かった。事前に回る場所が分かっていれば、どこから狙ってくるかある程度絞れる。

 

「役割でも決めておくか?」

 

「そうですね。私と千束が対象についています」

 

「なら俺はバイクで先回りして、ミズキさんがいつでも逃げるように車で、胡桃がバックアップって所か?」

 

「それがいいと思います」

 

比企谷さんが先回りで場所の安全を確保して、ミズキさんが対象を逃がせるようにしていれば、私と千束で殺し屋の足止めをすればいい。

護衛対象が近くに居なければ、殺し屋に遅れを取る事もない。比企谷さんは改めて依頼を確認していた。

 

「どこか気になる所でもありますか?」

 

「いや……なんとなくな……」

 

「そうですか?」

 

比企谷さんはどこか依頼人に気になる所があるようで依頼人の顔を見ていた。どうしたんだろうか?

 

「よし!最高のガイドで東京を案内するぞ!」

 

「はい!」

 

今回の護衛依頼は前回のような事はないようで安心した。比企谷さんたちは隠し事をしているようには見えない。今回で三回目の護衛依頼だ。

今度こそ、しっかりと対象を守ってみせる!私は静かに誓いを立てた。

 

 

 

八幡視点

 

朝から千束は依頼人が来るのを今か今かとソワソワして待っていた。時間的にそろそろ到着する頃合だ。リコリコの前に一台の車が停まった音がして、すぐに店の扉が開いて車椅子の老人が黒服の男と一緒に入ってきた。

 

『こんにちは』

 

これは人の口からではなくスピーカーから発せられた声だった。車椅子生活が長いのか、体は今にも崩れそうなくらい脆そうに見えた。

ゴーグルに車椅子から伸びているチューブが何本も体に繋がれていた。

 

「お待ちしておりました!」

 

「遠い所をようこそ」

 

『少し早かったですか?』

 

千束と店長が代表して依頼人に挨拶をした。ゴーグルで視線が分からないのか、表情が読み辛い。だけど、スピーカーから発せられる声はどこか楽しそうな感じがした。

依頼人は直接喋らないから脳波を機械が読み取って言葉にしているらしいけど、ここまでスラスラと喋れるものなのか?

 

『ここに来るのが楽しみでね』

 

「任せてください。ガイドのしおりも準備万端なんで!」

 

「千束。データ、送信しようか?」

 

「え?……あ!」

 

依頼人の状態を見て、千束は紙のしおりを見て、クルミが依頼人にデータを送信した。すると黒服の人が店から出て行った。

あの黒服はここまでの案内か護衛だったんだろうな。ならどうしてウチに依頼してきたんだ?

 

『助かります……私は機械に生かされてるんです。おかしいでしょう?』

 

「私も同じですよ。ここが」

 

『ペースメーカーですか?』

 

「いえ、心臓丸ごとなんですよ」

 

千束は指でハートの形を作って左胸の前に持って行った。あの人口心臓はあと数年で停まってしまう。

 

「え?それって、どういう……」

 

「千束。俺は予定通り、先に行くぞ」

 

「うん!案内は私とたきなに任せてよ!」

 

そういえば、リコリコで千束の心臓の事を知らないのは井ノ上とクルミだけだったな。千束はまだ井ノ上には言っていないんだな。

俺はリコリコを出て、バイクに跨り予定ルートに先回りした。危険物や危険人物を先に見つけておくが俺の仕事だ。

 

「それにしても……あの爺さん、生きているのか?」

 

顔は俺の方を見ていたけど、意識が俺に向いていないかった。俺は人の視線に敏感だ。視線を読めば、どこを攻撃してくるか分かるからだ。

それを観察して俺は相手の攻撃を避けている。だけど、あの爺さんからは意識ってものを感じなかった。

それが違和感でしかなかった。ゴーグルの所為で余計に意識を感じ辛いのか?今回の依頼はなんだか、いやな予感がする。

 

「当たんないといいけど……」

 

俺の予感は悪い方によく当たるからな。俺は一先ず、予定ルートに急いだ。

 

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