やはり俺がリリベルなのはまちがっている。   作:新太朗

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決別と不殺

八幡視点

 

99号と対面して俺は考えがまとまらなかった。久しぶりに聞いたおじさんの声に俺は昔の自分を思い出していた。施設の大人に言われるがままに人を殺してきた自分を。

でもそれは千束を見たら吹き飛んだ。今の俺は88号ではなく比企谷八幡だ。錦木千束と同じ不殺を誓ったんだから。

 

「99号。そこを退け」

 

「駄目だよ。お兄ちゃんは完成しなければならないんだよ?」

 

「俺はそんなつもりはない」

 

「そんなのダメだよ!それじゃあ、小町は何のために頑張ってきたの?」

 

99号は俺の前に立ちはだかった。これまで99号がどれだけの事をしてきたかなんて、俺は知らないし知りたくもない。

 

「知らん。お前が勝手に頑張っただけだ」

 

「そんなのないよ……やっぱり赤いリコリスは必要ないね」

 

「生憎と千束は誰にも殺させない。こいつを殺すのは俺だけで十分だ」

 

「邪魔しないで!お兄ちゃん!」

 

99号が突っ込んできた。だけど、狙いは俺ではなく千束の方だった。俺は千束を後ろに隠して99号に向けて発砲した。

しかし99号はナイフの刃を横にして防いできた。この暗闇でどこに弾が着弾するのか分かっているようだった。

 

「頃合か……井ノ上!やってくれ!」

 

「がっ!?」

 

「な、なんだ!?」

 

「ど、どこから!?」

 

俺は井ノ上に合図を出した。すると99号の後ろで待機していた部下の男たちが次々と倒れた。井ノ上がサイレンサー装備して援護してくれた。

この公園に来る前に井ノ上と作戦を決めておいて正解だったな。まずは千束を脱がさないと。

 

「千束。お前は井ノ上と一緒にここから離脱しろ」

 

「でも八幡は!?」

 

「俺は後から行くから先に行け」

 

「でも!」

 

「いいから!早くしろ!」

 

「わ、分かった」

 

「―――行かせるかよ」

 

千束を逃がそうとしたら男が横から割って入ってきた。この男は武器取引の現場にいたリーダー格の男だった。いつの間に近づいてきていたんだ!?

 

「このっ!」

 

「当たるかよ!」

 

「なっ!?」

 

「おら!」

 

リーダー格の男は俺の弾を避けた。俺や千束でもこの暗闇での回避は難しいのに。どうやって避けているんだ!?正直、男の弾をギリギリ回避しているけど、当たるのも時間の問題かもしれない。

 

「死んでよ。リコリス!」

 

「この!」

 

「甘いよ!」

 

「うっ!?」

 

千束が俺以外で苦戦している場面なんて初めて見るかもしれない。それだけ99号は千束にとってやり辛い相手なんだろう。

 

「―――アンタたち!こっちよ!」

 

「ミズキ!?」

 

「千束。行け」

 

「分かった!」

 

ミズキさんが車でやっと来た。俺は千束に行くように促して99号とリーダー格の男の足止めに専念した。でも流石に二人の足止めはキツかった。

 

「これで終わりだ!DAの殺し屋!」

 

「お兄ちゃん……ポイント低いよ」

 

「そうだな……じゃあな」

 

俺は懐からスモークグレネードを出して、それを使ってその場から離脱した。側に川があったので飛び込んだ。飛び込む前に肩を撃たれてしまった。

それにしても今が夏で助かった。もし冬だったら凍死していたかもしれない。それに派手に暴れたので、警察のサイレンが近づいていた。あいつらも撤退しただろう。

 

「クルミ。どうだ?」

 

『連中は逃げたよ。流石に警察に見つかるのは面倒だったんだろう』

 

「それはそうだ……」

 

俺は反対側の岸で99号たちが居た場所を眺めていた。気のせいかもしれないが、99号と目があった気がした。

99号の目は俺に近いものがあった。昔はキラキラと輝いた気がしたけど、今は黒く深い色をしていた。俺は風邪を引く前にリコリコに戻った。

 

「千束。大丈夫ですか?」

 

「うん……いっ!?」

 

「千束。動かないでください」

 

店では千束は井ノ上から治療を受けていた。俺は店長に診てもらっている。幸い、弾は貫通しているようで、数日は治療に専念した方が良さそうだ。

それにしてもスモークの中でどうやって俺に弾を当てたんだ?あのリーダー格の男の弾だな、これは。

 

「八幡。さっきの女の子って……」

 

「昔、施設で一緒だった子で、妹みたいなもんだ。死んだものかと思っていた」

 

「そっか……大丈夫?」

 

「結構、メンタルにきている……」

 

ここまでメンタルに来るのは初めてかもしれない。感情はそれなりに殺せる自信があったけど、99号が相手なら話は別だ。

生きていた事に嬉しい反面、相手をしなければならないと思うと気が重い。これもきっとおじさんが俺を完璧にするために用意したものなんだろう。

 

「八幡。あの子を殺すの?」

 

「そんな事するかよ……俺はもう誰も殺さないと決めたんだ」

 

「うん!そうだよね!」

 

俺が組織を裏切ってからDAに所属を移しても俺は誰一人として殺していない。誰かを殺すのに疲れたし、千束の不殺に共感出来たのが大きい。

だからこれから先、どんな事があっても俺は誰も殺さないだろう。どんな状況になっても、だ。

 

「……保険を用意しておくか」

 

俺はある人物に調べた。次の定休日にでも会って話した方がいいだろう。俺は千束たちにバレないように準備を進めた。これがバレたらどんな残酷な拷問をされるか分かった物ではない。

きっと青春ラブコメ映画10本連続鑑賞とかに決まっている。

 

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