やはり俺がリリベルなのはまちがっている。   作:新太朗

25 / 31
狩りと妹

千束視点

 

眠る前の夜の街は起きる朝の静けさの街と同じくらい好きだ。家の明かりが少しずつ消えていく。それを感じるのは私の楽しみの一つだ。

さて、さっさとお遣いを済ませて映画でも八幡と一緒に見ようかな。今夜はどれがいいかな?今回は青春ラブコメ系で八幡を弱らせるのもいいかもしれない!

 

「ん?八幡だ……もしもしもし?」

 

『千束!今すぐ逃げろ!』

 

「八幡?どうしたの!?」

 

八幡から電話が来たと思ったら大声で私に逃げるように言ってきた。どうしたんだろう?声からかなり焦っているのは分かる。

 

『リコリスの襲撃は制服じゃない!顔がカメラに映っていたんだ!』

 

「え?嘘……」

 

『襲われたリコリスとお前の顔がバッチリ映っていた!すぐにどこかに隠れろ!』

 

「わ、分かっ―――ちょいちょいちょい!?」

 

私はすぐに移動しようとしたら背後から強烈なライトが私を照らして近づいてきた。これは避けられない。私は咄嗟に少し跳んでボンネットに乗り上げた。

そしてそのままフロントガラスを転がり、コンクリートに体を打ち付けた。受身を取ったけど、流石にコンクリートは硬い。

 

「どうだ?やったか」

 

「…………とぉ!」

 

「がはっ!?」

 

「ぐっ!?」

 

車から何人もの男が降りてきた。私はやられたフリをして近づいてくるのを待った。そして非殺傷弾が当たる距離まで近づいた所でポンチョを広げて、目隠し代わりにして男たちに向けて撃った。

数人に当たったけど、油断出来ない。私は急いで移動した。近くに公園があったはずだ。あそこならこの時間は無人のはずだ。

 

「逃がすな!追え!」

 

男たちが車に乗り込んで私を追いかけてくる。八幡たちに電話をしたいけど、走りながらじゃ難しい。多分だけど、八幡ならさっきの電話が途中で切れた事ですぐに駆けつけてくるはずだ!

私はそれまで時間を稼いで八幡たちの到着を待つ!それしかない。私は急いで移動した。さっきの連中がリコリスたちを襲った連中か!

 

「み~つ~け~た~!」

 

「くっ……」

 

「遅いよ!」

 

「この!」

 

公園に到着したのはいいけど、すぐに襲撃された。背丈から見ても私より年下ぽいけど、どこかで見たような顔をしていた。

街灯や星明りでは判別する事が難しい。それにしてもこの子、ナイフ捌きと間合いが取るのが上手い!

 

「はい。隙あり!」

 

「なっ!?」

 

私は足払いされて体勢が崩れた。それを見逃さずに相手はそのままうつ伏せにして押えつけてきた。後頭部に銃を突き付けられて下手に動けない。

 

「ここまでだね。赤いリコリス……お前さえ居なくなれば、お兄ちゃんは完成する!」

 

「お兄ちゃん……?」

 

いったい、誰の事を言っているの!?この子の兄と知り合いになった覚えはない。そもそもこの子は誰なの!?

 

「これで終われ!」

 

「くっ……」

 

「がはっ!?」

 

「……え?」

 

私を押さえつけていた子がいきなり仰け反った。顔を上げてみるとそこには銃を構えている八幡が立っていた。

 

 

 

 

八幡視点

 

何とか間に合った。もう少し遅ければ、千束は撃たれていただろう。それにしてもあの千束が組み伏せられているなんて、余程相性が悪いのかもしれない。

 

「痛いよ……お兄ちゃん」

 

「99号……」

 

俺が撃った奴が立ち上がるとそこに居たのは前にクルミのVRゴーグルで見た少女の姿がそこにはあった。非殺傷弾で撃たれたのにすぐに立ち上がるなんて、結構タフになった。

 

「痛いけど、血は出ていないね」

 

「生憎と非殺傷弾だからな」

 

「どうして実弾を使わないの?それで小町を殺せていたのに?」

 

「もう俺は誰も殺したくないんだよ」

 

「そんなのお兄ちゃんじゃないよ!」

 

99号は俺に怒号をぶつけてきた。俺は銃を99号に向けながら千束を立たせた。いつまでも寝ているからだ。しっかりしろよ!

 

「千束。大丈夫か?」

 

「う、うん……八幡、あの子は?」

 

「昔、施設にいた妹分みたいなもんだ」

 

「みたいじゃないよ!妹だよ!」

 

それにしても99号は変わったな。昔はもっと聞き分けのいい子だったのに。いつも俺の顔色を伺ってきた子がここまで変わるのか。

 

「おじさんも日本に着たかったんだけど、難しいからこれを預かってきたんだよ」

 

「ボイスレコーダー?」

 

『やあ、88号……いや比企谷八幡くんと言った方が正しいね』

 

「…………」

 

99号が懐から出したボイスレコーダーからは昔、俺にフクロウのチャームを渡してきたおっさんの声だった。

 

『八幡くん。君の目の前に居るのは正真正銘、君の妹だよ。兄妹仲良くしなさい』

 

「……だれ」

 

『私は小町くんと海外で色々な場所を行き、彼女を立派な殺し屋に育てたんだ。全ては君の才能を開花させるためだ』

 

「……黙れ」

 

『これも全て、君の才能を世界に届けるためだ』

 

「黙れぇぇぇ!!」

 

俺は大声を出した後、ボイスレコーダーに向けて発砲した。ここまで大きな怒号を発した俺は初めてかもしれない。そもそも俺が感情を剥き出しにするのだって、初めてだ。

 

「俺に妹なんていないし、才能なんてものもない!勝手に俺の人生を決めるな」

 

誰が何と言おうと俺に妹なんていないし、才能もない。そして俺の人生だ。俺が進む道を決める。勝手に俺の道を決めるな。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。