やはり俺がリリベルなのはまちがっている。   作:新太朗

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使命と確認

千束視点

 

『殺すんだ』

 

そんな言葉が私の耳に届いた。その言葉は依頼人から発せられた言葉だった。どうしてそんな言葉が出てくるのかが分からなかった。

 

「ごめん……それは出来ない」

 

『その男は20年前に妻と子の命を奪ったんだ。頼む、仇を取ってくれ』

 

例え殺し屋だとしても命を私は奪いたくない。それに今回の依頼は護衛とガイドなんだから誰かの命を奪う必要はないはず。

 

『それは可笑しい』

 

「先生?」

 

『20年前ならジンは私と一緒にいたはずだ』

 

先生の声が聞こえて、少し冷静になれた。この暗殺者は昔、先生と一緒にいたなら誰が依頼人の妻子を殺したの?

 

「それでも私は殺したくないんだ……」

 

『は?』

 

「もし殺しの依頼だったら頼む所を間違いたな」

 

『何だと?』

 

八幡も私と同じで不殺を誓ってくれた。だから私たちは誰の命もどんな事があっても奪わないんだよ。

 

『君たちが殺してくれ。君たちは……アランチルドレンのはずだ!』

 

「ちょっと待て。どうして俺たちがアランチルドレンと知っている?」

 

「八幡?」

 

「俺たちはアンタの前でチャームを一度も見せた事はない。まさか……」

 

「八幡!?」

 

八幡がいきなり依頼人の顔に付けられていたゴーグルを剥ぎ取った。私は急いで八幡の手を掴んで止めさせた。

 

「千束、よく見ろ」

 

「え?……これってどういう事?」

 

車椅子に座っている依頼人の瞼が閉じている。さっきまで話していたはずなんだから起きていると思ったのに。

まるで寝ているように呼吸が一定だ。本当にどうなっているの?

 

「クルミ。この車椅子は遠隔で操作されていたはずだ、逆探出来るか?」

 

『……無理だ。電源を落とされた……警察がそっちに向かっている。ミズキの車でそこを離れろ』

 

「分かった。千束、荷物は俺が持つから井ノ上に肩を貸してやれ」

 

「うん。たきな、歩ける?」

 

「な、なんとか」

 

私たちはその場を後にした。ミズキが運転する車で少し離れた場所に移動した。するとそこには先生と先ほど私が倒したはずの暗殺者のジンって人が話していた。

 

「ジン……お前が殺したんじゃないんだな?」

 

「あの頃はお前と一緒に居ただろ?それにしても足はどうしたんだ?」

 

「ちょっと、な……」

 

「そうか……」

 

少し距離があるから聞き取りづらいけど、依頼人の家族を殺した人ではないと分かった良かった。それにしてもどうしてこんな事になったんだろう?

 

「千束。大丈夫ですか?」

 

「うん。ちょっと疲れたかな……たきなこそ、足は大丈夫?」

 

「はい。応急処置はしているので明日にでも診てもらいます」

 

「そっか……」

 

しばらくすると八幡が置いてきたバイクを戻ってきた。八幡は私に近づいて、頭を撫でてくれた。ホント、何も言っていないのに私が疲れている事に気がついて、元気付けてくれる。

 

「ありがと、八幡」

 

「いいさ。これくらい……」

 

ちょうどいい加減で頭を撫でてくれる八幡の手は温かく気持ちがいい。今、八幡の優しさを私が独占している。それがとっても心地いい。

それから私たちはリコリコに戻った。帰る前に先生はジンと何か話していたけど、八幡の頭ナデナデに比べたらどうでも良かった。

 

「はぁ~……つ~か~れ~た~」

 

「お疲れ様です、千束」

 

「たきなもね……たきな、私っていいガイドだったかな?」

 

「ええ、いいガイドでしたよ……」

 

たきなが私に気を使ってくれている。ありがたいけど、今の私には虚しく聞こえてしまう。私がリコリコで寝ているとたきなが頭を私の胸に倒れこんできた。

 

「ちょいちょい……」

 

「今は二人だけですよ?」

 

「そうだけど……」

 

「本当に聞こえないんですね」

 

「すごいでしょ?」

 

たきなが私の人工心臓の音を聞こうと耳を澄ませている。どんなに近づいても心音なんて聞こえてこないんだよね。私はしばらくたきなと一緒に静かなお店で何もしないで過ごした。

今夜は八幡と一緒に寝ないと眠れそうにない。きっと八幡は何も言わずに私を受け入れてくれるはずだ。

 

「たきな。今夜、セーフハウスに来なよ。一緒に八幡のハンバーグ、食べよ?」

 

「ご馳走になります」

 

「よし!行こう!」

 

私はたきなと一緒にセーフハウスに戻ってきた。扉を開けるとハンバーグの焼けるいい匂いが食欲を刺激してきた。匂いを嗅いだだけでお腹が空いちゃうよ!

 

「八幡!ただいま!」

 

「おかえり……井ノ上も一緒か」

 

「はい。夕ご飯、ごちそうになります」

 

「ああ。たくさん作ったから食べてくれ」

 

「それじゃ……いただきます!」

 

私たちはテーブルを囲って八幡のハンバーグを食べた。もう頬っぺたが落ちそうなくらい美味しい!!

 

「美味しい!」

 

「はい。本当に美味しいです」

 

「それはチーズ入りで、そっちはうずら入りだ」

 

普通のハンバーグにチーズやうずら入りを用意するなんて、最高だよ!嫌な事も八幡の料理を食べれば全部、吹き飛んじゃうよ!

たきなが帰った後、私たちは映画鑑賞をしてから私は八幡のベッドで朝までぐっすりと眠る事が出来た。

やっぱり八幡の心音は最高の子守唄だ。しばらくの間、一緒に寝てもらおう。

 

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